静岡川柳たかね 巻頭沈思考バックナンバー
トップページへ






感動 静岡市 小野 修市

 涙を流してしまう程の感動する物語りとか、人との出逢いが時々ある。世界的に有名なオペラ歌手の「チェチョル」さんという方のお話を、テレビの番組で偶然、拝見させて頂く事が出来たのですが、彼はオペラ歌手であるのに、命の声を失わなければならない甲状腺の「ガン」になってしまったのだ。手術をしても、声が戻らないのなら、オペラを歌う事も、もうかなわないのだ。
 だがそんな時、彼を救う希望の光が伝えられた。手術をすれば、声も出せる様になるというウソのような話だった。しかも皆さん、その先生は、日本の方だったのです。日本も素晴らしい国でありますね。そして、手術が行なわれ、少しづつ声を出す発声練習が始りましたが、やはり、前の様な伸びやかな透き通るような観衆を魅了する程の声は出ませんでした。会話が出来る様になっただけでも素晴らしい事と、廻りの人は慰めてくれます。然し、彼の歌を聴いていた大勢のファンの人達に、もう一度、彼の歌を聴きたいと熱望され、努力を重ね、ある日、声が滑らかに出るようになり、彼自身もビックリしたのですが、彼の努力結果が奇跡を呼んだのでしょう。彼の努力の結果が、奇跡を呼んだのでしょう。私のつたない文章では、とてもこの感動した心を伝えられませんが、私は泣けて泣けてそばにいた妻と娘に笑われる程でしたが・・・。
 自分には、とても出来ぬ事と思うので余計に感動してしまいした。頑張って川柳で皆様に成程と思われる句が、ひとつでも出来れば幸せです。
巻頭沈思考 | Link |
(2009/09/29(Mon) 14:01:57)

還暦前の無謀な挑戦  焼津市  増田 信一

朝刊をいつものように見ていると“初心者でも簡単にボートの免許が取れます”という広告が目に入った。後一ヶ月で還暦だし、その前に脳味噌がまだ腐っていないか、体にガタがきていないか確かめるには丁度いいと思い、申し込みをした。学科講習二日で、実地講習が一日、その後試験の日程。その間十日のハードスケジュールと聞き、「簡単に免許が」との話が甘いと、この時うすうす思うようになった。
学科講習は二日間で、朝九時から夕方五時まで聞き慣れない用語に悩み、脳味噌は久しぶりに引っ掻き回され、仕事の何十倍も疲れた。そして、どうせ受けるのだからと一級に申し込んだツケが学科の二日目に来た。二日目の海図の問題は、コンパスと定規を使って解く問題で三問ある。これを落とすと、ほぼ不合格となると聞き、目の前が真っ暗になった。
家に帰り、なんとか楽に解くことができないか、三日三晩考えて出した結論が、海図の問と答えを全部丸暗記することだった。というのも、この試験に出る問題は決まっていて、各々の問に対して二十問の中から必ず出題されると聞いたからである。
海図の問と答えを丸暗記してしまえばと、仕事もそっちのけで衰え始めた頭に叩き込んだ。この時、脳も使えば使うほど疲れるものだと痛感した。
 試験はこれで終わらず次が待っていた。実地講習である。船に乗ったことはあるが、大きい船がほとんど。  
五メートル足らずの船ではあるが、いきなり操縦である。車はハンドルを左右に切っても傾くことはないが、小船は大きく傾く。それもひっくり返るのではないかと思うほどである。その内に船酔いをしてきて、吐きそうになった。ここにきてやっと免許が簡単に取れるという広告に騙されたかと思い始めた。
 でも、ここまできて引き下がったら男の名折れと思い直し試験に臨んだ。幸いにも丸暗記作戦が功を奏し、実地も優しい試験官にあたり合格することが出来た。人間年は取っても必死になればなんとか出来るという事を、この年になり改めて学び教えられた。後で聞いた話だが、私が最年長の受験者だったらしい。
巻頭沈思考 | Link |
(2009/08/07(Thu) 14:12:04)

まかない 浜松市 今井 卓まる

 十数年前(分かりやすくいうと、現在80キロ前半の僕の体重が60キロ台後半だった頃)、僕はとある鉄道会社で駅員をしていた。
僕の在籍していた鉄道会社では、まずは改札係という役職をクリアしなければ次のステップに進めない。  
 改札係の主な仕事は、切符の集改札と乗継清算業務、コインロッカーの集金、便所掃除などなど…。そのなかでも最も重要なのが『まかない』だった。僕がどんなに忙しい時でも「おい、今井、乾麺のうどん十二人分、茹でとけ!」という駅長の鶴の一声で、僕はいつも『まかない』モードになっていた。僕としては、お客様と触れ合いたかったので少々不満だったが、それなりの理由があったらしい。後々聞いた話だが、泊まり勤務の時の朝メシの僕の『まかない』の『うどんつゆ』が何人かの助役さんの間で密かに噂になっていたらしいのだ。
 僕は改札係として出勤した時には制服に着替える前に、まず初めにしたことは、『昆布と干し椎茸の水戻し』だった。これがあれば、その頃の僕の『まかない』は無敵だった。うどんつゆのベースとして使う他に、出し汁をとった後の昆布は刻んでスーパーで買ってきた漬物に振り掛ければ、手作り風の漬物になり好評を得た。たまには戻し汁を多めに作り、『和風カレー』なんてのも夕食メニューで作ってみたこともあった。
 さてさて『うどんつゆ』。胡麻油で生姜・長ネギ・豚コマ肉を鍋で軽く炒めた後に、出汁をとった後の昆布と干し椎茸を適当に刻み、戻し汁・醤油・みりん・乾燥ワカメ・粉末カツオだしの『半分の量』だけを一緒に鍋に加える。出来上がり寸前に残りの半分を入れることで、粉末カツオだしの風味が活きてくるのじゃ! 同時進行で乾麺のうどんも茹でているので、段取りが心配な主婦の皆様方もご安心下さい。あとは、茹で上がったうどんのぬめりを取りつつ水でキュキュッとしめて、熱々の『卓まる印の特製うどんつゆ』をかけて、至福の時を迎えるのである。
 主婦の方々と少しだけ違うのは、電車のダイヤに合わせて調理をしなければならないことと、段取りや味付けを間違えると、灰皿が飛んでくることも・・・。
 同じような要領で、大晦日の時には『お稲荷巾着の年越し蕎麦』を作ったこともある。ゆで蕎麦を入れた油揚げの巾着に、『卓まる印の特製つゆ』にかまぼこや銀杏、山菜などを加えた柚子風味のあんかけ汁をかけた単純な一品。これも好評であったが、僕は食べることが出来なかったのである。僕以上に食いしん坊な駅長が横取りしたのであった。駅長のバカぁ〜!
 それでも、月に2〜3回は僕を飲みに連れて行ってくれていた、ハンプティー・ダンプティーみたいなお茶目な駅長が大好きだった。


巻頭沈思考 | Link |
(2009/07/29(Tue) 13:58:53)

 

Copyright © 静岡川柳たかね 巻頭沈思考バックナンバー. All Rights Reserved. /Script by[PHPウェブログシステム3.1 ネットマニア]