平成二十五年度
たかね年間賞 候補作品
奥歯にも詰まる言葉の咳払い 野次馬
落ち葉踏む骨の砕ける音たてて よし子
肥満児の背中をポンとたたく癖 哲 也
いいじゃないコンパス四角描いたって さと子
失敗を「ん」の手前で気が付いた アキラ
ジョークよと簡単に言うふくらはぎ 美佐緒
ニュートンのりんごになった女へん 恒 代
ふるさとに警笛を吹く赤とんぼ 哲 也
贖罪を流すと詰まるウォシュレット やむ茶
アルバムの一枚ごとにある花火 輝 男
さようならムーンウォークで年が行く 夕 介
善人も悪人も聞く除夜の鐘 廣 司
釣り銭をください御利益なかったら 猫 子
トンネルを抜けきるまでのアミダクジ 弘
万一に備え楔も用意する 輝 男
冬銀河少しあなたが近くなる としみ
生きていることがうれしいシクラメン 義 子
目の前で売り切れました今日の運 里々子
二ヶ月に一度のアレが軽すぎる さとみ
バアさんやまた三億が当たりそう アキラ
あなたなど過去の男よ寒太郎 奏 子
冬花火あれはなかったことにして 里々子
悲しみに出合って咲いた花言葉 竹 水
無理のない笑顔幸せなんですね 恭 子
目を洗うまだ青空が見たいから 弘
ジョバンニの切符を僕も持っていた 夕 介
曲がり角後ろ姿も好きでした まさ子
慰めの言葉の中にある小骨 よし子
ひらひらと糸を信じて凧が舞う 豊 子
躓いたことは忘れてまた歩く やむ茶
深呼吸心の声を聞いてみる としみ
肝心な刻にまばたきしてしまう 薫
シャボン玉割れる期待を込めすぎて 夕 介
ごめんねが素直に聞ける春の色 恭 子
毒入れて会話の濃度増してゆく くにこ
バタヤンも逝き残された島育ち 恒 代
哺乳瓶あれば男は立ち直る 美佐緒
あなたしか見えない今がお買い得 奏 子
また残る灯油もカイロもクリームも さとみ
先天性びっくり箱のかたつむり 猫 子
脳味噌の打音検査にある不安 薫
えごの葉よ無事に過ぎればそれでいい 澄 人
死ぬほどの快感もなく生きている アキラ
欠席をしても気づいてもらえない 恭 子
卑弥呼ならうちの茶の間にいますけど 鰹
夏だから和製英語を二つ三つ 哲 也
魚屋の魚さかなっぷりを褒め 好 子
まな板の範囲で踊り疲れます 茂 瑠
難問を圧力鍋に入れてみる 恭 子
日本をクールビズする再稼働 弘
化粧した妻の行き先わからない 博 司
ゴキブリがちょびちょび口を出し暑い 恒 代
荒祭り神が神輿にしがみつき 廣 司
母親になって夫に会いに行く よし子
個人的事情は空へ打ち上げる 猫 子
筋道を立てれば転ぶ人もいる 敏 子
こっそりと下さいあなたの爪の垢 恒 代
この線を消したら友になれるかも ふく子
前世はまっくろくろすけだった父 猫 子
青空が一番似合ういなり寿司 鰹
赤ちゃんを囲む笑顔のあいうえお 千代見
笑いじわ勲章だもん気にしない 好 子
どや顔でATMのカメラ見る 可 福
毎週の金土日はおめでたい 浩 則
開け方を忘れてしまいました 愛 さとみ
トイレから席に戻ると波が消え 安 心
青春の道で落した白い布 信 一
教科書にない母さんの褒め言葉 しげる
決断をしてからずっと迷い出す 三根子
口内炎出来て静かな妻になる 博 司
愛のない妻を出雲へ訴える 弘
人褒めてばかり油断のできぬ人 由利子
出来るならしたい人生逆回し さと子
過労死も無職も多い長寿国 玲 子
幸せと言っておこうよ うそだけど 天 子
脱税をしたくなるほど稼ぎたい 久 子