静岡川柳たかねバックナンバー
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自 由 吟
  虎 竹 抄


「お 正 月」        谷口 さとみ
賽銭は増えずお願い事は増え      伊 豆
雑煮食べママはパートへ子は塾へ
もういいかい今日はひとりだカップ麺
明日もまた笑いたいから豆浸す


「新  年」        岡村  廣司
どの神にしようか迷う初詣で       焼 津
忘れては居なかったんだ賀状来る
おだやかな顔していよう松の内
鼻唄のゆとりを持とう今年こそ


「元旦に思う」       金田 政次郎
八度目の丑ですドーモ済みません    静 岡
元旦の採光老いを引き締める
天寿とや加齢の芯の先細り
夢多く盛って描いた初春の空


「自 由 吟」        竹内  さき
初雪よ一直線なプロポーズ       浜 松
寄り添うて短き命願をかけ
恋と米両手でこなすいい女
さらさらと私を写す水鏡


「外  圧」        鹿野  太郎
夕張のメロン北への使者にする     仙 台
忙しい顔、貌、面の伏魔殿
アマチュアをごぼう抜きする大リーグ
日の丸のスピーチ耳の掃除する


「雪 の 日」        栃尾  奏子
神代から元旦凛と来るきまり      大 阪
抱負だけ馬鹿にでっかい三が日
雪の日は雪の日なりの過ごし方
うっとりとコタツ爪先から入る


「前期高齢だから・・・」  増田  久子
駐車場もみじマークとして並ぶ     焼 津
どこで出てどこで終るか今の歌
マラソンの中継で知る町の位置
文庫本東野圭吾だけ探す


「人  間」        大塚  徳子
ゆうやけこやけいつか羽ばたく鶴を折る 仙 台
カマキリのことを想いて日が暮れる
人間が好きで人間らしくする
ゼロから人間やり直す牛の年


「家  族」        薗田  獏沓
背もたれに家族みんながなってくれ   川根本町
農耕の血はネクタイを羨やまず
嬉しい時悲しい時も抱く家族
枯野だが家族楽しく握り飯


「ぱぴぷぺぽ」       戸田 美佐緒
ぱぴぷぺぽ軽い話に油断する      さいたま
前略と書くと無沙汰が畏まる
窓際の古い机が歌い出す
雪おんな前後不覚の酒になる


「復 活 祭」        新貝 里々子
淋しくていつもポコポコ湧いている   袋 井
愛は錯覚わたしを縛る長い紐
球根に聴かせるピアノコンチェルト
焦るまいゆっくり人間として生きる


「夕 焼 け」        安田  豊子
惚れられて煩わしくて怖くなる     浜 松
大らかに笑い哀しい演技する
何回も転び得難いコツ拾う
夕焼け小焼け自分還る里のいろ


「年 寄 り」        西垣  博司
私よりそろそろワシが似合うかな    静 岡
今の世を生きてこの世の憂さを食い
風切って歩めばきっと風邪を引く
年寄りの話日向で笑い合い


「道  草」        真田  義子
あの時に光をくれた三分粥       仙 台
スパイスをかけ間違った人といる
道草をしながら恋の二つ三つ
ゆっくりと雲が流れるうれしい日


「自 由 吟」        中田 きく子
満足の度合いに揺れている私      静 岡
お茶をたてひとり静かな刻を持ち
節くれの指が過ぎし日ものがたり
指先が恋しき人の名を拾う


「  鼻  」        馬渕 よし子
上向きの鼻で宝を嗅ぎ当てる      浜 松
何も彼も許してくれた団子鼻
褒められて鼻の回りがこそばゆい
鼻息が荒くて誰も寄り付かず


「み が く」        井口   薫
平穏な日です包丁研ぐことに      袋 井
刃こぼれの目立つ五感を磨いてる
床もみじ修行の汗を光らせる
終点へ磨き足りないままの旅


「めでたし」        提坂 まさえ
お話の通り帰ったかぐや姫       静 岡
物忘れこれでいいのだ我が海馬
古炬燵ぽっと赤らむ使い初め
旅終えて妻の小言は元通り


「嬉しいな」        川村 美智代
太陽が笑えば花も子も笑う       静 岡
極楽ぞ赤黄のもみじ露天風呂
春さくら秋はコスモス四季嬉し
ピアノ弾く孫の指からちさい秋


「自 由 吟」        寺脇  龍狂
死んでまで会社につくすことはない   浜 松
建売りが売れ残っている幟
新総理出足ほどにはパっとせず
使う日を夢に仕える政治秘書


「スケジュール」      加茂  和枝
丁寧に私を試す風が吹く        岩 沼
風呂敷に包んだ愛が重たくて
崖っ淵空が青くて救われる
膨らんだ夢が後押す予定表


「雑   詠」        寺田  柳京
捨てられた男の様な昼の月       静 岡
野良犬を見下している昼の月
掌の畑に伸びる葱其の他
まほろぼの地球を人が何故こわす


「家  族」        藪ア 千恵子
遠く住む家族と話す趣味のこと     焼 津
アメリカと通話料金気にしない
少しずつ英語身につく五年生
帰国するまでがんばって待ってます


「雑  詠」        成島  静枝
やすくてもホテルのバーはちと行けぬ 千 葉
円高のメリットワイン飲めぬ口
霜月と師走を残すカレンダー
Qちゃんの引退己を知っている


「別  れ」        石井   昇
愛が終ったか氷柱も溶けてゆく     蓮 田
流氷と歌うわたしの別れ唄
消えてゆく霧笛が夢も連れてゆく
ふと想う雲になりたい流れたい


「後期高齢」        畔柳  晴康
失敗も高齢ゆえと演技する       浜 松
便利だよ後期高齢使い分け
出し渋る年金暮し口にする
まだ呼ぶな必ず逝くが急がない


「見 舞 い」        鈴木 千代見
病室を出るタイミングつかめない    浜 松
表札を見つけて呼吸整える
その程度でよかったネェと見舞い客
病名に触れず世間の話する


「寒  い」        藤田  武人
帰り道湯気の向こうに縄暖簾      大 阪
春を待つ窓辺に飾る寒桜
クルクルと回れ寒鰤冬が来た
懐は紙切れだけのボーナス日


「昼 休 み」        恩田 たかし
昼休み句にははまりすぎさぼりすぎ   静 岡
くつろぎの昼休みには缶コーヒー
秋風に揺れる木々の葉紅葉中
心地いい風と日射しに踊る木々


「自 由 吟」        石上  俊枝
家事放棄してざんぶりと露天風呂 静 岡
上を見て下を眺めてよしとする
ピースしてプラス思考の運を呼び
ひと指でドミノ倒しに風が起き


「自 由 吟」        萩原 まさ子
寒いから帰る家族という温み     静 岡
槽糟の妻が入れたるお茶を飲む
薬指見てまだチャンスありと知る
母の苦を節くれの指知っている


「貴 方 へ」        芹沢 穂々美
赤い傘貴方のために買いました 沼 津
五色豆貴方の背中押している
丸テーブル貴方の愛を一人占め
秋霖や貴方の誘い待っている


「  夫  」        内山  敏子
定年へ夫の口座妻の名に    浜 松
亭主づら威張ってみても粗大ゴミ
お留守番夫へひとつ地酒買う
忘れたふり上手になった処世術


「暖 と 寒」        小林 ふく子
湯豆腐が土鍋で独り言を言う   袋 井
冬の窓明かりに愛が溢れてる
例えばの話自分が寒くなる
絹手袋時々人を騙してる


「雑  詠」        滝田  玲子
逆風に押され出口が見えてこぬ  浜 松
苦労した人生皺が物語る
一粒の涙を武器の娘に敗ける
それぞれの顔に明日の夢が待つ


「コ タ ツ」        酒井  可福
コタツにはお茶とみかんがよく似合う 北九州
独り身のコタツ万能家具となる
コタツから首だけ出して空返事
コタツなら指でコチョコチョ触れてみる


「抜かりなし」       毛利  由美
交渉難航クリスマスプレゼント     つくば
年賀状素材をパソコンで模索
共有の場所はみんなで大掃除
新札の準備抜かりがないように


「老  老」        中矢  長仁
今平和ただ平凡に日が過ぎる    松 山
微笑んで平和に暮らす老夫婦
始まるか心配し合う物忘れ
楽しもう後の人生二人旅


「椅  子」        濱山  哲也
床屋さん椅子を誉めると話し出す   つがる
お好みの男だな座り直してる
きっちりと仕事をこなすパイプ椅子
公園のベンチ枯葉が座ってる


「自 由 吟」        山田  ぎん
月見酒すすきと萩が縁側に     静 岡
月を見て戦時の夫忍ばれる
草餅を見れば古里思い出す
新米が松茸が出る秋を食べ


「雑  詠」        ふくだ 万年
暖房を弱めジャケット着るエコー    大 阪
ダイエット決め手ないから本売れる
笑い顔おのれの皺に懺悔する
気にするな一人で育つ子もいるさ


「  暮  」        川口   亘
チラシ見て今日も特価の綱渡り  藤 枝
北風が急に邪魔するトイレ立ち
予算繰り段々堰が高くなり
老化込むは明日は話の妻と云い


「印 象 派」        鈴木 まつ子
礼儀作法印象深い茶懐石    島 田
背信の胸に眩しい弥陀の影
しみじみと生まれ育った家ながめ
格調も主義も問わない印象派


「  絵  」        川口 のぶ子
荒海のうねりの中から拾う絵図  藤 枝
一本の絹糸に見る穴かがり
絵に画いたようにいかない世の動き
思い出を絵にしているはまだ未熟


「  男  」        瀧    進
愛妻に惚れた弱味を握られる    島 田
ファイティングポーズに男見栄を張り
女房に糸引かれてる出世凧
大老と持ち上げられて煙たがれ


「雑  詠」        飯塚 すみと
妻コタツまずは手に取る旅チラシ    静 岡
引き込もりさせぬバーゲン五割引
歯ブラシをてんでに置いて洗面所
休みの日雨音しずか起きられず


「湧  く」        鈴木 恵美子
宴会のしめは音痴の大爆笑     静 岡
上り坂愛の鼓動が鳴り響く
しなやかに八十路詩情をたぎらせる
年末に湧く『運命』の大合唱


「お金のあれこれ」     小野  修市
税金で議員は野次に磨きかけ    静 岡
煙にまきふところさぐる二枚舌
退職金みていた夢が消えてゆき
年金の額が趣味を決めている


「ノーベル賞」       尾崎  好子
同時であノーベル賞で飛び上がり   藤 枝
親戚でないのにこうも喜べる
無限大この頭ではどの頭
おきかえて思うに素手で手宙つかむ


「見えない努力」      今井 卓まる
良い柿は嫁ぎ先でも愚図らない    浜 松
三日前仕掛けたエクボ蟻地獄
三面鏡ボクの知らない顔がある
ぼろぼろと流す涙でウソ洗う


「自 由 吟」        林  二三子
意地は捨て子らの意見を受け入れる  芝 川
頑固などもう消えている老いた父
足腰の小言にも慣れ共に生き
笑いじわ増えて病気を忘れさす


「  虹  」        中野 三根子
良いことがあったよ今日は虹ふたつ   静 岡
決めている心の中の虹の色
クレヨンで書いた今日の虹の空
心から笑ったあなたへ虹あげる


「自 由 吟」        川村  洋未
さりげなくゼロを数えてもとへ置く 静 岡
バーゲンを待たず自分にプレゼント
財布手に予算と見栄がゆずり合う
ブランドで固めた人が寒そうだ


「  私  」        多田  幹江
どうでもいいのに私の誕生日    静 岡
わたくしを差し置き我雨ざんざ
私って鰑のような人だとさ
ネオンテトラも私も夜の川が合う


「  糧  」        石田  竹水
御破算を願って一歩整える     静 岡
痛かった言葉の棘も糧に成る
好き放題言って去ってく第三者
神さまを二股掛ける罰当り


「春 の 色」        真 理 猫 子
元旦はクラゲの色になる私       岡 崎
雷に運ばれてくる天の声
ゴキブリもきっと平和を祈ってる
正月は「賀正」「賀正」と鳴くカラス


「アルパカ」        山口  兄六
少子化の波でキャベツが育たない  足 利
芳醇なワインは挫折してできる
乱獲で消えてしまった清純派
オヤジ狩りされて三十路のボンバイエ


「師  走」        増田  信一
師走でも正月来てもマイペース   焼 津
師走でも関係ねーと定年じゃ
クリスマスおもちゃケーキの要らぬ家
師走でも不景気風が静けさを


「スーパー」        佐野 由利子
スーパーが意地を賭けてるこの景気 静 岡
挨拶がすらすら言えた日の安堵
膝割って話せば分かる縺れ合い
単純という美しさ富士の山


「  道  」        長澤 アキラ
不器用で尻尾の振れぬ犬である     静 岡
悔恨の形に歪む靴の跡
なあ妻よ長い道程だったナア
灰汁を抜きだんだん帰る海の道


「鮎友釣り三昧・・・其の二十七」永田 のぶ男
コップ酒釣り業論じ飲み潰れ     静 岡
鮎釣りで三途の川の優勝者
補償終えダムと消えゆく鮎の川
冬の日も川原を覗く御仁たち


「哀  楽」        川路  泰山
風紋の如移りゆく覇者王者     島 田
アルバムの汚れとなったバラの花
煮詰めれば渋み辛みも甘くなり
羽根布団かけふんわりと生きてます


「海峡の帆」        池田  茂瑠
団塊の端の固まり悪い芯       静 岡
下駄箱に目的果たせない靴が
深追いへ織ろう海峡越える帆を
売れ残る私値切っていいのです


「自 由 吟」        高瀬   輝男
情と理の狭間丁半で決めようや   焼 津
鏡台でいざ出陣の顔が出来
人間の奢り責めるか温暖化
新任地は宇宙だなんて夢だった


「歳末風景」        望月   弘
夢はジャンボに宝くじ依存症      静 岡
クリスマスせめてケーキのいいはなし
ワクチンに見放されてる不況風
酒屋からまだ届かないカレンダー


「ノスタルジア」      加藤   鰹
ロックオンもう後戻り出来ぬ恋 静 岡
アラフォーの風が首から肩へ抜け
柴又へ行く寅さんに逢いたくて
くるみもち遠い汽笛を聞いている


「無  為」        柳沢 平四朗
等身大に生きた骸はのっぺらぼう    静 岡
帳尻は天へ預けた四面楚歌
背伸びした位置で心のかくれんぼ
歳月に無為を食わせた自己嫌悪


虎竹抄 | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:23:05)

自 由 吟
  虎 竹 抄



「未   練」        新貝 里々子
あの頃は信号みんな青だった      袋 井
ダイエットすればこの服着られそう
泣いて笑っておとこをひとり消去する
逢いにゆく音符ひとつを握りしめ


「雑  詠」        石井   昇
盃の底に小さなおれがいる        蓮 田
資本論蟹工船の灯が暗い
信念を持てば行くのはけもの道
真っ赤っか今日を納めて陽が沈む


「  緑  」        栃尾  奏子
愛してる言葉だけでは救われぬ     大 阪
後少し待とうか時雨から氷雨
冬の海臨み再会待っている
嗚呼ここでひとつに戻る分岐点


「年 の 暮」        岡村  廣司
切り札を使い果たした年の暮      焼 津
年の暮喪中と転居やたら来る
高速道車で埋まる里帰り
何もかもご破算したい大晦日


「少し困ったこと」     増田  久子
留守電が間違い電話一つ受け      焼 津
おすそ分け生きてる鰻もらったが
文字通り粗品タオルの色が落ち
手おくれのように健康講座聴く


「雑  詠」        西垣  博司
余命の差女房はまだ紅をひき      静 岡
毒舌をたしなめている喉仏
大恐慌知るや知らずや蟻は這う
舞台からとび降りて買う秋の旬


「自 由 吟」        内山  敏子
ボーナスをジングルベルが煽りたて   浜 松
おおような顔でへそくり貯める母
咄家の笑い薬に酔うひと日
孫が来るパッと明るくなる茶の間


「漫  画」        濱山  哲也
冠が少年である週刊誌         つがる
教養は教科書よりもマンガ本
四百円おかしなことをいう総理
立ち止まり天を仰いでする風刺


「シナリオ」        真田  義子
言い勝った日いつもより早く寝る    仙 台
ワレモコウ恋の余白は開けておく
人生のシナリオを書き直したい
もう少し飛び続けたいブーメラン


「自 由 吟」        ふくだ 万年
間違えて妻の貯金に振り込んだ     大 阪
正座して初めて解る気の弱さ
医者の技一度で治さず通わせる
酒タバコ止めてメタボで早く逝く


「日常生活」        恩田 たかし
ポニョポニョと歌をうたいて腹つまむ  静 岡
ダジャ関を考えてると句が浮かぶ
川柳を考えてるとダジャ関が
仕事しろラジオにメールしてばかり


「  風  」        馬渕 よし子
木枯しが骨の髄まで痛めつけ      浜 松
風向きが変わらぬ内に逃げ帰る
わだかまり解けて風まで心地良い
孫が来て夫婦の風を入れ換える


「  夢  」        安田  豊子
拭っても笑んでも消えぬ泣きぼくろ   浜 松
離れたい影がしつこく付きまとう
陽の温み包まれ母と逢う夢路
七十の夢にもちゃんと色がある


「振り向けば・・・・」   金田 政次郎
子は大将妻元師で俺伍長        静 岡
合掌す仏は見えず妻過ぎる
相棒は貸し借りが無い良い仲間
本当に幸福なんだ我が家の灯


「四季 喜怒哀楽」      小林 ふく子
冬の日に小さな孫の重さ知る       袋 井
春の日に遍路で自分省みる
夏の日に足へ車がおんぶした
秋の日に試歩で台地の温さ知る


「ぼろぼろ」        大塚  徳子
モッタイナイダンナの古着妻が着る   仙 台
真っ直ぐな道にもあった水溜り
髪染めてナンパされそう予感する
ぼろぼろと年月零す飯こぼす


「寒 と 私」        竹内  さき
落ちつかぬ恋をしている師走時     浜 松
ハーハッとかじかんだ手に一句舞う
恋しくて石焼芋の愛を抱く
北風に負じと行こう寒の坂


「人を見る」        薗田  獏沓
先生の目を引く為に悪さする      川根本町
六法を盾に素人人裁く
白い歯をキラリ人を信じさせ
年なりの地味なプライド漂わせ


「重  大」        鹿野  太郎
甲高い声が巨人のキーワード      仙 台
小遣いが減らないようにゴミ減らす
慎重に止める規制のベルト穴
物作り大国を揺さぶるキャリア

「  風  」        畔柳  晴康
待ち兼ねた涼風こんど寒い風      浜 松
吹く風は名物なれどからっ風
ウン決めた墓に入らず千の風
墓参り千の風とか留守でした


「好 奇 心」        鈴木 千代見
飲んだふり彼の心はどっち向き     浜 松
いけないと分ってメールそっと見る
居酒屋に背のびしている未成年
襖越し気になる話息を詰め


「  濁  」        藤田  武人
この愛を告げる瞳に濁り無し      大 阪
純真な心が濁ったら大人
悪友と徹夜で飲もう濁り酒
老兵が濁った空を見上げては


「ガラクタ」        井口   薫
困るだろうなこんなガラクタ置いてけば 袋 井
ガラクタも無ければ風邪を引きそうで
想い出を見せてガラクタ命乞い
よれよれの地図に迷ったあとばかり


「  夢  」        毛利  由美
いい夢見てるね幸せな寝顔       つくば
つかの間の再会果たす夢のなか
再会のシチュエーションが変 夢だ
アラームが鳴る 現実なのか夢なのか


「自 由 吟」        山本 野次馬
反論の知恵沸いて体力使い切る     函 南
小波抱く母なる海が騒がしい
数式へ時々首の空回り
前を向くことしか出来ぬ零の位置


「車で旅行」        中矢  長仁
満タンにしたらのんびり出掛けよう   松 山
のんびりの旅の筈だが飛ばす道
飛び回る北海道のでかい道
お土産が一杯になり帰ろうか


「自 由 吟」        鈴木 恵美子
肩凝りをほぐしてくれるもみじの手   静 岡
夕焼けの男のロマン背に秘める
満ち足りて古巣で趣味に生きる日々
晩年は心鍛える真剣味


「時 事 吟」        寺脇  龍狂
天国も神無月なら降りてこい      浜 松
立候補せぬが解散気にかかり
アフガンに一粒の麦蒔いて逝き
大エースホームラン王いてチームビリ


「秋の画布」        加茂  和枝
もうちょっと ちょっとの時間大事です 岩 沼
ありがとう細い絆が切れました
たくさんの夢を見ましたこれからも
自分流本気で描いた秋の画布


「雑  詠」        滝田  玲子
派手を着て熟女パワーに燃える秋    浜 松
脈がないと見たかセールス腰浮かす
口先の強がり犬もお見通し
永田町背後で派手に動く金


「  小  」        川口   亘
小才効き其の場凌ぎの知恵で逃げ   藤 枝
小咄が間合のぬけた座を救う
小半刻孫の相手に飽きる頃
小兵よく大きな者に食い下がる


「汚   染」        芹沢 穂々美
青虫に食い尽されて認知症    沼 津
空気汚染青虫にまで飛び火した
汚染米食べた毛虫の面汚し
カタツムリ環境汚染察知した


「老   猫」        成島  静枝
孫が来ていじくりまわすうちの猫 千 葉
テリトリー面子にかけてする威嚇
豊漁の秋刀魚に猫も膳につく
年だねえ目やにを拭いて引っ掻かれ


「雑  詠」        飯塚 すみと
例のアレそうそう私もそれにする 静 岡
水を眺めて写生うまくゆき
子の見合い期待はせぬが受けてみる
歯の治りょう女医のやさしき声があり


「高  い」        鈴木 まつ子
エリートが高飛車になる身のこなし 島 田
プライドが高くなるほど傷がつき
身の丈がすらりとポーズ超美人
届かない高嶺の花に遠眼鏡


「いの一番」        瀧    進
夫唱婦随黙って俺について来い     島 田
栄転のメール女房にいの一番
陳情書まずはお土産見比べる
勝馬に乗って駆け出す金と欲


「  つ  」        川口 のぶ子
積立も出来ない悩み年金者     藤 枝
つきなみの答も出ない今ピンチ
通販があの手この手で押してくる
つめ込んで横にそれたか出ぬ答


「自 由 吟」        酒井  可福
いじめだな今更メタボ扱いは   北九州
のろのろと走る車に飛ばす眼
行き先も告げずに父の旅支度
食い過ぎを残す子供のせいにデブ


「骨   折」        伊藤   理
ラッシュでもそこのけそこのけ松葉杖 東 京
上半身きたえてやるさ松葉杖
ここどうぞ車窓も霞む松葉杖
駆けまわる夢の枕は松葉杖


「自 由 吟」        山田  ぎん
濡れるのも良し此の人と傘をさす   静 岡
老い歌う酒飲軍歌肩を組む
朝夕は涼しく虫の声を聞く
官僚は人の金でも我の金


「真っ赤だな」       照山  紅葉
真っ赤だな恋する婆の艶姿     秩 父
真っ赤だな佛舞い降る巾着田
真っ赤だなハワイの土産マカダミア
真っ赤だな巣鴨のパンツ真っ赤だな


「不 眠 症」        中安 びん郎
生まれ付き悪くもないが眠られぬ 静 岡
不眠症千数えても眠られぬ
老妻はいつでも側で高鼾
不眠症夜は無料の警備員


「王 さ ん」        尾崎  好子
ホームラン三十本へバット置き  藤 枝
テロップで事ある如におどかされ
手術後の体調みんな気遣った
王さんのラストゲームが儘ならぬ


「自 由 吟」        石上  俊枝
新米の湯気に苦労の汗消える  静 岡
嫁姑役者見ている我が息子
コップ酒一期一会で盛り上がる
猪口も手も胸のバリアも眠くなる


「自 由 吟」        堤坂 まさえ
アドレス帳もっと探せと芋のツル  静 岡
栗をむく二時間ドラマけりがつき
桃太郎洗濯機から飛び出した
神様が留守だ大いに楽しもう


「まつりごと」        松橋  帆波
食の安全を言うと残飯が笑う     東 京
背景は平和ではない平和賞
戦争を知らない居酒屋のホッケ
昭和史が苦手で困る金バッヂ


「霜  月」        増田  信一
温暖化半袖裸足霜月に        焼 津
霜月も季節の色が薄くなり
霜焼けも皸無い霜月に
干し柿も汗を掻いてる霜月に


「  手  」        中田   尚
人の手に癒されてまた使われる     浜 松
不運しか掴んでいない手が二つ
白い手がハートに触れて助けられ
票つかむでかい右手が肩透かし


「  秋  」        林  二三子
色づいた森に流れる秋時間       芝 川
トンボ見つけ思わず指を立ててみる
黄金色の棚田芸術品に見え
渋皮煮じっくり煮てる秋夜長


「自 由 吟」        藪ア 千恵子
特売の鮭の切身が薄すぎる       焼 津
勢いに釣られて奢る羽目となり
懐メロが青春の日々誘い出す
登下校見守っているボランティア


「約  束」        石田  竹水
老い先は聞くなよ俺はまだ米寿   静 岡
有り得ない事が地球に起きている
青空に平和の鳩が黒過ぎる
五分前約束守る人だった


「還  暦」        小野  修市
定年へ支えた妻の手弁当        静 岡
還暦の疲れが溜るが金はない
年金をあてにしていたお人好し
六十と言えども若い夢も見る


「普通のサラリーマン」   今井 卓まる
昇る陽にタイマーかける沈む時    浜 松
いわし雲ツマミ食いしてサボる午後
飲むだけと言ったじゃないの嘘つきね
おむすびに混ぜた黒ゴマ呪文あり


「東   京」        川村  洋未
皇居前ビルに輝く月静か      静 岡
浅草のレシートが出る土産買う
青い目と交番さがす雷門
地下鉄を乗り継ぎ雨と知恵比べ


「キ  ス」        谷口 さとみ
おはようもおやすみなさいもキスで言う 伊 豆
気持ちいいことは気の合う人とする
ひっそりと歳だけふえる誕生日
キスだけは喧嘩中でもしようよね


「秋 の 音」        真 理 猫 子
指揮者だけ笑顔で踊るシンフォニー   岡 崎
冬枯れの夫婦いろりの火は熱く
のこぎりを引く我慢したこと数え
落ち葉踏む音イタイイタイヨサヨウナラ


「ロータス」        山口  兄六
ハリケーンその真ん中にいるオバマ   足 利
フル稼働させる失恋洗濯機
悲しみをためて映画を見て泣こう
言い訳は無用ごめんで事足りる


「鮎友釣り三昧・・・其の二十六」永田 のぶ男
鮎絵皿いつも一緒に泳いでる      静 岡
香の鮎をしばらく焼かず皿の上
焼き鮎に猫もうっとり足竦む
塩焼きの鮎は笑顔か泣き面か


「悪 い 癖」        長澤 アキラ
触りたい所にバストが付いている    静 岡
午前二時妻を騙したドアを開け
募金箱 素通りできぬ悪い癖
誰にでも傘を差し出す悪い癖


「ご 時 世」        川路  泰山
山吹の花が似合いか議員さん       島 田
兜虫ばかり集めた組閣だな
投資家の闘志乱れる乱降下
皺寄せの波に呑まれる蟻の列


「マドンナ」        多田  幹江
マドンナにカーブ投げ合うエイジング 静 岡
姫老いて緩いカーブにひっかかり
宴更けて元マドンナの肩を揉む
塩漬けの夢食べ頃をとうに過ぎ


「白い旗と帆」       池田  茂瑠
大まかな妻で女が欠けている    静 岡
白旗の白は染めずに残します
頷いて去る背に白い帆を貸そう
過脂肪の妻の背後で生きてます


「淡  心」        佐野 由利子
だんだんと趣味でなくなる趣味の会   静 岡
謎ひとつ方程式にない答え
人間の脆さを隠す頬っ被り
好きなのに反発ばかり淡心


「気が弱く」        高瀬  輝男
また妥協悔いているのはパンの耳    焼 津
陽が沈むその一ときの走馬灯
効用書なるほどよくも調べたな
雑草の生きる権利を奪っちゃった


「山の便り」        望月   弘
前略で猪が出ますお大事に       静 岡
ふるさとは硲で隣り呼んでいる
美しい国です水に戻したい
矍鑠に猪突猛進だった傷


「十 二 月」        加藤   鰹
ぬる燗がいいねお酒も抱擁も      静 岡
半額になるまで君のこと待つよ
白い息吐いてあなたが駆けてくる
冬銀河そうっと肩に手を回す


「沸   く」        柳沢 平四朗
つるべ落しへ甘い妥協を強いられる 静 岡
自惚れがKYの眼に届かない
陽だまりのベンチへ沸いている徒党
天引きがポックリ寺へ愚痴を塗る

虎竹抄 | Link |
(2008/12/25(Wed) 15:33:01)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「た め 息」        谷口 さとみ
靴ひもを結ぶと用を思い出す      伊 豆
残しても食べても悔いるバイキング
一張羅さえ十年は着ていない
窓を拭くあなたの居場所見えるまで


「自 由 吟」        真理  猫子
しぶ柿のままで初恋そのままで     岡 崎
境界を引いた後ろは崖っぷち
やさしさも時には風邪をひくらしい
引力の強いぐうたら星にいる


「乗 り 物」        濱山  哲也
エレベーター乗ってるときは宇宙人   青 森
エスカレーター乗ってるときは肥満体
観覧車乗ってるときは迷い人
手の平に乗ってるときは恋インコ


「破 れ 傘」        柏屋 叶志秋
雨止めばリストラされる破れ傘     山 形
最期には人も秋刀魚も骨になる
黒豆を煮る火加減の愛がいい
水溜まり一つ一つに月がある


「時 事 吟」        松橋  帆波
談合の配電盤が美しい         東 京
連休が商店街を過疎にする
国会で目糞鼻糞言うている
文明の利器自殺者を減らせない


「秋 の 蝶」        真田  義子
足早に秋が流れる交差点        仙 台
恋をして蝶に変身する私
幸せな隙間に絡むくもの糸
カーテンコールそして私は蝶になる


「コスモス」        鈴木 恵美子
また逢えたコスモスといる秋ですね   静 岡
ほほえみを返してくれる秋桜
コスモスよそろそろ別れのときが来る
コスモスの群生愛は限りなく


「政  界」        岡村  廣司
国会にレッドカードが無いなんて    焼 津
長寿国なのに大臣短命で
ポリシーは無いが反対だけの党
総理まで派遣勤務になったとは


「カスミソウ」       大塚  徳子
大臣の口にあてがう猿ぐつわ      仙 台
もろもろを水に流して人許す
華やかな頃の余韻で生きている
そっと咲きそっと散りたいカスミソウ


「自 由 吟」        寺脇  龍狂
椰子の島安いから行くハネムーン    浜 松
御祝儀の足りない分は歌を書き
ダイヤモンド捨ててみたいなゴミ出し日
三千本打って見送る栄誉賞


「禁  煙」        成島  静枝
禁煙中茶の間の空気旨くなる      千 葉
木鋏が手持ち無沙汰で切り過ぎる
本気かもタスポ捨てたらファンファーレ
煙草屋のダンナ売り物吸ってない


「食  む」        藤田  武人
飴効果知名度一位金太郎        大 阪
ドラキュラもメタボトマトでダイエット
父の膳いつも一品多かった
晩ご飯食べに通ってくれたひと


「女 た ち」        栃尾  奏子
ジャジャ馬な愛と葛藤する少女     大 阪
だきしめて儚くもろいから強く
母さんは黙ってお茶を入れ直す
内緒事おんな共有して平和


「蛇・猫・咳そして眼」   戸田 美佐緒
蛇というだけでピストル向けてくる   さいたま
日当りの良いほうへいく猫の髭
幸運を引きよせ咳が止まらない
口ほどに物を言う眼に狙われる


「私 と 貌」        竹内  さき
耐え抜いた口紅外の風をよむ     浜 松
コーヒーをどうぞ私へ風うごく
うす化粧して風と出る街の中
そして気がつく人間の貌となる


「ゆっくりと」        増田  久子
柿八年その柿の実が一つ成る       焼 津
ダイヤルのゆっくりがいい黒電話
骨密度年相応という不安
お早うでいいかな午前十時半


「老の朝と昼と夜」     金田 政次郎
素晴らしい老人介護神話だな      静 岡
日だまりに捨てて在るのは俺の影
ジグザグと陽気に渡る丸木橋
酒や良し小皿程好い音で鳴り


「  朝  」        鈴木 千代見
朝なのに愚痴くずかごにポイと捨て   浜 松
朝の活気トイレが二つ感謝する
妥協した朝はどんより曇り空
再会に心に糊をきかす朝


「帰  省」        芹沢 穂々美
ガソリン代先に渡して帰省させ     沼 津
年取らずにジーパンはいて帰省する
川で泳ぐそんな時代の少年期
青くさいトマト畑の淡い恋


「未  熟」        提坂 まさえ
この家も熟したなあと床軋む      静 岡
私こと熟年ですが未熟です
キッチンで熟睡をするメロン様
一行のメール熟読雨あがる


「熟しどき」        萩原 まさ子
機は熟しニートが空へ飛び立つ日    静 岡
柿熟れる頃渋い顔見せる医者
熟しどき時間ではない両想い
ごめんねが言えず気遣い豆々と


「完  熟」        石上  俊枝
シューベルト聞きつ眠っているワイン  静 岡
完熟の我が娘まだ嫁き遅れ
熟す歳 角も年々丸くなり
共に生きカラスに残す熟し柿


「自 由 吟」        伊藤  泰史
熟読は無理だ女の恋心        静 岡
サンマなら秋が一番おいしいな
鬼は外だから世の中鬼の群れ
今一度あの日の君に会いたいな


「運 動 会」        毛利  由美
天気図が語る運動会日和        つくば
バズーカ砲かかげ我が子をビデオ撮り
玉入れにPTAは策を練る
フォークダンス喜んでいるのは外野


「  本  」        山本 野次馬
死ぬまでは本音が言えぬ腹八分     函 南
引き潮に本音ポロリとぼろを出す
本物になろうと深海を覗く
本心を捨てる樹海のど真ん中


「絵  馬」        酒井  可福
張り込んだ絵馬に多少の期待掛け    北九州
どの絵馬もお願い頼む悲壮感
神様も本気になれぬ絵馬ばかり
神様を笑わす一句絵馬に書く


「灯火親しむ」       川口   亘
助動詞や副詞一字で気を変える     藤 枝
書き印るし残せるだけの歌を書き
思い出を絵にする迄に手間をとり
いい話タンスの奥で眠りこけ


「老 眼 鏡」        安田  豊子
後期高齢などと勝手に言うお上     浜 松
あきらめと失う事に慣れました
じっくりと発酵する間ありません
夢捨てず辞書を操ってる老眼鏡


「自 由 吟」        ふくだ 万年
留守と言え電話の向う怒鳴り声     大 阪
ギネスもの妻は元気で長電話
駆け落ちをするほど深い仲じゃなし
あの二人消える順番あるらしい


「趣  味」        薮ア 千恵子
携帯も必要かなと気が変わる      焼 津
雑用に追われ川柳逃げていく
お喋りを楽しみにいく趣味の会
文化祭作品できぬ趣味三つ


「大  空」        馬渕 よし子
ちっぽけな悩みと知った空の青     浜 松
満点の星がロマンを持って来る
大空へ放った夢に兆し見え
大空の下で喘いでいる暮らし


「自 由 吟」        鹿野  太郎
上達の早い月謝に負けられぬ   仙 台
阿久悠に近いセリフを言ったのに
嬉し泣き凭れる中の味噌にぎり
髭のある妻が起死回生の駒


「カ ラ ス」        石井   昇
カアと啼くカラス戦を起こさない 蓮 田
母さんは烏でいいの鵜は嫌い
烏の子帰るお山がありません
黒いことは悪いことですかカラス


「自 由 吟」        内山  敏子
紅葉にひかれ一泊露天風呂    浜 松
叱るだけ叱ってけろり親子酒
あの猛暑いつか忘れて冬支度
飼い主を引張り散歩させる犬


「ステージ」        薗田  獏沓
歌手になるステージ夢に皿洗い 川根本町
ステージへ花を贈って盛り上げる
将来を任せる弟子の初舞台
迫真のステージ涙そそる席


「  枕  」        鈴木 まつ子
一湾の波を枕に旅はるか        島 田
折り紙が笹舟になる箸枕
新婚の甘さすっぽり腕まくら
親を看る祈りをこめた水枕


「医療検診」        畔柳  晴康
サア検診不安が先で身が震え    浜 松
採血で添えた白衣の手が温い
内視鏡歳はとれどもなかピンク
検査すみアトは欠伸と背伸びする


「も み じ」        小林 ふく子
早すぎる秋を覗いてみることに 袋 井
皆に会う命燃やしているもみじ
小春日にもみじやさしく地に還る
来年の約束しよう濡れもみじ


「自 由 吟」        川口 のぶ子
物価高年金者には辛い夏     藤 枝
外出に金の要らない散歩道
物価高横目で睨むだけになり
スーパーを見させて貰うエコバック


「事 故 米」        尾崎  好子
古希すぎて事故米という米を知る   藤 枝
事故米でボロ儲けした金を出せ
買う方も米の善し悪し分る筈
成敗は黄門さまに頼みたい



「秋祭りさまざま」     中矢  長仁
宮出しに子等早起きし駆け付ける  松 山
怪我も出る喧嘩神輿の鉢合わせ
太鼓台勢揃いしてかき比べ
お神輿が海に飛び込み禊ぎする


「雑  詠」        西垣  博司
かけ違いされたボタンの所在なさ   静 岡
長電話同病という赤い糸
マンション化九尺二間をカナに変え
くつ下の穴が窺うシャバの風


「炎  天」        滝田  玲子
蟻の列ぞろぞろ動く炎天下     浜 松
炎天下熟れたトマトが雨を待つ
炎天下日傘まわして愚痴を聞く
炎天下白球を追う甲子園


「雑  詠」        飯塚 すみと
コーヒーの香りの中にアイデアを  静 岡
思考する回路を逆にしてみたら
その日ぐらし大方のひと感じてる
あやつりのサッカーロボット右ひだり


「子に帰る」        瀧    進
脳細胞ひと皮むけて青い空    島 田
脳の皺伸ばし心の若返り
思い出のひと日を綴る老介護
子に帰る笑顔の老母は慈母観音


「秋 の 色」        加茂  和枝
きっと来る寒さに種が実ります    岩 沼
秋色に心と体嬉しそう
秋満載少し遠くへ足運ぶ
体だけ元気で実り手に残る


「雑  詠」        中安 びん郎
リハビリへ行ったお陰で友が出来  静 岡
リハビリで知った性善説の人
リハビリで日増し好くなる足と腰
原油高松根油でも掘りましょか


「自 由 吟」        恩田 たかし
七五三喜ぶ娘微笑まし         静 岡
仕事料あれよあれよと泡と消え
今日も又ラジオに送るネタ探し
新たなる事にチャレンジ秋の空


「  赤  」        森下 居久美
記念日を語らっている赤ワイン     掛 川
赤点を見せられた日の偏頭痛
ボジョレーの旗ひらひらと赤とんぼ
待ち受けは君にもらった赤いバラ


「自 由 吟」        中田   尚
前前とあせるメガネを持っている    浜 松
よく転びカルテメタボにさせるだけ
しもやけの手にまず冬が降りてくる
善人か まず赤ちゃんに仕分けられ


「雑  詠」        林  二三子
親のエゴ背負い塾行く子が暗い     芝 川
親の背が見えれば子らも迷わない
無欲の汗額に被災地で励む
枝整え冬に備えてお礼肥え


「暮 ら し」        堀場  梨絵
淋しさはこの鳩尾に埋めてある    静 岡
馬上ゆたかに風よけの夫だった
編みかけのマフラー風が追いかける
運命は神にさからう足袋はだし


「丸 ご と」        石田  竹水
こつこつと耐えてそのまま石になる   静 岡
お月さん丸ごと食べます十三夜
物言いは聞かない夫婦四ツ相撲
ジャンケンの鋏が人情切り捨てる


「雑  詠」        西垣  博司
余命の差女房はまだ紅をひき      静 岡
毒舌をたしなめている喉仏
大恐慌知るや知らずや蟻は這う
舞台からとび降りて買う秋の旬


「自 由 吟」        長澤 アキラ
楽焼の肌に命を染めあげる       静 岡
良心の転がる音が絶え間ない
対岸に今も聞えるわらべ唄
自分史の最後を飾る紙オムツ


「  空  」        中野 三根子
青空に見上げる虹のかけた橋     静 岡
こんなにも青空が好き君が好き
秋空を一人ながめるいわし雲
時々は秋空みつめ考える


「没句に日の目」      川村  洋未
目が見えて歩けるならばバリバリさ   静 岡
一、二食食べなくたって働いた
スケジュールあればあったで尻重く
男の野心見きわめて乗る女


「鮎友釣り三昧・・・其の二十五」永田 のぶ男
一杯をやるまい鮎の寿司の山      静 岡
指定席話の弾む鮎の会
赤ら顔意気投合の鮎仲間
酔う程に天下泰平釣り頭


「神 無 月」        増田  信一
神無月一年全部神無しだ        焼 津
神無月お宮参りは無駄骨か
神無月お頼みします仏様
神無月関係ないね無神論


「紅葉前線南下中」     高橋  繭子
震災に負けるものかの秋祭り      仙 台
デスティネーションキャンペーンおらほさ来てけさい
着ぶくれて何やらおかし秋の暮れ
夏はもう一年後ですご自愛を


「凡 夫 婦」        多田  幹江
俺さまの肩もなだらになって秋     静 岡
ふたりならクモの巣城も悪くない
ありがとうは食えないなんて言わないの
飲み食いの祭りのあとのとばっちり


「自 由 吟」        小野  修市
となりより伸びきたカキを味見する   静 岡
仕事をば敵のようにつっぱしり
神無月でも家に居る山の神
意地を張り目ん玉むいて損をする

 
「自 由 吟」        今井 卓まる
月明かり冴えない色気二割増し  浜 松
妻の年若く間違え上機嫌
僕の趣味彼女が変わりまた変わる
意味もなく愛という字を二度なぞる


「定 年 後」        佐野 由利子
よい便り郵便やさんありがとう    静 岡
簡単に他人に添わぬ太い眉
人込みを猪突猛進母が来る
反骨がいやに素直に定年後


「ク ッ ク」        山口  兄六
秋刀魚サンマ小骨で母を思い出す    足 利
秋味のビール夜長のお友だち
マイホーム蝉が消えたら秋の虫
NG大賞は君へのプロポーズ


「  鴉  」        川路  泰山
夕暮れの街で啖呵を切る鴉       島 田
一本が足らず烏は黒のまま
鵜の真似も出来ず烏は群をなす
弁証法烏も迷う無精卵

 
「妻の構図」        池田  茂瑠
風上の陣を有利に使えない    静 岡
妻の引く構図も影が多かった
花のない小枝つないで逢いにゆく
悔い残る赤い踵の高さだけ


「自 由 吟」        高瀬  輝男
黄菊白菊多彩な秋のプログラム     焼 津
飲食の舌にも水の美味が染み
目の前で回れ右する青い鳥
歌姫も時勢に勝てぬ歌謡曲


「  秋  」        望月   弘
女から体重計から睨まれる       静 岡
ビールから酒へ気転の妻がいる
稲を刈る父が枯葉をくちずさむ
ふるさとの秋デジカメを呼んでいる


「晩  秋」        加藤   鰹
雲に乗る話に乗ろう酒追加       静 岡
ご意見はもっとも鼻毛出ているよ
ワインより赤い貴方の嘘に酔う
サヨナラの向うは深い深い闇


「自 由 吟」        柳沢 平四朗
忠告は父の昔が底にある     静 岡
脈のある間は明日を揺り戻す
秒針は杞憂を敵にして進む
影法師も皺くちゃだから振向かぬ
虎竹抄 | Link |
(2008/11/25(Mon) 14:28:38)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「夏 の 宵」        成島  静枝
七夕の飾り怪しい空模様        千 葉
カラオケの舞台人待ち顔の昼
ガソリンが足を引っ張る遠花火
裏方へおばけいそいそ盆踊り


「赤トンボ」        大塚  徳子
世の中が歪んで見えた赤トンボ     仙 台
物価高レジで目玉が回り出す
蒲焼は食べずに済ます妻用事
買い控え丁度良かったダイエット


「残  暑」        金田 政次郎
天高く澄み望楼に人見えず       静 岡
天窓を開ける麒麟の住む我が家
残された私の靴と違う靴
一枚の最後のパズル妻が埋め


「先  生」        寺脇  龍狂
先生がセンセイ並みに見えてくる    浜 松
先生が黙って休むこともあり
衣食住みんな油の使いすぎ
立ち退いた村へ要らない泉湧き


「夏の太陽」        加茂  和枝
あの人を許して空は夏になる      岩 沼
ライバルは必要でした今日の汗
有難い自分ひとりで咲けぬ花
灼熱の太陽浴びて生きている


「雑  詠」        石井   昇
カリスマの体内時計進みがち      蓮 田
石蹴って好い日と思う日和下駄
万物流転ひと爭って澱む
覇者の剣所詮うたかた土となる


「節約生活」        毛利  由美
小さいともう言わせないエコライフ   つくば
節約の一端になうMサイズ
お買い得品でまかなう成長期
買いだめをきちんと使い切る努力


「  火  」        薗田  獏沓
政爭にももみくちゃになる聖なる火   川根本町
全力で火を煽る人疎外され
それなりに身を整えて火を鎮め
神様の示す道だが火が見えず


「満  足」        岡村  廣司
思いきり汗を流した満足感       焼 津
満足な顔で昼寝の大連休
腹八分ほんとにそれで満足か
平凡に生き長らえた満足度


「極  暑」        川口   亘
先ずこれが本音と見せた嘘も有る    藤 枝
書き損じ許されないでいる清書
もっともの話と云って気をもたせ
効果など出ない内から気が萎れ


「雑  詠」        川口 のぶ子
泣きじゃくる幼の顔に玉の汗      藤 枝
扇風機一人じめして風邪を引き
くもの巣にあそばれている私
屋根の上眞赤な夕日が落ちてくる


「自 由 吟」        竹内  さき
夕暮れて人影恋し湖畔の灯       浜 松
棘抜いたバラひっそり買うピアス
日が暮れてポックリ高く古都の秋
コーヒーも熱く両手にほっと秋


「迷  い」        安田  豊子
焦る程迷い言葉が浮かばない      浜 松
戸惑った隙に突かれた肚の虫
聞き耳を立て逃さない噂好き
戻れない迷路あなたと組むプラン


「雑  詠」        滝田  玲子
プライドはあるが老化が邪魔をする   浜 松
嘘少し混ぜた会話が盛りあがる
大正のロマンに生きた夢二の絵
低迷のドアをノックの風の音


「リハビリ」        畔柳  晴康
一歩二歩胸張り手振る試歩の足    浜 松
リハビリは痛さ苦しさ汗までも
痩せ我慢男の意地は未だ捨てぬ
足の怪我癒えて正座に笑みこぼれ


「食 い 気」        鈴木 まつ子
腹の虫鳴って困った会議中       島 田
腹ペコでみな平らげる回復期
それとなくすぐ手が伸びるつまみ食い
色気より食べる生きがい通になる


「迷  う」        鈴木 千代見
回転すしながめていたら取りそびれ   浜 松
雨の日の受話器持つ手が落ち着かず
あの時の選択中の暮らしぶり
神様の目を引くような派手な絵馬


「おはよう」        内山  敏子
朝が来るそれは明るい家庭から     浜 松
おはようのリズムで朝の歯をみがく
おはようが今日一日を左右する
おはようが駆け抜けてゆく通学路


「飲  む」        芹澤 穂々美
大ジョッキ持つ手の重み憂さ晴らし   沼 津
裏切られ思いきり飲む赤ワイン
梅酒まで見くびっている空財布
焼香のけむりで人が消えてゆく


「雑  詠」        ふくだ 万年
お父さん飲み屋じゃ何時も社長さん   大 阪
気に入りのスカート穿く為筋トレを
くだらない事覚えている枯れた妻
メタボ腹逝く時スリム気にしない


「お元気で」        中矢  長仁
落し穴低カロリーも食べ過ぎりゃ    松 山
対策さメタボと言われメジャー買う
取り柄です元気に口の利けるのが
妻元気夫を連れて散歩する


「実  る」        小林 ふく子
実りまで大器晩盛の日を過ごす     袋 井
なす実り嫁と姑が奪い合い
十五夜の今年の実り味見する
それぞれの色に化粧の実がたわわ


「入  院」        寺田  柳京
痩腕のわずかしかない血を採られ    静 岡
点滴の一つ一つの命かも
頼母しく見る看護婦の鼻の孔
罅入りの甕の命をいとおしむ


「た め 息」        新貝 里々子
敗戦忌ため息を消す蝉しぐれ   袋 井
エアコンがあってよかったこの暑さ
エアコンを利かせ地球を考える
大袈裟なため息暑さ頂天に


「大吉の日」        増田  久子
ありがたくまず通される台所  焼 津
中ジョッキ仰向くほどもなく干せる
この家の黒猫あぐらだけ狙う
生まれつきです鼻声という長所


「体  操」        濱山  哲也
ライバルとジャンプボールを奪い合う つがる
得意先前屈ばかり繰り返す
残業に酒にカラオケ右左
ピン札の匂いを嗅いで深呼吸


「青 い 空」        真田  義子
青空を写す鏡を持っている  仙 台
青空を残してくれて逝った人
この道をずっと行きたい青い空
新しい気持ちで歩く青い空


「おばけU」        西垣  博司
視聴率おばけをねらうディレクター  静 岡
柳の木さがしておばけ棒の足
すっぴんが化けて鏡をあとにする
ギャル化粧おばけ以上に怖くなり


「男を縛る」        戸田 美佐緒
個性派を揃えてラッパ狂い出す   さいたま
あらそった朝には指輪きつくなる
コスモスの這いつくばって生きている
手に残る男を縛る赤い紐


「  嘘  」        馬渕 よし子
嘘ついた口だ何度もうがいする 浜 松
身を守る嘘がだんだん上手くなり
美しい嘘で希望をまた持たせ
恋多き女の涙に味がない


「自 由 吟」        山本 野次馬
蝉しぐれ今を生きろと励まされ  函 南
壇上の声が庶民に届かない
お人よしそれでも人を憎めない
野に降りてやがては土になるつもり


「  線  」        井口   薫
線引きが下手でストレス溜めている  袋 井
なぜここに赤線なのか借りた本
白線の内側にいて飛び立てぬ
普通の人が普通の顔で銀座線


「  葉  」        鈴木 恵美子
木の葉みな違った顔を持つ張り絵  静 岡
葉隠れに逢うジョギングの片想い
人生の航路木の葉に乗ってみる
草いきれ有機野菜に励む汗


「夏の思い出」       恩田 たかし
誕生日お寿司を食べて腹壊し     静 岡
もう四日お腹今でもパラダイス
コアリズムしてる妻より痩せる僕
終戦日毎回食べるすいとんに


「自 由 吟」        鹿野  太郎
モンゴルに勝てるほうれん草がない   仙 台
切りのいいとこで猫撫で声がする
友好の太いパイプがすぐ詰まる
フリーターの輪から零れる未来像


「愚  痴」        瀧    進
愚痴の無い亭主も女房物足りぬ   島 田
いゝ嫁も愚痴手土産の里帰り
嫁の愚痴無くて姑出番ない
ライバルの愚痴三昧線がよく響き


「雑  詠」        飯塚 すみと
噛み合わせよく診る医者はどこにいる 静 岡
自分では分らぬ色を妻見分け
スイッチを切ったつもりがまだついて
あちら捨てこちらとろうか花屋さん


「リハビリ」        中安 びん郎
リハビリに伸びた嬉しい試歩の距離   静 岡
リハビリに行くにはいつも杖を持ち
リハビリにとても好くない酒タバコ
リハビリに何時か大勢仲間出来


「雑  詠」        山田  ぎん
つばめの子大口そろえ親を待つ   静 岡
花が咲き水をやってる老日か
女の子大きな目をして口も開き
散歩道花を摘み摘み仏壇に


「夏の落とし物」      栃尾  奏子
太陽の死角で胸をときめかす      大 阪
熱帯夜彼女は人魚だったのだ
さよならを告げられてから向日葵に
交差点フワリおんなじアクセント


「息子よ…父よ…」     藤田  武人
平等に育てた筈の好き嫌い    大 阪
歓声に伸びる白球弧を描き
変わらない青空待っている田舎
知らぬ間に追い越していた父の背な


「白  髪」        酒井  可福
人は人 白髪羨む禿頭     北九州
妻だけは禿げずに白く居てほしい
五十路坂日に日に増える共白髪
玉手箱程のご利益ない白髪


「言 い 訳」        塚本  寄道
ボクがウルトラマンだった頃の話    長 泉
満腹になってもすぐに腹が減る
テスト後言い訳ばかりしたくなる
踏まれても負けるもんかと伸びるバネ


「雑  詠」        藪ア 千恵子
この暑さ脳の回路が停止する      焼 津
良い事があって素直な耳でいる
アメリカの学校に五年生の孫
宿題も英語できます四苦八苦


「楽しめよ」        石田  竹水
水掻きが無くて世の中泳いでる     静 岡
人間に揉まれて孤独楽しめる
憎まれているのも生きている証
敗北は認めていないから長寿


「夫  婦」        山口  兄六
どちらからキスをしたかでばれる嘘   足 柄
手を握り二人子供の顔になる
デジタルの時計妥協は許さない
いつも待ちいつも待たせる腕時計


「蜃 気 楼」        真 理 猫 子
気温より少し低めの嘘を吐く      岡 崎
煙突から後期高齢者の叫び
何事もなかったことにする鞄
不自由な理性が写す蜃気楼


「雑  詠」        林  二三子
覚めないでほしい楽しい夢だから    芝 川
足腰は痛むが口はまだ元気
山一つ崩して郷が都会めき
もっとエコしろよと地球動き出す


「猛  暑」        小野  修市
デブ腹が夏の温度をもっと上げ     静 岡
デブの息車の窓をくもらせる
この猛暑妻ドタドタと元気良い
熱帯夜忘れしばしの花火かな


「猫じゃらし」        多田  幹江
おばさまを思い出せない犬が吠え    静 岡
白星をつけると咽ぶ窓の月
ハンガーが足りないひょっとしてカラス
老春の陽だまりに咲く猫じゃらし


「鮎友釣り三昧・・・其の二十三」永田 のぶ男
釣れた鮎タモに入れると西瓜の香      静 岡
趣味の会囮と酒を持ちきれず
落ちつかぬ河川の工事気もそぞろ
来年の予想占う下り鮎


「葉  月」        増田  信一
雑草の生き様を見ろもやし君      焼 津
旧盆が分かり始める年になる
葉月です雑草取りに四苦八苦
甲子園汗と涙にかぶりつき


「エコかな?」       川村  洋未
長雨でたまった過去を整理する     静 岡
ゴミあふれ世界遺産は遠い富士
身の丈にあった車で無事故です
ほめまくりかたづけさせてエコ教え


「思いきり」        中野 三根子
思いきり笑ってしまう母の前      静 岡
思いきり泣いたら朝が美しい
思いきり飲んだらすべて忘れてる
思いきり食べてしまったああこわい


「金  魚」        佐野 由利子
目覚ましは数十匹のセミの声      静 岡
反論はゆっくり咀嚼したあとで
根性があって勇気の無い男
祭りの夜買った金魚は三日間

「夏まつり」        谷口 さとみ
秘め事をひとつ探しに夏まつり  伊豆市
口止めを目配せでしてすれ違う
戻れないだから尺玉哀しそう
アセチレンガスと一緒に終える夏


「自 由 吟」        今井 卓まる
通院の皆勤賞は自慢なの   浜 松
大儲けないが大損とも無縁
裏切りを朝まで待てずキーを挿す
仕方なしソーメンすする初夜の箸


「死  角」        池田  茂瑠
感覚の乏しい視野に花が散る  静 岡
後ろ髪引くのは狂う風ばかり
悪ならば死角の鬼が売ってます
厚底に時代遅れの足はめる


「  雨  」        川路  泰山
霧雨の中で漢を確かめる  島 田
運不運凌ぐ手のない逆さ雨
茫々の野面を敲く戦雨
大河相承残夢の中に漢一人


「自 由 吟」        高瀬   輝男
夢があるから人間として生きる    焼 津
頃合いへ愚見一つを進呈す
尻尾まで変身なんて出来ないな
上手だな喜怒哀楽の猿芝居


「ビールの季節」      望月   弘
百日花大人の恋を稔らせる       静 岡
風鈴をうるさく聞いて熱帯夜
太陽もそばかすがある気にしない
男だな小便小僧オトコだな


「自 由 吟」        加藤   鰹
引き抜いた釘が造反組になり      静 岡
未熟者だな未熟さに気づかない
自分へのご褒美だとさパスポート
タバコ税アップいじめはやめたまえ


「西  日」        柳沢 平四朗
追憶の手でむしってる夏の草   静 岡
歪んでいる靴で西日を蹴っ飛ばす
用意した篭を嫌った青い鳥
秒針は杞憂を敵にして進む


虎竹抄 | Link |
(2008/09/25(Wed) 09:40:13)

自 由 吟
  虎 竹 抄



「蜃 気 楼」        戸田 美佐緒
風向きが変われば消える蜃気楼     さいたま
石を蹴る石の行方は語らない
正解が浮かんだ夜の洗面器
恥かいてかいて林檎が熟れてくる


「カナブン」        大塚  徳子
物価高元気なくなり死にかける     仙 台
もしかして食べ残しかもAランチ
近頃は大人隠れて悪さする
侵犯かカナブンブンが行き来する


「自 由 吟」        竹内  さき
つゆの雨あれは涙か失恋か       浜 松
夕顔が匂う君の名呼んでみる
でんと赤い夕陽の向こう見たくなる
ふる里の森平泳ぎするロマン


「平成二十歳の夏」   濱山  哲也
夏だから稲川淳二ショーが来る     つがる
草などに負けてたまるか溶き卵
二十歳だが平成とても疲れてる
似合わなくなったTシャツまた一つ


「近況報告」        毛利  由美
雑草と同じ速度で成長期        つくば
お馬鹿な子に夢を持たせるお馬鹿キャラ
せーのーで梅雨の晴れ間に布団干す
抜歯して知る血の味は鉄の味


「雑  詠」        石井   昇
嘘っぽい顔でならんだ握り飯      蓮 田
半煮えの鍋で議論をする豆腐
薄墨の心に白い月が出る
浮雲の流れる果てや曼珠沙華


「性  分」        岡村  廣司
市役所へ入るときょろきょろしたくなる 焼 津
銀行へ入るといつも萎縮する
病院へ入ると何故か落着かぬ
警察へ入ると水が欲しくなる


「ちゅら海」        栃尾  奏子
蝋燭がユラリ私の過去未来       大 阪
踏み込めぬ溝に流れる親の愛
ちゅら海よ心洗濯しに帰る
切なさを抱いて少女の羽化間近


「  海  」        小林 ふく子
約束の海には少し遠い足        袋 井
海と会い無色の水になっていく
気晴らしに海へ心を預けます
夏の海人食べたいと言わないで


「家  族」        鹿野  太郎
ぎっちりと昭和が詰まるI・POD   仙 台
やけくそで鳴く日もあろう雨蛙
フィアンセと重い御輿を担ぐ父
玄関の前に消えない水溜り


「暮 ら し」        新貝 里々子
あれそれのあれがあれからないのです  袋 井
そば枕安定剤も切れました
バリアフリーの家で足あげ体操
妻という季節外れのからっ風


「祭  り」        塚本  寄道
お祭りの道路に並ぶ宝箱        長 泉
友と行く夜店ワクワク夏祭り
夏祭り同窓会になる夜道
塾帰りビルの谷間に見る花火


「雨 の 日」        芹沢 穂々美
雨の日は間違い電話さえ来ない     沼 津
昼から雨たっぷり充電できました
愚痴よそう雨の日ぐらい笑いたい
雨音に予定を変える日曜日


「雑  詠」        鈴木 恵美子
精一杯派手に泣いてるボクといる    静 岡
ポケットにアメ年だなと苦笑い
ダイエットしてよと膝に攻められる
昨日春今日は夏日と着ては脱ぐ


「雑  音」        馬渕 よし子
聴診器不平不満をまた捕え      浜 松
雑音が消えて孤独を噛み締める
雑音の中で闘志が燃え上がり
雑音と思って妻の愚痴を聞く


「警  告」        井口   薫
パソコンがまたオーナーに警告す    袋 井
スニーカーの底が警告する歪み
警告がずらりと並ぶ説明書
クリックを躊躇承諾書の厚さ


「亡  父」        酒井  可福
改心の涙で研いだ父の魂        北九州
物言わぬ遺影の父が返す笑み
結果論育児放棄の父である
かあちゃんに詫びろと言って酒をかけ


「雑  詠」        成島  静枝
カタカナ語メタミドホスは載ってない  千 葉
思い出すことで報いる母の恩
留守にするキッチン二泊分磨き
ご褒美に働き蟻に買う新車


「  数  」        安田  豊子
失敗の数だけ夢をふくらます      浜 松
未知数に挑む私の生命線
つまづいた石を数える余命表
付き合いの陰に隠れる嘘の数


「雑  詠」        滝田  玲子
世渡りのノウハウ学ぶ縄のれん     浜 松
満月のロマンを過去にする宇宙
晩学の余白に写経しめくくる
のらりくらり口は達者で上手く逃げ


「自 由 吟」        真田  義子
紫陽花がゆっくり咲いて梅雨に入る   仙 台
シナリオの通りに今日も歩き出す
あの時の嘘が今でも光ってる
生きているだけでうれしい今日の空


「ギ  ー」        鈴木 千代見
振り向いて風のいたずら影もなし    浜 松
油切れ人間ドック行かなくちゃ
そっと踏む築四十年だからなあ
送り出し胸さわぎして外に出る


「青  春」        加茂  和枝
春ごよみ農の季節がやってくる     岩 沼
気持ち良い空気が顔を撫でて行く
おとなしい喧嘩相手が気にかかる
たっぷりと今が青春言える年


「オンリーワン」      瀧    進
子を連れて女房無言の里帰り   島 田
父の日は毎日ですと酌をされ
月末の女房神様ほとけ様
「ありがとう」愚妻よ俺のオンリーワン


「長 生 き」        金田 政次郎
三代を生き三代に悔があり   静 岡
閻魔から催促が来た読み捨てる
お詫びして娑婆の片隅借りてます
自らと向き合う弱さ蝉しぐれ


「自 由 吟」        内山  敏子
寄り添いて心遊ばすコンサート  浜 松
コンサート足からやって来る冷気
誕生日明日から後期高齢者
級会おしゃべりの種どっさりと


「無  情」        鈴木 まつ子
人の逝く静寂無情の雨が降る  島 田
無情にも家族置き去り許されぬ
脛齧り情け知らずな子に育ち
今更と根掘り葉掘りとおせっかい


「気 休 め」        山本 野次馬
一時の笑いが気休めを誘う      函 南
念じてる気休めなんて脆い物
カラカラ喉からわめく常連語
有頂天煽てた脳へサロンパス


「区 切 る」        薗田  獏沓
激動の昭和戦争で一区切り     川根本町
街の灯の悲喜それぞれにあるドラマ
先代と区切りをつける三代目
喜寿米寿白寿と区切るよい讃辞


「自 由 吟」        ふくだ 万年
小走りで試食に並ぶツアー客  大 阪
後ろから嫁が糸引きジ・エンド
嫁の部屋時々ノックして暮らす
席ふたつひとり占めしてひとり旅


「実  感」        川口   亘
暫くはそっとしてねといい笑顔  藤 枝
云うことにこと欠いて知る付け焼刃
仕草だけ追って道理に近づける
揚げ句には出来ないことで音をあげる


「自 由 吟」        寺脇  龍狂
あじさいがうるさい程に路に咲き   浜 松
父の日も戦争ぐらいに忘れられ
スピードでもしも負けたらどなんしよう
蝸牛見えぬ葉陰に季語が泣き


「法  事」        畔柳  晴康
読経する僧侶片手で汗ぬぐう    浜 松
大伽藍木魚すずかぜ孫眠る
法話聞きあとは包んだ金寄進
法要を済ませヤレヤレ軽い肩


「  春  」        川口 のぶ子
暫らくは春と云う季に遊ばれる    藤 枝
夢うつつのどかに春の息を吸い
そっと手に抱いた春から空を見る
手拍子が春と遊んでさくら堤


「しりとり川柳(避暑)」  中矢  長仁
梅雨明けの猛暑になった避暑に行く 松 山
避暑に行く場所は我が家の霧ケ峰
霧ケ峰冷房病で点けられぬ
点けられぬクーラーせめて風送る


「幸  せ」        中安 びん郎
幸せになるには欲を無くすこと   静 岡
火星には水があるのか五分と五分
小姓より豊太閣に成り上がる
付き合いは細く長くとよくおごり


「雑  詠」        柴田  亀重
お絵描きも下手で無理だと言う手本 沼 津
箱ばかり残る政治に似てる家
見た目良い悪い仕事と語らない
此のグチを捨てねば妻に捨てられる


「自 由 吟」        山田  ぎん
白内障手術したのでよく見える    静 岡
家の前花が見事に咲き競い
食事前ビール飲んでるいい笑顔
ビアガーデンみんな笑顔でさわいでる


「雑  詠」        飯塚 すみと
盲学校名称替わり偉くなり     静 岡
ミカン買いチョコ買い満足行楽日
しっかりとたたむ癖あり潔癖症
日曜日金魚水替え待っている


「なんだかな〜」      小野  修市
物価高目尻の皺も吊り上る       静 岡
気が多く手ばかり出して空回り
財があり気前良い方まってます
ぬかるみに足踏ん張って生きていく


「孤  憂」        西垣  博司
その先は崖でしかない泣きぼくろ    静 岡
地に這った薄日の中の影法師
障子越しいつかしじまで雨が泣き
とっくりの酒冷えて妻七年忌


「自 由 吟」        恩田  享史
目に見えぬ嘘は必ず暴かれる      静 岡
幸せな笑顔でつくる目尻シワ
複数のビール混ぜると鉄の味
ぐらぐらと思いつくのがグリとグラ


「自 由 吟」        藪ア 千恵子
別腹にする好物が出てギャフン     焼 津
量よりも質にこだわる歳となり
カラフルな旅です梅雨もなんのその
自分にも旅の記念を買ってくる


「七  月」        増田  信一
ラッキーな月だと思い宝くじ      焼 津
真夏でも風鈴吊るし後団扇
文月に恋文出して秋を待つ
短冊に願いを綴る年は過ぎ


「鮎友釣り三昧・・・其の二十二」  永田 のぶ男
水も冷え友の動きも鈍くなる       静 岡
下り鮎群れて仲よく追い忘れ
日は西に動きの悪い群れの鮎
下りでの昔は釣れた尺の鮎


「自 由 吟」        長澤 アキラ
目の中に入れたらやはり痛かった    静 岡
文明の極みであろう湯が沸る
淋しさも脆さも包む馬鹿笑い
おろおろと足音だけが遠ざかる


「旅 の 空」        中野 三根子
地図だけで世界の空へ飛んでみる    静 岡
テレビでも世界旅行をしてしまう
雲の上小さな自分みつめてる
地平線追いかけている旅の空


「雑  詠」        林  二三子
強がりを言ってもやはり年に負け    芝 川
通販で飛び付いた器具部屋の隅
町名が変わって郷が味気ない
友の無事暑中見舞で確かめる


「老 朽 船」        多田  幹江
老朽船軽いものなら積めますか     静 岡
気がつくと空っぽの舟漕いでいた
日が暮れてオムツも眠くなりました
絞られて花のオブジェになりました


「雑  詠」        川村  洋未
一番の笑顔見せるのまだはやい     静 岡
プチ整形心のしみも消え去った
お帰りのお返事ボタンセットする
女です化粧の時間確保する


「茶を入れる」       石田  竹水
尾を振れと尾の無い俺に無理を言う   静 岡
もう一度転べば痛み思い出す
昔ばなしが大好きで茶を入れる
陽は昇るみんなに笑顔振り撒いて


「しっとり」        山口  兄六
しっとりとなついて欲しい雨宿り    足 利
メール内チラッと覗く顔がある
ダメだって言ってもピィと鳴くヒヨコ
脳みそを返して欲しいアツイ夜


「  命  」         中田   尚
点滴が最終章を書き換える       浜 松
見舞い客最終章に長い列
カラフルな管が命にしがみつく
付き添いもシフトを組んで引きのばし


「  火  」        真理  猫子
忘れたい事はくすぶる火山灰      岡 崎
初恋は今も火種を点けたまま
見守っていたい花火もあの人も
陽が落ちて火星へ帰るミニトマト


「自 由 吟」        今井 卓まる
旋律が際立つ今宵機を迎え       浜 松
生業は握手とお辞儀する笑顔
記念日を妻間違え俺女々しい
ぐらぐらと沸きに沸きます原油高


「フォトグラム」      谷口 さとみ
花を撮るふりしてあなた狙ってる    伊 豆
私のシャッターチャンスにいたあなた
リセットのボタンに慣れてない昭和
一枚でくるくるまわる風ぐるま


「  男  」        佐野 由利子
公休日 男はウソを考える       静 岡
生ぬるい男にワサビてんこ盛り
クスクスとラジオ聞いてる独り者
嘘少し混ぜれば手紙上手くみえ


「赤いパズル」       池田  茂瑠
逢う前に赤いパズルの隅を解く    静 岡
討ちにゆく胸の水はけ終ったら
姑使う私がゴミに出した羽根
濃く塗って逢って掴めたものは泡

 
「漢の画譜」        川路  泰山
舌峰に布は着せない表道       島 田
連山を串刺しにして酒肴とす
どこまでを許すか山に霧が降る
山ばかり描いて漢が綴る画譜


「雑  詠」        高瀬  輝男
気まぐれなコント拾った繁華街     焼 津
見え透いているから乗ろう口車
身の程を知らされ冬が尚寒い
華やかな舞台夢見る小銭たち


「ビールの季節」      望月   弘
大切な客かも知れぬ瓶ビール      静 岡
サヨナラに同席しない缶ビール
生ビール進行形の恋がある
地ビールに案内されていくホテル


「自 由 吟」        加藤   鰹
ニイハオと言うかも知れぬこのウナギ  静 岡
総選挙しろよと鍋が吹きこぼれ
ちょいウザい等身大のルミエール
幸せがたじろぐ通り雨が降る

 
「ピ エ ロ」        柳沢 平四朗
福相の血圧という敵を抱き       静 岡
足跡に平伏しない予定表
影法師お前も優柔不断だな
盃の底にピエロが棲んでいる


虎竹抄 | Link |
(2008/08/24(Sat) 13:53:24)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「洗  濯」        鈴木 千代見
帰省する洗濯物も連れてくる      浜 松
太陽を追いかけながらお洗濯
今日は晴れ旅へ心のお洗濯
洗濯機嫁も姑も絡み合い



「自 由 吟」        ふくだ 万年
首の上外して見ればえぇ姿       大 阪
暇だから今日もお医者の梯子する
梅雨ですね嫁と紫陽花七変化
逝く時は傘が無くてもいいらしい



「あじさい」        鈴木 恵美子
紫陽花に内緒話を盗まれる       静 岡
あじさいの季節別れた友を恋い
あじさいが廃墟の庭に咲き誇る
雨の日のペンは静かに燃えている



「雑  詠」        井口   薫
呑み込んだ言葉でメタボ加速する    袋 井
なぜだろう棘抜いてから孤独感
躓くと怒りどんどん遡り
原油高廻転寿司へ自己規制


「ある一日」        増田  久子
調律の日だけピアノの蓋が開く     焼 津
幸運の財布もキャッシュ出てくだけ
大根がこんなに増えたかつらむき
冬ソナの曲とっときのメール着く


「父 の 日」        岡村  廣司
父の日が話題になった事もない     焼 津
父の日もやっぱり被るヘルメット
父の日と日記に書いておいただけ
父の日はビール多目に飲んで寝る


「雑  詠」        石井   昇
さだめなら青空なんか望まない     蓮 田
同じ月見ても泣く人笑う人
沈黙のままでエロスの夜が明ける
はらっても未練目にしむ薄煙り

「  震  」        高橋  繭子
ポジティブなひとは気づかぬ小地震   大河原
中地震みな平等に揺れている
あっという間に引き裂いた大地震
かなしみの数だけ襲いくる余震


「自 由 吟」        松橋  帆波
談合で僕らはみんな生きている     東 京
万歳が好きで羊の無責任
ヨン様の国 日の丸を焼いている
白人がやられりゃみんなテロにされ


「自 由 吟」        提坂 まさえ
タマネギがすきとおるまで第五聞く   静 岡
大荷物幸運いつも入れ忘れ
小雨降るフランスパンをたてて持ち
紫陽花の決めかねている今朝の色


「聞  く」        薮ア 千恵子
片意地の付けが回った肩の凝り     焼 津
しびれ出す足を笑っている正座
一聞いて十を知るには足りぬ脳
ふんふんと聞いて返している自慢

「淋しい日」        金田 政次郎
合歓の葉の眠り羨む不眠症       静 岡
ペタンコの夢で風船伸びている
夕闇に飛ばそう俺の処方箋
仏様休憩室は何処ですか


「梅雨明け」        小林 ふく子
にわか雨濡れて歩いた日の想い     袋 井
雷に次の予定が脅えてる
理由などいらない汗がひた垂れる
夏が来て避暑地の財布喧しい


「聖  火」        成島  静枝
チベットを引き摺っている聖火隊    千 葉
海外じゃトーチリレーと単に言う
政争でもみくちゃになる聖なる火
それはそれオリンピックは楽しみだ


「雑  詠」        萩原 まさ子
赤い糸結びきれずに空を舞う     静 岡
プロポーズあじさい色の返事して
宵宮の小粋な娘豆しぼり
うさぎ小屋だから家族の目が届く

「運  命」        真田  義子
運命で繋がれていた赤い糸       仙 台
淡い恋記憶のすみでまた燃える
ほろ苦い思い出混ぜて飲む紅茶
雨の日の言い訳電話鳴っている


「クロアチアの旅」     新貝 里々子
こんにちわが通じるアドリア海はブルー 袋 井
スクワットの成果城壁登りつめ
夫婦喧嘩 世界遺産の真ん中で
腹いせにド派手なピアスふたつ買う


「雑  詠」        芹沢 穂々美
花結び急いで開けるいい予感      沼 津
踊りすぎ腰痛になるフラダンス
祭りばやし女ごころが乱れます
踊らされ自治会の役引き受ける


「自 由 吟」        寺脇  龍狂
拝啓も時下尊堂もないメール      浜 松
姉が逝き明治は遠くなりにけり
子の噛んだ残り医療がかじりに来
超後期霞食っても生きてやる

「家  族」        塚本  寄道
父と僕悪いとこだけよく似てる     長 泉
じいちゃんの倉に宝がありそうだ
ごまかして甘えてみても母は母
試験前母の小言と焦るボク


「自 由 吟」        内山  敏子
スッピンの化粧忘れた働く手      浜 松
バス待ちへ笑いころげる手話の子等
衝動買い朱に年齢ふと忘れ
ウインドーの程でなかった海老フライ


「一 週 間」        濱山  哲也
月曜日支配者顔でやってくる      つがる
火のようなトラブル水をかけまくる
木の陰に隠れて五時に現れる
週末は幾ら追っても逃げていく


「雨を楽しむ」       中矢  長仁
気まぐれな私アジサイ雨が好き     松 山
雨が好きカエル・アジサイ・蝸牛
夜降って昼は仕事の出来る慈雨
梅雨空も初夏の風物傘を買う

「  窓  」        山本 野次馬
平成の窓で足踏みするラッパ   函 南
産道へ夢いっぱいの窓があく
駄菓子屋の扉にオールウェイズの窓
空っぽの小窓に百彩のドラマ


「初  夏」        毛利  由美
生足の白さまぶしい初夏の候  つくば
序の口の暑さに向かう扇風機
健全な子が塗っている日焼け止め
オープンガーデン見せたい人と見たい人


「小 宇 宙」        栃尾  奏子
店内を心配りで敷き詰める    大 阪
タカイ下駄響く頑固な店の奥
臨月へ妻のまあるい小宇宙
愛のある暮らし始めるエコバッグ


「梅 雨 空」        西垣  博司
貯水槽担いだ雲が居候     静 岡
空に海有るかのように降りつづく
予報ではカサは要らぬと云った筈
梅雨空の一服を待つ屋根仕事


「  風  」        薗田  獏沓
電子辞書晩学の脳かすめ吹く     川根本町
いい風が吹いた僕らも仲直り
涸れかかる詩情微風吹き渡る
この風に乗って幸せ掴もうよ


「  錆  」        安田  豊子
いつまでも錆びた肩書き鼻にかけ  浜 松
錆ついた脳にも消えぬ記憶力
ローカル線錆びたレールを渡る猿
風鈴の渋い音色も錆びてこそ


「自  由」        酒井  可福
ATC気軽に預金が借金に   北九州
耳寄りの話は一歩引いて聞く
どん底に居てもデッカイ夢をみる
ほどほどに大人を真似て叱られる


「メリハリ」        大塚  徳子
野球とや盗んで刺してなんぼやで 仙 台
ガソリンに振り回される四月バカ
モロコシを人と車で奪い合い
昼行燈メリハリつける句読点


「  背  」        鈴木 まつ子
背中にも眼はありますよ読む空気   島 田
背中から漲る気迫芸も冴え
お疲れの背骨を伸ばす呼吸法
人生のイロハ辿って色を足す


「眠  気」        馬渕 よし子
マンネリの暮らし一日眠気差す   浜 松
目覚ましが鳴ると眠気が倍になり
年金が減ってやる気が失せ眠気
飽食に慣れて心地の良い眠気


「自 由 吟」        山田  ぎん
太陽に輝く風車鯉のぼり       静 岡
嬉しさは丸をふたあつ大はしゃぎ
今日こそは勝つと意気込み勇み足
試合無い雨で出来ない空見上げ


「希  望」        畔柳  晴康
高いのは望だけにて身は低い    浜 松
今日も又不出来で終る高望み
雨が降る望ねがいは明日にする
稔らない後期高齢夢ばかり


「さくらさくら」      瀧    進
断ち切れぬ思い未練の花筏     島 田
葉桜になって堤の風を恋う
咲く春も散る春もあり山桜
金さんの桜吹雪に悪も散る


「雑  詠」        滝田  玲子
ながながと未練残した飛行雲   浜 松
句が出来ず焦りエンピツ転がされ
再生紙森の緑にいやされる
角とれた石がやさしい顔してる


「自 由 吟」        竹内  さき
も一人の紅落ちぬ間にカンナ炎ゆ   浜 松
踊ろうよ芸ない影と夜明けまで
入れ替えた私の姿歩幅かえ
暮れなずむ夕焼けの海手をつなぐ


「雑  詠」        飯塚 すみと
朝の廊蛞蝓一匹頭あげ       静 岡
小書店の隅が中二の談話室
朝青龍負ければいいと妻が言う
年になりやさしい方の辞書を買う


「わが家系」        中安 びん郎
わが家系農業が好き土も好き      静 岡
わが家系音楽が好き歌も好き
わが家系のんびり型で長寿型
わが家系胴長短足力士型


「白百合が咲く」      柴田  亀重
鶯が近くで美声梅雨晴れ間       沼 津
連日のシビレ・悪寒のナゾ解けず
幸せに八十越し生かす安定剤
祝長寿支える妻がいる強さ


「自 由 吟」        小野  修市
仕事行く妻に見えない尻尾振る     静 岡
めざわりなメタボも好きさ俺の腹
ポイ捨ての顔が見たくて後を追う
一度だけ信じた そして泣かされた


「日  常」        堀場  梨絵
台本のない演技を今日もしています   静 岡
その先へ待ったをかけるのも日課
がまんしたから今日はごほうびあげようか
矢面に立っても命まだ達者


「六  月」        増田  信一
水無月と何で付けたの入梅に      焼 津
六月と思う暇なくすぐ師走
半年で稼ぐお仕事ありますか
六六六六六唸っていたら梅雨明けた


「自 由 吟」        林  二三子
訪販の罠を見抜ける歳になる      芝 川
身長が年取る毎に減る辛さ
老化かな許せることが多くなり
右左脳を塞がぬためによく喋る


「御 招 待」        石田  竹水
晴れた日は喜び半分温暖化       静 岡
天国の消印で来た御招待
鉄よりも強くてやわい思い遣り
老いの日々寝るのも惜しくなる時間


「鮎友釣り三昧・・・其の二十一」永田 のぶ男
つれづれに誘いさそわれ鮎河原       静 岡
雨の日も風にもめげず鮎が呼ぶ
釣り師には雷さんは嫌な奴
ハス任せ遡上の川に苔任せ


「生 渇 き」        多田  幹江
灰汁抜いて軽い女になりました     静 岡
他人は他人今日も暮れゆく無言坂
人間を乾しに出ましょう梅雨晴れ間
老春の陽だまりにいる生渇き


「市民川柳葬送曲第八」   長澤 アキラ
おにぎりが駆け出して行く五月晴れ   静 岡
流れ矢に当たったような絶頂期
みよちゃんと落書きをした寺の塀
五月晴れ 妻にもばれず別れたし


「ピンク・デビル」     川路  泰山
桃色の鬼が笑っている谷間       島 田
大きな河だな少し泳いでみるか
悪臭を放つ河ならぶった切る
強引に生きて漢の譜を綴る


「青 い 鳥」        池田  茂瑠
騙された祭りだ笑い過ぎぬよう     静 岡
青い鳥君には羽根があるのだね
花が咲く女の罠の渕なのか
私まだ蕾ゆっくり開きます


「寵  愛」        山口  兄六
神様に頼み忘れて今日の雨       足 利
見え透いた自己紹介に騙されて
寵愛の迷路 私は花菖蒲
うっかりと妻に漏らしたボーナス日


「匂  い」        真理  猫子
禁煙のタクシーだけど酒くさい     岡 崎
きな臭い還元水で育つ芋
裏切りの匂い漂うクオカード
与野党の切り札おなじオヤジ臭


「自 由 吟」        今井 卓まる
したくても自慢できないツーショット  浜 松
足元で仕事終わるを待つ子猫
理攻めして客に勝ってもノルマ負け
アリバイに使った店は定休日


「かけひきゲーム」     谷口 さとみ
人相の良くない招き猫がきた      伊 豆
嘘と知りながら待ってる逃避行
捨てたいが鏡は秘密知っている
君が今食べたケーキは人参よ


「おもいきり」       中野 三根子
心からさけんでしまうありがとう    静 岡
夢の中やっぱり今もおかあさん
夢で良いやさしい君とただ握手
青い空ただそれだけで感謝する


「マナー違反」       中田   尚
ああこわい人形いくつ潰すのか     浜 松
十五才親のタスポを使わせる
ケータイででっかい声の独り言
押し車わざと後ろを蹴らないで


「薔  薇」        川村  洋未
芽は出たがここには薔薇を植えたはず 静 岡
どの薔薇を連れて帰るかまよい道
しおれても薔薇の姿はとどめたい
あの薔薇は他人の庭で動かない

 
「忘 れ る」        佐野 由利子
忘れごと多い自分に腹が立ち     静 岡
出来ないと思わせるのも一つの手
ライバルのテンポに合わすことは無い
おやアンタも私と同じ猫嫌い


「雑  詠」        高瀬  輝男
空想をケタケタ笑う流れ雲       焼 津
笑えない事故を笑顔で応えてる
混迷の世を跋扈する悪企み
去って行く背中悔しさかくさない


「花 泥 棒」        望月   弘
運のいいことに躓く石がない      静 岡
花好きの花泥棒を許せない
真っ白に漉かれた紙がウツになる
ふるさとにのるかそるかの三世代


「自 由 吟」        加藤   鰹
初恋の日に揺れているタチアオイ    静 岡
ずるいのが一人たちまち醒める酔い
温室の中で育てた殺人鬼
謎一つ解けて僕らの梅雨が明け

 
「五月の風」        柳沢 平四朗
子に負けて五月の窓の風と逢う     静 岡
どんじりを笑う元気が憎めない
前頭葉枯れて積ん読しおり棚
天引きで楢山行きを急かされる


虎竹抄 | Link |
(2008/07/24(Wed) 09:34:57)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「メ  ガ」             大塚  徳子
どうぞどうぞと仮面の注ぐ赤ワイン       仙 台
人間が大きく見えた青リンゴ
タスポカードの貸し借りはご法度か
これでもかメガ文字足らずカギカッコ



「私とバラ」             竹内  さき
占ってコーヒー甘く君を待つ          浜 松
ときめいて唇少し揺れている
ため息も深く尽くして春はゆく
以上ですテーブルのバラ仐をかす



「ためいきの・・・」         新貝 里々子
「愛してる」なんて気軽に嘘っぱち       袋 井
花束を抱いたおとこは大嫌い
本心は花束も欲しラヴも欲し
ときめいたそんな昔は遠い過去


「雑  詠」              滝田  玲子
富士を背に照れて赤らむ桜えび         浜 松
ノンちゃんが待つ雲に来る桃子さん
値上がり品ずらり並んだ痛い春
栄転の内示で靴が軽くなる


「未  練」             安田  豊子
コーヒーへ苦い未練をかき回す          浜 松
脳みその眠気を覚ます濃い煎茶
独り酒飲めばあれこれ悔いばかり
花より団子飲んで喋って泣けてくる


「雑  詠」             ふくだ 万年
定年でスーツと仮面脱ぎ捨てた         松 原
お疲れさん壁の背広に話しかけ
籤買って心ウキウキ居酒屋へ
買ったけど使う宛てないペアカップ


「目のやり場」            増田  久子
人目気にするほど人は気にしない         焼 津
交番で眼鏡のまんま泣く迷い子
正直に叶姉妹へ異性の目
親の目が黒いからいい気のニート


「  恩  」             馬渕 よし子
恩人の影をしっかり踏んでいた         浜 松
恩なのか計算高い人なのか
恩返し当てにしないが忘れない
恩返しなどと孫連れ食べに来る


「未 練 酒」             鈴木 まつ子
失意の日しばらくそっと保温する        島 田
花の雨少しほとぼりさめるまで
つかの間の気分転換聴くショパン
この思い惚れた弱みの未練酒


「家族の肖像」            濱山  哲也
一言多い弟と足りぬ兄             つがる
カタログ誌童話のように妻が読む
発泡酒ほどよく舐めて眠る犬
劣勢の遺伝が親と子の絆


「5月5日」             毛利  由美
結婚記念日ユニクロでシャツを買う       つくば
夫には5月5日はこどもの日
5月5日かぶとは屋根裏で眠る
あまりない屋根より高いこいのぼり


「雑  詠」              飯塚 すみと
上手くない口笛吹いて児が下校         静 岡
カード出しレジ長びかす老婆居て
女子高生どっち向いても笑い合い
安い靴右と左の履き心地


「雑  詠」              山本 野次馬
失恋中ですファミレスでカフェラテ        函 南
鉛筆の芯の脆さに気付かない
折じわのシャツが弾ける入社式
雨漏りの穴から木漏れ日の笑い


「自 由 吟」             寺脇  龍狂
湯上りと言えばメールも艶かし         浜 松
顔ぶれが変わる四月のヘルメット
高齢へ中期を作るチエがない
祖父が逝き天長節が死語となり


「雑  詠」             内山  敏子
肩書きが取れてフワリと軽くなる        浜 松
ペダル踏む裾にまつわる初夏の風
凧の糸切れて自由な風に乗り
連休の来客妻は音をあげる


「自 由 吟」             栃尾  奏子
一途さを愛してやまぬのは飛天         大 阪
ひらりらと蝶が覗き穴にとまる
その場から世相を払う柔軟さ
はじまりも終わりも知っている宇宙


「丸 い 月」             石井   昇
誰が宥めたのか月が真ん丸い          蓮 田
泣き出したお好み焼きを裏返す
極楽は塩がのってる升の角
上衣着る認めたくない負け戦


「自 由 吟」             藪ア 千恵子
薄墨の袋を抱いている涙            焼 津
袖振り合う人の情けが身に沁みる
届かない背中に焦れる五十肩
踏ん切りの悪い男の愚痴を聞く


「母 の 日」             酒井  可福
ひとときを母の墓前に手を合わす        北九州
母の日は男料理の見せどころ
母の肩つぶれぬようにもみほぐす
母の日の前は小遣いせびられる


「鮎を食う」             金田 政次郎
手を延べる遡上の堰に舞う鱗          静 岡
年魚とは悲しみ誘う鮎の性
鮎を食う焼きたてを食う指で食う
落ち鮎はしっぽも食って供養する


「ほろ酔い」             岡村  廣司
ほろ酔いにならなきゃ軍歌出てこない   焼 津
水溜りぐらいほろ酔い避けてゆく
副作用有るわけないさほろ酔いに
ほろ酔いがたたいたドアーお隣だ


「ゆっくりと」    真田  義子
思い出の中で生きてる淡い恋       仙 台
自画像は素顔のままに描くつもり
ゆっくりと過去振り返る春の月
ゆっくりと心浮かせる露天風呂


「花  見」       鈴木 恵美子
桜散る野辺にすみれが顔を出す        静 岡
たましいがそぞろ歩きをした花見
タンポポの黄に語りかけたい散歩
風みどり詩人の椅子にちょっと掛け


「定  年」       鈴木 千代見
定年日熱い視線に背を押され   浜 松
アイロンがけ着ることもない作業服
明日からは肩書きもとれ自由人
待つ妻に先ずは感謝の赤いバラ


「売  る」       薗田  獏沓
名を売ってから選挙に出る時代 川根本町
日本の舌を馴らしたハンバーガー
生臭をラップして売る焼き魚
恋人の居ない女が艶を売る


「  道  」      井口   薫
怖いもの知らずの頃のハイウェイ  袋 井
直線の道で疲れがどっと出る
インターが出来て野原に御殿街
逃げ道をせっせと造る道路税


「凧 祭 り」       畔柳  晴康
伝統の凧の祭りに老い忘れ   浜 松
大きさと糸を切り合う凧合戦
天までも子の成長を願う凧
空に凧よくぞ男に生まれけり


「梅雨間近」       小林 ふく子
びしょ濡れの心シャワーで癒してる  袋 井
急な雨時間潰しに友が増え
思いの外いい句に会える雨の午後
梅雨晴れ間ソーダ水を飲んだよう


「風  邪」       成島  静枝
三食の合間を休む主婦の風邪     千 葉
風邪声を武器にセールス斜め切り
ウイルスが右脳左脳を掻き混ぜる
鼻水を猫も垂らしている師走


「  靴  」       芹沢 穂々美
新品のスニーカーおろす大安日  沼 津
慣れぬ靴はいて愚痴でも聞きましょう
ピンヒールはくには足が太すぎる
雨の日のセールスの靴乾いてる


「山 頭 火」       瀧    進
たんぽぽの風と奏でる自由律    島 田
野良犬と軒共にする秋しぐれ
破れ笠月を添い寝の無住寺
生かされてまた故郷の空を見る


「無 農 薬」       中矢  長仁
この野菜虫も食べてる無農薬      松 山
食べて見て素材は自信無農薬
新鮮で味一番の無農薬
子に送る味一番の無農薬


「近  況」        川口   亘
威張るだけ損をするよと諌められ  藤 枝
威張っても杖の分だけ労わられ
少子化に出す小遣いも高くつき
気懸りを幾つものこす未知が有り


「  春  」       川口 のぶ子
愚痴の芽も新茶も同じ春を知り    藤 枝
幻想に悩まされてる春の宵
人恋し春という季をもて遊ぶ
気詰まりを段々外し春を呼ぶ


「雑  詠」       山田  ぎん
触れ合いの仲間笑顔で話し掛け   静 岡
用宗の老人センター人が寄り
カーネーション母の日祝う玄関に
家曾孫アレコレ言って指をさし


「身を洗う」       加茂  和枝
太平洋波はざぶんと身を洗う    岩 沼
本当の旅に出逢えた友ができ
ゆったりの旅で元気になる私
次次と課題が生まれゆく地球


「歯 科 医」       中安 びん郎
老化して顎が細まり歯科へ行く   静 岡
口開けて痛くないねと歯科医言い
川柳に興味持ってる歯科医院
梅干しの種噛んで行く歯科医院


「08 4/30〜5/1」     西垣  博司
駆け込みでささやかなトクしたつもり   静 岡
古のれんやめて今夜は給油する
日本中火気厳禁の夜が更ける
ガソリンが五月の空に高く舞い


「自 由 吟」       松橋  帆波
料亭で大人の知恵を授けよう     東 京
放射能以外も漏れる原子力
米軍はやはり占領軍であり
平壌は投げる卵も無いだろう


「無  題」             鹿野  太郎
年金で豊かに過疎の風になる         仙 台
筍の皮を丸めて吸う昭和
伏せをする盲導犬が消す邪念
火種撒き散らしてトーチリレーする


 「夫  婦」             戸田 美佐緒
ゴキブリも家来にしてる妻の乱      さいたま
殿様と呼べば振り向く妻である
駄目ですよそこは私の天守閣
それだって照る日曇る日夫婦です


 「ガラクタ」          塚本  寄道
ガラクタも言葉ひとつで値打ち物    長 泉
ガラクタと分かっていても欲しくなる
ガラクタの中に隠れた猜疑心
ガラクタと言われてもこれ宝物


 「アドベンチャー」         多田  幹江
情報の森にぽつんと天邪鬼          静 岡
食充ちて飛ばぬヤンバルクイナ生む
チャイナを食すアドベンチャーの貌をして
親の気も知らぬハシブトカラスの子


「雑  詠」             柴田  亀重
庇い合う痛い苦しい言わないで        沼 津
麗なる外へチワワの甘えなき
オリンピック聖火へ御負付く話題
時過ぎて誰も聞きたくない話


 「水 芭 蕉」             林  二三子
新緑の風に吹かれて露天風呂       芝 川
ハイキング会釈で木道譲り合う
水芭蕉雪解けを待ち顔を出す
ひっそりでもしっかり自己主張している


 「五  月」          増田  信一
五月は春か夏俺の心秋         焼 津
鯉のぼり男の影が薄くなり
五月病俺の場合は秋になる
五月晴れ雨が降っても前を見る


 「鮎友釣り三昧・・・其の二十」   永田 のぶ男
子供らが河原で学ぶ水泳ぎ          静 岡
せせらぎで真夏に育つ元気な子
子供らの遊び場あけて竿を出す
見守ってマナーを示す天狗連


「自 由 吟」             中田   尚
無関心命命が軽くなる            浜 松
ミスをして反省をしてミスをする
パンダにも二十五円にも揺れる
先着に電車つかって間に合わず


 「  心  」             中野 三根子
いつまでも母は心の中に居る       静 岡
母の日に心づくしの花の色
心にもない言葉さえ言ってみる
心から感謝をしても遅すぎる


 「タイミング」         川村  洋未
時お金いつもおくれてやってくる    静 岡
中間にいればいつでも逃げられる
さがし物見つかる頃は役立たず
ごめんねと言えるチャンスが消えて行く


 「甘  え」            石田  竹水
傷口の甘えに耳は貸しません         静 岡
人混みの中で甘えの孤独感
ビー玉を転がしている密告者
三日月が恐い徘徊もうしない


「祟 り 神」             山口  兄六
仲がいいお互い後ろめたいから        足 利
どうぞどうぞと危険ゾーンを譲り合う
行列のできない店で買う時間
天国か地獄か一夫多妻制


 「毒りんご」             真理  猫子
バイパスができた過疎地は過疎のまま   岡 崎
どんぐりを知らない子らのせいくらべ
あら熱を恋の微熱で取っている
正直に生きているから毒りんご


 「自 由 吟」          今井 卓まる
大海で鯨も独り大涙          浜 松
海の深さを目分量で測る猛者
煩さに起きて気付いた我がイビキ
大の字もそろそろ飽きたニート君


 「ストーリー」           谷口 さとみ
花が咲くまでは水やり欠かさない       伊 豆
たいくつで口紅変えてみたくなる
もう一杯呑めばデジャブがみえたかも
実印に託す喜怒哀楽のケリ


「雑  詠」             佐野 由利子
乗り換えに夫と走る跨線橋           静 岡
男より早く歩いて嫌われる
五線譜に少年の夢踊ってる
駅までの散歩も兼ねるマイホーム


「懐かしい過失」             寺田  柳京
パラソルで顔かくしてもそれと知れ     静 岡
黒くても金魚覚悟は出来ている
整形をしない当時に似て生れ
懐かしい過失だったと諦める


 「浅い考え」           池田  茂瑠
踏み込めぬ掟の線を持つ二人      静 岡
両親の手が弾めない毬にした
考えの浅い部分もある手紙
薄い胸おこした思慕の火も淡い

 
 「乱  調」        川路  泰山
十指皆恋人にして妻がいぬ            島 田
熟れ過ぎた桃だが味は抜群さ
太陽を半分に切るジジとババ
高齢者乗せて地盤が陥没だ


「雑  詠」             高瀬  輝男
社交辞令の余韻にあったバラのトゲ       焼 津
黙殺をされているなと気付く宴
輪の中に隠されていた落とし穴
重病の地球へカンフルでも打つか


「宇宙から」                望月   弘
万華鏡から覗かれている財布        静 岡
衛星が捨てられていく青い空
徘徊のワタシを宙が監視する
宇宙人もどきが棲んでいる地球


 「しぞ〜か弁川柳」        加藤   鰹
オトマシイ明日は我が身か大地震     静 岡
容姿などトンジャカネエと言うけえが
センダッテ買ったテレビだセセクルな
コクルってコックリさんじゃにゃあだから

 
  顧  問  吟 
 「  臍  」          柳沢 平四朗
春いっぱい旅の言葉が屯する           静 岡
腹いせのペンを写経で見失う
帳尻は天へ預ける四面楚歌
熟年の視点へ臍をつけ替える



虎竹抄 | Link |
(2008/06/26(Wed) 08:37:12)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「雑  詠」             井口   薫
喝采を浴びた桜に風の恩            袋 井
独り旅佛に道を聴き歩く
独りです開脚立ちをして耐える
がらんどうだからリボンを掛けておく



「さ つ き」             小林 ふく子
鯉のぼり空気まずいかおいしいか        袋 井
新茶飲む腹の虫にも知らせとく
五月晴れここらで答出しましょう
すぐそこの夏をのぞいてみることに



「自 由 吟」             栃尾  奏子
覗きみて以来妬心をたぎらせる         大 阪
自尊心かき集めては狭い視野
路地裏を黒いルールが支配する
場違いなムードつま先から凍る


「雑  詠」              成島  静枝
姑の癖を夫も持ち合わせ            千 葉
私にはカチンと来たわ無言劇
ヨイショして男の面子らしきもの
シーソーの中で迷惑してる猫


「無 人 駅」             真田  義子
ゆっくりと春彩になる無人駅           仙 台
肩に星はらりと落ちた無人駅
草笛のこだまが返る無人駅
寅さんが帽子忘れた無人駅


「四  月」             毛利  由美
入園式ママはまだまだ美しい          つくば
新社員スーツ姿もスリムだね
エイプリルフール生まれのお友達
新しい試練 仕送りが始まる


「昆 虫 記」             濱山  哲也
引きこもり蓑虫だって羽がある          つがる
年とった僕にカマキリもう逃げぬ
浮気ムシ妻の視線が殺虫剤
お目当てはお隣ですよコガネムシ


「四 姉 妹」             戸田 美佐緒
おんなですどこを押しても非常ベル      さいたま
刃こぼれをしても女が転ばない
万華鏡くるりと戻す女の手
女が崩すポーカーフェイスの夜


「凸 と 凹」             加茂  和枝
辛いとは絶対言わぬ冬の花           岩 沼
土作り春の希望が膨らんで
凸凹の工事に使うエネルギー
わだかまりようやく消えて春の色


「文  字」             塚本  寄道
筆書きでベタぼめされたヘタな文字       長 泉
読めるけど書けなくなった現代人
必勝という文字ボクにのしかかる
好きですと書いた向こうに君がいる


「自 由 吟」             萩原 まさ子
悔恨を集めなおして明日の夢         静 岡
争いは中腰で聞く処世術
中流の胡坐崩していく格差
赤福の甘さ加減は藪の中


「雑  詠」              藪ア 千恵子
先人の話此の身も近くなる           焼 津
自信家に逆らっている肚の中
それぞれの暮らし個性が花ざかり
ほいほいと煽てに乗せる二言目


「自 由 吟」              安田  豊子
覆面を脱いでひとりの日向ぼこ         浜 松
冗談で済まぬ言葉が胃に溜る
ひたむきに走る車は語らない
七十の坂ひたすらに強い自我


「雑  詠」             滝田  玲子
いまポトリ散ると知ったか藪椿         浜 松
法話聞き己を悟る道広げ
輪の中に仕切り上手がいて平和
旅プラン練ってうかれる春の靴


「雑  詠」             芹沢 穂々美
紙風船しおれてからの怨みごと         沼 津
高いハードル越えて生きる気教えられ
恐い者知らずで行った敵の家
ミンチされわたくしの句が上手く出る


「  息  」             馬渕 よし子
老人を痛める国へ出る吐息           浜 松
悪巧みこの時だけは息が合い
鼻息の荒さ回りを寄せ付けず
休止符へ辿り着く前息が切れ


「  底  」             鈴木 恵美子
底抜けに明るい母の子育て記          静 岡
どん底で本当の愛に支えられ
底光りする勝手場に城を持つ
胸底にそっと沈めた過去の愛


「そして春」             新貝 里々子
そして春花子の人形目を覚ます         袋 井
春野菜コロコロ会話弾み出す
ある時は花より団子よもぎ摘み
そして春しだれ櫻を身に纏い


「ロケット」             柏屋 叶志秋
直ぐ切れる芸能人の赤い糸           山 形
日本の政治を変える奥座敷
食いだめができたら人は働かず
ロケットも神に祈って打ち上げる


「期  待」             増田  久子
コラーゲン加齢の加速には負ける        焼 津
大きめの園服に夢込めて着せ
幸運な朝だ卵に黄身二つ
胎教へくり返されるモーツアルト


「自  由」             酒井  可福
カミナリに泣く子あやしてヘソ踊り   北九州
家系図に頑固頑固と書いてある
一喝のカミナリ今も耳の奥
エアロビのリズムに合わぬトドの妻


「木 乃 伊」    石井   昇
木乃伊になりなさいとミイラが云った   蓮 田
古備前がぽつんと一つ置いてある
悔いはない二人で漕いだ舟だから
乱反射只ほど高いものはない


「春 帽 子」       大塚  徳子
さくらさいたらドナーカードに名を書こう   仙 台
おだやかに山懐に抱かれてる
おせんにキャラメルひとついかがと目を配る
ゆうやけこやけひとり佇む春帽子


「雑  詠」       内山  敏子
朝寝坊遅刻は春のせいにする   浜 松
旬を待ち旬を食する平和です
赤を足しとっても軽いローヒール
甲子園喜びの声天に抜け


「自 由 吟」       寺脇  龍狂
病み上り三坪の庭出足ならし  浜 松
見てみたい元大臣のム所暮らし
団塊が葬際族に衣替え
公害の元は油屋自動車屋


「雑  詠」      鈴木 千代見
箱の中りんご無言で腐ってく   浜 松
病院の梯子私も仲間入り
青い空邪魔っけの雲きっと彼
おばさんと声をかけられ向く私


「自 由 吟」       鈴木 まつ子
孫と居て平穏無事の小宇宙   島 田
端っこを捕っては批判するカラス
旨い汁口を拭って知らん顔
退いて暦もフリースケジュール


「花  嵐」       中矢  長仁
それぞれに咲いた便りを待っている  松 山
開花日は南からとは限らない
満開に心躍らせ旨い酒
花嵐一夜吹かれて乱れ散る


「雑  詠」       ふくだ 万年
よく見れば髪の毛細くなっただけ   松 原
薄着です風邪は怖いがウフフです
薄味と濃い味重ね夫婦味
義理のチョコ皮算用が埋めてある


「曖  昧」       岡村  廣司
曖昧な言葉がうまい日本人   焼 津
程程と言う曖昧が性に合い
うま過ぎる話曖昧さも交じり
曖昧な妥協するから残る悔い


「  湯  」       瀧    進
婿殿の愚痴も浮いてる終い風呂   島 田
バスタブがメタボな腹を排除する
ひとり旅一寸淋しい露天風呂
ダイエットできぬ分だけ湯が溢れ


「自 由 吟」       竹内  さき
わたくしを隠してみたい古都ローマ   浜 松
ありがとう又よろしくで生きている
まじないで心と語るひとりごと
いつの間に母色の飯たいている


「命買います」       金田 政次郎
分け売りの命まとめて吟味する   静 岡
首のない背筋がぴんと立っている
引き返す負けのリズムが口惜しい
いい風だ二人分買い妻を呼ぶ


「自 由 吟」       川口 のぶ子
ふところが春に目覚めて軽くなる   藤 枝
花粉症春にはきつい仕置き待ち
しっかりと春という季に遊ばれる
いかなごの何時もかわらぬ味とどく


「雑  詠」       山本 野次馬
フリーサイズ着て存在感を消す   函 南
アピールが下手で携帯すら鳴らず
片足へ義足を付けてジャンプする
的外れの矢が私を苦しめる


「人形供養」       畔柳  晴康
供養する嫁したむすめの雛人形   浜 松
役終えた人形供養読経する
香を焚くけむり人形軽く笑み
人形は逝く春共に永久の旅


「服  装」       薗田  獏沓
軍服がぴったり決まる独裁者   川根本町
ユニフォーム死力を尽くし砂まみれ
おしゃれ着にポケット無くて不自由し
軍服を着ると正義の貌になり


「  中  」       川口   亘
家中が寝坊する日を待ち侘びる   藤 枝
中位まだまだ甘い親の依胡
中毒になるから好きな酒は断つ
家の中支えて呉れる妻が居る


「音 キ チ」       中安 びん郎
音キチは三味線が好きソプラノも   静 岡
音キチはいつもスキャット唄ってる
音キチは数学は丙音楽は甲
音キチはテレビの洋楽全部聴く


「自 由 吟」             今井  卓也
午前様妻の尋問目が泳ぐ           浜 松
ちぐはぐな会話塞ぎて契り籠む
サボリーマン冴えた言い訳墓穴掘る
野良猫の腋をくすぐる初夏の草


 「  春  」             山田  ぎん
お茶席で着物姿のしとやかさ       静 岡
茶花ほめ掛軸読めぬ茶席着く
桜花ちらちら落ちて手に受ける
けしの花おし絵に作りプレゼント


 「御 用 心」          鹿野  太郎
鬼来ないようシャボン玉吹いている   仙 台
狩人になれない鯖のアレルギー
人の道から校長が踏み外す
深そうだ納豆食べるあの二人


 「自 由 吟」            松橋  帆波
大臣も苦手らしいなカタカナ語        東 京
新旧交代村の掟が邪魔をする
演出とヤラセ 政治とバラエティー
首都移転 そんな童話もありました


「宿題余句」             西垣  博司
ハイヒール毛皮で見切品値切り        静 岡
又ひとつわからぬ後期高齢者
家よりも立派な車庫で車寝る
蘊蓄が冴えて時計が動かない


 「切  符」             石田  竹水
笑わせるジョークとぼけた顔が効く    静 岡
躓いた石に笑われたくはない
おもかげの消えてく母の温い手よ
天国へ行ける切符の途中下車


 「約  束」          中野 三根子
指きりをしてもしっかり忘れてる    静 岡
忘れないつもりでいつも生きている
小指だけいつもあなたを覚えてる
約束のいつもの歌を口ずさむ


 「脳 ト レ」            林  二三子
何用か忘れて戻る元の位置          芝 川
知っている筈の言葉が出て来ない
孫と遊ぶ脳の活性化につなげ
脳トレにクイズ番組利用する


「隠 れ 虫」             山口  兄六
逆切れのチャンスに賭けるズルイ癖      足 利
喧嘩後に二人で積んでいるレンガ
手料理のまずさもちょっとした個性
着信の履歴に隠れ虫が居る


 「自 由 吟」             真理  猫子
哀しみが仮装行列する電車        岡 崎
掃除機が壊れてしまうほどの嘘
雨音が月光仮面を連呼する
石けんの小さな泡の中に春


 「雑  詠」          多田  幹江
品格の差問うまでもなくお里      静 岡
わたくしに無いもの一つ美女の面
アンテナが高過ぎ風も通らない
余所見しない人も何だかつまらない


 「鮎三昧・・・其の十九」      永田 のぶ男
炎天下傘だけ浮いて移動する         静 岡
足使い石の頭をみぎひだり
長袖と手こう虫よけ万全に
大切なマナー守って釣り修行


「雑  詠」             柴田  亀重
老い走る干した布団へ俄か雨         沼 津
ガン二回手術完治の運の良さ
笑う夢テンツクテンの幻か
姉米寿負けず楽しい明日の夢


 「自 由 吟」             中田   尚
青春がポンとはじける甲子園       浜 松
春の芽が弾けサクラが加速する
スタートは確かサクラが咲いていた
サクラの木親の見栄には苦笑い


 「エイプリルフール」      増田  信一
モテまくりフリまくってもモテまくる  静 岡
運が運 金が金呼び大富豪
招待状彼の世から来て目が覚めた
月世界食いまくっても無重力


 「泥  沼」            谷口 さとみ
ニンニクを抜いたあなたの猜疑心       伊 豆
袋菓子に手をつっこんで生きている
何したいそう聞く君と別れたい
君と会う会うだけだけど歯をみがく


「雑  詠」             川村  洋未
五分だけ昼寝また生きかえるから        静 岡
あたしにもあめ玉一つわけてよね
化粧した生きているかと確かめる
ありがとうその一言で軽くなる


「廻るすし」                池田  茂瑠
古き世を華麗に残す雨の古都        静 岡
回転のすしで埋まるか愛の溝
鶴一羽折って別れの手紙出す
許せない私を蹴散らした靴を


 「大 跨 ぎ」           佐野 由利子
ふてぶてと昼寝の夫 大跨ぎ      静 岡
気をつけていってらっしゃいさぁ昼寝
家系かなすぐ熱中し直ぐ冷める
野暮用は明日に回し桜花

 
 「  涙  」        川路  泰山
勇ましく生きて群青色を選る           島 田
赤鰹の素振り百遍背を研く
生きざまへ涙が集く八十路かな
目標の消えて寂しい男坂


「雑  詠」             高瀬  輝男
人間の策には勝てぬ鬼も居る          焼 津
爪のない指したたかに世を渡る
欲捨てず這いつくばって生きてやろ
四次元でさ迷いたくて酒を手に


「さ く ら」                 望月   弘
入学を果たして愛でるちりぬるを      静 岡
散りそうな人も花見の中にいる
踏みそうで桜の下を歩けない
金さんのDNAと花吹雪


 「エイプリル・メイ」       加藤   鰹
とりあえず嵌めた指輪が外れない     静 岡
やり直すべきか三面鏡に問う
クーデター頷いていた奴がグル
無礼講でいいよと上座から言われ

 
  顧  問  吟 
 「尾  鰭」          柳沢 平四朗
貸せたがる杖は苦汁を匂わせる          静 岡
過去は背に行末胸に日記濃い
小康の食卓へ置く自己批判
理髪やの椅子から尾鰭生えてくる



虎竹抄 | Link |
(2008/05/26(Sun) 08:37:12)

「雑  詠」             高瀬  輝男
課題一つ解けた芯から笑えるぞ        焼 津
とどのつまりはすべては霧の中に消え
儀式好きなピアノで君が代が得意
柿を剥くこの昂りは沈まらぬ


「人  格」            望月   弘
品格を朝の鏡へ貼っておく        静 岡
ブランドはいつも心に着せている
いちにちを生きた自分を誉めてやる
人格の坂を転げていくことば


 「ディスペラード」       加藤   鰹
冬銀河愛の台詞が見つからぬ       静 岡
ケータイも僕もそろそろ電池切れ
感謝状よりも福沢諭吉かな
産めよ増やせよ戦後を生き抜いたネズミ

 
  顧  問  吟 
 「  夢  」       柳沢 平四朗
ハイテクの夢へ動きの取れぬ壷         静 岡
自分だけの定規で計る保身術
ひけらかす夢が生活を傾ける
可愛げの無い老練の孤独癖

※他本誌参照
虎竹抄 | Link |
(2008/04/26(Fri) 08:17:12)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「雑  詠」            石井   昇
捨てたのにやっぱり海に来てしまう     蓮 田
遠い日に父と作った砂の城
嬉しさの涙は熱きものと知り
恐ろしい話をどうもありがとう


 「もうすぐ春」           小林 ふく子
春の音するまで毛糸編んでます      袋 井
足跡が消えかかります春はそこ
一番に出した芽だから摘んでおく
花便りそろそろ床を上げようか


 「笑 い 話」             増田  久子
無人駅ただで乗る気の人も来る     焼 津
塾通いしても遺伝子元のまま
沿道の大声援で走るビリ
使用前使用後逆もある写真


「フリーズ」            毛利  由美
あれ以来がらんがらんの冷凍庫        つくば
失言に凍りついてる関係者
抱擁をされて固まる異国の地
家族には内緒再解凍カレー


「雑  詠」            井口   薫
雑念も生きてる証ヤジロベー          袋 井
おおかたの場に根を張れる雑種です
雑学を秀才に説くクラス会
壁一重時差も格差も雑居ビル


「自 由 吟」           藪ア 千恵子
しっぺ返しされて落ち込む正義感       焼 津
口チャックしないと愚痴が溢れ出る
聞く耳を持たずに帰る良い話
強烈なパンチ浴びせにくる笑顔


「  心  」            鹿野  太郎
傷付いた形で落ちて来る涙           仙 台
ささやかなプライド僕を苦しめる
歳重ね軽くなったか胸の石
大冒険決めた社長に身を砕く


「漂  流」            新貝 里々子
豹柄のマフラー疑似餌かもしれぬ     袋 井
思考停止魂神の思し召し
ピンヒールおとこひとりを串刺しに
切なくて泣くこともある夜更けまた


 「白 い 息」            濱山  哲也
消しゴムが降って一面画布になる       つがる
吹雪止む笑顔眩しい青い空
性善説信じています白い息
雪国に生まれた父の黒い首


 「節  分」             増田  信一
鬼は外間違えたふり妻の背に          焼 津
腹は内メタボ糖尿血圧と
鬼と福貧乏神に追い出され
鬼だってピンキリあるよ福だって


  「怒り川柳」              山本 野次馬
社長だと威張るが社員私だけ         函 南
おはようの声で娘はそっぽ向く
娘は一番風呂私は終い風呂
親指で始まる味気ない会話


「軽いごみ」            寺田  柳京
辞書にない言葉が老を愚弄する       静 岡
国会のテレビで俺も眠くなり
植林の昔をうらむ花粉症
年寄りの二人ぽっちの軽いごみ


 「三  月」              金田 政次郎
誰が為の鼓調べや春の宵           静 岡
抵抗の雛人形の無表情
桃色に染まり少女が脱皮する
有難いよいしょ支える妻と居る


  「モアイ像」             瀧    進
言い訳は何んにも言うなモアイ像        島 田
定年を待ってる俺もモアイ像
野暮言わぬ男どっしりモアイ像
人類の明日見えますかモアイ像


  「  色  」             馬渕 よし子
反発をして塗り替える自分色          浜 松
色褪せた夫婦茶碗が重すぎる
似合わない朱がこんなに好きになり
美しい国から明るい色が消え


 「智  恵」             岡村  廣司
言い訳の仕方で智恵の程が知れ        焼 津
入れ智恵を妻に復習して出掛け
智恵の無い親でがんばれしか言えず
智恵袋有るのに補充間に合わず


 「雑  詠」             酒井  可福
石つぶて三回ジャンプ諦める         北九州
少子化の町にも親の無責任
越後屋の擦り手の真似が似合う奴
温暖化騒げば寒く成る季節


 「人  柄」             鈴木 まつ子
人柄がいいとその気になってくる       島 田
天然の笑いど忘れ物忘れ
人柄が良すぎて見えぬ落し穴
日々好日明るさだけは持ちつづけ


 「角 砂 糖」             加茂  和枝
揉め事にたっぷり時間塩胡椒      岩 沼
バラバラの家族をつなぐ母の味
サービスは笑顔ひとつで事足りる
時間だけ過ぎて平和な角砂糖


 「温 暖 化」            佐藤  香織
大気層開けてはならぬ開かずの間       福 岡
水中の稲作農家大繁盛
海草の野菜畑がトレンディー
進化して大海泳げ鰓呼吸


 「自 由 吟」            石上  俊枝
うちの鍋ネギがギューッとでかい顔   静 岡
欲のない人ほど金は転げ込む
あの世まで金金金と掻き集め
ストレスを捨てに集まる縄のれん


「明  U」            西垣  博司
あの角の先に明日が有ると云う      静 岡
明け方の夢は朝日に溶けぬまま
人並の明るさの灯がわが家にも
本心は明かさぬままでひとつ屋根


  「初  春」            芹沢 穂々美
ブーツはく大根足の照れ笑い          沼 津
ポチ袋とび交う親の胸の内
おせちにも来し方の味受け継いで
機器文字の謹賀新年味気ない


 「勝  負」            塚本  寄道
目標へ最初の一歩踏み出した         長 泉
いつだって本気を出して勝負する
乗り越えた経験ボクのエネルギー
白か黒つけてはならぬ事もある


 「  薬  」            鈴木 千代見
雨の日に笑い薬を買いに行く         浜 松
薬になる酒にしておく今日の酒
妙薬と梅干を貼るおばあちゃん
失敗を耐えて見守る父と母


 「雑  詠」            ふくだ 万年
嫁さんを変えず米寿の仲間入り        松 原
痴話げんか目線ずらして仲直り
書いたメモメモの置き場所メモに書く
老いたなぁ手摺り階段選んでる


 「小さな夢」            真田  義子
フラスコの中に小さな夢が咲く        仙 台
女偏夢ひとすじに生きて行く
我が胸に冬の蛍が迷い込む
笑うたびしわを伸ばして生きてます


「雑  詠」            寺脇  龍狂
上るほど詫びと謝罪のメカニズム       浜 松
郵政の年賀ハガキはキレイ過ぎ
囚徒にも見せてやりたい星月夜
初メールまず○○へ送信し


「鬼 は 外」            薗田  獏沓
優しさも鬼面で隠す天の邪鬼      川根本町
鏡見て鬼も優しい顔になる
柊が苦手な鬼が憎めない
鬼は外拾った豆は落花生


「雑  詠」            内山  敏子
用心をしながら敵の策に落ち         浜 松
友情を恋と信じていたピエロ
欲の手がたんまり狙うつかみどり
腰のばす時間が長い老の鍬


「夕 焼 け」            畔柳  晴康
奇麗だな想い出よぎる夕茜        浜 松
今一度夕日のように燃えたいな
眞っ赤だよ退き際映えて幕を引く
夕焼けだ明日も良き日と手を合せ


「糸  口」            戸田 美紗緒
やさしさのひと言靄が消えました     さいたま
手がかりを探して夜の米を研ぐ
春日和あすの私を抱きしめる
菜箸を揃えて語尾を改める


 「如  月」             成島  静枝
如月に新年会が三つほど        千 葉
節分会雪掻きをするうちの鬼
立春の声省エネを励まされ
バースディ一日延びる閏年


 「冬 半 ば」            辻    葉
雪降りの街のりんごが着きました       大 阪
つくり話を咎めはしない冬の夜
お湯割りの焼酎とワインが並ぶ
さくら咲くその頃まではノーメイク


 「雑  詠」            安田  豊子
輪の中に乗れず二の足踏む辛さ        浜 松
ふらついた足に絡まる請求書
雑草で生きて悔ない七十坂
過去の無理仲よく暮らす今が花


「雑  詠」            川口 のぶ子
さわやかに明けて初日を拝みおり     藤 枝
七草の粥に心も暖まる
暖かな日差しに猫の髭動く
お年玉あちらこちらへ旅をする


 「読  む」            鈴木 恵美子
時を読むキャスター世界へ目を配り      静 岡
母の膝童話づくしへ子の寝顔
しおりからあの日の想いこぼれ出る
ウフフフフこらえ切れない本といる


「捩れ舞台」            堀井  草園
左利き口より前へ顎を出し          静 岡
桃色吐息鼻水だけはまだ拭ける
下手な嘘顔色だけはおてのもの
十二才進化もせずに馬鹿踊り


「  葦  」         大塚  徳子
ジャガイモと思えば気持ち楽になる      仙 台
一本の葦の善し悪し見える底
足を地につけて生きよう農作業
雨上がる明日の山から陽は昇る


「ある夫婦」            中矢  長仁
悪友が祝辞を買って出ると言う        愛 媛
付いて来るかい山坂あるが夫婦旅
孫の声聞いてジジババ顔ゆるむ
眼で話す口は要らない老夫婦


「近  況」            川口   亘
介護の手口惜しいけれどちから借り    藤 枝
どうしたの自分のからだ他人が住み
手加減に容赦はないか遊ばれる
気にすればする程辛い身の不承


「雑  詠」            滝田  玲子
ペット様我が家のポチも家族並        浜 松
刑務所もバリアフリーという時代
伝統の箱根を走るあつい息
聞き上手話し上手で輪がはずむ


 「自 由 吟」            山田  ぎん
静岡は雪も降らない暖かい          静 岡
曾孫可愛い歩き始めて笑顔見せ
裏の川小鳥が餌を取りに来る
子供たち仲良く学校帰り来る


 「老  化」            中安 びん郎
老化とは病気で無いと医者が言い       静 岡
起きる度毎朝老化新記録
家内より貴重な物に杖が有る
林無くば杖を探し様が無い


 「翔  ぶ」            林  二三子
自分へのご褒美を買う誕生日         芝 川
旅の空主婦を忘れて翔んでいる
ひとまわり先も翔びたい年女
カレンダーが予定で埋まる有りがたさ


 「鮎三昧・・・其の十七」      永田 のぶ男
健脚についていけないご老脚         静 岡
努力家も囮が浮いたビール党
汗しぼり入賞なんぞ屁でもない
締め切りに軽量の缶山となす


 「立  春」 中田   尚
こよみだけ春だ春だと騒ぎ出す     浜 松
セーターを脱いだらあれれ春の雪
まだ寒いクビをちぢめる福の神
救われたまだあたたかい甘酒に


「白 加 賀」            柴田  亀重
あって普通さ一人一台自家用車        沼 津
ジジババはネズミモグラか穴の中
白加賀よ今年こそ生れ梅の花
メジロちゃん今日は寿太郎オゴリだぜ


「チョコレート」          中野 三根子
義理チョコを集めたパパはニッコニコ   静 岡
こっそりと私にひとつ高いチョコ
チョコが好きやっぱり母とチョコが好き
バレンタイン今年も家族で食べくらべ


「つれづれに」           堀場  梨絵
恩給の額が私の付き合い費          静 岡
女傑にもなれずピンチを我慢する
欲張りの多趣味いつまでやれるのか
思い出と共に私もたそがれる


 「北 の 酒」            池田  茂瑠
姫ダルマだけで孤愁の部屋飾る        静 岡
左遷地の銘酒住みよい北だった
妻という肥満の謎が横にいる
簡単に終止符を打つ癖と老い


 「ショッピング」          川村  洋未
バーゲン品ゼロの多さに手を離す       静 岡
ストレスがバック一つに化けた時
見るだけと言って帰りは大荷物
試着室こんな私もかわいくて


 「February」        谷口 さとみ
豆撒きで鬼が出てゆき土笑う         伊 豆
淋しがりダダッ子の冬なごり雪
ホワイトデー渡せぬままのチョコ食べる
リスト見て土産のように配るチョコ


 「ビッグジム」           山口  兄六
七転び八起き早起きなのは妻         足 利
終電で電車男は売れ残る
大胆になれる世界は君のため
失恋に耐えられるかなGショック


 「しあわせのかたち」 真理  猫子
前向きになれば出口のない炬燵     岡 崎
真冬でもプラス思考の熊になる
真っ直ぐの基準は猫に任せてる
しあわせを形にするとアメーバー


「遠慮なく」             石田  竹水
無器用を武器に遠慮なく生きる        静 岡
まかせとけ最初に俺が毒見する
振り向いたから見たくない物を見る
どん底を歩いたなんて甘えてる


 「わたくし」             多田  幹江
わたくしの波長に合わぬノッポビル    静 岡
テンションの高い人には触らない
友だちのお友だちから買うサプリ
私の敵はわたくしでしたハイ


 「自 由 吟」 佐野 由利子
ごちゃごちゃと煮込んで冬の鬼退治   静 岡
そこそこの暮し私のティータイム
どんどんと仲間が減っていく不思議
のろのろと見えてチャッカリ者である


 「追  憶」           川路  泰山
とんぼ追い稲叢に伏す ててなし子      島 田
稲叢と犬の乳首を母代わり
紺碧の空へ届かぬ相聞歌
結跏趺坐 遠いところで鳶の輪


「雑  詠」             高瀬  輝男
課題一つ解けた芯から笑えるぞ        焼 津
とどのつまりはすべては霧の中に消え
儀式好きなピアノで君が代が得意
柿を剥くこの昂りは沈まらぬ


「人  格」            望月   弘
品格を朝の鏡へ貼っておく        静 岡
ブランドはいつも心に着せている
いちにちを生きた自分を誉めてやる
人格の坂を転げていくことば


 「ディスペラード」       加藤   鰹
冬銀河愛の台詞が見つからぬ       静 岡
ケータイも僕もそろそろ電池切れ
感謝状よりも福沢諭吉かな
産めよ増やせよ戦後を生き抜いたネズミ

 
  顧  問  吟 
 「  夢  」       柳沢 平四朗
ハイテクの夢へ動きの取れぬ壷         静 岡
自分だけの定規で計る保身術
ひけらかす夢が生活を傾ける
可愛げの無い老練の孤独癖




虎竹抄 | Link |
(2008/03/26(Tue) 08:47:12)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「時  間」            堀内 しのぶ
持ち時間ばかり数えている余生       焼 津
生涯を見つめ直した孤の時間
生きる時間まだありますと許す神
少子化へ冬の時間が長すぎる


 「雑  詠」            成島  静枝
せち料理亡き姑がいる背中        千 葉
好きなことしようなんとかなるお金
早春の里の絵原画手に入れる
自分への原点回帰する子年


 「二  月」             金田 政次郎
古色奏奉鬼面が笑う神楽舞       静 岡
シナリオの鬼は覚悟が出来ている
週刊誌俺の病気が載っている
冬の蝿どでんと転げそれつきり


「冬 休 み」            毛利  由美
集金に子が帰省する冬休み          つくば
もう嘘はつかなくていいクリスマス
いつも来る人から来ない年賀状
黒豆にはまって体重が戻る


「  酒  」            瀧    進
枡酒に男ロマンを語りかけ           島 田
男酒浮世の憂さは語るまい
根回しの酒酌をする下心
婿殿の十八番とび出す祝酒


「雑  詠」           馬渕 よし子
有頂天なって着地の場所忘れ         浜 松
尻もちをついてプライド捨てました
空欄を埋めるに愛が足りません
喧嘩する度に昔を掘り返す


「淋しい漁港」           増田  久子
元旦の舳先せめての大漁旗           焼 津
風と雲から天候当てる漁夫
漁港より魚センターだけ知られ
水産校海の男を育てない


「思春期まっ盛り」         塚本  寄道
不器用でおっちょこちょいなボクの恋   長 泉
強情で聞く耳持たぬボクがいた
この先は波乱含みのボクの道
受け取ってボクの真心贈るから


 「チャンス」            真田  義子
ゆっくりと時間流れて旅の宿         仙 台
切り札を出さずチャンスを待ってます
塩加減ひとつで決める母の味
ライバルに一歩下って付いて行く


 「雑  感」             川口   亘
非通知の電話の恐いまだ深夜          藤 枝
日の目見るやつと意見の通る夢
ひと言の云った駄洒落で座が乱れ
非常口確めておく地震予知


  「初  春」              鈴木 恵美子
初春へ霊峰富士と屠蘇を酌み         静 岡
墨をする日本の香り深く吸う
忙しい年になりそうこまねずみ
一枚の賀状一年の想い込め


「雑  詠」            藪ア 千恵子
やっかみがあちこち作る落し穴       焼 津
あちこちへ触れ回りたい良い知らせ
筋書きの無いスポーツに踊る夢
教育も財布の中も無いゆとり


 「自 由 吟」              内山  敏子
親の字を楷書ででかく筆始め         浜 松
八十路坂躓く石とよく出合う
冬が来て満杯になるコンセント
温度計と灯油の目盛りにらめっこ


  「ぼたん鍋(亥年)」         濱山  哲也
格差酔いビール・発泡・第三と         つがる
アニータの胸と態度は変らない
県庁のトイレを使う癖がつく
美くしい国で泥んこ遊び消え


 「年末年始」             中矢  長仁
世の中師走騒がしいけど知らん顔        松 山
ワイン抜きあやかっているクリスマス
仏壇にお年玉置き拝ませる
松の内過ぎまでは無理ダイエット


 「油  断」             岡村  廣司
過不足の無い人生に有る油断         焼 津
慢心にどんでん返しきっと来る
人間の油断を病魔衝いてくる
あんなのと見縊っていて負けた悔い


 「雑  詠」             西垣  博司
捨てられず倍加熱する期限切れ        静 岡
整形で東洋の顔減る気配
言い訳をまだ云えるだけボケてない
期限切れすぐ追いかける胃腸薬


 「迷  い」             安田  豊子
枯渇した脳へボリューム上げる酒       浜 松
たった一つの勲章それは過去の傷
千の風歌い迷いがふっ切れる
後悔を拾い集めて百八つ


 「本  音」             鹿野  太郎
福袋より訳ありのイチキューパー    仙 台
蜜月を少し過ぎるともう真坂
苦しいと飛行機雲が道標
家計簿が四方八方から悲鳴


 「雑  詠」            酒井  可福
三度引くおみくじ凶で済まされぬ       北九州
新年の挨拶妻の従順さ
暖冬にワーと泣き出す雪ダルマ
信じたら足すくわれた救世主


 「おひさま」            大塚  徳子
偽の一字スポットライト浴びて春    仙 台
庭にすずめ遊ばせている危機管理
分別を無くしてしまった大食らい
寛容なおひさま注ぐ地が温い


「  空  」            山本 野次馬
飲み干した空き缶海へ凪いで行く     函 南
おごりなど捨ててみなさい青い空
同じ空おなじ正座でまた会おう
空回りしてるぺタルで明日を読む


  「手  袋」            小林 ふく子
人間の底辺を知る軍手穴            袋 井
絹手袋掴んだ悪が手に刺る
手袋を脱いで幸せわし掴み
手袋が欲しい地蔵の陽の寒さ


 「雑  詠」            石井   昇
理論家が吐いた理論にけつまずき       蓮 田
風袋を引けばふわりと浮く命
控え目な猫が残した魚の骨
冬の朝妻高夫低異変なし


 「  涙  」            高橋  春江
涙壺浅いかなみだすぐ溢れ          袋 井
演技する涙はすぐにボロが出る
哀しみの涙は見せずそっと拭き
大仰に泣いて甘えるママの膝


 「お 正 月」            畔柳  晴康
門に松一理の塚もまた越した         浜 松
孫を呼ぶ背と腰まがり松飾る
言い飽きた今年こそはと言う言葉
ペットまで晴れ着を飾る初詣で


 「  孫  」            薗田  獏沓
年寄りと園児仲よく餅を搗く        川根本町
紅白の投げ餅祝う上棟式
子の夢は月で餅搗く白兎
赤ちゃんのお尻の様な供え餅


「よたよた」            鈴木 まつ子
よたよたと年始帰りの酒が効き        島 田
悪酔いの独楽はよたよたして止まり
構えてはみてもよたよたつんのめり
よたよたとした足取りで目が躍り


「新  年」            井口   薫
屠蘇を酌む音頭太字の楷書体       袋 井
新顔の賀状二枚に温かさ
かたつむりだって一緒にお正月
新しい年へ軸足かえてみる


「雑  詠」            ふくだ 万年
カレンダを買うのを忘れ銀行へ        松 原
母施設のこして家族ドライブに
屁理屈を正論に替え長い舌
義母の尻長きに耐えて嫁箒


「認 知 症」            中安 びん郎
えんどうを去年も植えた場所へ植え    静 岡
ドイツ語を英語で喋り気付かない
東大を受ければ入ると思ってる
今引いた辞書を夢中で探してる


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
ガソリンと核と公害逃げ場ない      浜 松
七十を若いと言って笑われる
オレオレへ待ってたように送金し
ケータイにしたがつんぼは変らない


 「自 由 吟」             川口 のぶ子
ぼんやりと見上げた空に流れ星     袋 井
行く末を案じてくれる夫がいる
美容院若さもとめて髪を染め
年の暮忙しさだけが行き過ぎる


 「雑  詠」            堀井  草園
押一手自信を持った二枚舌          静 岡
松過ぎて錆が取れないドッコイショ
石の垢拭いて三年先を読む
呼び止めた勇気にホッとする他人


 「雑  詠」            提坂 まさえ
ATM給料前のあいそなさ          静 岡
通帳もカードも持たず泣きもせず
風の先選んでみたい落ち葉たち
顔ぶれは揃った知恵はいま一つ


「星  々」            川村  洋未
ウォーキング今夜もあの星あえるかな   静 岡
寄り添った星に名前をつけた夜
君は星浮いたせりふでささやいた
星いっぱいグランドに寝る空を飛ぶ


 「  夢  」            中野 三根子
初夢に待ってる人が出てこない        静 岡
夢の中今日も私がお姫さま
年金をもらっていても夢がある
やっぱりね夢は今年も宝くじ


「鮎三昧・・・其の十六」      永田 のぶ男
競技会天狗河原へ勢揃い           静 岡
早朝に地元議員がご挨拶
スタートに河原を駆ける竿の群れ
釣り師には常識越えるルールあり


「一分(いちぶん)を・・・」       長澤 アキラ
一分を立てて傷口なめている         静 岡
痩せ我慢そして不適な薄笑い
泣くがいい馬鹿な男の影法師
生き下手がそろいこの世がおもしろい


「霜  柱」            林  二三子
ロウバイ咲き喪中の初春を和ませる      芝 川
花作り始めてエコに興味わき
霜柱除けて花芽のたくましさ
霜柱土の呼吸が聞こえそう


「自 由 吟」               中田   尚
いつまでもツボミ堅しで終わりそう    浜 松
もう少しドキドキさせて仏様
杉花粉少し手加減しておくれ
どうしようマークシートに嫌われた


「お 正 月」            増田  信一
お正月嬉しくもあり無くもある        焼 津
お正月年をとるたび早くなる
羽子板も凧も見ないで七草か
お年玉あげる人だけ増えてゆく


 「語  る」            石田  竹水
豊かさに胡坐をかくと痛手負う        静 岡
着地してドラマを語る竹トンボ
名も知らんあの人を待つ無人駅
視力には自信も世間見切れない


 「迎  春」            柴田  亀重
初詣で大社に寄せる人の波          沼 津
欲と夢砂ボコリ立つ神大社
タクシーへ釣りは要らぬと太っ腹
甘党が好きな橘飩避けている


 「  夢  」            多田  幹江
タレントの夢は細木のエサになる       静 岡
一夜飾りもいい夢見たと初メール
先送りの夢でふくらむ初暦
もう少しこの夢見せてくれますか


 「疑  点」            池田  茂瑠
定位置で私は笑顔向けるだけ         静 岡
純情の恋デッサンのまま終える
胸の中見せよか疑点晴れぬなら
ほほえみの私に甘さ足りません


 「胃  袋」 佐野 由利子
羊水の中の温さと朝の床        静 岡
オクターブ上げた暮らしに的をおく
マンションの陽射し一番布団干す
パクパクと入る胃袋恙無し


「牡 丹 雪」            山口  兄六
結婚をしようと決めた牡丹雪         足 利
アゲハ蝶びしょ濡れのまま飛べないね
頷いてくれているのはホストだけ
謙譲語腹に納める朝ごはん


 「  夢  」             真理  猫子
夢中です年賀欠礼致します        岡 崎
夢枕なぜかお告げはアラビア語
初夢はバンドエイドに着地する
今年こそ狼少年ここにいて


 「圏  外」 谷口 さとみ
紅を濃くきっちり書いて電話する    伊 豆
留守電は傍にいそうでオフサイド
見たくないものしか見えぬ日曜日
大根が買えない帰り道もある


 「田 舎 街」           川路  泰山
豆腐屋のラッパが街に朝を告げ        島 田
チャルメラが一際寒い宵の街
夜なきそば鳴戸一切れ寂しいね
底辺を無休で稼ぐ納豆売り


「雑  詠」             高瀬  輝男
いくつもの秘密を抱いて生きてます      焼 津
コミカルなジョークへ鬼も苦笑い
他人の書いた矢印なんか無視しよう
一線を引くから他人顔となる


「  酒  」                 望月   弘
百薬の長を座右の銘とする        静 岡
二次会の酒が上司を切っている
ハンドルに酒の禁避剤塗ってある
カタカナで呑みひらがなで酔っている


 「マジですか」         加藤   鰹
マジですか白いご飯にイチゴジャム   静 岡
マジですかあんな美人に喉仏
マジですかワゴンセールと同じ服
マジですか地球の叫び声がする

 
  顧  問  吟 
 「詫 び 事」       柳沢 平四朗
あらたまへ並んだ首は見たくない        静 岡
晩年の今日は吹かない明日の風
寒椿ぽとり偽装を見せしめる
賞味期限の仇へモラルの返討ち




虎竹抄 | Link |
(2008/02/26(Mon) 08:17:12)

自由吟 虎 竹 抄


「  道  」            鹿野  太郎
老いらくの恋にメールの花便り         仙 台
不器用にしか生きられぬ道一つ
ライバルの走りを見ると胃が痛む
犠打一つ決めておいしい酒を呑む



 「自 由 吟」            薮ア 千恵子
懐のせいだと風邪をひいている          焼 津
買物をし過ぎストレスまた溜める
カーブスでポパイになっていく熟女
夢を見るのはやめました宝くじ



「偽  装」            増田  信一
偽装なら顔と体と年までも        焼 津
偽装して嫁に出したい娘居る
偽装などとんと縁ない自営業
東大出に化けて一流もぐり込む


「計算ずく」            増田  久子
旧姓に戻れば吉になる字画           焼 津
スーパーは時に百均より安い
顔写真撮る来年のパスポート
貰う気で隣りの小菊ほめちぎり


「  嘘  」            小林 ふく子
花束にちょっぴり嘘が混じってる       藤 枝
口紅を濃く塗り嘘をまき散らす
嘘を聞く耳は半分眠らせる
今だから笑い話になった嘘


「偽  り」            馬渕 よし子
大粒の涙しっかり仕組まれる          浜 松
無理矢理に接着剤で接ぐ絆
真相を突かれ入院して安堵
目的は金です愛は餌でした


「雑  詠」             内山  敏子
バスの中雨の雫をもてあます          浜 松
フルコースよりも一杯のり茶漬
お隣も平気で値切る市場篭
食べさせる物を探した戦中派


「ふ し ん」           高橋  繭子
公園にいたら不審者にされた          大河原
会長にたてつき不審者にされた
厚着していたら不審者にされた
事件事件みんなが不審者になった


「雑  詠」             酒井  可福
大漁を誓う小舟の無鉄砲            北九州
全力を挙げて燃えきる決意だけ
我が道は理想を描きマイペース
天空の月に仏の顔を見る


「コ ー ド」             井口   薫
二次元コード老いを迷路へ誘い込む      袋 井
嗚呼ショック鏡の中のバーコード
認知症加速コードで処理をされ
Gコードしもべのように忠実に


「自 由 吟」              真田  義子
落葉踏む今年も同じ道歩く           仙 台
曲がり角思いがけない事ばかり
青春の光景よぎるメロドラマ
こだわって空の青さを気づかない


「ALWAYSわが家の夕日」     濱山  哲也
コロッケとカレーが天下獲っていた       つがる
風船をくれた富山の薬売り
金が無いのが自慢だと父だけ笑う
平成になってラムネに色が着く


 「いまどき」              毛利  由美
昔とは違う重ね着の順番             つくば
顔文字でつつがなくドタキャンをされ
健康が手段から目標になる
家庭ではまかり通っている偽装


「年 の 暮」              岡村  廣司
突然に来たわけでなし年の暮      焼 津
いろいろの鬼が出たがる年の暮
喘ぐ人ばかり見ている年の暮
女房の財布覗いた年の暮


「陽  気」              鈴木 恵美子
陰を陽に変えてしまったジンフィズ     静 岡
逢って来た余韻ハミング出るくりや
宴会を笑い上戸が盛り上げる
母の振るタクトで踊るひよこ達


「戦 中 派」              中安 びん郎
ラブレター墨で消された戦中派         静 岡
動員で英語を知らぬ戦中派
戦時中干し柿だけが甘かった
戦中派廃物利用お手のもの


 「自 由 吟」              寺脇  龍狂
原発でイルミネーション花盛り        浜 松
大安は老いの吉日入選句
コンビニで昔は値段いま日付
国防を食い物にする司令官


 「  嘘  」              瀧    進
方便の嘘がけろりと澄まし顔          島 田
やめてけれ嘘に訛りは似合わない
感嘆符つけて嘘から出た実
嘘の嘘見抜く女房の顕微鏡


 「面取り芋」              石上  俊枝
三つ指をついて不満を殻に入れ         静 岡
面取りをした芋のよう生きたいな
目立つ人どこに弱点隠すのか
面倒な事ほど先に飛んでくる


「句会初参加」             海野   満
ねじれても何も変わらぬ日本国         静 岡
いるだけであなたの笑顔華やいで
無口でも背中でわかる男粋
甘い汁ヤミに集まる黒い影


  「どっこいしょ」            石井   昇
信念を味方につけて河渡る            蓮 田
過去からの招待状が波を立て
どっこいしょおみくじは凶 花を買う
老いたるや思考の海で溺れてる


「二〇〇八年元旦」          金田 政次郎
トップ切る子歳に負けぬ朝を起き        静 岡
知友チューと友の賀状が賑わしい
初笑いクシャクシャにする百面相
こころして春の息吹を深呼吸


  「故  郷」             薗田  獏沓
くに訛りくにの銘酒でくにの唄         川根本町
廃道に昔を拾う古い橋
星空と水美しい僕のくに
凧糸と飛行機雲の幾何模様


「音  楽」              畔柳  晴康
音楽に耳傾けてよだれたれ            浜 松
幼稚園孫の音楽目を細め
音楽の切符二枚が嬉しいの
ナツメロに昔の若さ取り戻す


  「雑  詠」               滝田  玲子
清貧に生きた昭和の頑固者            浜 松
辛抱をしたか石まで丸くなる
祠から座敷わらしが顔を出す
核のゴミ残す現代人のエゴ


  「自 由 吟」             ふくだ 万年
ユニクロをヴィトン袋で持ち歩く        大 阪
肺ガンになるまで吸えない僕でした
当たるまで買い続けますジャンボ籤
熟れてても生き残れないと職安に


  「喪  中」             成島  静枝
ネズミ年喪中ハガキに描けぬ干支         千 葉
年始客用の準備も空気抜け
JPの窓口賀状へ言う喪中
神仏も英気養なう子(ね)正月


「自 由 吟」              御田  俊坊
失言で信用落す羽目となり         高 畠
失言と感じて終い悔い残る
騙される金がないからほっとする
酒に酔い車運転暴走とは


  「自 由 吟」              川口 のぶ子
あっしまった思った時には腰立たず     藤 枝
危険とは身近に起きる気のゆるみ
気にかけて呉れる人あり良い出合い
出来ないと云い出せないでいる内気


  「  疑  」             川口   亘
やがて知る自分の下手な猿芝居         藤 枝
洒落言で笑わせる手も少し萎え
知らないと云い切るまでに嘘を云い
考えを伝えることに骨が折れ


  「  友  」              加茂  和枝
あったかい言葉を残し逝った友         岩 沼
最高の笑顔でいつもありがとう
何でもない何でもないと友笑う
友のよに生きる指針が出来ました


「中  位」              安田  豊子
平均を保つ苦心のやじろべえ       浜 松
中流と思って暮らす定年後
中立の構えで生きる三世代
身の丈の暮らし静かな老い二人


  「幸  せ」              大塚  徳子
アルバムの幸せだったツーショット     仙 台
苦汁を誉めて脳味噌冴えてくる
毛糸二本結んで一目立ち上がる
抜糸して歩く幸せ噛み締める


  「  影  」              高橋  春江
影法師お前もするか俺の真似           袋 井
夕焼けが影を妬いてるペアルック
師の影を踏んで大きくなる子供
ねえあなた遺影の夫が笑ってる


  「偽  装」              鈴木 まつ子
見せかけの偽装わずかな欲を買い         島 田
浅はかな奢り指輪でつりあげる
善人と仕立て秘策を練っている
はずせない仮面でじらす恋心


「今年の私・・・・・」            中田   尚
明けまして目出たく年を一つとり      浜 松
ネジをまくでも私は私で
一病をもって今年もスネかじり
いつまでも甘えています足 ワ・タ・シ


  「持  続」              石田  竹水
好い話 続きは明日の顔で聞く           静 岡
好奇心持続している万華鏡
気遣いは無用に願う水墨画
七転びやっと六十路で起き上がる


「雑  詠」              林  二三子
悩みいっぱい希望が入る余地がない         芝 川
奉仕する笑顔相手も和ませる
豊食に鈴生りの柿放っとかれ
持ち歩く辞書にひとひら紅葉の葉


「家族旅行」              川村  洋未
風邪ひくな二度とはないぞただ旅行       静 岡
孫連れちゃセレブのふりもボロが出る
親類にないしょの旅行そっと出る
超リッチ高層ホテルお客様


「雑  吟」              堀井  草園
鬼の首取った明日の背暗い            静 岡
無いものを強請って迷う道しるべ
阿保臭いコンチキチンの馬鹿踊り
訛声の方へ流がにくらしい


  「自 由 吟」              田中 うね子
クリスマスチキンの骨でジジが死ぬ        上 尾
詰まらせる餅も買えないババ独り
新年は誰も居なくて寝正月
寝正月床擦れ出来てボケ進み


「鮎三昧・・・其の十三」       永田 のぶ男
晴天に雨は奥でも降っている          静 岡
増水に塵の流れと空見上げ
鉄砲水身一つでいいすぐ岡へ
安全は無事なればこそ世に残る


「鮎三昧・・・其の十五」       永田 のぶ男
岩陰に魚体きらめき一人締め           静 岡
竿とられ滑る河原で臑に傷
滑っても竿は死んでも離さない
百の神すべて味方にタモの中


「春 秋 T」              長澤 アキラ
なだらかな坂を拒んでする血止め         静 岡
最終回神の手形がまだ落ちぬ
負け組の夫を妻は受け止める
振り返るゆとりは有るが金が無い


  「ワ イ ン」              中野 三根子
ワインならあなたの好きな赤い色         静 岡
上機嫌 今日はピンクのロゼにする
イブの夜やっぱり雪と赤ワイン
星空に二人でグラス傾ける


「  流  」             谷口 さとみ
流し目にパワーがあったバブルの世       伊 豆
残飯がもの申してて流れない
願われて星は律儀に流れてる
うきななど流していてもプリン好き


「ヘルメット」             佐野 由利子
言い分はまだまだあると喉仏           静 岡
ホカロンは無用わたしの皮下脂肪
秋トマト何か足りない味気ない
カールした髪が嫌がるヘルメット


「  下  」             真理  猫子
財政が討議されてる袖の下           岡 崎
縁の下なんて実家へ置いてきた
小説になりそうなほど下心
イケメンの下ごしらえは醤油味


  「雑  詠」            多田  幹江
あたくしの席でしょタヌキ起きなさい     静 岡
真実を吐いてデスクを去る男
リップサービスたっぷりの売れないエステ
ワープロは乱筆ご免とは言わぬ


「氷  塊」        池田  茂瑠
二枚目の舌と半端な火を煽る        静 岡
父走る出世を知らぬ貨車のまま
溶け切れぬ氷が胸にある妬み
私を青く育てた青い月


  「寝 正 月」             川路  泰山
自我の慾だけを願うた初詣で         島 田
禁の字は遠に麻痺した寝正月
脳味噌の黴に気付かぬ温暖化
末期かも老漢一人米を研ぐ


「自 由 吟」               高瀬   輝男
文化の世財布なんかは持ちません       焼 津
ひとり酒この平凡は捨てられぬ
三叉路だ五叉路だ決にまだ迷い
策はまだある筈雨の音を聞く


「スイッチ」                望月   弘
スイッチをONシャッターは上らない    静 岡
スイッチがエレベーターで苦笑する
スイッチの自動音声どっこいしょ
平和へのスイッチ故障しています


 「秩父路へ」             加藤   鰹
妻でない人と秩父のからっ風       静 岡
着膨れてスターマインを観る師走
肉まんを半分こして冬銀河
山車が往く冬の緞帳降りて来る

   顧  問  吟 
 「  秋  」             柳沢 平四朗
人を読むお世辞の中の照返し          静 岡
走る日へ振分け荷物あえぎ出す
逃道をやっと探して偉くなる
旅プラン彩濃く秋の仕掛人
猫も噛む窮鼠で道をこじあける





虎竹抄 | Link |
(2008/01/26(Fri) 08:37:12)

自由吟 虎 竹 抄


「いち抜けた」           谷口 さとみ
プチ整形するより字でも習おうか        伊 豆
あいうえおDNAのようにある
空気のような人で私は窒息死
だからなにダイヤが吉と書いてある



 「てんつくまん」          真理  猫子
苦しくて息ができないのでしゃべる        岡 崎
笑いたいだから能面つけてみる
何を見てますか私は四角です
進めない心の中でケンケンパ



「モンスターペアレンツ」      山口  兄六
ポケットに子を入れているモンスター   足 利
両親は気付かぬうちに子の脱皮
愛情があるかが判る塩ムスビ
あげは蝶びしょぬれのまま飛べないね


「テレビ局」            松橋   帆波
謝らぬものの一つにテレビ局          東 京
亀田家の味を覚えたテレビ局
パチンコと保険屋でもつテレビ局
本当は正義でいたいテレビ局


「ル ー ツ」            井口    薫
馬鈴薯のルーツ高貴であるらしい         袋 井
おいもより私の根っこ土深く
日本人のルーツに牙はない筈が
エルメスを辿れば土の香に出合う

「春 の 音」            戸田  美佐緒
はひふへほ笑い袋に種を蒔く         さいたま
スタートの春の支度ができました
ポケットにおじゃましますと夫の手
紅ひいただけです恋が噂され


「旭山動物園」            濱山   哲也
弱虫が大好きなのは動物園           つがる
明らかにオオカミウオは数合わせ
檻の外こちらは馬鹿という獣
旭山びっくらこいたバスの列


「十 二 月」          金田 政次郎
不況なぞ知らぬサンタを子が信じ       静 岡
日没に始まるイブの灯が赤い
のれん押す野暮唇の寒い暮れ
十二月肩の凝らない本を買う


「雑  詠」            滝田  玲子
本心を吐けば返ってくるこだま        浜 松
大臣も博士も出ない過疎の村
自転車もライター並みで使い捨て
涙腺の弱さテレビで泣かされる


「  虫  」            藪ア 千恵子
今日も又やっきり虫が首もたげ       焼 津
宥めても言うこと聞かぬ腹の虫
生温い言葉にマッチ擦ってやり
売り言葉買い言葉にて八つ当たり


「自 由 吟」             西垣  博司
一声を云い忘れてのわだかまり        静 岡
まだ種火残って秋は紅を引く
人間をごった煮にする新聞紙
着信音乾いた街に吸い込まれ


「ボ  ク」            塚本  寄道
地図のない道をボクらは生きていく      長 泉
見ていてよありのまんまのボクのこと
いつだってボクの後ろにいる家族
でこぼこの道もボクなり進むのさ


 「偽  装」             毛利  由美
赤福はもったいないを取り違え         つくば
女心の可愛い証 胸パッド
もう二つ三つのサバは誤差のうち
定価据置の中身が減っている


「雑  詠」             石井   昇
抜けたらば地の果てだった細い道    蓮 田
挫折した線香なれど灯は赤い
人間の本音聞こえる三流紙
沖縄の骨が歪んで哭いている


「雑  詠」             馬渕 よし子
松茸が薄くて味覚語れない         浜 松
陽の光浴びると疼く古い傷
二枚舌持って世間を渡りきる
入れ知恵が効いたか態度でかくなる


「自 由 吟」            御田  俊坊
生きるため時の流れに逆らえず        高 畠
隣から時計にされる靴の音
目の裏にまだある嫁ぐ娘の笑顔
子には子の目標持たせ進ませる


「  耳  」            高橋  春江
聞き直し多くなる日の自己嫌悪        袋 井
又聞きの話し大きく空に舞い
聞きながす耳の形がとてもいい
福耳と云われた耳の独り言


「  道  」             瀧    進
人間を信じ如来が見えてくる          島 田
めぐり合う喜び多き遠回り
煩悩に修行の道を教えられ
女房に余生ハンドル握られる


「  秋  」             安田  豊子
もみじほろほろ過去の痛みを連れてくる     浜 松
人を恋う女ごころに秋が溶け
紅葉の峠は雪という試練
残り火を温め合ってる湯の煙


「素  直」            小林 ふく子
生きたくて素直に医者の世話になる      袋 井
どん底で素直な丸い石に会う
喋るだけ喋り後は素直な人となる
結び目を緩め素直に生きられる


「気まぐれ」            鈴木 恵美子
気まぐれの虫が心の隅に住む         静 岡
気まぐれの言葉に揺れる毬ひとつ
気まぐれなアバンチュールへうろたえる
気まぐれがうわさの火種置いていく


「雑  詠」            寺脇  龍狂
罪悪感持って日切れのパンを食べ       浜 松
無免許がだから乗りたい走りたい
お歳はと歳も聞かれぬ歳となり
大学院さり気なく言う親の見栄


「生きるパートU」         山本 野次馬
生きるってこんなに辛い涙雨         函 南
青春は裏切る事と信じてた
諭されて生きる喜び母に知る
親父ってなんて事ない伝書鳩


「入  院」             酒井  可福
胆嚢に岩をとなりてサザレ石          北九州
点滴の刻む時間がもどかしい
甲高いナースの声で朝が来る
四つ足の点滴連れてご挨拶


 「思いやり」             岡村  廣司
初耳の様に聴いてる思いやり        焼 津
どこの子か知らぬが注意してあげる
穏やかな心で愚痴を聞いてやる
愛のむちきっと生涯役に立つ


 「チルドレン」            増田  久子
先生に批判する子をほめる親         焼 津
ケータイがポケットで鳴ってた小五
遊ぶ子を見たことがないすべり台
イベントの風船欲しくない子供


 「  柿  」             芹沢 穂々美
柿の実が恋だ愛だと赤くなる         沼 津
熟柿に隠しきれない一大事
自己主張して渋柿の内緒事
干し柿の中味ずしんと肝を入れ


「老  境」             中矢  長仁
歳の数重ねて妻は強くなる           愛 媛
麗しく才たけて今老いたけて
もめ事はボケの振りする年の功
楽隠居させて呉れない孫が来る


  「自 由 吟」            鹿野  太郎
授業中ゆめばかり見てこの通り         仙 台
小商い確かに売っていた希望
火遊びを監視している腹の虫
駄菓子屋で暇を潰して生き返る


「  駅  」            成島  静枝
快速が降りたい駅を通過する         千 葉
SUIKAでピッ顔パスの頃懐しむ
エスカレーター息切れ予防膝の保護
うろうろと出口を探すコンコース


  「足  元」            加茂  和枝
弱点で呼ばれています長いこと         岩 沼
天高く自分の道は迷路です
立ち止まる勇気が持てた丸い背な
足元のざわつききっと喜びに


「空  気」             薗田  獏沓
合併の議場の空気真ッ二つ          川根本町
医者よりも山の空気で病癒え
再審に異様な空気弁護団
感謝して空気を吸ったことがない


  「  愛  」              川口 のぶ子
いじめっ児「そうねあったわ」思い出ね     藤 枝
人生はいじめを捨てて良き仲間
目に見えぬ処に愛は育まれ
寄り添った年月ほどに愛を積み


  「自 由 吟」            ふくだ 万年
百まではよろけないよう穿くズボン       大 阪
ビリだって孫は我が家のヒーローさ
ひと周り遅れて走る孫が好き
まだ早い洗濯してから衣替え


  「自 由 吟」            真田  義子
何もない一日でしたポップコーン        仙 台
何があっても夜が明けてくるこの平和
まっすぐに立っているのは父の木だ
一本杉で今も待ってる母がいる


「枯 落 葉」             寺田  柳京
秋刀魚焼く煙は小路の藪へ向け      静 岡
降るならばいっそ地球の丸洗い
団塊の奇麗な羽化へ風光る
老兵のコーラスへ舞う枯落葉


  「過 渡 期」             川口   亘
自転車のサドルを下げて足に変え      藤 枝
抜け穴を知って自分を元気づけ
気心を知られ世辞でも云う気なり
情けない捨てる気も有る風よ吹け


  「ファッション」          鈴木 まつ子
居るだけで引く手数多なトレンディー      島 田
可憐さで大正ロマン見直され
競い合うモデル彩る国際化
秋晴れやファッショナブルで若返り


  「自 由 吟」             内山  敏子
間違へペロリと出した長い舌          浜 松
冷蔵庫も空っぽ明日は年金日
わら草履布に変わってアンコール
ギャンブルへ無限に伸びる欲の皮


「画  像」              畔柳  晴康
似顔絵はびっくりする程若い顔      浜 松
写真より可愛い笑顔照れている
自画像は強く優しい顔にする
煽てるなその画は五年前のだよ


  「ミッキーマウス」          大塚  徳子
新しく一歩踏み出す日の別れ       仙 台
もう一つ確かなものに農作業
偽善者がもっともらしいことを言い
賀状からミッキーマウスの声がする


  「  秋  」             山田  ぎん
手を掛けず菊がつぼみを持っている       静 岡
古里のみかんが届く幸を受け
山紅葉秋深みゆく肌寒さ
さつまいもつる毎抜いて児がはしゃぎ


  「脳 老 化」             山田 フサ子
脳老化等圧線が込んでいる           袋 井
四季を知る双葉あしたへ背伸びする
夢の間秋の夕陽が早すぎて
お賽銭に一時の安らぎをもらう


「希  望」              中安 びん郎
長雨も今まで止まぬことは無い       静 岡
全没も努力をすれば止められる
戦争のあとは平和が訪れる
老化しても名句を出せば名は残る


  「カゼをひき・・・」         中田   尚
こらあかん三十九度にのぼりつめ        浜 松
点滴が体温計を無視してる
ああうまいいつもはまずい水なのに
生きている三食無事に食べている


「雑  詠」             堀井  草園
順風に吹かれ爽やか赤い羽根           静 岡
生煮えのサンバが憎いシンドローム
真っ先に齢の差比べ訃報欄
チャッカリが隣の席で待ちぼうけ


「雑  詠」             林  二三子
身の丈に合ったところに予防線         芝 川
節制しメタボ知らずのスリム体
昨秋のパンツが入りひとまずホッ
プチ旅行主婦の不満をやわらげる


 「落 ち 葉」              提坂 まさえ
忘れても困りはしない過去ばかり        静 岡
ネット漬け指先にある好奇心
顔ぶれは揃った知恵はいま一つ
風の先選んでみたい落ち葉たち


  「自 由 吟」             海野   満
つくり顔企みすぐに見透かされ         静 岡
人知れずたまには弱音吐いてみる
普通だよ普通がつらい人生は
わかってる眼差しという君の口


「鮎三昧・・・其の十四」      永田 のぶ男
炎天に苔の色よく水飛沫           静 岡
口紅をつけた囮をそっと入れ
立てた竿ワン・ツー・スリーどんと来る
全身が天にも昇る血が踊る


「喉  仏」              長澤 アキラ
恥さらし後悔を積み生きている         静 岡
見せられぬ背を子供が見てしまう
寂しくは無いがとポツリ喉仏
もう少し良い目みたくて背伸びする


「羅 針 盤」             増田  信一
行き先は海に出てから風に聞く         静 岡
羅針盤私の未来こっそりと
頭右 体は左 足後ろ
真っ直ぐに歩いていても落とし穴


  「雑  詠」             川村  洋未
今だって言えない事がビンの中         静 岡
行っちゃった時間通りに終電が
ハイヒール重さに耐えてなお細く
土産物不要な化粧ほどこされ


「  答  」            石田  竹水
ハードルはそのままにして今日も飛ぶ     静 岡
ハイと言う返事を聞いて胸がすく
外野席言い放題が宙に舞う
答えんでいいよ旅の流れ星


「青い果実」              池田  茂瑠
こだわりも一緒に髪を染めました        静 岡
純情が過ぎる果実で青いまま
この柵がなければ堕落する私
ゆっくりと眠る右脳が軋むから


「  石  」            多田  幹江
捨てたはずの処に石の影がない        静 岡
ビギナーズラックそこから堕ちた石
おサルさん反省なんかしていない
万感を晒して白い滝落ちる


  「秋 の 月」            中野 三根子
人生をみつめてしまう秋の月        静 岡
目をとじて月夜の中に母と居る
さみしくてそっと見上げた細い月
これだけは言っておきたい今日の月


「万 歩 計」       佐野 由利子
年金をもらって秋の小旅行        静 岡
屁理屈がやたらと多いコップ酒
転た寝をしながらテレビ聞いている
回り道して吠えられる万歩計


  「十 二 月」            川路  泰山
暮れの街浮世の垢を鷲掴み         島 田
一人酌この一年を呑みおさめ
挨拶も杓子定規の大晦日
腰抜けた蕎麦で今年の除夜を聴く


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
今日の事忘れろという夕陽かな        焼 津
聞き飽きた台詞だ首を賭けるとか
日常的事象で妻と囲む膳
分け合えぬ貧富いくさの火種かも


「このごろ」                望月   弘
特措法地球の止まるほど騒ぎ        静 岡
偽装偽装 性善説の崩れる日
病院の予約がほしい救急車
目が覚めるさあノリシロと格闘だ


 「優しい夜の過ごし方」       加藤   鰹
シャガールが見守る二人だけの刻     静 岡
カンパリにソーダ貴女と過ごす夜
スコッチと薪ストーブとヴェルレーヌ
ビバライフ君と奏でるシンフォニー


   顧  問  吟 
 「往 く 年」             柳沢 平四朗
残り火を煽る加齢の坂を往く          静 岡
良心という後悔が背に抜ける
すり減った言葉繕う歳の夜
猫も噛む窮鼠で道をこじあける




虎竹抄 | Link |
(2007/12/26(Tue) 08:17:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「雑  詠」            高橋  春江
いい格好しすぎて衣はがされる         袋 井
傷ついた夢は春までそっとして
明日という頁へ好きな彩を溶く
ノータイになってほんとの空気吸う



 「本  音」            馬渕 よし子
コマ一つ進めてからの風当り          浜 松
意見書へ本音書けぬと書いておく
お利口な人に話の腰折られ
バランスを崩し欲張り見抜かれる



「生きる パートT」        山本 野次馬
羊水の流れ大河へ続くはず        函 南
産声で履歴のページ開く僕
期待だけ背負うカバンは重かった
胸の中火事になるほど君が好き


「自 由 句」            山本  トラ夫
鉛筆を削らなかった夏休み           長 泉
家柄も血統も無い猫の恋
戦いを終えるといつもある余力
寝て起きる起きなかったらどうしよう


「整  形」            松橋   帆波
似た顔のナースばかりの美容外科        東 京
整形外科に容疑者のデスマスク
ボツリヌス菌でスターの仲間入り
教科書の偉人へ鼻毛耳毛など


「太  陽」            真田   義子
太陽が大きく見えた旅立つ日           仙 台
秋の雲会いたい人がふと浮かぶ
自分史の夢を支えてくれた骨
ライバルのでっかい夢にしがみつく


「  秋  」             増田   信一
太るのはゼーンブ秋のせいにして        焼 津
初冬でも秋と思える温暖化
我年も紅葉中か西日です
彼岸花子供の頃が走馬灯


「  秋  」           井口   薫
紅葉前線前頭葉をはや通過          袋 井
恋多き木にちがいない落葉樹
音量を一段上げて受入れる
秋深し急速にくる電池切れ


「  笑  」            薮ア 千恵子
正直で作り笑いがすぐばれる         焼 津
バカ笑いしたら肩の荷素っ飛んだ
笑うだけ笑った後の虚脱感
最後には笑うしかない行き詰まり


「弱肉強食」            増田  久子
鶏小屋へ虎猫が来る三毛が来る       焼 津
早い者勝ちを制するのはミセス
左遷地で子ら山に馴れ川に馴れ
写メールの顔で見事に縁が切れ


「自 由 吟」             寺脇  龍狂
ケータイを持つと手紙が来なくなり      浜 松
諭しすぎ元も子もない角力部屋
市民税上げてもらって政令市
初恋の相手未だに原節子


「茫茫の中の影」         金田  政次郎
米櫃の一粒ならば生きやすい         静 岡
大振り小振りブランコの下の影
電池切れ音を忘れている木馬
延命のリフォームの旅風に舞う


 「雑  詠」            寺田   柳京
唯我獨尊僕はそんなに偉くない         静 岡
均整の美人へ腹を引っ込める
年金が痩せて俺まで痩せて来た
税金が追い上げて来る九十九坂


「雑  詠」            滝田   玲子
風呂敷に小さな義理も包みこむ     浜 松
欠点も個性のうちとあきらめる
昭和史に生きたもったいないも死語
ロボットの電池切れそう千鳥足


「雑  詠」            石井    昇
縁とは不思議なものよ酒肴         蓮 田
雨か嵐か横隔膜の微振動
平和ボケ漫画の蓋が開いている
瓢箪の底から喜劇転げ出す


「ボランティア」          成島  静枝
福祉協お食事会のボランティア        千 葉
老い孤独門もこころも鍵をかけ
訪ねれば嫌なオヤジが超気さく
美しい老いは国より難しい


「  秋  」            毛利  由美
あの夏がこの秋をひとしお秋に        つくば
番組改編メイクドラマは三ヶ月
内閣も秋の雰囲気漂わせ
鍋をして先取り感のある手抜き


「政治なんて・・・」         戸田 美佐緒
ストライクゾーンがぶれてくる野心     さいたま
悪党のDNAが足りません
リハーサル通りにいかぬ猫じゃらし
はみ出したドラマが消える永田町


「家  族」             鹿野  太郎
ひんやりの下着に寄って来る小バエ      仙 台
茶柱が立って波立つ午前午後
愛一つされど呪文は百通り
姿見の前で葛藤する水着


「そ の 先」            岡村  廣司
その先は言うな誰にもわかってる       焼 津
その先を言ったら困るのはお前
その先を言わねばならぬのが掟
その先が言えず男は去ってゆく


「  波  」            鈴木 恵美子
浸食の浜辺に波の声を聞く          静 岡
浜育ち褐色の肌波に乗り
傷心を癒してくれる波といる
波長合う友と充電旅に出る


「雑  詠」            江川 ふみ子
もう少し引っぱらないで阿弥陀さま      函 南
火を貸して下さい心が寒いので
口下手が言うから本当だなと思い
女です鏡に眉を描き続け


「雑  詠」             西垣  博司
なべ底の恋はタワシで引き裂かれ       静 岡
喜寿過ぎて尚華のある女文字
気短かな男の長い自己弁護
日めくりが風邪引きそうに痩せて―秋


「米軍ミサワ基地」          濱山  哲也
米軍が冠に付く日本の地            つがる
ヘイ敗戦国笑顔の奥が言っている
郷に入りては郷に従う日本人
戦闘機見上げてみんな拍手する


 「執  着」             辻    葉
さり気なく咲いて零れたい白萩       大 阪
夕焼けの田んぼから秋が揺らめく
秋に生まれて無性に秋が絡み付く
秋冷を分け哲学の道をゆく


 「フリーハグ」            大塚  徳子
国技とやビックリガッカリと呆れてる     仙 台
厚化粧落としてビックリ別人だ
抜け道のパイプが巡る天下り
フリーハグそんなはやりに騙されて


 「染 ま る」             小林 ふく子
木の家に住み紅葉の山を待つ         袋 井
喜怒哀楽四肢に染めて生き上手
今日の画布しあわせ色に染めました
葉が染まり少し魔力が失せていく


「似ている」             中矢  長仁
似てきたか夫婦でしぐさ顔までも       愛 媛
生き様が親に似てきた困ったな
古時計手入れ良いのかよく動く
定年後夫婦同じの時間表


  「自 由 吟」            ふくだ 万年
マラソンの選手になれとお履き初め       大 阪
介護靴はいてズシリと老いを知る
賑やかな声の数だけ並ぶ靴
昼飯は諭吉で釣りと決めている


「神も仏も」            酒井  可福
パソ壊れデーターの無事神頼み        北九州
ご利益がある神ならば大歓迎
仏壇のおはぎが一つ消えている
神無月車の傷は神不在


  「ライバル」            畔柳  晴康
ライバルがジロリこちらを睨んでる       浜 松
ライバルに負けるものかと胸を張る
ライバルに笑顔会釈のこの余裕
汗ゆぐい今日の勝ち負け引き分ける


「雑  詠」             瀧    進
移り気な恋が解けない乱数表          島 田
昇降舵引いて逆風迎え撃つ
子に帰る老母の思い出蜃気楼
人の世を映す仏の掌


  「ぐし縫い」              芹沢 穂々美
雑布の運針やけにヒステリー          沼 津
運針のハートの形愛がある
おみくじは末吉で良し恋しい日
運針の乱れに何か見抜かれる


  「不 揃 い」            鈴木 まつ子
フルマラソン老いも若きも競い合い        島 田
不揃いのナスでも味覚保証つき
葉は花に逢えぬ運命や彼岸花
見比べて異彩を放つ大家の絵


  「追  憶」            安田  豊子
かやぶきの里に活きづく食文化         浜 松
絵手紙の素朴にこころ囚われる
味わって呑めば昔が揺れる猪口
追憶をゆっくり回す万華鏡


「さ が す」              新貝 里々子
何色かとさがす会話の糸口        袋 井
ツールバーとは路地裏にありますか
歩きながらのメールは打てません
この部屋になにをさがしにきたのだろう


  「雑  詠」             内山  敏子
運動会子供見るより親の会         浜 松
包帯を巻くと泣き止むかすり傷
ありのままに写った鏡を憎めない
倦怠期初心にかえりお茶を点つ


  「不 揃 い」            薗田  獏沓
分け隔てなく育てたが此の違い        川根本町
半分に切って大小この不思議
飼い猫と野良猫鋭い目が違う
縦横と墓の形よ墓地迷路


  「雑  詠」             山田  ぎん
秋の空鳩が飛んでる茜雲            静 岡
涼と風九月になって心地良い
家の前花色々に咲いている
曾孫笑み生えた可愛い歯が二本


「果たして?」             川口   亘
吸血鬼云って呉れるな採血車       藤 枝
昨日から考え過ぎて悩む今日
旧交も老令過ぎて話題消え
記名して偽名が騒ぐ元となり


  「台  風」              川口 のぶ子
台風が去って暑さの置き土産       藤 枝
一寸した事でも転ぶ歳になり
真っ直ぐに歩ける筈の曲る足
落ち着けと充分胸に云い聞かせ


  「自 由 吟」             御田  俊坊
愛想よく威張らず頭低い人           高 畠
世のために尽くす心に頭下げ
嬉しいと手紙を読んで出る涙
最後には元気に暮らせ来る手紙


  「赤い服のくまさん」         山田 フサ子
健康を楽しみながら行く余生          袋 井
支え合い楽しく生きる老いの春
奇麗に生きよう戻らぬ日を抱いて
行く余生趣味の料理の腕ふるう


「雑  詠」              堀井  草園
無駄骨で得した俺のレントゲン       静 岡
公約が避難袋の底が抜け
火遊びが好きで火傷に気付かない
音沙汰のないのが無事か土左衛門


  「原 油 高」             中安 びん郎
原油高また松根油堀りましょか         静 岡
原油高自転車乗れば健康に
原油高ウォーキングは金不要
原油高大八車油差す


「運 動 会」             林  二三子
応援に組んだスクラム崩れない          芝 川
棒倒し騎馬戦もないハラハラも
てっぺんはスマートな子で組体操
ビデオ手に我が子を追って親走る


「円  周」             池田  茂瑠
重い荷へ風を味方にして励む          静 岡
白旗を上げれば事は済みますが
反論へ円周だけは固めよう
濁流へ未練の残り捨ててきた


 「雑  詠」              多田  幹江
噂の根穿る元気なシャベルたち         静 岡
指切りの軽さジワジワ付けが来る
アンチエイジング青〜いシャツ着てさ
きのうを捨てる私を捨てる冬支度


  「第42回県大会ボツ句」       中田   尚
カップめん待つ三分の長いこと         浜 松
両国にモンゴルの風吹き荒れる
福の神わが家の地図を忘れたな
森光子でんぐりがえりまだ続け


「どきどき」            塚本  寄道
真夜中に近づいてくる砂利の音        長 泉
一発逆転ホーム目指して駆け抜ける
授業中指名をされて目を覚ます
初めてのどきどき忘れ街に住む


「ま ぶ す」              石田  竹水
口下手が言葉に笑顔足している         静 岡
握り飯塩か砂糖かまぶす腹
竹光で奇麗な首が切れますか
合鍵の腹が読めない薄笑い


「夏の終わり」            谷口 さとみ
夏まつり後は探されないお面          伊 豆
シミになる心配もないほどの恋
秋風が吹いて萎んでゆくプール
つまらないものを食べたときみは言う


  「秋  風」             中野 三根子
さわやかに笑って風を受け止める        静 岡
コーヒーの香りに私走り出す
心まで秋風の音しみ渡る
風だけが私の心知っている


「雑  詠」            川村  洋未
足腰が弱い列からはずされた         静 岡
幸せが歩いた跡を踏み固め
ドアノブで待ち続けてた恋心
はじかれて味方もいない敵もなし


「上  品」              佐野 由利子
長生きを疎まれる日がきっと来る        静 岡
順調に進む話が気に食わぬ
上品に振舞う人に肩が凝り
スタートに遅れて輪には入れない


「ログアウト」           真理  猫子
割り切りで交際中の元夫婦          岡 崎
沢庵を切る手元から嫉妬心
今夜こそ左脳と縁を切ってやる
優しさは売り切れましたログアウト


  「思うままに」           堀場  梨絵
息抜きの散歩こころの色直し        静 岡
ピーマンの空洞にある無の時間
太陽が好き縁側の回り椅子
場を読んで納得をするわたし


「な ま ず」       長澤 アキラ
家具止めた止めてないのは僕と妻     静 岡
非常食備蓄したのは酒ツマミ
犬小屋の下に置いてる貴重品
断層の左右で夫婦ちがう夢


  「風 の 櫛」            川路  泰山
風櫛の女あくまでも妖艶で         島 田
残り香に何を秘めしや磯の花
忘れ得ぬ出合い生れた七月一日
一九七一を生年月日として置こう


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
生意気な靴にマンネリ指摘され        焼 津
お目出度い話家計簿そっぽ向く
混沌の世だから恥もすぐ忘れ
弾除けはごめん先頭には立たぬ


「そして秋」                望月   弘
予報士がてんてこ舞いの秋の空       静 岡
穂を渡る風が乾いてそして秋
人肌の燗と語らうそれも秋
ソーランで日本の秋を埋めつくす


 「野 良 猫」            加藤   鰹
野良猫が「一万円でどう」と言う     静 岡
年老いたチンチラ過去にしがみ付き
三毛猫と山田うどんで飲むビール
酔った目で自殺未遂を語るノラ


   顧  問  吟 
 「右  脳」             柳沢 平四朗
子の帰省ああ引き算のお出迎え         静 岡
単細胞ヒトの右脳へ喰いさがる
偶然はもう他人事へ老い二人
人情に怪我をしそうな端がある




虎竹抄 | Link |
(2007/11/26(Sun) 08:47:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「雑  詠」            藪ア 千恵子
不用意に出した言葉の後遺症          焼 津
詮索をしすぎて首が回らない
負け犬の言い訳がもう負けている
幅利かす序列を蹴ってみたくなる



 「  月  」            小林 ふく子
三十の顔持つ月はお人好し           袋 井
月のうさぎ丸めた餅は星になる
ほどほどの幸せ月と語ります
おぼろ月彼の心は月に似て



「弱  点」            薗田  獏沓
弱点があって気楽な人が寄る      川根本町
攻めて来るから弱点は見せられぬ
前科には成らぬ程度の罪重ね
完璧でないから人がついて来る


「あれには参った」         松橋   帆波
掌のアンチョコ汗で読み取れず         東 京
暴落の日にパソコンが繋がらず
混浴といえばそうだが猿と鹿
来ないのと言われて思い当たる事


「忘れんぼ」            高橋   繭子
座敷わらしが思い出させてくれる夏       大河原
最近を忘れる執念深いひと
忘れんぼ許してくれる熱帯夜
螺旋階段記憶のドアはどこにある


「言  葉」            安田   豊子
売り言葉買って空しい自己嫌悪          浜 松
失言の尻尾踏まれた酒の量
嘘も方便使い熟して生き残る
一言の重さ優しさ難しさ


「フレンチ」             成島   静枝
フレンチのランチ御招ばれ淑女めき       千 葉
フレンチに箸置き気取り要りません
彩りとソースお代りさせるパン
ナプキンで内緒話の口も拭き


「白 い 歯」           中田   尚
白い歯と小指にハートくすぐられ       浜 松
糸切り歯明日に備えて研いでおく
白い歯で秋の味覚を頂こう
歯は大事いくらお腹が黒くても


「雑  詠」            ふくだ 万年
水溜り飛んで無念の老いを知る        大 阪
岩清水旅の終わりは母の海
ヘソ魅せぬ水着が走る孫つれて
年金を孫がくすねて夏を終え


「母 の 道」            真田  義子
母の道今追いかけている私         仙 台
旅の空心弾んで鳥になる
おしゃべりが好きな人から長電話
いつの間に風がお供のひとり旅


「ス ー プ」             山本 野次馬
ほどほどの距離でスープの冷めぬ仲       函 南
缶きりで我が家のスープ出来上がる
二世帯で味わう二種類のスープ
スープカレー今日の自分を暴露する


「結  果」           毛利   由美
平均をすれば平年並みの夏          つくば
本当に切れていたわ賞味期限
同じもの食べて相方だけ太り
早々にブートキャンプはオークション


 「ライバル」            濱山   哲也
ライバルに負けじと僕も養命酒         つがる
ライバルが美人と話す見る地獄
ライバルが言うライバルに僕が無い
ライバルは今日もきっちり痩せていた


「記  憶」           あいざわひろみ
海鳴りは母の体内から来る       長 野
恋心風がさらっていきました
傷痕は見せない白壁の土蔵
まっさらな今日に記憶を書いていく


  「  う  」            川口    亘
浮き草も終の住居を決める頃        藤 枝
浮き袋つけて泳げぬ身のあわれ
浮気でも瓢箪までにまだ遠い
運命と大袈裟が効き籤を引き


「楽 し 気」            石田  竹水
御破算で静止が出来る五つ玉         静 岡
楽し気に踊り続けて去る枯葉
乾いたら涙が甘く甘くなる
一と一足した答えが世に出ない


「愚  痴」            戸田 美佐緒
とんちゃらん今宵のカメも愚痴を言う    さいたま
好きなことグチって鶴が飛んでいく
自我ばかり通すカエルの孤独癖
たまたまにヒトの顔して生きている


「やれやれ」            新貝 里々子
電池切れ警報だとは知らなんだ        袋 井
夏バテのくすり昼寝が癖になり
サスペンス蝉も子供も消えました
生きるとはペットボトルのお茶を持ち


「夏 終 る」             酒井  可福
秋を呼ぶ風鈴の音に千の風          北九州
夏終りすべて絵日記でっちあげ
盆の明け線香花火だけ残り
鈴虫にステージ譲る蝉の声


「定期テスト」           塚本  寄道
突然に掃除始めるテスト前          長 泉
深呼吸ため息になるテスト中
やったのに思い出せないことばかり
勉強をやるぞと思うテスト後


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
蝉時雨止んで気がつく耳時雨         浜 松
理不尽へ自己責任がまた問われ
局長の常識クルマの二、三台
いつ見ても野球のサイン分らない


「花の東京」            増田  久子
上京は青春キップ五人連れ          焼 津
デパ地下でいつもながらの荷が増える
鳩居堂一筆箋を買いに寄る
五人とも巣鴨が似合うけどやめる


「雑  詠」             馬渕 よし子
媚びた日のメーク落としは手間かかる      浜 松
裏窓を開けて息抜きしています
幸せになろう苦労の中で聞く
夫にも渡せぬ鍵を一つ持つ


「豆 台 風」             加茂  和枝
これでもかこれでもかあと雨は秋        岩 沼
ビニールの弱点だけが目立つ傘
湿っぽくならないように泣いておく
豆台風おねだり何かあったはず


 「花を買う日」           提坂 まさえ
明日使う笑顔いくつか用意する       静 岡
コンタクト外して生の君を見る
撥ねと留めいまだに迷う私です
笑い方忘れたのです花を買う


 「  !  」             井口   薫
感嘆符押してメールが様になり        袋 井
背を押してくれた赤ペン感嘆符
老い止めの秘薬疑問符感嘆符
あら綺麗おいしい凄い旅切符


 「想  い」             鈴木 恵美子
かすり傷ひとつふたつはあって老春       静 岡
泥舟に乗ろうあなたと一緒なら
断ち切れぬ想いは遠くちぎれ雲
本当の愛は自然の彩で溶く


「  風  」            瀧    進
たんぽぽと噂の種が風に乗り         島 田
忍耐の手綱さばきが風を呼び
風見鶏読めぬ明日の風を待つ
諍いの心に風が吹き抜ける


  「裏 の 裏」            岡村  廣司
裏の裏読むと疑心が眼を覚ます         焼 津
裏の裏読んだら裏がもう一つ
裏の裏知ると生真面目あほ臭い
裏の裏読み過ぎ霞す右の脳


「処 方 箋」            鈴木 まつ子
てにをはが乱れて話噛み合わず        島 田
朝ドラに今日も明日もと見逃せず
都合よく惚けてみるのも処方箋
兎に角も今の元気がありがたい


  「迷  路」            海野   満
みだれ咲くおいらの時季はいつなのか      静 岡
朝おきていつも同じだそれでいい
パパ臭いおまえも臭いわが家内
人生のどこにいるのかわからない


「雑  詠」             西垣  博司
オントシと云われ半分悄気ている        静 岡
謹しめば何やらそんな顔になる
末席で金持ちの愚痴聞いている
軽く受け流したあとの立ち眩み


  「老 い る」              金田 政次郎
トンネルを数えいつしかお爺さん        静 岡
ベートーベン程よく聞いているつんぼ
翁媼無慚オチンチンは要らない
明日老いる今日一日を若く居る


  「自 由 吟」            川口 のぶ子
幸せを庭のトマトと分かち合い          藤 枝
枝はらい汗がポトポトもう暑い
三十五度パタッと止んで蝉しぐれ
風鈴の音色夕べの風に酔い


  「逃 げ る」            高橋  春江
しつような影にわたしは逃げきれず       袋 井
逃げ回る猫を相手に織るドラマ
立ち向う歳へ最後のガッツポーズ
自己逃避なんと静かな海だろう


「  愛  」              鹿野  太郎
チョイ悪の美学に妻の眩しい瞳      仙 台
微笑んでいる父の星母の星
古里の友と紐解く語り種
足元に一等星が光ってる


  「自 由 吟」             山田  ぎん
此の暑さ子等はプールへまっしぐら     静 岡
朝早く咲く朝顔が彩をくれ
海は今人が集まり波の音
月を見て夫を思い妻は老い


  「自 由 吟」            御田  俊坊
世の動き雲の流れに逆らえず          高 畠
悠々と雲が地球を掻き回す
ばりばりと思い出消して反古される
ばりばりと働く父の背が温い


  「家族しり取り」           中矢  長仁
五時が来た少し早いが縄のれん(夫)      愛 媛
縄のれんなんて小遣い有ったわね(妻)
有ったのに宿題誰か見て欲しい(子)
見て欲しい子の面倒を私寝る(妻)


「  雨  」              畔柳  晴康
長雨に句作のペンも湿りがち       浜 松
老い耄れて晴耕雨読洒落てみる
雑草が生気満々雨の庭
被災地の雨に我が身の心濡れ


  「雑  詠」              内山  敏子
月並な謝罪が続く記者会見        浜 松
口実は脚の痛みにした胡坐
混浴は男が恥じる野天風呂
もう一本ビールをねだる父の指


  「稲  光」             大塚  徳子
ショウゴイン大根おろし暑気払い        仙 台
大ジョッキゴクンと飲んで暑気払い
虫も殺さぬ顔で疝気の虫を飼う
社保庁のあたりで光る稲光


  「雑  詠」             滝田  玲子
コスモスの揺れに迷った赤トンボ        浜 松
古希と書く馴染まぬ筆に手が震え
頼られるうちが花だと諭される
マラソンの元気をもらう暑い朝


「誕 生 祝」              山田 フサ子
落し穴の近くで止まる年の数        袋 井
平坦な道ばかりない土になる
実らない多趣味たのしみ生きている
喜寿過ぎて孫から届く誕生祝


  「雑  吟」             堀井  草園
くじ運の悪い翼が糞おとす           静 岡
優しさに馴れた敷いで脛を打ち
人生に筋書はなく小石積む
ふて寝して細目で俎音を読む


「分 水 嶺」             中安 びん郎
分水嶺桜散る川暴れ川              静 岡
分水嶺場所は日本の中央部
母が生む優秀な子と平凡児
分水嶺綺麗な水が南北に


「シルバー」             中野 三根子
席ゆずるつもりがそっとゆずられる       静 岡
やさしさがシルバーシート暖める
シルバーで何度も映画みてしまう
年金とシルバーシートお出迎え


 「中  国」              増田  信一
中国は昔の日本そのまんま           焼 津
チャイナ服似合ったあなた過去の人
少子化を推進しても増える国
前食べた中国産にゃノー天気


  「鮎三昧・・・其の十二」       永田 のぶ男
雨風よ自然壊すな神頼み            静 岡
来年の遡上状況気にかかる
自然体荒れる枯れるも恵む雨
雨やどり五体真まで冷えてくる


「生き下手」            長澤 アキラ
生き下手で白と黒とがよく見える       静 岡
返り血の後が読めない血のめぐり
血止めするように時時座禅する
血の色の混じる小説書き終える


「  秋  」              林  二三子
店先を秋の果物が陣取り            芝 川
芋掘りの園児満面の笑顔
店頭でサンマに秋を告げられる
サンマ焼く七輪未だ捨てられず


「愚  妻」             多田  幹江
保険証愚妻しっかり付いている         静 岡
お叱りを自分のメタボ棚に上げ
アンチエイジングだとさ都合のいいマイク
着物を着ると動かなくなる愚妻


  「母 の 海」             池田  茂瑠
中立の軍手が白いまま乾く           静 岡
大らかに凪いだ肥満の母の海
未来図の裏にナダレの音消えぬ
疑いも少し入れてく袖だたみ


「つ  め」            川村  洋未
つめに書く愛していると風呂あがり      静 岡
さよならねマニキュア落し右左
マニキュアで染めてつぶした本音ある
つめみがくケータイボタン押しながら


「Eメール」              佐野 由利子
この角を曲り切ったら抜きん出る        静 岡
Eメール届きましたか茜雲
奥さんは節約ばかり言っている
砂浜に恋の抜け殻落ちている


「シマドジョウ」          山口  兄六
天国で妻に会ってもシカトする        足 利
ケータイ族を振り返らせた美人
ウォシュレット父さんそれはエシャロット
渋滞を抜けたらそこは青い空


  「自 由 吟」            真理  猫子
年金を運ぶカボチャの馬車がある      岡 崎
上流の魚には解けぬ化学式
加齢臭まだ熟成が終わらない
警報に勝負を挑む雨の音


「空  漠」       谷口 さとみ
飽きちゃったダメと言わないやさしさに  伊 豆
捕り方を猫に教えているねずみ
ケンカするほうが淋しいよりマシよ
終電が出るまで空車来なきゃいい


  「日 和 見」            川路  泰山
優柔不断なにをするにも出遅れる      島 田
真鍮のラッパへ誰も振り向かぬ
肩書きを担いだだけの猿芝居
日和見が好きでお山の上に立つ


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
諸事万端あなたに任す理髪店         焼 津
とどのつまりは常識論で片がつき
サア墓は買った長生きしてやるぞ
大変だ俺の提言シュレッダー


「目のうろこ」               望月   弘
目ん玉の洗濯をする青い空         静 岡
目の鱗いちども落ちたことがない
貼り替えた賞味期限で夫婦する
今日もまた買ってしまった売り言葉


 「バイバイサマー」         加藤   鰹
言うべきを言って煙たがられている    静 岡
夏の恋終わり秋刀魚がほろ苦い
キャッチ&リリース恋はゲームだな
失意の日セミの大合唱を聴く


   顧  問  吟 
 「軈  て」             柳沢 平四朗
おおっぴらに晒す仲なら臭わない        静 岡
まだまだの軈てを責めぬ自由形
老人力の自惚れ返り討ちに会う
ビー球の向うに駄菓子屋が見える




虎竹抄 | Link |
(2007/10/26(Thu) 08:27:12)

「けったいな人々」         松橋  帆波
その上にクサヤまで焼くゴミ屋敷        東 京
マヨネーズ党のルールが解らない
やっていて空しくないかエアギター
神様と喧嘩している発明家



 「セ  ミ」            井口   薫
凄まじい告白ですね蝉時雨           袋 井
夏バテの私へ蝉の勝ち名乗り
蝉時雨に脳の回路を狂わされ
抜け殻の美学と蝉の末期とを



「夏 模 様」            毛利  由美
監督もノック空振る地区予選      つくば
コールドで負けて終わった夢ひとつ
UVカット塗り少年はサッカーへ
涼し気なサラリーマンの手に日傘


「自 由 句」            山本 トラ夫
遊んで儲かると迷惑なメール         長 泉
雨漏りの為の缶カラ持っている
野菜なんか食わなくたって勝手でしょ
ちょっとだけ猫も見ていたエロサイト


「娑  婆」            岡村  廣司
笑えない喜劇が娑婆に多過ぎる         焼 津
完璧を捨てれば娑婆も住み易い
娑婆だから想定外が次次と
なる様になればいいのさ娑婆だから


「雑  詠」            内山  敏子
上品に西瓜を食べるむつかしさ         浜 松
ふさがった手に有りがたい自動ドア
給料の運び屋でよし明るい灯
禁煙を説く先生も喫煙家


「自 由 吟」             酒井   可福
軒先に職に溢れた軍手干す          北九州
妻も子も神が与えた試練かも
年金の老後のプラン夢となる
民主民意自民民意蝉時雨


「空 の 旅」           真田  義子
月見草今もあなたを待っている        仙 台
風鈴の音色に引かれ途中下車
スイッチを入れ換えてみる旅の空
白い地図持って再び旅に出る


「若 返 る」            川口 のぶ子
観覧車若き二人の初デート          藤 枝
思い出が何よりくすり若返る
考えのとどかぬ先に見るあかり
画面より老いた私を削除する


「みぞおち」            戸田 美佐緒
人間の虚飾を舐めるキリギリス       さいたま
蜩のまだ鳩尾を離れない
縫い針の喜怒哀楽を売りに出す
約束の指ゆっくりと酸化する


「レクイエム」            濱山  哲也
岸壁で友に口笛レクイエム           つがる
ヒロシマとナガサキ想いかき氷
同窓会みんな違った歳で来る
盆過ぎてやっぱり過疎は過疎になる


「女  偏」           高橋  春江
錯覚の街でわたしは未だ乙女         袋 井
密やかにラップに包む愛もあり
厚化粧しても値札つけられず
高笑い今日もわすれた女偏


 「  穴  」            薗田  獏沓
落し穴避けて平地でよく転ぶ        川根本町
現場では高所恐怖の落し穴
大損をしても懲りない穴狙い
虫も穴出たよ連れ出す車椅子


「自 由 吟」           寺脇  龍狂
原発へウチワと火鉢に戻りたい     浜 松
ヘソ出しのスポーツプロもアマもない
選挙負けほんに口惜しい夏休み
ボチボチと治ってほしい雅子さま


  「雑  詠」            瀧    進
へそ曲がりだけど個性が捨て難い      島 田
鄙の宿地酒に訛り良く似合う
モナリザの流し目俺に向いている


「は ね る」            塚本  寄道
応援の親が一番よく跳ねる          長 泉
暴言が心の中を跳ね回る
嘘をつく跳ね返ること知りながら
彼女OKだってそっとひと跳ね


「跳 ね る」           新貝 里々子
よく跳ねる乳房でおとこ釣りあげる      袋 井
亀だって跳ねて見せますどっこいしょ
中華鍋揺すると跳ねる男の譜
O脚も弾んだ青春を持っている


「暇つぶし人生」          堀場  大鯉
豚児なら豚児でいいさ気楽だよ        焼 津
陰日向なく働くと損のよう
待つこころ失せて季節も早回り
暇つぶし人生だって顔洗う


「雑  吟」            江川 ふみ子
ひとり芝居最後の幕がむずかしい        函 南
七ころび八起青山まだ見えず
受け皿もなく老々が介護する
ひと言が過ぎて世論の火を浴びる


「お  金」            中田   尚
ご利息はあめ玉一つサヨウナラ        浜 松
年金を預けてプリン返される
税上がりパチンコ屋では羽根がつく
五円玉重いユキチは軽いのに


「残  る」            小林 ふく子
レモンの香かすかに恋が残ってる       袋 井
あなたへのスイッチ残りありますか
リサイクルわたしの場所を残しとく
自分史に乗換切符まだ残る


「敬老の日 九十三歳九ヶ月」    金田 政次郎
年寄りの日に年寄りになっている       静 岡
周平に溺れています蝉しぐれ
夫婦だけ落着く場所の話する
節操を曲げぬ語録が未だ書けぬ


「得 意 気」             鈴木 まつ子
得意技此れ見よがしと網の意地        島 田
売れっ子のところ得顔に水着燃え
ことさらに自慢たらしく武勇伝
鬼の首取ったようです手前味噌


「初めての川柳」           海野   満
白球に思いをよせてラヂオきく         静 岡
蝉時雨宇治金時を旨くする
発情期寝ている妻は倦怠期
帰り道麦わら帽に赤とんぼ


 「自 由 吟」            藪ア 千恵子
口先の情に縋っている愚か         焼 津
二番手で金魚の糞のようにいる
お人好しですねと笑う泣き黒子
大丈夫薄命などと言えぬ顔


 「永  遠」             鈴木 恵美子
車座で唄った青春の賛歌           静 岡
子守唄背のぬくもりは忘れない
惜しみない汗で土と生き続け
終章を飾る言葉を探さねば


 「新  盆」             成島  静枝
新盆の手引きお寺が敷くルール         千 葉
みそ萩の役目供物へ水をかけ
新盆の明かり沼津を向いている
実印を持って集まる孟蘭盆会


「昭  和」            安田  豊子
追憶は善くも悪くも昭和の絵         浜 松
返しても昭和の砂が散る時計
リニューアルしても醸しでる昭和
急激な渇きへ遠くなる昭和


  「  か 」           川口   亘
書いた仮名我流で読むに危ぶまれ        藤 枝
格式の高い敷居は縁うすい
確実か念押されてもすぐ忘れ
格好の餌食にされる浮気虫


「雑  詠」            馬渕 よし子
大の字になって制覇の気に浸る        浜 松
雑音の中で特ダネ拾う筆
なぞなぞの答えが今日も解けぬまま
動揺を押え余裕の化粧見せ


  「自 由 吟」            芹沢 穂々美
アサガオの横芽が伸びて反抗心         沼 津
おかめの面つけた相手に騙される
曲り瓜品質保証付いてます
骨だって悲鳴をあげた骨密度


「晩  夏」             辻    葉
自然体で朽ちたのですキリギリス        大 阪
ありがたいけど残暑の中の三部経
もうすぐ秋ね満月も笑ってる
山びこがまだ返って来ない晩夏


  「自 由 吟」              堀内 しのぶ
生き地獄死んで地獄を見る家族         焼 津
生きてます死んだふりする処世術
年金で生きよとお国そっけない
耳鳴りも生のあかしか昼寝覚


  「無  題」            鹿野  太郎
馴初めの秘密むすめの友が知る          仙 台
青空を何度も運ぶ介護の手
汗流すサクラの演技買ってみる
おねだりの子猫ぱちくりがぶり寄る


  「自 由 吟」            ふくだ 万年
入湯税払い露天の妻を見る           大 阪
有るんです聞く耳無いが飾る耳
賽銭を半分入れて手を合わす
娘の為に百歩譲って今やもめ


「動  く」              加茂  和枝
自分にもたくさんあった動く場所     岩 沼
前進へ時々止まる右左
汗流すそれが私の結果です
アジサイが笑ってくれるそれで良い


  「自 由 吟」             御田  俊坊
来客に笑顔で迎え旨いお茶         高 畠
来客に接待上手い話好き
幸せが薬となってよく笑う
全盲の歌の絶唱日本一


  「  夢  」            中矢  長仁
何時までも幸せなんて夢ですよ         愛 媛
ふさふさと育毛剤で生えてきた
皆笑う喜寿というのに恋をした
宝物僕の愛しい妻ですよ


  「ジャンケン」            大塚  徳子
ジャンケンで勝っても言えぬ本音ある      仙 台
ジャンケンで決めてる一つ皿洗い
ジャンケンで勝って雑巾掛けをする
ジャンケンで勝っても譲ることもある


「  汗  」              畔柳  晴康
夏空を恨めし睨み汗を拭く        浜 松
汗のシャツ脱ぎすて素肌扇風機
ひと仕事額の汗を手でぬぐう
笑み浮べ踊るパーティー友も汗


  「つ く す」              山本 野次馬
ナンパされおんなゆっくり髪を梳く    函 南
ある日から君に溺れた蝶になる
結局はあなた次第のおんなです
団塊へ尽す時代は終りです


  「雑  詠」             山田  ぎん
夕食の曾孫の笑顔見る楽し           静 岡
家の前花色々と咲いている
松の実がころりと落ちて老拾い
つばめの子みんな育って飛んでいる


  「自由吟プラス四句」         西垣  博司
絵に書いた餅だからこそ追いかける       静 岡
絵の餅が頭の中で皿に載る
絵の餅を書いて明日の糧とする
絵に書いた餅でも箸を用意する


「炎 の 橋」              山田 フサ子
美容院美しくなってどうしよう       袋 井
炎の橋を渡った頃がなつかしい
歩いた歩いた語り乍ら毎晩のコース
ふと思うも一度だけ逢いたい


  「癌 疑 惑」             中安 びん郎
癌疑惑医者に言われて寝も遣らず        静 岡
一週間後悔しづめ癌疑惑
わが寿命これで尽きるか癌疑惑
癌疑惑解けてすっ飛ぶ妻の元


「鮎三昧・・・其の十一」       永田 のぶ男
友竿を置いたままでの昼寝どき          静 岡
鼻カンの囮へ鴉急降下
その威力釣竿までも持ち上げる
天高くカラスにまでも馬鹿にされ


「マニフェスト」           増田  信一
マニフェスト前を後では格差あり         焼 津
マニフェスト透かして見れば赤い舌
マニフェストあぶり出したら○が×
マニフェスト直球と見せ後カーブ


 「初  盆」              林  二三子
心はき出し新しい風入れ換える         芝 川
千の風に乗せて不幸を吹き飛ばす
時間という良医に心癒される
初盆を孫・ひこたちが明るくし


  「雑  詠」             寺田  柳京
眼鏡屋が何で白衣を着るのかな         静 岡
感謝して返すきれいな免許証
痣があるから善人を守り抜く
蝉がうるさいから補聴器を外す


「  夏  」            滝田  玲子
キリギリス声も聞こえぬ夏休み        浜 松
蝉時雨読経に合わせ姦しい
麦わら帽トンボ追う子も現れぬ
もぎたてのトマトが旨い炎天下


「思いがけないこと」          増田  久子
世が世ならなんて自慢は無視しよう       焼 津
ご好意で借りた洋傘ひらかない
一生のローンで建ててこの程度
握手する気の手へガムが乗って来る


「バースデイ」            中野 三根子
母に今感謝している生まれた日         静 岡
還暦の祝いは母の形見分け
今年から届かぬ母のプレゼント
ローソクが多くてケーキ悩み出す


  「自  由」             川村  洋未
先着順いつでも僕の前で切れ          静 岡
雨チャンス君と二人で入る傘
隠れみのこの頃穴があいてきた
耐火金庫買ったら金がなくなった


「風  鈴」            佐野 由利子
軒下の風鈴チリンおやつです         静 岡
教育勅語まだスラスラとお爺ちゃん
のろのろとじれったいなあ蝸牛
居心地が良いのかカラス帰らない


「雑  詠」              堀井  草園
休養の出鼻挫かれきな臭い           静 岡
肩で風切るロードは蒸し暑い
病めるだけ病み満月に身を晒す
知らんぷり噂が見えたつむじ風


「雑  詠」            多田  幹江
自打球と思えば軽い胸の傷          静 岡
バタバタしない負け犬の空威張り
胃の腑にも欲しい国境警備隊
きのうを仕舞う私を仕舞う小抽出し


  「ほ つ れ」            池田  茂瑠
戻らないものが笑いの底にある        静 岡
捨てられた私のほつれ月へ縫う
羽根のない私が沈む風の隅
縫い合わす私の中身出ぬように


「盛  る」       石田  竹水
義理人情空揚げを盛るお持て成し    静 岡
狂いたい時も耐えてた腕時計
茨道越えた元気な土踏まず
でかい夢小間切れにして日々食べる


  「か  さ」            長澤 アキラ
自惚れを抱いて一人の旗をあげ       静 岡
のど仏ことさら隠すやぶれ傘
百均のかさで家族を守り抜く
あの人の日傘が前を横切った


「秋 茄 子」            真理  猫子
マンションは豊作 少子高齢化        岡 崎
秋茄子を食べてみたくて離婚する
悩みごとインテグラルで処理をする
ボケ茄子も高貴な色を身に纏い


  「  夏  」            谷口 さとみ
計画表だけは完璧夏休み           伊 豆
惜し気なく肌を出しても汗まみれ
枝豆を冷やし浴衣で彼を待つ
会議室悠然といる蚊取り豚


「夏の魔法」       山口  兄六
風鈴の魔法で眠る夏の午後       足 利
熱帯夜 歌い足りないネオン蝉
どちらから手に触れたのか夏祭り
夕立ちが一緒に泣いてくれた恋


  「自我の天」            川路  泰山
美しく生きよう芋の皮を剥く        島 田
足腰の金属疲労鰻食う
舌先が笑う天然うなぎだな
窓越しに深ぶかと見る自我の天


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
ご自由に評価わたしの素顔です        焼 津
とは言うが今も逆転機を狙う
勝つために規約にはない手も使う
その時へ蹴飛ばしてゆく予定表


「オノマトペ」               望月   弘
パッと咲く夏の夜空へ淡い恋        静 岡
ジリジリと残暑見舞のハガキ来る
音もなくポトリと落ちる目の鱗
ショボショボとヨロヨロ僕のオノマトペ


 「震 源 地」            加藤   鰹
片ピアスすったもんだを招き入れ     静 岡
投票率五割 行かない人五割
金出さぬ奴に限って口を出す
地震かと思えばブートキャンプかよ


   顧  問  吟 
 「多  情」             柳沢 平四朗
なべとふた神の悪戯を憎めない         静 岡
波紋には触れず多情の避雷針
回想が肥える対話のコレクション
花筏に積むシナリオが座礁する




虎竹抄 | Link |
(2007/09/26(Tue) 08:22:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「人間模様」            中田   尚
無人駅ケータイメールにぎやかし        浜 松
パチンコ屋けむりと欲がてんこ盛り
駅の隅抱き合う人と寝てる人
車内です口紅なんぞ要らないよ



 「明 日 へ」            新貝 里々子
捨てても捨ててもまだがらくたの山       袋 井
紅ひいてそんな妥協は出来ませぬ
フライパン時々おとこ狼煙揚げ
ロスタイムおんなとどめるコンパクト



「ミドルエイジ」          毛利  由美
美しい友にも老眼の仕種        つくば
いい年をしてと子供に言われた日
おばさんの強さは嘘のないところ
正直に歳を言ったらどん引かれ


「自 由 句」            山本 トラ夫
欲のないようにも見える無為無策       長 泉
ゴネ上手死んだ振りまでしてみせる
ティファニーの腕時計とて同じこと
僕のせいじゃない電池が切れただけ


「  夏  」             濱山   哲也
おそるべき乳房だ三鬼夏来たる        青 森
少年と草が競って伸びていく
ドラッグを売っているのはキリギリス
青いとき良いも悪いも容赦なく


「メランコリー」         あいざわひろみ
怪物のメランコリーはわかるまい        茅 野
刺抜きを持参で臨む会議室
年輪の狭い部分は倦怠期
トトロにはあった優しさ温かさ


「コンサート」           大塚  徳子
みちのくの駅に西口東口            仙 台
合挽きは内緒なんです昔から
人といういつか越えたい山がある
蝉時雨鎮守の森のコンサート


「淋しいネ!」          瀧    進
アフターファイブ着信メール読み返す     島 田
老脳の記憶気紛れ蜃気楼
留守宅の軒に風鈴泣いている
平凡に徹し切れない自尊心


「自 由 吟」            江川  ふみ子
役目終え指の渦から枯れて行く        函 南
納得のゆかない傘の半開き
カチとくる一言嫁の眉動く
本当の味方は潮が引いてから


「おのぼりさん」          井口   薫
酸欠で巡る東京新名所            袋 井
モネ展を出ておもむろにさす日傘
バリウムの味にも慣れて古希の坂
全身全霊さくらんぼ狩り今最中


「逃 げ る」             戸田 美佐緒
大変だ漬物石が家出した           さいたま
恋人よ嘘をついてもいいですか
条件は張り子の虎という家族
完熟のりんごあなたから逃げる


「雑  詠」           成島  静枝
押し入れを丸ごと干してティータイム     千 葉
神様に試されている葬続く
切換えが早い脳です女傘
ボランティアやりませんかと来る福祉


 「電  気」            畔柳  晴康
お仕事もお遊びまでも電化され        浜 松
オール電化でも心配は原発ね
からっ風活かして欲しい電力化
ロボットにまだまだ負けぬ腕自慢


「自 由 吟」           真田  義子
砂漠化が進む日本の雨事情       仙 台
運命線ゆっくり変わる夜明け前
わたくしのピンチ助けた赤い靴
ランプの宿で優しい顔になって行く


  「  花  」            安田  豊子
月光へ月下美人のワンルーム        浜 松
紫の情緒に浸る藤の下
過去の花みんな愛しく胸で咲く
花道を過ぎてたおやかいるひとり


「雑  詠」            内山  敏子
涙顔大きく映すメロドラマ          浜 松
便利さに慣れて足腰弱くなり
お似合いと言われネクタイ二本買う
厨の灯主役の主婦がいて平和


「言いたい放題」          増田  久子
白鳥も孔雀も美貌とはいえぬ         焼 津
のんびりの一人の夜へ蜘蛛が出た
寅さんが身内にいたら困りもの
理屈では七起きですむ七転び


「素  直」            馬渕 よし子
あの頃のわたし素直な妻だった        浜 松
素直さに欠けてレッテル変り者
余りにも素直に見える人の粗
お手本に素直で主張伝わらず


「雑  詠」             酒井  可福
大酒をやめる決意の二日酔い          北九州
カラオケのマイクはなれず終電車
一枚を閻魔に抜かれ夢が覚め
美しくやさしい顔で癌告知


「敵 味 方」            鹿野  太郎
相方に泣かされて来た名コンビ        仙 台
赤黄色決まって散歩する二人
さっそうと社保庁へ飛ぶ鬼ヤンマ
駄菓子屋で付けた抗体子が拒む


「鈍 感 力」            増田  信一
鈍感は大丈夫です生まれつき         焼 津
鈍感と言われた子供今社長
鈍感と物忘れの差紙一重
鈍感と敏感混ぜて政治家に


「  風  」            小林 ふく子
涼風に会うから身なり整えて         袋 井
熱風もグチの一言漏らしてる
夕凪に血圧上る音を聴く
病名は問わず医者の風を観る


「叩  く」             鈴木 恵美子
生真面目へ母の太鼓が小さく鳴る       静 岡
しずしずと叩く老境の扉
青春の扉は思い切り叩く
路地裏に昔ながらの子等がいる


「  乱  」             鈴木 まつ子
どちらにも言い分あった風の乱         島 田
冷えきった飽き風が立つ乱れ髪
感情のもつれで弦が乱れだす
突っ張って不平を鳴らす乱気流


 「少・青・凡・老」         金田 政次郎
水脈の彼方にもがく青リンゴ        静 岡
好奇心斜に構えている不遜
野次馬で良し主義の無いプログラム
磨かれぬ三面鏡は痴呆症


 「理  想」             山本 野次馬
ほどほどの息で余生をながらえる       函 南
精一杯描いた夢が終わりそう
アンモナイト前頭葉に残す夢
理想論おって迷路の中にいる


 「自 由 吟」             ふくだ 万年
孫つれて笑顔背負って嫁が来る         大 阪
亭主好き使い勝手がいいのです
砂浜の挑発目線につい会釈
新しい水着で走る美女とトド


「曇 り 空」            加茂  和枝
どかあーんと一発雷鳴り雲になる       岩 沼
長雨にめんこい顔が曇り出す
何事もなかったように梅雨になる
痒い痒いマイナスイオン求め行く


 「反  省」             岡村  廣司
ばれたなら反省ポーズとれば済む    焼 津
反省をしても目覚めりゃもう忘れ
反省もせずに弁解うまくなり
それ以上申すな反省しとるから


「優しさごっこ」          高橋  春江
わっと夏優しさごっこもう限度      袋 井
涙腺が弱いかなみだすぐこぼれ
善人の顔して弾を打つスリル
許す日の室には花があふれてる


  「あ る 日」            川口 のぶ子
点滴のぽとぽと落ちるもどかしさ        藤 枝
病棟を行き交う人の足のあと
リハビリに痛さこらえて生きる道
歩けない杖がたよりになる私


「雑  詠」             寺脇  龍狂
メイファーズ通じる戦友も居なくなり      浜 松
銭踏むな本を蹴るなは死語となり
放言は親任式の時に言え
政令市に住ませてもらう市民税


  「暮 れ る」              薗田  獏沓
恙なく今日も暮れます夏の月         川根本町
計画が計画のまま今日が暮れ
日が暮れて一歩動いた石地蔵
矢車が鳴りっぱなしで今日が暮れ


  「  無  」            堀場  大鯉
偉い子をまぐれ当りと見る夫婦         焼 津
反逆のできぬ豚児も可哀相
待つこころ薄れ季節の早回り
無に帰る石へ彫ること多すぎる


  「万 華 鏡」            山田 フサ子
万華鏡楽しい夢を授けてね           袋 井
どの指も無言で役目果たしてる
何事もなかった様にチャイム鳴る
ささやかに生きて月日が早過ぎる


「自 由 吟」              御田  俊坊
ヤマザワの安いチラシを漁り出し     高 畠
胸張って悠々生きる発破かけ
子の自立母の任務が軽くなる
結び合い絆の太さ血が通う


  「レストラン」            西垣  博司
横文字のメニューに財布怖気付く      静 岡
伝票の数字はこわいもの見たさ
支払いを済ませたあとの沈みよう
こんなにも軽い財布で店を出る


  「めのこころ」            川口   亘
明言を吐く程もない勇み足           藤 枝
名案が浮かばぬ儘に四苦八苦
面々の出席投句に目を見張り
名勝も歩けぬ足に云うつらさ


  「努力をすれば」           中矢  長仁
頑張っている人 運も味方する         愛 媛
努力する持てる男もそれなりに
取り戻す努力実ってホタル飛ぶ
暮らし良さ身の程知って背伸びせず


「雑  詠」              滝田  玲子
湿った心太陽に干す梅雨晴れ間      浜 松
躓いた石に生き方教えられ
リフォームをしたい私の錆びた脳
ひまわりも暑い暑いとうなだれる


  「雑  詠」              山田  ぎん
裏の畑なすと卯とトマト植え       静 岡
裏の道大きな蛇で怖くなり
パチンコの灯が「入るぞ」と呼んでいる
満車です儲かるのかなパチンコは


  「鮎三昧・・・其の十」        永田 のぶ男
雨上がり柳色には追いがよい          静 岡
ポイントで違わずグンといい当り
落着けと外さぬ様に辺りみる
よく見られ周囲の数も術のうち


  「ひとりっ子」            堀井  草園
八起目に非常電池が切れていた         静 岡
浮動票蒔かない種が喧しい
生かされて子のひと声が杖となり
聞き下手で早合点の三叉路


「辞 任 劇」              中安 びん郎
太平を何で乱すか辞任劇          静 岡
後釜は元チルドレン辞任劇
秀才が引き際悪き辞任劇
安倍総理しどろもどろの辞任劇


  「雑  詠」             芹沢 穂々美
てっぺんの枝は敵から身を守る         沼 津
バイキング腹八目までにする
朝ドラが終わり掃除機かけ始め
せっつかれ特濃ソース時間切れ


「雑  詠」            林  二三子
それなりに写る鏡が疎ましい           芝 川
期限なく続く介護の細い綱
めっちゃくちゃ旨い話に騙される
ゴーヤ食べる猛暑乗り切る策として


「  雨  」             中野 三根子
小雨ならあなたの傘に入りたい         静 岡
雨の夜そっと聞いてるセレナーデ
二人なら雨もうれしい傘ひとつ
雨の夜心ゆったり休ませる


  「真 面 目」             薮ア 千恵子
真面目だと言われ脱線できずいる        焼 津
待たせるも待つのも嫌な几帳面
見えすいた世辞に疲れて貝になる
要領の悪さいつでも馬鹿をみる


  「花  嫁」             川村  洋未
嫁に出す母もいっしょについて行く       静 岡
婿が来た満点つける親心
結婚式何が何でも雨降るな
花嫁の次にうれしい老いた母


「雑  詠」            堀場  梨絵
生れきて中途半端なニート族         静 岡
時間切れ僕の真実届かない
荒れ模様中途半端でさじ投げる
運のいい馬車に乗りたい夢女


「上 げ 底」              池田  茂瑠
限界の腰であること内緒です          静 岡
渇いてる命と追った愛でした
上げ底の底に女の舌が棲む
妥協点重く一段下げました


「  輪  」            多田  幹江
美しい国輪になって語ろうよ         静 岡
歩け歩けの輪唱は耳にタコ
山枯れてサルもヒト科の輪に入る
知恵の輪と辛抱でした共白髪


  「分 岐 点」            真理  猫子
本能があなたを尾行し始める         岡 崎
この次の交差点まで手をつなぐ
上段の構えで君を待っている
幻想に手招きされて秋葉原


「道具立て」       山口  兄六
謙譲語腹に納める朝ごはん       足 利
終電で電車男は売れ残る
ジャングルへ潜るベッドは宝島
携帯があれば戻れる俗世界


  「真  意」            石田  竹水
晴れになり傘は浮気をして不明       静 岡
百歳の表彰がある其の真意
手短に話せば歯磨で離婚
貫禄に見える脂肪の太っ腹


「マイライフ」           谷口 さとみ
いびつでも旬の露地もの大御馳走       伊 豆
一聞いて十を忘れる生き上手
何もないそれも幸せかもしれぬ
北国の春夏秋は冬支度


  「話し合い」            佐野 由利子
てっぺんと根元の話噛み合わず        静 岡
口裏を合わせた事の自己嫌悪
底辺でやっと分った裏表
話し合い納得をしてまあるい輪


「流 れ る」       長澤 アキラ
本流になると正義が沈みだす      静 岡
酸欠の川を流れる雑魚の群れ
激流で掴んだ藁が敵の足
悠久の河は本音を明かさない


  「アゲンスト」           川路  泰山
遊行期の旅も恋路を泡沫と         島 田
美人なら魔女でも良いさ恋時雨
恋風か魔風か臍をえぐられる
アゲンスト男泰然自若たり


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
平身低頭 靴のサイズへ合わす靴       焼 津
考慮中なのに時計は止まらない
日々平穏カバン一つの旅思う
無視された主張よ今は耐えてくれ


「  汗  」                 望月   弘
いい汗を絞ると精製された塩        静 岡
コーヒーもテレビも薄くアメリカン
戦争を知らない子らは宝物
年金がブランコしてる青い空


 「自 由 吟」            加藤   鰹
オッサンと呼ばれた 僕のことだった   静 岡
ほふく前進 妻に見つからないように
セクシーな女コーラをラッパ飲み
どん底にセミの大合唱響く


   顧  問  吟 
 「か  べ」             柳沢 平四朗
光る風ひそかに五感研ぎすます         静 岡
部屋じゅうの壁松坂が投げている
鍾乳洞の怪筍のあごたたき
腕組を解かねばならぬ人と逢う




虎竹抄 | Link |
(2007/08/26(Sat) 18:32:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「魅惑のタンゴ」          新貝 里々子
ドレスアップ淡水パール光らせて        袋 井
バンドネオンと流れつくのはあの岸辺
ふつふつと嵐子よこれはタンゲーラ
このひと皿がブエノスアイレスの悲哀



 「雑  詠」            内山  敏子
スタミナの切れ目をつなぐ缶ビール       浜 松
見る人が見れば背伸びとわかる見栄
忘れよう昨日の苦い話など
飽食の口にやさしい梅茶漬



「しあわせ」            鈴木 恵美子
喜怒哀楽積んで夫婦の第二章      静 岡
倖せを掴むと翔んでみたくなる
愛かしら身近な人が優し過ぎ
しあわせな道だゆっくり歩きたい


「た ま に」            濱山  哲也
山へ行きたまに人間放棄する         青 森
歓楽街男をたまに取り戻す
マジ顔でたまに経済など語る
怒られる「たまにはちゃんとしろ」等と


「美しい国」             松橋   帆波
年寄りに美しくない事ばかり          東 京
「美しい星」とは何とお気楽な
クールビズ四十九日はまだ済まず
九条の他も変えたいようですな


「思 春 期」            塚本  寄道
なぜだろういつも気になる隣の子        長 泉
試験中あの子のうなじチラリ見る
好きなのに話したいのに知らんぷり
徹夜して初めて渡すラブレター


「近  況」             川口   亘
多数決なんて言葉に追われる身         藤 枝
大方は知らない事に押し切られ
落ち着いて考えて知る怖い罠
横柄な割りに態度が細か過ぎ


「こ と ば」           毛利  由美
今時の言葉を知らぬ広辞苑          つくば
外国人力士の美しい言葉
お母さんナウイだなんて古過ぎる
この頃は日本語にまで字幕入り


「十人十色」            中田  尚
志をもって開店の日の落し穴         浜 松
辞職より自殺を選ぶおろか者
「負けないで」さけんだ人が負けちゃった
星空をピストルが刺すナイフ刺す


「ハードル」            真田  義子
ハードルが高くて水を飲んでいる       仙 台
条件は揃っているがまだ一人
深い傷閉じ込めてます古日記
深い訳隠して旅に出る私


「時  代」             山本 野次馬
ソフト麺ばかり食い散らかしていた       函 南
日本万歳と言っては死ねません
糸電話なんかは無いと諭される
親父の威厳など綿菓子に消える


「雑  詠」           滝田  玲子
目の保養だけでは済まぬデパめぐり      浜 松
楢山も定員ですと帰される
待合室愚痴を言い合い姦しい
紫陽花が見事梅雨空ぱっと映え


 「口惜しかったこと」        増田  久子
はじめからチビへ二センチ背の縮み      焼 津
山道で展げた地図は別の山
バーゲンを積んで自転車川に落ち
バラ買いのジャンボ末尾で逃げた億


「蟻 の 性」           柏屋 叶志秋
バラの花自分の刺に気が付かず     山 形
職退けど蟻は定時に目を覚ます
近未来地球眺めて酒を飲む
温室で咲いた花にも悩みあり


  「ほくそ笑む」           西垣  博司
泣きごとを云えば誰かがほくそ笑む     静 岡
同情の背中でほくそ笑んでいる
ほくそ笑む腹で金持ち口で泣き
ほくそ笑む事だってある人だもの


「  手  」            馬渕 よし子
もみじの手いつかこの手で介護受け      浜 松
差し延べた手を疑いの目で見られ
幸運を逃がした手だがよく動く
触れた手を握り返して日日平和


「恋 色 々」            瀧    進
初恋の思い出花の一行詩           島 田
多情仏心恋が狭間に苦悩する
恋一途お七命を燃え尽くす
失恋の心あざみを摘んでます


「雑  詠」            寺田  柳京
手掴みの火傷の痕がなつかしい        静 岡
蜘蛛生まれさわやかに散る娑婆の風
長生きの約束があるクラス会
揺籃の我家は遠い虹の中


「雑  詠」             藪ア 千恵子
札束の舞い散る先は闇の中           焼 津
実像と虚像が絡む政治の場
少子化に永代供養予約する
長いものに巻かれて閉じる日記帳


「ゴミの山」            芹沢 穂々美
エンゲル係数知られてしまうゴミ出し日    沼 津
ゴミの山欲の深さでまだ呆けず
人生の山場はとうに越えたはず
クモの巣を作ったクモの誤算の日


「出  る」            薗田  獏沓
筍の尖がり大地を割って出る        川根本町
森深く童話次々生れ出る
虫も出た姉も連れ出す車椅子
合併に出張った処削られる


「テロチェック」          井口   薫
一歩目のハワイ指紋と顔写真         袋 井
脱け殻が無様ファーストクラス席
ワイキキの波ブランドの顔でくる
折角の英語出番のないハワイ


「やれやれ」             鈴木 まつ子
披露宴美辞がえんえんまだ続く        島 田
申告書ぴったりしないにらみ合い
相槌も打たねばならぬ痴話げんか
先ず細く長ーく生きて良しとする


「暑  い」             小林 ふく子
スパイスを効かせて夏に立ち向かう       袋 井
決断を迫るひまわりこっち向き
陽が落ちた山の向こうは熱かろう
暑い日の番茶に涼を見つけてる


 「梅  雨」            酒井  可福
梅雨入りにお印程の雨の粒         北九州
チビリ下駄梅雨であろうが呑みに出る
紫陽花も顔色変えず水化粧
梅雨入りにおんぶ蛙の笑みを見る


 「散  歩」             岡村  廣司
散歩する度健康というおまけ         焼 津
お若いと言うのを期待する散歩
散歩道肥満の人に追い越され
平和だね犬の散歩に人が供


 「サラリーマン」           増田  信一
合併しまた合併しあなた誰           焼 津
専業の主婦の予定が今夫
見込ある言ってた上司左遷され
定年後妻の御抱え運転手


「ラッパ吹く」           山田 フサ子
美しく老いる火種を埋めておく        袋 井
ウォーキング頭上に鳥の声ひびく
平穏に生きて青葉の一しずく
美しい國へとラッパ吹いている


 「貴様と俺」             金田 政次郎
ファンファーレ貴様と俺がすれ違う   静 岡
見せたがる貴様の小指はブスだろう
鼻白む貴様が見てる泣くもんか
キリストも釈迦も縁ない無垢な俺


「  腕  」            堀場  大鯉
いい腕と言われてモテた頃もあり     焼 津
片腕がまた出来ました我が句会
腕組みが固すぎいい句浮かばない
腕まくりしても所詮は空元気


  「拘  来」            成島  静枝
点滴優先黙る拘来帯              千 葉
ぷくぷくと酸素マスクへ続く泡
束の間の自由頭も顔も掻く
切なくて止むなし紐はゆるくつけ


「  鬼  」             高橋  春江
鬼は留守いのちの洗濯しておこう        袋 井
鬼さんこちら鬼の貴方はもういない
佛とも鬼とも出合う回り途
身の内の鬼一匹がまだ騒ぐ


  「約  束」              安田  豊子
ひとりでに時効になったいいなずけ       浜 松
義理立ての約束だから破れない
のろまになって約束なんてできません
美しい公約なんて信じません


  「混  沌」            鹿野  太郎
じっくりとおさらいをして深呼吸        仙 台
ねんねこがポストの中で呼んでいる
島国で良かった好きな色一つ
五月病一番多い自衛官


  「勲 八 等」            寺脇  龍狂
勲八等二十の汗がしみている          浜 松
桐ッ葉にわが青春が凝縮し
粗末にはできぬ五年の重き日々
勲八等吊って二度めへ胸を張り


「雑  詠」              山田  ぎん
あじさいが色取りどりに競い咲く     静 岡
あやめ咲き見事に咲いて足を止め
曾孫笑み老いと遊ぶよ華を受け
衣替え薄着に成って風邪を引き


  「山 吹 草」              大塚  徳子
山奥で山吹草が生れてる           仙 台
木漏れ日に山吹草が揺れている
清楚な貌で山吹草が咲いている
山越えて山吹草の花畑


  「  風  」             畔柳  晴康
気弱だなひとり眠れぬ夜の風          浜 松
ビル風にセットした髪また乱れ
凧祭り吹いて欲しいよ春の風
元気ないそよそよ風の鯉のぼり


  「北海道ドライブ」          中矢  長仁
気持ちよく走る道ならデッカイド        愛 媛
広い道一直線で何処までも
一日中走って居ても疲れない
お土産が一杯になり帰ろうか


「元  気」              加茂  和枝
あなたから元気を貰うありがとう     岩 沼
ゆったりの若葉の森の深呼吸
鯉のぼり空を見たので帰ります
少しだけ雨を下さい休みます


  「自 由 吟」              川口 のぶ子
久々の雨に草木も若返り         藤 枝
おだやかな日々を送りて喜寿祝う
喜寿迎え今日で最後の同窓会
背を丸め辞典をのぞく虫めがね


  「自 由 吟」             御田  俊坊
透析で血液洗い生きる人            高 畠
地球ごと洗い汚れを落としたい
献血は命を救うと待っている
古里の墓に参拝出来ぬ罪


  「雑  詠」             堀井  草園
欠点が邪魔で逃げ道掃いておく         静 岡
耳栓で傷なめ合って黄昏れる
投げ槍を束ねた紐が伸びて行く
憎いまで上向く花に目が触れる


「傘寿過ぎ」              中安 びん郎
四つん這いして草を取る傘寿過ぎ      静 岡
恋文は最早書けない傘寿過ぎ
足腰が言うこと聞かぬ傘寿過ぎ
老妻に世話を焼かれる傘寿過ぎ


  「ウォーキング」           林  二三子
箱根路を歩く杉林に魅了            芝 川
登り切り旨い空気と達成感
ここかしこ湧き出る水に癒される
遊覧船横目に湖畔ウォーキング


「十 六 夜」            萩原 まさ子
写メールで旅の醍醐味持ち帰る          静 岡
嫁ぐ日は格差社会の出発日
嫁姑戦いすんでお茶を飲む
確かかと聞く移り気な十六夜


「自 由 吟」             提坂 まさえ
顔洗うゆうべの喧嘩流れない          静 岡
日当たりがよすぎたのかも萎む恋
名刺出す鈍感力も載せておく
メリケン粉クッキーにする母遠忌


  「必 常 食」             石田  竹水
楽しんだ思い出だけの必常食          静 岡
食料と寝袋持って行く樹海
片足を笑顔で入れた蟻地獄
面白のツボを知ってる好奇心


  「口 下 手」             堀内 しのぶ
口下手の絵文字メールがよく喋り        焼 津
口下手のパントマイムに花ひらく
口下手な夫の汗知る靴の減り
口下手を愚直に守り難を避け


「近  詠」            多田  幹江
アメリカンブルーに染まる美し国       静 岡
キャラ脱ぎ捨ててにんげんを捲き戻す
切り口上の中身竹光ではないか
輪の中に鎮座ましますクラスター


「現実逃避」              真理  猫子
厄介なメール読まずに食べました        岡 崎
やる気ない時の人気はパンダ並み
見ない振りしても三つ目がやってくる
特急で現実逃避して帰る


「自 由 吟」            谷口 さとみ
永遠を願うものほど消えてゆく        伊 豆
ギプスとれ用は無いけど遠まわり
不意に干支聞かれてサバが読みきれず
新聞に仲直りのタネ探してる


  「鮎三昧・・・其の九」       永田 のぶ男
一に針 二にはオトリで 三に場所       静 岡
雨降って想いは川原 鮎の苔
殺生の好きな輩が友を呼ぶ
まだ早い苔は乗らずにまた雨か


「波  紋」       池田  茂瑠
波紋ほど私広がれない女        静 岡
円満の柄ハンカチの狭さにも
触れさせぬ過去を港の女将持つ
揺さぶりを罪な笑顔とかけてきた


  「  父  」            中野 三根子
父は今 私の中に生きている         静 岡
メロドラマ父からそっと下を向く
いつだって弱音をはかぬ父が好き
父からの小言数えてなつかしむ


  「ひ と り」            川村  洋未
缶ビールわびしく冷やす冷凍庫       静 岡
お手上げさ誰かタオルを投げてくれ
一人勝あとからつけがどっと来る
三面鏡知らない顔が笑ってる


  「友  情」        佐野 由利子
友情は果敢なきものよ女達     静 岡
若いねと互い心に無いお世辞
正論も馬耳東風の天の邪鬼
一日の反省をする床の中


「もういいか」         長澤 アキラ
ライバルと言われ養毛剤を買う          静 岡
スタートの一歩手前で嫌になり
並行線手を握り合う時もある
各停で気負いの抜けた本籍地


「西  東」            川路  泰山
光琳図京に咲かせて美を競い          島 田
京の美を舞って扇に紅九段
枕絵師情話の紐を江戸に解く
浮世美を粋に流した江戸気質


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
わたくしの自慢ずーっと貧乏で          焼 津
深海魚たまには戦見においで
百グラム程だが俺もゴミは出す
豊かさがまた一つ消す里の森


「愛する地球」                望月   弘
愛掛ける円周率で生きていく        静 岡
原発の町に漂う白い嘘
九条に蔦の吊り橋渡らせる
人が住む地球だ油差してやる


 「自 由 吟」            加藤   鰹
キャンパスで伝染るはしかと恋病   静 岡
向日葵が揺れる逢いたい人がいる
カーボンの如く薄っぺらな持論
朝もやの中酔いどれが待つ始発


   顧  問  吟 
 「たかが・されど」         柳沢 平四朗
昔日をピエロに塗った異聞録          静 岡
耐えて来た唇だから歌がある
年輪へたかが・されどの世の斜面
古疵を乾いた風が触れたがる



虎竹抄 | Link |
(2007/07/26(Wed) 18:27:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「雑  詠」            滝田  玲子
言うまいと決めても愚痴の出る世相       浜 松
新緑に浮き足たてる万歩計
みどりの日昭和に帰りあわてだす
ナンジャモンジャの花満開という便り



 「諦 め る」            岡村  廣司
無位無冠妻も諦め愚痴らない          焼 津
親を見て子が将来を諦める
諦めた底辺僕の指定席
諦めてしまうと消える緊張度



「笑  う」            高橋  春江
ライバルの笑顔に負けて知らされる   袋 井
ほほえみが欲しくて扉おしてみる
高笑いきっと寂しい人なんだ
考えが浅いか笑う日が多い


「風 と 母」            成島  静枝
本当にコトリと止まる母の息         千 葉
もうなにもしないで医者へ娘の願い
しぞーか弁新幹線で来る葬儀
千の風母は沼津へ行ってるら


「 旅  」             畔柳  晴康
今日だけは早起き朝湯旅の宿          浜 松
名物も好みに合わず箸を置く
お土産と疲れの重いバスの旅
疲れたが次の旅はと友に問う


「旅カバン」            真田  義子
群青の空を畳んで旅カバン           仙 台
飛べないが夢は大空駆け巡る
背をたたく風に誘われ旅に出る
雑草になると決めたら軽い靴


「雑  詠」             内山  敏子
解熱剤さっぱり効かぬ恋病           浜 松
連休へ踊り疲れたふくらはぎ
取り締るはずの警官逮捕され
ビルが建ち光もらえぬミニ畑


「や ば い」           毛利  由美
試着室試着途中で諦める           つくば
息子からヤバい味だと誉められる
目覚めたらもう降りるべき駅は過ぎ
まじヤバと呟くダブルブッキング


「安  心」            山本 野次馬
無添加の街です無防備な私          函 南
手鏡を捨てて仮想の街に住む
慣れっこでプチ家出など怖くない
安心をそっと神社に買いに行く


「ハイヒール」           松橋  帆波
テーブルを叩いてねだるハンバーグ      東 京
ゴキブリが出るのも俺のせいらしい
憎い人ねと抓れて騙されて
踏まれてる自分を思うハイヒール


「自 由 吟」             寺脇  龍狂
着て脱いで又着てママのクラス会        浜 松
新調のスーツに欲しい嫁ひとり
合併はしたが市長はクビになり
古里はいいな山あり友がいて


「こんな程度で」         増田  久子
一般のメニューは安い順に書き        焼 津
同じ値で売れば大きい順に買い
捨てる気をいつか着る気が消す古着
車窓から見えて駅まで遠い家


 「象の悩み」            柏屋 叶志秋
断水でようやく水の価値を知る        山 形
背伸びして届かぬ花が美しい
携帯のエリアでしょうか天国は
王者たる象の悩みはたかが刺


「雑  詠」           西垣  博司
明日行く近いうち行くいずれ又     静 岡
日記には書く程の事無いと書く
日記帳四日以降が待ちぼうけ
年寄りの冷や水少し飲んでみる


  「春  祭」            鹿野  太郎
お祭りの輪投げでゲットした家内       仙 台
出目金が指二・三本出す露店
シャッター街の餅屋で昔話する
祭りの夜地上の星のクラス会


「  妻  」         藪ア 千恵子
爆竹のような妻です危険です         焼 津
ノックアウト妻が勝者の手をあげる
笛吹けど踊らぬ妻の重い尻
なにやかや言っても妻はいい女


 「キ  ー」            井口   薫
二十歳まで押し続けたいバックキー    袋 井
鬱の雲デリートキーで吹きとばす
削除キーもったいないがふとよぎる
さあ飛ぼう変換キーに賭けてみる


「なるほど」          馬渕 よし子
母の背が教えてくれたおんな道       浜 松
嫁姑今は姑が頭下げ
先人の知恵に急場を助けられ
裏話聞いて軍配妻へ挙げ


  「  雨  」             小林 ふく子
空白の午後の行方を雨は知る          袋 井
満天に落ちこぼれたか雨が降る
気が済んだように雨つぶ地に還る
台地への恵みと怖さ分ける雨


「話し相手」            石田  竹水
原稿をはみ出し本音削除され         静 岡
ジャズ・マンボ過去の楽しさ掘り起こす
刻まれた言葉の落ちにある温み
泣き笑い話し相手を座らせる


「  月  」            薗田  獏沓
山の宿月と対話の窓を開け         川根本町
月へ行く兔が餅を搗く話
月明り短所ちょっぴりカバーする
水仙を黄色に見せぬ月の影


「背 伸 び」            塚本  寄道
株取引世間の風が騒いでる          長 泉
一生を合計するとゼロになる
利己的でつまらぬ嘘をつく大人
走るより歩くといいよ人生は


「わ た し」             提坂 まさえ
表裏どの顔もみな私かな            静 岡
影ならば息子のズボン穿けるかも
ハードルが低くても靴ひっかける
トランジット訪問国につけ加え


「百  円」            中田   尚
百均に汗が無数に積んである         浜 松
百円に夢も希望もあったころ
お札からコインに変わり価値下がり
消費税百円玉の邪魔をする


「僕 と 犬」            濱山  哲也
不覚にも溜め息犬に気付かれる        青 森
「困ったら舌を出すんだ」犬が言う
でも君はいつでも舌を出している
そう言われ困った犬は舌を出す


「日 記 帳」            酒井  可福
思い出のページをそっと振り返る       北九州
誤字雑字誉めて貰えぬ日記帳
自分史に落丁隠す見栄はある
恋の詩書いては消した屑の跡


「雑  詠」             川口 のぶ子
ほろほろと咲けばさくらと浮かれ節      藤 枝
花水木今年はなぜか花咲かず
白酒が効いて今夜の夫婦雛
ぼんぼりに白酒の合う宵節句


「陽だまり」             大塚  徳子
陽だまりでひとり船こぐ昼下がり        仙 台
陽だまりに群れてる雑魚が恐ろしい
イケメンと手を取り渡る怖い夢
昼下がりボトンと音し椿落つ


 「本  音」            瀧    進
呟いた愚痴が真顔になってます       島 田
マニフェスト本音勝つ迄負ける迄
アイラブユー心が遠い時もある
内助の功感謝してます女房殿


 「  孫  」             鈴木 恵美子
誉め言葉かけると弾むまり二つ        静 岡
四才の抵抗新しい風が吹く
孫というビタミン剤に春うらら
孫の絵が微笑みくれる部屋に住み


 「自 由 吟」             芹沢 穂々美
手鏡に写るシミまで見栄をはる         沼 津
画仙紙の花のにじみが哀しすぎ
矢印の通りに歩く生きる道
子育てが終わったあとのいい答え


「つ  ゆ」            金田 政次郎
蛇口からカルキが臭う梅雨の朝        静 岡
はっとした一瞬紫陽花彩を変え
バンザイが続いた廊下朽ち果てる
雑居ビル出社も引けも雨に濡れ


 「  赤  」             安田  豊子
赤い糸真っ赤な嘘でつながれる     浜 松
まだ燃える本赴帰りのちゃんちゃんこ
夕焼け小焼け鳴ってください寺の鐘
さんざめくカラス絵を描く茜雲


「うっとり」            鈴木 まつ子
幽玄の世界いざなう宵ざくら       島 田
わが娘ながら見惚れる高島田
湯あがりの白い衿あしほんのりと
映像のロマンうっとりさせるキス


  「時  間」            加茂  和枝
ゆったりの時間を掴む嬉しさよ         岩 沼
お互いの元気な空を探す旅
郷に住む暮らしの命温かい
私から心通わす出会い道


「期  待」             堀場  大鯉
安売りへ軽い財布の数え唄           焼 津
バラ色の幕に期待を裏切られ
狐雨なんの期待もさせず去り
浮世絵の美女は私に古すぎる


  「か な や」              川口   亘
関心はなる程やるか痩せ蛙           藤 枝
改心をなごみに見せたやらず雨
甲斐性がないと云われてやる気出し
借りなどがないとも云えずやりにくい


  「自 由 吟」            御田  俊坊
表情が豊かに語り笑わせる           高 畠
百歳を越えても生きる余命表
アルバムが記録となった人生譜
まな板のくぼみに残る母の味


  「川柳の輪」            中矢  長仁
手習いで川柳始め若返る            愛 媛
あちこちで元気貰って輪をつなぐ
お友達随分増えて大きい輪
落ち着かぬ投句川柳まだ出来ぬ


「笑  う」              増田  信一
笑うかど福がこないでリストラに     焼 津
わっはっはお前おかめで俺布袋
脳トレも筋トレもいい笑ってりゃ
脳年齢若いですねで笑いじわ


  「自 由 吟」              ふくだ 万年
衝動買いシャネルの袋お蔵入り      大 阪
白旗を胸に押し込めさぁ電話
休診日たらい回しの救急車
根回しはすべて無駄です家の嫁


  「  嘘 」             中安 びん郎
貧乏は死より辛いと嘘を言い          静 岡
養毛剤嘘で無ければボサ頭
女房が俺にほの字は嘘だった
私は嘘を言わぬと嘘を言い


  「エコライフ」            林  二三子
エコしてと地球が痛烈に叫ぶ          芝 川
マイバック持参でエコなお買物
愛読書これもそろそろリサイクル
着物からリサイクルした服が映え


「本当の嘘」              堀井  草園
凡人で過ぎた夕日がまん丸い        静 岡
トンネルの出口で本音踏みずし
無いはずが見えて脳みそ軽くなり
後一歩舌三寸に邪魔をされ


  「鮎三昧・・・其の八」       永田 のぶ男
岩影に鮎のきらめき独り占め         静 岡
竿先の微かな動き胸騒ぐ
待っていた瞬間頭白くなる
百の神すべて集めてタモの中


  「  母  」             中野 三根子
かあさんと呼んでやさしさとりもどす      静 岡
帰るとこ私にもある母のひざ
心にもないことを言う母の前
母の前少し弱みをさらけ出す


  「雑  詠」             川村  洋未
一人だけ空気読めないおせっかい        静 岡
活字では全て美人に化けている
わけもなく食事さそわれひょっとして
せいいっぱい砂糖まぶして高く売る


「てんやわんや」          谷口 さとみ
元とれる話に出せる元がない         伊 豆
初恋の真空パックも期限つき
禁断の恋にも似てる生しらす
初キスの記憶がズレて大ゲンカ


「  足  」             真理  猫子
大根のような足にも憧れる           岡 崎
足しげく通う喫煙コーナーへ
振り向けば足元をみる人だらけ
この夢もひとに頼れば足が出る


「表裏一体」            山口  兄六
商談に同じ訛りの人がいる          足 利
駅までの道は追い風空っ風
危険だと思った席を譲り合う
天国か地獄か一夫多妻制


  「絵 画 展」            佐野 由利子
BSで世界の絵画展を見る         静 岡
うちの子と言わせる猫の贅沢さ
アイデアがパッと浮かんだ青い空
コツコツと努力したのに運が逃げ

 
「温  海」       多田  幹江
海凪いで骨の無い魚よく育つ      静 岡
養殖の鯛虹色に染め上げる
周りみな陸に上ったカッパなり
泡立器君はホントにせっかちだ


  「つれづれに」       堀場  梨絵
見聞を広めまだまだ生きたいね   静 岡
晩学という人生のきわまれり
これからもまだまだ根気植えつける
針一本置いて蜜蜂死の抗議


「多弁な旗」         池田  茂瑠
染めむらが多弁な赤い旗にある          静 岡
酒くさい稼ぎで育て背かれる
いじらしい挑みか変えた髪型よ
注ぎ足したワイン魔性の泡が立つ


  「ついてない男U」          長澤 アキラ
女神には去られ金運に逃げられ         静 岡
外れくじだけはしっかり手に残り
着地点探しあぐねている枯れ葉
風の日に落葉のように酔っぱらい


「花 冷 え」                川路   泰山   
衣被き女に白い風の道              島 田
さよならをすると稀なる美女となり
首筋へひんやり残る花の冷え
地平線望み遥けし漢の絵


「受信メール」                望月   弘
クリックをされたい胸を持っている     静 岡
チョキチョキと受信メールを切っている
二階から居間へ出張して家族
桜咲く方程式は明かせない


 「難 破 船」            加藤   鰹
難破船を母の港は待ち続け      静 岡
なあカモメ兄貴の船を知らないか
海は凪そして還らぬ船の数
大都会木の葉の舟は今いずこ


   顧  問  吟 
 「ひこばえ」        柳沢 平四朗
思い出が濃すぎて時効なんて無い        静 岡
古日記父の火の劇風の劇
ひこばえにメンパを開ける風も春
招かない客が不遜の靴を脱ぐ




虎竹抄 | Link |
(2007/05/26(Fri) 18:07:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「行 く 春」            井口   薫
リモコンだらけコックピットになる炬燵     袋 井
ラッピングしたら買手がつきました
スケールを見せつけながら降る黄砂
昨日散り明日は木綿を着るさくら



 「憎めない話」           増田  久子
電化したキッチン欲しいのは炎         焼 津
売り急ぐような四月の高級茶
日本語は幼児語のまま英会話
ポケットに葉書一日出し忘れ



「笑い合う」            真田  義子
信頼をされても困るなまず君      仙 台
太陽のように明るく生きていく
もう一度空を見上げて笑い合う
花粉症クシャミが止まらないカラス


「楽しい家族」           金田 政次郎
食べる音みんな元気に生きている       静 岡
笑ってるキット女房が無理を言う
向き合っただけで元気を呉れる人
ちちははと居た風景を守りたい


「惜しまれて」           山本 野次馬
無情にも桜蹴散らす春の風          函 南
寂しげな父の机が語りだす
今の世に黄金バットいればいい
今日もまた脳細胞が死んでゆく


「ふ た 心」            瀧    進
バレンタイン図式の見えるラブゲーム     島 田
指切りの度に約束軽くなり
安全パイまだ握ってる見合席
あのことはもう時効ですハネムーン


「夜半の風」             江川 ふみ子
胃に残るひと言抱いて夜が白らむ        函 南
夜半の風孤独の耳を吹き抜ける
風がどう吹こうと消えぬ心の灯
溜め息で廻りたくない風車


「  桜  」           あいざわひろみ
風ひとつ桜の枝に引っかかる         茅 野
ほとばしる血潮桜は満開に
呪縛から逃れられない櫻守
さくらさくら呪文は今も解けぬまま


「頂  上」            辻    葉
湧きました燃え尽きました甲子園       大 阪
アルプス席のど真ん中は訛の渦
静商や浜商遠く新球児
郷土から日本一の風もらう


「  石  」            提坂 まさえ
石膏でかたどっておくマイハート       静 岡
団塊に当たらない石選っている
居心地がよく結石もパラサイト
石一つ握った跡がついている


「自 由 吟」             増田  信一
ストローで幸せだけを吸い分ける        焼 津
金暇がない時だけは健康で
懐メロが遠い昔とランデブー
家建てて俺の居場所がなくなった


「友  達」           塚本  寄道
落ち込んで動けぬボクに友の喝        長 泉
変わらずに遊べる友がいてくれる
あったかい友がいるからがんばれる
泣いている友をなぐさめ僕も泣く


 「勿体ない」            中田   尚
パンの耳焼けているのに捨てられる      浜 松
推敲もせずに消しゴム痩せてゆく
胃袋に和食の良さを忘れさせ
タクシーに甘える足を持っている


「  春  」           毛利  由美
エイプリルフール嘘って難しい     つくば
入学式が三つ出費の春である
四月開講の誘惑に駆られる
春休み終わり私の春が来る


  「口  車」            柏屋 叶志秋
野原では分相応の花探す           山 形
金運のグッズで金を使い切る
井戸端の会議を終わす茜雲
下手すれば地獄にも行く口車


「愛してる」         戸田 美佐緒
手術後の何かにつけて愛してる       さいたま
自画像が欠伸している洗面器
大福の五つもあって満ち足りる
ポケットに女が残すさようなら


 「自 由 吟」            御田  俊坊
耐えて来て男の流れ変り出す       高 畠
変り身が早い女の色と艶
素直さが生きる流れの重さ知る
生きるため何を食べても血が流れ


「自 由 吟」          寺脇  龍狂
運賃の要らない砂が届けられ        浜 松
着て脱いで又着るママへ春の風
洗っても落ちない泥のユニフォーム
醜聞も桜の花に浄められ


  「雑  詠」             西垣  博司
家中の時計はスベテ自己主張          静 岡
真面目ですズボンの裾がダブルです
一人居の夜は長くも短くも
孫帰り入れ替わり来る静寂


「役  目」            加茂  和枝
エネルギー春の力よありがとう        岩 沼
遊ぼうよみんなで元気ぶつけよう
ほら泣いた隣で誰か手を貸した
誰にでも役目があって繋がって


「日 溜 り」            石田  竹水
古傷をバネに飛躍の体当たり         静 岡
要点をぼかして春の風荒れる
日溜りが好きな布団の花粉症
風通し良くて心がすき通る


「雑  詠」            藪ア 千恵子
人間の醜さをみる捨て台詞          焼 津
末席にいれば突っ張ることもない
意地悪なもぐら叩きに悩まされ
通せんぼされて逃げ道みつからず


「余  韻」             鈴木 まつ子
つかの間の癒しあなたを好きになる       島 田
サクラ、サク、夜のゆりかご憂さ忘れ
逢ってきた余韻にひたる終い風呂
玉手箱甘い思い出開けずおく


「雑  詠」            ふくだ 万年
タミフルを飲ませてみたがチト恐い      大 阪
あれも好きこれもイイナのバイキング
たべたいが金魚のフライ作れない
恋をする蛙の群れに石投げる


「巣 立 ち」            芹沢 穂々美
舞うように行ってしまった子の巣立ち     沼 津
隈取りの化粧の下で湧く闘志
週休二日本も虫干しされている
あまりにも平和で本を読んでいる


「迷  惑」            岡村  廣司
迷惑でしょうか私の片思い          焼 津
多数決善悪問わず決まってく
仲裁人やがて喧嘩に巻き込まれ
もしかして迷惑だろか長生きで


「雑  詠」             成島  静枝
青畳猫と孫には目をつぶる          千 葉
熱意ほどチーズケーキは膨らまず
お裾分け生きがい畑の野菜達
本当の肥やしになれず出る着物


「太  陽」             安田  豊子
寄せ植えの背伸びへ注ぐ陽の恵み        浜 松
涸れる程泣いた笑顔へ陽が庇う
布団干す夕べの悪夢叩き出す
太陽の加護へ鍬振る定年後


 「歯  痛」            酒井  可福
痛む歯をそーっと指で触れてみる      北九州
枕抱き口おさえ込む歯の痛み
痛いのは右と左と上と下
痛む歯に肴は要らぬコップ酒


 「春うらら」             大塚  徳子
遊ぶ金あって払わぬ給食費          仙 台
不規則に年輪刻む温暖化
皺深く刻み喜劇を演じ切る
春うららひたすら歩く脱介護


 「バンザイ」             内山  敏子
青空へいつもバンザイしたくなる        浜 松
転移なし伝える電話嬉し泣き
トンネルを抜けて昔の風に逢う
恐くない命をつなぐ癌切除


「  春  」            馬渕 よし子
外に出て春を両手で掬い上げ         浜 松
食卓へ春たけなわの彩を盛り
ストレスを一気にさらう春の風
温暖化春の未来が危ぶまれ


 「雑  草」             畔柳  晴康
雑草で名前は要らぬでも生きる     浜 松
木枯しに堪えて春の芽出す元気
踏まれても俺は雑草強く生き
花も実もつけて雑草種残す


「仲 良 し」            鹿野  太郎
トイレから客間へ凛と通る声       仙 台
挙式前袋小路に入り浸り
春を呼ぶ行事にくしゃみ止まらない
鉛筆と消しゴム調和崩さない


  「新  茶」            小林 ふく子
天と地に初夏の香りをもらいます        袋 井
今年又新茶に会えた甲斐がある
新茶飲む心を清く正座して
茶柱がなくても縁起担ぎたい


「ゼロの日」             高橋  春江
プラスマイナスゼロでいいのよ生きすぎて    袋 井
ずれた日の仮面へ本音大あわて
気負いすぎたたらを踏んで歳のかべ
満開のさくらへ笑みのありったけ


  「  桜  」              滝田  玲子
杖突いてへっぴり腰でゆく花見         浜 松
はらはらとブルーのシート散るさくら
青い空黄砂も混じん花の下
花よりも子等かけ回るスベリ台


  「近  況」            川口   亘
嘘も良い真出る間の刻稼ぎ           藤 枝
大事にとしすぎで逆に根を拡げ
見忘れがこころにきつい責めを負い
八十路見てやっと節目とする気分


  「あ る 日」            堀場  大鯉
血を分けた子とも思える嫁も老け        焼 津
そむかれた怒りなだめる春の雨
米を磨ぐやもめを覗き猫の去り
吊革に白髪頭を乗せて混み


「春のウツ」              新貝 里々子
ソメイヨシノとばったり出遭う神経科   袋 井
眠れないわたしが言えばさくらも言う
異常体質とカルテに書いてある
葉桜になれば落ち着くかも知れぬ


  「黄  砂」              佐藤  香織
大陸よ飛ばす砂塵も程々に         福 岡
春がすみほんのり色の程がいい
花粉症・砂塵症にも泣かされつ
密毛まつ毛鼻腔閉開進化しよう


  「虎 竹 抄」             山田  ぎん
水仙が見事思わず足を止め           静 岡
桜花ヒラヒラそっと手に受ける
滝の音星を数える山の家
湯に浸かり友あり春の梅が島


  「  足  」             川口 のぶ子
歩くのに杖を欲しがる足叱る          藤 枝
痛む足嘲るように膝笑う
足に気を注意し過ぎて頭打ち
難聴を気にして老いること多き


「孫の進学」              中矢  長仁
取り上げる話題は桜咲く便り        愛 媛
もう一度やっと納得合格だ
喜びが桜咲いたと湧き上がる
我が家にも明るい知らせ桜咲く


  「仇  名」              薗田  獏沓
新入生の愛子から仇名つけ         川根本町
唄う時眼鏡をかけて歌手に似る
受付嬢聖子に似てるいい笑顔
赴任した先生早くも仇名つけ


  「春 場 所」             中安 びん郎
春場所で大阪美妓と目線合い          静 岡
春場所に横綱負けてフトン飛ぶ
来場所も大関勝てば横綱に
春場所も郷土力士は勝越しに


  「戦死の兄」             堀井  草園
居心地が良すぎて石に潰される         静 岡
純粋に捨てた証の白い雲
捨て石に気付いた欲で得をする
不揃いの透き間に自信見のがさず


「風去りぬ」            多田  幹江
春の夜を影もおぼろの雑魚一尾        静 岡
軟弱な骨シルバーバンクにも出せぬ
掟破って滝に打たれている男
風去りぬ戦闘服をなびかせて


「鮎三昧・・・其の七」      永田 のぶ男
よそ者を睨みつけてる鮎の面         静 岡
競技会負けてなるかと脚競う
釣りキチさん懐かしい名だ元気かい
仕掛け見せ根性みせてうまさみせ


「雑  詠」            林  二三子
張り詰めた空気和らぐいい知らせ       芝 川
親を看る命の重さしみじみと
子育てにこれが一番なんてない
夢見つけ飛び立って行く子にエール


  「 桜 」            中野 三根子
ポケットに花びらそっとためておく     静 岡
夢にみたヨイドの桜君を待つ
花びらを集めて散らす春の風
花吹雪君にみせたい夢ごこち

 
「独 り 恋」       谷口  智美
あげるもの何もないから会いに来た   伊 豆
花柄で浮き足立って春を舞う
ひと電車ズラして彼を待つホーム
リフォームをしてもあなたでうまる部屋


  「  玉  」        真理  猫子
やめようと思えばタバコ数珠つなぎ 岡 崎
核心にわたしを映すしゃぼん玉
朝帰り妻はこんがり玉子焼き
玉手箱Windowsが起動する


「ゴールデン」        山口  兄六
アラームで覚める夢など惜しくない        足 利
正論が負ける人生経験値
おはようのメールで終わる誘い下手
遊園地少し大人を辞めてみる


  「雑  詠」             川村  洋未
がんばれと言われたくない時もある       静 岡
真実は食事すませてうちあける
人生の荷物はいつもちいさめに
口だけは置いてかないでもめるから


「花 の 道」     佐野 由利子
困っちゃう国語辞典にない新語    静 岡
隠し事絶対出来ぬお人好し
花の道赤いスカーフ蝶むすび
目が素敵やっぱり鼻は低すぎる


  「ついてない男」      長澤 アキラ
妻とする花見に惜しい良い天気    静 岡
幸運がこの世にあると思えない
百均の絆創膏でする血止め
この橋を渡った先にある地獄


「老  幹」         川路  泰山
首筋へ花を散らして風淡し     島 田
老幹の小粋に飄と蕨狩り
老いゆけば鄙びた邑が背にぬくい
一本の杉と社と過疎に老ゆ


   「絵 の 中」            池田  茂瑠
このケーキ食べれば治る頭痛です        静 岡
薄味になります愛を深めると
青い絵の中に詰まっていた答え
爪尖る甘える心ない私


「雑  詠」                高瀬   輝男   
晩鐘の余韻こだわり忘れさせ           焼 津
生きている証しか今日も手が汚れ
ロスタイム春は酩酊許されよ
誘われた笑い主義などありません


「ウイルス」                 望月   弘
ウイルスとマスクの中でキスをする     静 岡
井の中の蛙になると恐くない
夢なんて宝くじしか出てこない
出なくても出ても所詮は杭である


 「春 爛 漫」            加藤   鰹
岩清水僕は汚れてゆくばかり     静 岡
田にレンゲ僕には君がいてくれる
笑わねばならぬこの坂越えるまで
酔いどれも躁鬱病も花の下


   顧  問  吟 
 「  的  」        柳沢 平四朗
トラウマが叩く石橋疵だらけ          静 岡
呑みこんだ言葉の疼く不眠症
腹を立て笑うという字書けますか
真っ直な的が迷路になる自嘲




虎竹抄 | Link |
(2007/05/26(Fri) 17:52:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「いざなぎ景気」          大塚  徳子
果てしない旅路だ急ぐことはない       仙 台
いざなぎの景気あべこべホームレス
減塩が続き人生味気ない
あさがおもわたしも何故か左巻き



 「テ レ ビ」            松橋  帆波
ワーキングプアも見ている審議拒否       東 京
健康に良い食材が多すぎる
カップラーメンの定価を知りません
納豆で二倍に増えた視聴率



「バレンタインデー」        新貝 里々子
若づくり恋という字にまた転び     袋 井
約束の小指あれから待つばかり
オンリーユー聴けばさざ波立つハート
もう一度お逢いしたいのです かしこ


「自 由 吟」            山本 野次馬
円周率3で学力低下する           函 南
ジーパンの穴に吹き込むすきま風
真空の中で私は甦る
捨てましょう笑い忘れたピエロなど


「生きている」           石田  竹水
御神籤はみんな大吉神の枝          静 岡
初夢は生け簀の雑魚が鯛に成る
私語七分本音三分の自己主張
生きているうちに楽しみ食べまくる


「あまり好きでないもの」      増田  久子
遠慮して食べないわけでないケーキ      焼 津
なまじ知恵あるから嫌われるカラス
来賓の祝辞次から次の無駄
南向きだけど西日が強すぎる


「自 由 句」             山本 トラ夫
変換のミスが響いた報告書           長 泉
お金まで湧き出るような今日の運
海峡の向こうは硬い骨ばかり
ご自愛の中を婚期が過ぎてゆく


「良い年に」           鹿野  太郎
めくばせに口で答えて和ませる        仙 台
ステップを踏んで一病晴れ渡る
瞳きらきらガラスの橋を渡り終え
紅白のオズマに平和噛み締める


 「  雪  」            畔柳  晴康
大寒だ懐までも雪が舞う         浜 松
雪が降る二人寄り添い雪見酒
露天風呂出るをためらう雪景色
雪あそび孫より先に爺ころぶ


「雑  然」           瀧    進
雑談にちらり本心顔が見え       島 田
混雑を避けて人生遠回り
ラッシュアワー豊かな胸に押し出され
雑巾になって余生を磨きます


  「雑  詠」            藪ア 千恵子
先入観捨てて出直す靴の紐          焼 津
堂々と師の影を踏む民主主義
猛ダッシュ抜いて味わう孤独感
冗談にさらり本音を絡ませる


「  春  」         井口   薫
約束の駅へスカーフ蝶にして        袋 井
着ぶくれよさらば春ですストレッチ
常緑樹に囲まれ春の陽が遠い
椿ポトリ 独りの部屋が事件めく


 「  力  」            岡村  廣司
未熟ゆえ肩の力がまだ抜けず      焼 津
力抜くことも大事と知った娑婆
無気力を見たか相手が力抜き
力の差笑って耐える他はない


「不 自 然」          毛利  由美
メイクしてわざわざ変になる少女      つくば
目が合うと相槌を打つ英会話
なんとなく敬われていない敬語
黒髪が真っ黒すぎて勘ぐられ


  「  三  」             小林 ふく子
午後三時わがままを言う胃の袋         袋 井
三寒四温春が天から降りて来る
三本のバラで心を売りました
リハビリの足へワルツが重たくて


「時 事 吟」            中田   尚
重大なミスかも知れぬそのまんま       浜 松
新知事をトリトリトリでお出迎え
チョコレートまずは期限を確める
発掘をしたら何にもなくなった


「春 の 坂」            真田  義子
名も知らぬ花一輪に癒されて         仙 台
いつからか風が背を押す六十路坂
旅の空朝日を浴びて鳥になる
海からの風はやわらか春の坂


「少 子 化」            柳澤  猛郎
統廃合する学校の世知辛さ          袋 井
大学の門定員を割る受験
箸づかい女子の受験で引っかかり
山車引く子供がいない御祭礼


「過  去」             安田  豊子
ナツメロへ酔えば残り火疼きだす        浜 松
今更に悔いてどうなる過去の傷
忘られぬ過去を繰っている未練
まざまざと過去が弾ける日向ぼこ


「自 由 吟」            内山  敏子
ふる里の香りを包む春の風         浜 松
癒えぬこと知りつつ笑顔たやさない
ホッチキスあなたの愛をパンチする
松飾り取れた体に休肝日


「ふくよか」            鈴木 まつ子
ふくよかな母の乳房で児の寝顔        島 田
ハリのある豊胸術で若返り
ふくよかなグラビア飾る撮り下ろし
ふくよかな芯までぬくい愛しかた


「いちにち」            高橋  春江
お茶沸かせ猫ともめてる朝の床        袋 井
迷う日はデッサンだけの画布にする
シナリオを替えたら舞台ころげ落ち
採点は甘いが今日も良しとする


「バーゲンセール」          横山  昌利
バーゲンに妻のいろはがみえてくる      相 馬
踏まれても稔る路傍の草でいる
熟知した道の小石に蹴つまずく
掻き毟る髪に罪などないものを


「雑  詠」             馬渕 よし子
異状なし生命線を信じよう           浜 松
ポチ死んで銀河鉄道乗ったかな
削除キー押して小さな罪逃れ
相談をされてずばりは嫌がられ


 「充  電」            成島  静枝
充電の夫睡魔に逆らわず          千 葉
子育てのストレス分かつ孫の守り
ひと泳ぎ四肢にくまなくいく酸素
充電とニート境目模糊のまま


 「囲  う」             笹  美弥子
本心は囲いの中に埋めてある          仙 台
語り部を囲んで童らの瞳のひかり
囲いのなか羽ばたく音よノラ巣立ち
いい会話炉端囲んでキリタンポ


 「コ ン ト」             加茂  和枝
ほら見ろと似た者同志尻尾振る       岩 沼
スニーカー昨日の泥がついている
本心はコントで隠し渡る橋
ここまでは全部忘れた白い紙


「暖冬異変」            中矢  長仁
新潟で雪が無いのは百年目          愛 媛
雪祭り雪を尋ねて山奥へ
珍しく大寒に出る蕗のとう
何でかな家の大根良く出来た


 「白  梅」             芹沢 穂々美
父の忌に律儀に咲いた梅の花      沼 津
白梅の白さに託し孫を抱く
月末は一円玉も役にたつ
とぎ汁に家庭のヒミツ持ってかれ


「  盃  」            薗田  獏沓
ぐい呑みにして二級酒に格を下げ    川根本町
注ぐ真似と呑む真似下手のご返盃
盃を高く固めの酒を酌む
盃を片付けコップでらちがあき


  「雑  詠」            滝田  玲子
明日よりも今日が大事と生かされる       浜 松
少子化のあしたの風が見つからぬ
便利すぎ人間のネジ巻き忘れ
走馬灯脳裏に灯し夢を追う


「雑  詠」            竹内  さき
占うて一駅歩く春うらら            浜 松
ひらひらと別れもきれいああ桜
あせぬ間にひと目逢いたい古都の人
とんとんとまな板に春賑やかい


  「雑  詠」               西垣  博司
階段で強度不足の足を知る           静 岡
妻テレビ俺新聞でメシを食い
酔い覚めの水現実を連れて来る
大根に肩車されているサシミ


  「痛  い」            酒井  可福
ゆっくりと腰を押さえて壁づたい       北九州
痛かろう敷居に小指引っかけて
伸びをした筋肉もまた悲鳴あげ
懐を大上段に斬る弔報


  「雑  詠」            ふくだ 万年
白黒をつける心算が居直られ          大 阪
喪服着た後姿につい見とれ
苛めなど何処吹く風と生きてゆけ
風邪くすり抱えミニ穿きさあデート


「つ ぼ み」            鈴木 恵美子
いい事の続きを見たいつぼみ買う        静 岡
顧みるつぼみの時代瞑想す
愛されてつぼみ大きな花となる
背なにいるつぼみが日毎重くなり


  「近況お知らせ」            金田 政次郎
不器用に川柳中毒しています          静 岡
テラスでの一服モンロー・ヘップバーン
投薬の行方見てますお静かに
丁寧な妻のガードに寄っかかり


  「  梅  」            設楽 亜季浩
お湯割りと言えば梅かと店のママ       静 岡
梅干しで穴の開いてた弁当箱
松竹梅となりの店は上中下
価値観に南高梅もただの梅


  「未 納 金」            佐藤  香織
詫ないが納めてやっとつかえとれ        福 岡
言い訳に幾度も遠方ですと逃げ
後ろめたい懐深くしのばせる
すまないの一言甘えの二言


「迎  春」              川口   亘
一日の違いで変わる初日の出        藤 枝
産神の社とり巻く善に満ち
賽銭の額で拍手軽く済み
老体を笑顔に見せる妻の知恵


  「お 正 月」              川口 のぶ子
大晦日猫までかりる忙しさ         藤 枝
お正月金粉入りの酒に酔い
初春をテレビかかえて笑いこけ
お年玉貰ってみたい子に戻り


  「たいへんです」           堀場  大鯉
プライドを重く感じる老いの背な        焼 津
そむかれた怒りやわらぐ酒に逢う
議論にも可愛い女へ負けてやる
補聴器で聞けば案外いい話


  「春立つ日」             竹内  登志
春立つ日心浮き立つ隠居部屋          浜 松
遊園地遊具さびてる閑古鳥
かくし芸まさかまさかに宴が湧き
如月へ早や衣替したウインドウ


「仏 の 手」            柏屋 叶志秋
いたずらな風が季節の色変える        山 形
罪人も最期に辿る仏の手
大リーグ目指して日本カスばかり
味のない形ばかりの冬苺


  「雑  詠」              森島  寿恵
進化した文化に迷う石頭           浜 松
三代でとり交うかるた福笑い
耳鳴りが気になる老いの寒い冬
吊り橋にゆれる足元ふるえ出す


「自 由 吟」            御田  俊坊
耐えること変り身早い男意志         高 畠
髪洗い気分よくなり気が変わり
五十肩痛さに耐えて眠られず
生きているだから痛さに耐えている


  「自 由 吟」            山田 フサ子
今日の構図幸福感につつまれる       袋 井
考える平和平和に老いの道
さわやかな朝に元気が湧く不思議

 
「働  く」       朝比奈 零児
働いて働いてきた六十年       島 田
作業着が一番似合うファッション
損得は問わずに励む日々の行
清貧に甘んじ心満たされる


  「暖  冬」        中安 びん郎
暖冬に彼岸の花が早く咲き     静 岡
暖冬で穴釣り出来ず氷割れ
暖冬で年頃娘薹が立ち
暖冬を老人感謝農家泣き


「自 由 吟」         寺脇  龍狂
十円で一年を買う初詣       浜 松
尊敬をされぬ先生せぬ生徒
手加減をちゃんとして打つ母のむち
きらわれるくせに鴉は歌になり


  「鮎三昧・・・其の五」        永田 のぶ男
釣り場変え囮の重い畑道            静 岡
茶摘み娘が気になり薮へ糸絡め
釣り友に久しぶりだな日焼け面
縄張りに命を賭けた鮎のハス


「雑  詠」       堀井  草園
空っぽな財布が重い千鳥足      静 岡
六根清浄背中の垢がまだ重い
晩年の骨太憎いま光る
力抜く流れ蛇行で本音知る


  「物 忘 れ」        林  二三子
立っているからと何でも頼まれる  芝 川
食い違う会話何故だか通じてる
クシャミしただけで用事をもう忘れ
物忘れクシャミのせいにしてとぼけ


「変  身」         川村  洋未
見てはだめ今マドンナになるところ 静 岡
生活苦ヴィトンにシャネルやめようか
生まれたよ僕今ここで声あげた
電話口お国言葉がついぽろり


   「  傘  」            長澤 アキラ
割り切ったつもりの傘が畳めない        静 岡
時どきは変な灯だってある
透明の傘で隠れているつもり
犬とする立小便が情けない


「ホームレス」            真理  猫子
愛嬌があるかないのかデコメール        岡 崎
居住地は愛を知りたい愛知県
禁煙車 旅が苦痛な愛煙家
自然薯のふくらはぎから溶ける愛


  「馬 観 音」        山口  兄六
募金箱見栄でも偽善でもいいよ         足 利
十字架の先に妾を干しておく
背徳のメロディーがなる不審な夜
恐竜は滅んだきっと善だった


「禁 恋 歌」         谷口  智美
わたくしのため息だけが舞っている 伊 豆
桃色であなたの名前書いてみる
今のうちだよこの糸をほどくのは
チューリップ邪心を捨てるように植え


  「  無  」             中野 三根子
ゆるやかな坂を転げるここち良さ        静 岡
優しさに思いがけずにしっぽ出す
ゆるやかに心のひだがほどけ出す
雲ひとつない青空に励まされ


「私 の 毒」       池田  茂瑠
喪服着る屋根の重さを感じつつ    静 岡
自販機も抱え優しい軒になる
暗算で愛を私の毒と解く
転がった汚れが赤い鞠にある


  「  味  」         多田  幹江
プロセスはいいの勝負は味でしょう 静 岡
いつの間に義母が接いだ亡母の味
涸れるなよ潮の味するべらんめえ
老いらくの恋甘辛く炊き上がり


「黄 水 仙」          佐野 由利子
立ち姿いつでも凛と黄水仙     静 岡
パッと傘ひらいたような笑い声
雪景色フラワー店は春の色
慰めの言葉といえど刺がある


   「ジャパニーズ」         川路  泰山
肩書きがあれば人間などいらぬ         島 田
部長から下は真面目な影法師
ばっかり漬たべた蛙が空で舞う
懲役の程度で幅のきくジャパン


「雑   詠」               高瀬   輝男   
天気図より君の心は不可解だ           焼 津
玉石混合磨けば光るのは俺か
分け合えぬ貧富いくさの火は消えず
コメディアンの駄洒落が責める法の裏


「  鬼  」                 望月   弘
鬼は外妻の行方がわからない        静 岡
腹時計いつも電池が切れている
精巧なロボット市民権を得る
鋏の絵鬼の金棒かもしれぬ


 「仮縫いの翼」           加藤   鰹
仮縫いのままの翼で飛びすぎた    静 岡
二日酔い記憶の恐ろしいパーツ
そんなんで戦えますか朝マック
雪うさぎあなたと居られますように


   顧  問  吟 
 「幻  想」        柳沢 平四朗
徒食してほざくニートの人不在         静 岡
屠蘇に酔う自嘲の齢がのしかかる
ひこばえの幻想萌える老い一ke
勝算へ昨日の駒は捨てました



虎竹抄 | Link |
(2007/03/26(Sun) 17:50:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「雑  詠」            福田 勝太郎
美人です煮ても食えない金魚です      大 阪
替えません下取無理な嫁だから
お転婆が貴婦人になるクラス会
離婚する為に結婚したのかな


 「朝  茶」            大塚  徳子
我家にも少しはほしいお餅代       仙 台
会いに行く手足が退化する前に
雪国のくらしに解けるチャンチャンコ
三里戻って飲まねばならぬ朝のお茶


「五 十 年」             井口   薫
お歳はと聞いてしまったクラス会    袋 井
指紋合致ぱっと昔の顔になる
クラス会みんな小鳥になっちゃった
ハイビジョン仕様で今年行くつもり


「自 由 句」            山本 トラ夫
一億も居るので知恵は浮かぶはず       長 泉
寒そうな富士でわたしもなお寒い
コンビニが無いと私は萎えちまう
わたくしは美味しい客の一人です


「雑  詠」            田原  痩馬
なんぼやと聞かれ値札のない体         熱 海
赤い糸つもりにさせて赤い舌
減るもんじゃないけどあんただけはイヤ
義務感に妻の言葉は早くして


「歯の奥に」           羽田  共生
歯の奥にアメリカ肉がはさまった       牧之原
被爆地へ大統領は行かんぞな
頼まぬに国の借金背負わされ
ひとりぐらし他人のことと思ってた


「不 透 明」            寺脇  龍狂
学校も塾も危険と不登校            浜 松
仕事イヤ親の脛嘗めニート族
子は要らぬ亭主も邪魔と物を書き
明日のこと分らぬ老いが国を病み


「あの人へ・・・・・」        尾形  奏子
卒業は間近最後の一ページ        天王寺
好きですと言えず好きでしたとつづる
おもいでは美しきもの目を閉じる
桜舞う中に愛した人がいる


 「晴天なり」            真田  義子
本日も晴天なりと母の声           仙 台
青空にどんどん伸びる夢の蔓
わたくしの力の秘密それは愛
ああ地球これからどんな彩になる


 「笑  う」             新貝 里々子
笑いたくて今夜は寄席の客となる        袋 井
笑うにもどこかしんどいへそまがり
大笑いしたあとしみじみと帰る
くたびれた笑い袋はくずかごへ


  「春を待つ」              辻    葉
春の戸をソッと開けると銀世界       大 阪
待つということばを知らぬ流れ星
カンガルーの袋の中で眠りたい
如月の夕日に明日を祈ろうか


  「雑  詠」            江川 ふみ子
気負わずに生きてひとりの雑煮椀      函 南
ため息へ曇りガラスとなる鏡
道草もいいな世間が見えてくる
子離れや子の足音が遠くなる


 「生 き る」              高橋  春江
不器用なわたしが生きる躁と鬱        袋 井
すげ替える首が欲しくてデパ地下へ
名水の底で時代は病みはじめ
好感度ナンバーワンの友を持ち


  「活字好き」            成島  静枝
愛読書眼の方が先音を上げる          千 葉
新聞の活字大中までは読み
マーカーを持ってハウツー斜め読み
流行物パラパラめくり見る本屋


 「ひとりごと」           増田  久子
身勝手に伸びてほどよくなる雑木        焼 津
得をした気分予報と違う晴れ
二十年経ったワープロ捨てられず
百均のアラームちゃんと朝を告げ


 「ピエロの涙」            柏屋 叶志秋
ピエロでも泣きたいときは泣けばいい     山 形
短命なシャボンは夢が多過ぎる
雑草は花瓶の幸を望まない
進歩する科学も欲に追い付けず


 「深くなったか?」         堀場  大鯉
隠れ蓑など面倒だ風まかせ          焼 津
風通し良すぎて寒くなった仲
泣き所知りすぎおんな遠ざかる
女運いい判断は誰がする


 「雑  詠」             馬渕 よし子
強がりを言って余生へ立ち向かう       浜 松
一年がスピード違反して暮れる
寒風に干されひと味増すわたし
一輪の梅へ期待の春の彩


 「笑  う」             笹   美弥子
哀しみを笑いで包む保身術       仙 台
大声で笑い治まる腹の虫
おわらいの種も入れてる福袋
オクターブ上げて笑ったサクラ咲き


糸車母から子へとよく回る       山田 フサ子
初春に心の窓をよく磨く           袋 井
幸せの糸をたぐった母の指
一條の光信じて生きてゆく
愛し合う同志いたわりひたすらに


 「  色  」            山本 野次馬
白と黒デジタル色の中にいる      函 南
今日の顔ルージュは赤と決めている
完結はピンクの色で送り出す
眼を閉じて右脳が描く十二色


「雑  詠」            滝田  玲子
平安のシュートが決まる蹴鞠会      浜 松
ロボットも節ぶし痛むこの寒さ
二枚目が自慢の地蔵欠けた鼻
ドカ雪が高齢世帯のしかかる


  「眠  る」            薗田  獏沓
三才が飯をくわえて眠りだす         川根本町
説教がやっと終わった眠かった
眠たくて当選番号聞き漏らす
里帰り真綿の様に眠りこけ


 「雑  詠」            芹沢 穂々美
蒲鉾の板までブランド志向です        沼 津
大鍋で昆布巻を煮る年の暮れ
老夫婦イヴの残りのチキン食べ
取られずに鈴なりの柿年を越す


 「  冬  」            鹿野  太郎
イヴの夜砂消しゴムが暖める         仙 台
スキウタという新しい猫だまし
つい羽目を外したまんま年を越す
カマクラで餅の代わりにゴマを焚く


 「女  鬼」            金田 政次郎
幸福の豆撒き鬼と手を組んで         静 岡
女ではトップ蔭から鬼は外
雄叫びをあげる娘は鬼を打つ
痣だらけ今宵は此れでと逃げる鬼


 「自 由 吟」            鈴木 まつ子
すんなりとハチの一刺し容赦せず       島 田
雲つかむ話ばかりでバカな見栄
過信したばかり思わぬ落し穴
届かない高根の花がこぢんまり


「  道  」            岡村  廣司
生き残る為だ泥道厭わない          焼 津
転んだら起きればいいさ僕の道
修羅の道だけど避けない意地がある
迷路から抜け出す道がきっとある


「雑  詠」            安田  豊子
愚かさをしみじみと知る左ネジ      浜 松
耳鳴りが増長させる肩の凝り
捨て切れぬこだわり鍋にごたまぜる
古い絵にたっぷり漬かる夢の中


「まだ若い」            川口   亘
明るさで年令少しさばを読み         藤 枝
日に数度来ない文待つPST番
ざわざわと空耳を聴く夢うつつ
シルバーの席を目が追う杖と友


「雑  詠」            川口 のぶ子
冬枯れの道われに似て淋しかり      藤 枝
姫りんご十粒残し冬の朝
回転の遅い頭のネジを締め
靴の中悲鳴をあげる指の先


「雑  詠」            西垣  博司
とんがった靴先で書く楷書文字      静 岡
欠伸する所在の無さを懺悔する
矢印の先が縒れてる道しるべ
整えた衣裳に明日を近寄せる


 「こよみの春」           中田   尚
こよみ春まだまだコート離せない    浜 松
立春はこよみ通帳大あらし
立春にシモヤケの数増えはじめ
草も木も体操はじめ春を待つ


 「初  春」            内山  敏子
終章の夢を書きたす八十路の絵        浜 松
元朝も昨日と同じ髭を剃る
戌年の幕開け告げる初太鼓
ひらがなが踊って孫の初便り


 「  命  」            森島  寿恵
焼芋をわれ先に取る小さな手         浜 松
まだ老けぬ八十路の命つきるまで
何事も返事一つで輪がなごみ
一生を土と生き抜く老い二人


「自 由 吟」            竹内  登志
半世紀新春の遊びを巻き戻す       浜 松
適齢期よろしくと言う親ごごろ
交友をつなぐ敷紙の犬が吠え
初春の静かな刻へ無の祈り


 「自 由 吟」            御田  俊坊
酒煙草今更止めず威張ってる         高 畠
小児マヒ福祉のお陰今も生き
古希の坂越えて生かされ続く幸
気さくなナースの言葉に癒される


「コーヒーとわたし」        竹内  さき
コーヒーにわたしの冬を別れして       浜 松
コーヒーの湯気に誘われ新世界
コーヒーの良さんと無になるわたし
夕暮れてコーヒー深むシャイな年


「寝 正 月」         中安 びん郎
朔日は野良へ行かずに寝正月         静 岡
美味しくて餅を食べ過ぎ寝正月
老妻もお節料理で寝正月
達筆の年賀状読み寝正月


「冬  眠」            柴田  亀重
闘魂へ陽の加護欲しい寒の冷え        沼 津
眩暈する脳へ気合を入れる声
初春の鍋浮き世の波へ弾む酒
寒風へさらして花の命張る


「お 正 月」               谷口  智美
餅よりもでかいダイダイ横に置く     伊 豆
不景気で休み増えても寝正月
嫌なこと忘れたふりで松飾り
昆布より喜んぶのはピザ、カレー


「つっかい棒」           堀場  梨絵
風と共に私のゆく末を見たい         静 岡
一日病み豪華版でくる夕餉
A面もB面もない皺の顔
駒下駄がもうすり切れた働く手


 「豪  雪」            林  二三子
車窓から見る豪雪に大歓声          芝 川
雪国の冬お隣が遠くなる
雪解けるまではバレずに済みそうだ
見てるだけなら素晴らしい雪景色


 「火  種」            堀井  草園
手の平で踊った火種すぐ消える        静 岡
念押して痛い出臍がまだ痛い
心念の修羅場で拾った白い杖
賛成の片棒芯を抜いて置く


 「雑  詠」            多田  幹江
背伸びせず気を抜くこともなくオカラ     静 岡
歩いて歩いて涙のないあした
風強しノーと言えない人ばかり
固定電話はずむ話に遠くいる


 「雪 の 道」            佐野 由利子
目標はたくさん有るが黄昏期         静 岡
日が過ぎて書きにくくなるお礼状
くねくねと曲がりくねった女坂
尻餅をパチり撮られた雪の道


 「雪  女」 真理  猫子
本性は雪の深みに埋めておく      岡 崎
大根のしっぽのような足でいい
泡銭夢の中でも紙吹雪
雪女の臍は零度で茶を沸かす


「ファンタの歌@」         山口  兄六
バイキングまた胃袋に裏切られ        足 利
シケモクで税の部分を吸っている
年収が足りず悪女に出会えない
受信中天使か鬼かメルマガか


目玉焼きこんな愛でもいいですか     池田  茂瑠
嘘に手を加えて夜の町に向く       静 岡
手の海の干潟に水を与えねば
独りでは淋しい線の中にいる
どう繋ぐ脆い縁の紙こより


 「自 由 吟」 高瀬  輝男
仕合せの風景偽卵抱いたまま      焼 津
雪虫の乱舞よボクは居酒屋へ
振り返るから弱点を掴まれる
鈍感でまた情報に追い越され


 「風 の 邑」           川路  泰山
一桁の昭和が枯れてゆく荒野         島 田
山里にダムが歯を剥くピアニシモ
落人よ鄙びたあたり語り部と
風縒れてひなびた邑を吹き尽す


「春の訪れ」             望月  鐘雄
ふっ切れて嫌な酸素が旨くなる        静 岡
座禅組む今日の命を塗りながら
良いことはドッと来るよりパラパラと
五分だけ待って下さい風が来る


「乾燥注意報」               望月   弘
軽快に生きて若さをほめられる      静 岡
人情の機微に乾燥注意報
内心が薄着になると風邪をひく
風向きでボケのスイッチONにする


 「カルシファー」         加藤   鰹
蒼い火が揺れるみだらな夜になる    静 岡
秩父路へ今年も酒を手に提げて
こんな筈じゃなかった鉛色の空
雪しんしん今夜は抱き合って寝よう

 
  顧  問  吟 
 「拾 い 物」       柳沢 平四朗
追憶が正座をさせる流れ星           静 岡
想定外の顔へシナリオ無垢にする
初詣で喜寿の傘寿も拾い物
頬杖の窓へ微光が覗きこむ




虎竹抄 | Link |
(2007/02/26(Sun) 17:41:12)

「お 正 月」            金田 政次郎
コーラスが良いね日本の「お正月」      静 岡
凧揚げてコマを回した日の温さ
泣いた子に詫びて獅子舞二度回り
猪がジャンプをしたら凄かろう



 「雑  詠」            内山  敏子
流れには乗れない話もち込まれ        浜 松
冗談が程よく溶けてまあるい灯
年一度遠い絆の年賀状
大合併ふる里の名が消えちゃった



「何故ですか」           山本 野次馬
裏門にこびる大人の影がある      函 南
捻じ曲がる教育論にない正義
抱いてやる事しか出来ぬ子の柩
バーチャルの中しか生きぬ子の心


「どこにもあること」        増田  久子
小春日に目立ちたがりが一つ咲き      焼 津
一人旅昔は楽しかったのに
病棟の中庭で見たイシャイラズ
校庭を猫が横切る日曜日


「からっぽ」            増田  信一
曇りなき顔して今日も介護する        焼 津
雨女晴れの特異日寄り切った
墓建てて一番乗りは俺かいな
何も無い心に風を入れようか


「はじめて」            小林 ふく子
はじめてへ踏み込む位置を掃除する      袋 井
はじめての海に荒さを問うてみる
はじめてはファジーな彩がよく似合う
はじめてが好きで明日の花開く


「ボールペン」            中田   尚
ボールペン走り出したらサスペンス       浜 松
考えが文字になったら脈を打つ
エンピツで書けばウソだと逃げられる
少しだけ大人になってペンを持つ


「恋 懺 悔」           新貝 里々子
恋は卒業逢いたい人をまだ温め       袋 井
オンリーユーがいっぱいあった魔女だった
まさかわたしが孤独にすごすクリスマス
月火も金土日も空いてます


 「冬ごもり」            井口   薫
重ね着をしよう唇寒いから        袋 井
お節介火傷しました舌の先
サプライズ気付いた時は穴の底
自己嫌悪灰汁抜きしてる穴の中


「とぼける」           鈴木 恵美子
おとぼけの顔で真面目な事を言う    静 岡
おとぼけが笑いの種を小出しする
とぼけつつ自己主張する笑い皺
仮面つけちょっといたずらしてしまう


  「冬 の 月」            柏屋 叶志秋
雨よりも風が嫌いな破れ傘          山 形
カラオケの宴は音痴が盛り上げる
闘犬も餌のためなら尻尾振る
冬空に輝く月はクリスタル


「時 代 劇」         高橋  繭子
私が悪ぅございました 胃炎       大河原
苦しゅうないもっと近ぅ寄れ 敵よ
お供つかまつる 師走の風に風邪
いざご免 亥年に走り出し候


 「逆転の構図」           戸田 美佐緒
逆転の構図が覗く化粧室     さいたま
盆栽の枝に吊した日章旗
矢印の使者が火種を持ってくる
完全な円で絆を抜けられぬ


「期  待」           相馬 さわこ
早よお風呂入り紅白始まるで       神 戸
走り屋の音で聞こえぬ除夜の鐘
無宗教無欲だったらなお良いが・・・
よい年と性懲りもなく期待する


  「ダブルクリック」          横山  昌利
いける口が揃って夜を深くする      相 馬
潮境のうずに頑固な父がいる
ダブルクリックやがて親父の道を行く
どん底で苦いさかずき舐めている


「人  生」            高橋  春江
バトン無用不毛の地にはまだゆけぬ      袋 井
健脚も優しい風にすぐまろび
字余りの人生だっていいじゃない
気楽さを呑んで寂しさこぼしてる


「  風  」            芹沢 穂々美
浮いた話風が運んで消していく        沼 津
恐い者しらずで行った敵の家
かたつむり殻から出よう重い足
風ぐるま水子地蔵に遊ばれて


「お人好し」            堀場  大鯉
句読点付けぬレターを読み違え        焼 津
どさくさの陰でも吸えぬ甘い汁
じめじめと話すと猫もそっぽ向き
つめ込みの頭へ染みるもの僅か


「明 か り」             鹿野  太郎
ちっぽけな泉茶の間で湧いている        仙 台
歯ブラシに託す一番いい笑顔
ライバルは盆栽だけと笑う妻
みちのくに生まれて粘るよりチェンジ


「九十九折」            石田  竹水
楽しさは近道しないつづら折り       静 岡
チチンプイもとに戻らぬ恋の傷
楽しさが彩づく山のいろは坂
白黒に妥協をしない碁盤の目


「ローリング」           滝    進
転がって加速止まらぬ好奇心         島 田
核論争大波小波右左
埒もない話車座ローリング
ローラーに乗って終ったヒアリング


「日  々」            西垣  博司
生き甲斐は暦の朱書 丸印          静 岡
拾い手を待って一円玉の鬱
煩悩の小舟が日々に蛇行する
鼻風邪にこんなに多い処方薬


「雑  詠」             ふくだ 万年
ケセラセラ口笛ふいて今日も過ぎ        大 阪
買った籤くちぶえ吹いて夢を見る
毛皮着てヘソのウラ魅せ風邪を引く
歳だから十年日記買うべきか


「冒  険」             竹内  さき
さあさあーと風を越す億の冒険        浜 松
風一夜山のあなたに果てるまで
恋ペンに宿して旅をする熟女
朱を入れて今年の命手の平に


 「初  雪」            大塚  徳子
初雪を纏い笹竹イナバウアー        仙 台
冬の川蛇行をしたり澱んだり
センセーショナルいじめいじめと騒ぎ立て
薄くてもテレビにわたし感度いい


 「目  線」             升  ますや
思春期の目線の先に何かある         気仙沼
思春期の目線へ母が追いかける
伏目から上目せわしい十五才
娘へ苦言素直に聞いている不思議


 「雑  詠」             森島  寿恵
師走風町にネオンの花が咲き      浜 松
鰯雲流れて明日へ季が動く
電線にカラスの群が柿ねらう
約束を忘れられたか待ちぼうけ


「介  護」            成島  静枝
修羅越えてベッドの姑を抱き上げる      千 葉
お母さんいるね安堵の眼を閉じる
口元の笑みなんの夢見ているの
ベッドまで介護更新通知来る


 「も し も」             設楽 亜季浩
もしもだよ仮りと断る再検査      静 岡
もしやこれ青空市に似てる服
IT化もしも電気が止まったら
私にももしもがあればヒルズ族


「自 由 吟」            山田 フサ子
年重ね秒針どっと早くなる        袋 井
終章はそこまで来てる物忘れ
霜月の心へ咲かす花の彩
手鏡に春夏秋冬みだれ髪


  「夢去りぬ」            鈴木 まつ子
来る、来ないひたすら待っている月夜      島 田
愛も憎もどこへ消えたか過去にする
愛しむ夢のつづきに酔いしれる
胸しんしん心はらはら夢去りぬ


「自 由 吟」            堀内 しのぶ
勝ち組に入った気分初詣で           焼 津
春を待つ膨らむ愛も花開き
どの芽にも咲く日の夢がきっとある
畦道を辿れば童心よみがえる


  「  旅  」               薮ア 千恵子
誕生日キャリーバックのプレゼント       焼 津
来年も孫と約束する旅行
娘と孫が次々旅のプラン立て
誘われて今しかないと旅に行く


  「つれづれに」           川口 のぶ子
やる気などとうに捨てたか日指追う      藤 枝
日溜りに集まる人の杖の数
ともすれば散りそうな気を引きしめる
居心地の良いにまかせて老い拾う


  「入院生活」            中矢  長仁
病窓に枯葉舞い降り師走知る          松 山
車椅子乗り降り出来て一人こぐ
一人で立ち杖を頼りに歩けたぞ
夜景見てホテルの様と妻が言う


「晩  秋」            畔柳  晴康
歳でない秋霖出足鈍らせる           浜 松
掛け布団引張りあった今朝の冷え
もみじ狩り腰に手を当て背をそらす
背を丸め人生秋の落葉踏む


  「道 連 れ」               馬渕 よし子
生かされています僅かな年金で         浜 松
目が覚めて今日一日の荷を背負う
三歩後歩いた癖がまだ抜けず
鼻歌が聞こえ我が家は安泰日


  「笑  顔」            朝比奈 零児
美辞麗句無用笑顔のご挨拶          島 田
ひょこひょこと笑顔ぶら下げ西東
世辞よりも笑顔に惹かれ人が寄り
三代の笑顔が招く福の神


  「雑  詠」            滝田  玲子
あいまいさについてゆかれぬニート族     浜 松
駆けまわる師走第九でしめくくる
聞き流すことも覚えた処世術
波風を立てぬ暮らしにじっと耐え


「つわぶきの花」            笹  美弥子
晩秋のそこだけ明るい石路の花       仙 台
石路の花ちさくゆらして風の道
まったりと冬の入口石路の花
もう一度座りなおして組みたてる


  「喜  び」              加茂  和枝
多面体ひとつ光れば満足で         岩 沼
問題はゆっくり噛んで出す答え
一日を足は支える有難う
喜びは体の中のエネルギー


  「生 き る」             竹内  登志
世渡りのコツ弁える風見鶏           浜 松
成せばなる窮地に老の底力
郷に入り郷に従う生き上手
好奇心八十路に脳の活性化


  「  大  」             安田  豊子
生きて来た証に大きい絵を描こう        浜 松
大好きなあなたがいれば鏡見る
大小があるからバランスとれている
大金を掴む話はもう来ない


「  花  」            川口   亘
野に咲いた花にも似せたいい出会い      藤 枝
野仏に誰の手向けか花一輪
競い咲きやっと見られる菊の花
県崖に周囲の花も立ち止まり


  「自 由 吟」              御田  俊坊
約束を守り信用堅さ増す           高 畠
信頼が守る善人温かい
寒さには負けず汗かく雪囲い
風邪だけは寒さに弱く玉子酒


  「九州場所」            中安 びん郎
九州場所馬賊芸者が目を奪い        静 岡
蹴たぐりで九州場所も勝ち名乗り
九州場所地元大関期待掛け
九州の次は日本の横綱を


  「シクラメン」           林  二三子
卒寿なお手術に耐えたいい笑顔        芝 川
手術無事終えてひとまず安堵する
これからも続く介護に心する
冬の陽ざし受けて窓辺のシクラメン


「自 由 吟」       提坂 まさえ
飲み干したグラスに答え訊いてみる  静 岡
ストローですってしまおうわだかまり
足と腰油がきいて今日は晴れ
夫婦仲耐震工事やっておく


  「自 由 吟」        谷口  智美
風物詩熊手にジャンボ神経痛    伊 豆
ヤラセでもいいからもっと会話して
最大のボランティアかも労働者
民営化反対派でしょアーユーセイ


「ポ エ ム」         真田  義子
ゆっくりと歩いてごらん空見上げ  仙 台
歩くたび違う景色に出会うから
いつか見たあの青空を抱きしめて
美しい未来見つめて歩こうよ


  「信  用」             真理  猫子
針穴をつついて逃げるマスメディア       岡 崎
ここ掘れワンワンそんなヒロシが騙されて
今年こそ見積もり取って生きてみる
一番の大法螺吹きはわたしです


「自 由 吟」       堀井  草園
欲張りのからんだ枝は折れ易い    静 岡
無が夢中せっせと蒔いた無精卵
雑談の中で耳垢齧り出す
淋しくて諦めだけは漬けて置く


  「不吉な予感」       酒井  可福
滑落の夢に妻の名呼んで起き    北九州
口笛が夜の静寂の悪を呼ぶ
外からの口笛娘いそいそと
黒猫が尻尾を立てて睨んでる


「鮎三昧・・・其の四」    永田 のぶ男
川の絵が好きで稚鮎を群がらせ  静 岡
川底に鮎を名人苔で見る
よそ者を追っ払う鮎体当り
赤とんぼ止まった竿は動けない


   「転(こ) け る」            長澤 アキラ
丹田に力をこめて逃げまわる          静 岡
面接で特技を聞かれうたう歌
引っ張ってアイロンかけて化粧する
警官の前で信号無視をする


「健  康」       川村  洋未
出たくない健康という落し穴     静 岡
雨にぬれそれでもタバコ吸いたいか
健康と表書きする免罪符
一夜漬うりも私も同じ穴


  「神  様」         中野 三根子
神様になってしまった今日の母  静 岡
神の声きいてやさしさたしかめる
神さまに許してもらううそひとつ
念のため指切りをする神さまと


「美辞麗句」         佐野 由利子
内緒だと言った人から喋り出し  静 岡
甘やかしいや厳しすぎ子の躾
言いたい事一方的な投書欄
お世辞と取られなかった美辞麗句


  「つれづれに」           堀場  梨絵
海凪いでゆっくり亡父の声を聞く        静 岡
卵焼きに家紋を押して今日暮れる
金次第何をするにも金がいる
あれもこれもと何もしないで今日が終え


「裏 の 帯」       池田  茂瑠
季に合った羽根に女が変えてゆく   静 岡
東京の砂漠の上の挙式です
胸の奥まではあなたに染まらない
喪の帯を締めると美女になる私


  「雑木林のサンバ」      川路  泰山
さ緑の命を拾う美顔術       島 田
草群れて薄いお頭は置いてきぼりに
美男美女消えて烈火の熱さ踏む
雑木林のサンバに冬が揺れ動く


「ケータイ」         多田  幹江
地雷めくケータイ除けて行く砂漠 静 岡
ケータイに夢中の友とすれ違う
ケータイにひっかかってる濡れ落葉
国境を越えて電子のおめでとう


   「兵 と は」            高瀬  輝男
兵力をバック竹島尖閣と            焼 津
漁船拿捕兵力持たぬ弱さ突き
平和説くうしろチラチラ核兵器
民は飢え兵器倉庫は満杯だ


「チョリソー」              山口   兄六   
♂と♀ただそれだけでいたい夜         足 利
純愛のガラスケースで眠る僕
二日酔い君の都合になる記憶
募金箱見栄でも偽善でもいいよ


「大   吉」                望月   弘
人生のエキシビジョンへジャンプする   静 岡
時効からファーストキッス探し出す
大吉が宝くじには通じない
わたくしが優先席で揺らされる


 「道 玄 坂」           加藤   鰹
ちょっとした角度で真実が消える    静 岡
うらばなし聞こえた白ラムを追加
帰ってはこない彼女とボールペン
ホテル街抜ければ他人だね僕ら


   顧  問  吟 
 「ド ラ マ」        柳沢 平四朗
痩せて来た暦へ使者はもう来ない        静 岡
シナリオが一つドラマは数知れず
団塊のこれから角の無い切符
人情が邪魔をしている舌足らず





虎竹抄 | Link |
(2007/01/26(Thu) 09:52:41)



そっくりで良かったボクとお父ちゃん 薫
セクハラで遊び上手が減ってきた  トラ夫
たとえばの話に伏せてある本音   ふみ子
正札のゼロに思わず指を折る    洋 未
首縦に振ってしまってからの欝   由利子
満ち足りてくると助言が気に入らぬ 廣 司
トンネルの中で本音が見えてくる  草 園
白旗の下で虚ろな息をつぐ     茂 瑠
本降りの恐さを知らぬ日のページ  幹 江
ニンゲンを喰った話が面白い    輝 男
眼を閉じて右脳が描く十二色    野次馬
指紋合致ぱっと昔の顔になる     薫
雪解けるまではバレずに済みそうだ 二三子
すげ替える首が欲しくてデパ地下へ 春 江
町はずれモンロー調でウォーキング 春 江
一円貨仲間はずれの音がする    フサ子
君のシワ笑い皺だね素敵だよ    智 美
一冊の本一本の藁になる      茂 瑠
襟立てて気前良すぎたなと思う   アキラ
私の名刺 魔除けにされている   トラ夫
根は深く残っていたのです妻に   奏 子
背伸びして歩いてみたい春の靴   義 子
万華鏡おんなも変り身が早い    幹 江
手紙書くからねと言ったのに五月   鰹
本能を使い切らずに終わりそう   トラ夫
突然ですが妻も女でござ候     美佐緒
生き恥を曝す事などご免だね    廣 司
封筒の奥までのぞくラブレター   龍 狂
国会の秩序守っている睡魔     太 郎
幸福にルビを振っても気付かない  トラ夫
政治家がジャンケンポンで負けました徳 子
注目を浴びる準備はできている   猫 子
友からの絵手紙元気とり戻す    義 子
手を出せぬ位置で熟している果実   鰹
人間の背中で爪を研いでます    繭 子
平凡に生きて悔いなし花鋏     まつ子
カラフルで使用期限が来てしまう   尚
高すぎることはない利息と理想   龍 狂
いつかいつかを貯めている小抽出し 幹 江
針のない時計さがしに骨董屋    春 江
泣いて済む話羨ましくもあり    帆 波
知っている筈の母から記憶失せ   二三子
解り合うならばすっぽんぽんがいい  鰹
敗因をつまむ酒席がささくれる   平四朗
水色を捕まえるまでチューニング   静
月満ちるいいなおんなは子が産める 静 枝
恋人の肩越しに見る百日紅     美佐緒
ポジティブと言ってくださいキリギリス  智 美
シャガールの青より謎深き女     鰹
飼われたくなくてすぐ死ぬカブトムシ久 子
向う岸逢ってはならぬ人がいる   恵美子
陰口を言えば空しい酒の酔い    叶志秋
激辛のトムヤンクンとクーデター   鰹
捨てて来た未練を拾うロスタイム  平四朗
水漏れがわたしの脳のどこかから   薫
靴底の減らない人が謝罪して    龍 狂
減るもんじゃないけどあんただけはイヤ
                 痩 馬
寒風に干されひと味増すわたし   よし子
年収が足りず悪女に出会えない   兄 六
仕合せの風景偽卵抱いたまま    輝 男
大丈夫何とかなるさ青い空     由利子
不愉快な人だなピタリ年当てた   久 子
積み上げた私の夢に屋根がない   満 月
ダンシングオールナイトな腹の虫  猫 子
内緒だが二年前まで尾があった   アキラ
美人です煮ても食えない金魚です  勝太郎
音のない拍手も混じる多数決    ふみ子
絶好調ふんわり丸くオムライス   洋 未
年毎に禁煙の文字上手くなり    博 司
染め上げた色へ妥協は混らない   平四朗
輪の中に入る勇気と出る勇気     尚
豆腐噛む脳が荷崩れせぬように   泰 山
複雑な話はしない発泡酒      五 貫
ぬるま湯にニートの湯垢浮いている 草 園
どうせならもっと美人にふられたい 博 司
処方箋楽しいうそを少し混ぜ    洋 未
切り株の芯父がいて母がいて    鐘 雄





虎竹抄 | Link |
(2006/12/26(Mon) 09:28:41)

「菊 の 花」            大塚  徳子
一球を待って三振してしまう         仙 台
白鳥の翼に乗って来る童話
学校の怠慢生徒かわいそう
霊前にいじめを嘆く菊の花



 「恋は空席」            戸田 美佐緒
貴女を待って恋は空席です。かしこ     さいたま
ときめきが痛い痛いと切ながる
ため息で残り時間を消していく
以上で終る味気のない僕でした



「舞  台」            高橋  春江
喝采もないのに舞台しがみつき     袋 井
斬られ役今日はみごとに死んでやる
パソコンは一本指の手法です
雑魚だから群れていないと寂しいの


「冬ですね」            相馬 さわこ
寒そうに空のバス行く七時前        神 戸
マスコミに踊らされて自殺連鎖
冬花火見る時だけは恋の顔
冬ですね旧友に出す文戻る


「面食らう」            石田  竹水
愉快かな暮らしは漫画そのまんま       静 岡
陽が沈み愉快にネオン喋り出す
口下手が砂に書いてた誉め言葉
喜びが重さなり過ぎて面食らう


「  花  」            安田  豊子
口説かれて花は多彩な香を放つ        浜 松
はらからの想いは尽きぬ曼珠沙華
踏ん張って遮二無に生きる水中花
少子化を睨み寡黙な茄子の花


「雑  詠」             ふくだ 万年
微笑みは言葉以上の意思表示          大 阪
閉じ込めた妻の愚痴から異常音
面の皮薄いのだろうかこの寒さ
夕餉膳格差社会が見え隠れ


「生 き る」           山本 野次馬
生きている証しか人に嫉妬する       函 南
だいじょうぶ楔を元へ打ち直す
しがらみと同居していく心地よさ
大あくび人間らしく酸素吸う


 「虎 竹 抄」            鈴木 恵美子
毛糸玉ころころ愛を編み続け       静 岡
川の字に寝てはいないよぼく元気
喧嘩した昨日を忘れ仲が良い
わんぱくがぐったりしてる何かある


「酒  場」           金田 政次郎
連れられた酒場で薔薇の花に逢い    静 岡
水割に季節が浮かぶカウンター
距離を置く耽美な恋のナルシズム
こみあげる恥の記憶の啼き声


  「雑  詠」            成島  静枝
青い目へ車中メイクが恥かしい        千 葉
恥文化日本の良さが消えかかる
世間様教えた母が小さくなる
赤トンボたまには母を笑わせて


「合わせる」         馬渕 よし子
頷いているが目線を合わせない     浜 松
イエス・ノー言えぬ日本の舌足らず
焦点を合わすと発火するメガネ
足並を合わすと夫走り出す


 「破 れ 傘」            横山  昌利
煮崩れの豆腐が嗤う骨粗鬆     相 馬
未練たらたら破れた傘をさしている
吊されていよいよ軽くなる右脳
快諾の妻に油断をしてしまう


「まぼろし」          新貝 里々子
噛みしめる恋も奥歯も萎えている     袋 井
坂道を無様に転び恋終る
マニキュアは恋のあの日と同じ色
疼くものあれはまぼろしあれは夢


  「雑  詠」            笹  美弥子
玄関に君が一輪の吾亦紅        仙 台
菊人形大河ドラマに彩を塗る
切り取り線いったりきたり倦怠期
そのことに触れまいモーツアルト聞く


「没句供養」            薮ア 千恵子
ひたすらに歴史を呑んで海無言       焼 津
故郷の祭に続く木遣り歌
散歩道風が運んでくる季節
一肌を脱いで返している恩義


「バランス」            増田  信一
リセットができる自分史あったなら      焼 津
方言のシャワーをあびて生き返る
連れ添いは勝ち負け五分でちょうどいい
若い時出した手形が今回る


「もう終わり」           中田   尚
この間雑煮食べたら大晦日          浜 松
学生の時にこんなに早ければ
計画が計画のまま十二月
下書きのままで終わった句と眠る


「動 物 園」             井口   薫
子供より子供になって動物園          袋 井
オランウータンの千両役者動かない
象ナナ子喪中へ檻の前静か
動物の視線人間ウォッチング


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
恵贈の歌集に光る師のサイン        浜 松
改革の華は一、二期 危機四、五期
言い訳を優先席へして座り
ちびっ子もメジャーも同じホームラン


「小さな灯」            真田  義子
転ぶたびあっけらかんと歩き出す       仙 台
ポケットに楽しい言葉入れてます
ライバルがいるから僕も光り出す
平和です小さな町の小さな灯


「雑  詠」            江川 ふみ子
生きていく箸が重たい日暮れどき       函 南
ドアチェーン人間不信となる私
終のある人生今をいとおしむ
確実に一秒一秒死に向う


「老  い」             堀場  大鯉
整形の鼻だけ老いぬ可笑しさよ         焼 津
山頭火来そうな道に秋の蝶
手のひらで切るお豆腐に秋を知る
老残を忘れる杖よ菊日和


「自 由 吟」             川口 のぶ子
サイズから試着の部屋の狭き門        藤 枝
回転の遅い頭のネジを巻く
来客が押売だけになる世代
見上げればまんまるの盆秋の月


 「  雨  」            畔柳  晴康
降り止まぬ雨と句作の根くらべ        浜 松
懐しい想いを馳せる雨の午後
苦にするなゆっくり休め今日の雨
気晴しに散髪したが雨やまぬ


 「い ば る」             設楽 亜季浩
威張っても私あってのアナタでしょ      静 岡
いばるのは病気のせいと受けとめる
意地張ってしょんぼりしてる威張りんぼ
威張るのも定年は許してた


 「現  象」             西垣  博司
晴天も続けば人は疎んじる       静 岡
クーラーを掛けて地球をあたためる
疎んじて暑さ寒さのご挨拶
ひねくれた松が素直に時を漕ぐ


「秋 の 空」            加茂  和枝
青空をひとつ探して日が暮れる        岩 沼
古いけど家のおばあは宝物
何もかも本気で汗をかく世代
腰曲がるそれでも仕事精を出す


 「雑  詠」             内山  敏子
兎小屋ローンの海を泳ぎきる      浜 松
アクセント昔のままで来る返事
思い出をつなぎ合わせる里の風
いっ時の緊張ほぐす鳩時計


「自 由 吟」            山田 フサ子
脇役へささやか母の女道         袋 井
秋晴れに酔って野山へドライブする
倖せは健康意見一致でおしゃれする
平凡を愛し静かに独楽まわる


  「矢  印」            芹沢 穂々美
矢印が天に向き変え生かされる         沼 津
噂など耳をふさいで聞き流す
ネクタイを外す男のいかり肩
結納の席でウソなど言えますか


「愛犬一五才」            増田  久子
茶太郎の名で代々の雑種犬           焼 津
だれにでも馴付き番犬は失格
犬だって飼う気になるは顔次第
可愛くて長寿で無芸うちの犬


  「喜  寿」               岡村  廣司
喜寿が来てさあここからが正念場        焼 津
切れ味をまだ落とされぬ喜寿の坂
おだてれば喜寿率先のボウリング
百薬の長を味方に喜寿を過ぎ


  「冬が来る前に」          酒井  可福
人里に冬眠の餌求め下り           北九州
やさしさを一つ残した子守柿
股引のゴムも入れ替え冬支度
松の木もワラの腹巻き巻いて冬


  「蕎  麦」            宮野 たきこ
痩せ地ゆえどこまで続くソバ畑         岩 手
揺れ咲くは北の大地の白小花
新蕎麦に舌鼓舌鼓の太鼓腹
婆が打つ蕎麦には勝てぬイタリアン


「雑  詠」            滝田  玲子
天高く体重計が狂い出す            浜 松
あちこちで尾鰭をつけて飛ぶ噂
金持ちが貧乏ゆすりする不思議
閑人に見えるか道をよく聞かれ


  「詰 め る」               薗田  獏沓
食う人を思い弁当飾り盛り          川根本町
満員でお尻を押してドアを閉め
詰め込みと言われる学校履修もれ
端で見る将棋とっくに結んでいる


  「しり取り川柳」          中矢  長仁
家の前スーパー出来て便利です        松 山
便利です朝晩に出る特価品
特価品教えてくれるレジ係
レジ係新人さんも美人です


  「頑 張 る」            川口   亘
宇宙から神の啓示か虹の橋           藤 枝
独り身の端役主役のない芝居
気力では負けないつもり歳が邪魔
足や気を示し合わせの欲しい歳


「雑  詠」              森島  寿恵
苦の坂で歩く男の勇み足          浜 松
いろは坂越すに越せない七曲り
カレンダー秋の夜長に身がふるえ
竹蜻蛉飛ばす大きな夢を乗せ


  「自 由 吟」              藤野  俊子
柳友はラジオがくれた宝物         掛 川
介護保の行方気になり年令を知る
口げんか負けるが勝ちと知り乍う
良き夫生んだ姑だと娘をなだめ


  「生  活」             鹿野  太郎
ヒツウチに留守電息を潜めてる         仙 台
九献から踊る阿呆の泣き笑い
ハンドベル一つ鳴らしていいですか
お疲れさん柳の枝が酌をする


  「がたつく」             鈴木 まつ子
読めるけど書けない漢字すぐ忘れ        島 田
目も耳も読み損なってガタがくる
年ごとにたるみ度レベルアップする
生きてゆく苦労つきもの背が寒い


「雑  詠」            竹内  登志
若者のパワー貰って生きのびる        浜 松
残り火へ大地の恵み秋の寶
ニューモード眺めるだけのウインドウ
見栄張った域は半ばで崩れ出し


  「生 き る」              朝比奈 零児
逞ましく生きた昭和の激動期         島 田
命ある限り努力の灯は消さず
精一杯生きて励めと日が昇る
前向きに生きて爽やか顔の艶


  「冒  険」            竹内  さき
美しく腰のタオルが光る国         浜 松
風漢走って走る十二月
北風に耐えて花の美抱く女神
脈脈とつむく私の一人鍵


  「虐  待」            山田  光男
虐待児命の保証だれがする          静 岡
虐待は安全場所が子らにない
虐待は上にも下にもない良心
虐待は親のえごから子はあわれ


「自 由 吟」       御田  俊坊
図に乗ると信用落とし暗くなる    高 畠
結ばれて夫婦の絆設計図
命とは枯れ落ちるまで分らない
年毎に枯れ落ちて来るクラス会


  「自 由 吟」        山田  ぎん
故郷の蜜柑届いてありがとう    静 岡
富士の山何処から見ても美しい
食事時犬が私を迎えてくれ
菊の花見事に咲いて玄関に


「バレー戦」         中安 びん郎
競技より得点を見るバレー戦   静 岡
ジュースでは気が気ではないバレー戦
団結は鉄より堅いバレー戦
一点差手に汗握るバレー戦


   「焦れったい」           堀井  草園
鴬嬢笹鳴きまでは真サラヨ           静 岡
手応えを掴めぬ頭上流れ弾
憎いまで横に首振る余り風
月も見ず一日一善下戸淋し


「  心  」            中野 三根子
母の前心がとけてゆるみ出す         静 岡
思い出をさがして心の旅に出る
心から笑ってしまう母の前
夢の中やさしい心あふれ出す


 「ソーラン節」           林  二三子
背丈程の昆布のれんの様に干し     芝 川
足早に利尻の秋は去ってゆく
鰊番屋の広さ最盛期を偲ぶ
番屋からソーラン節が消えている


「鮎三昧・・・其の三」       永田 のぶ男
爽快に友釣りの夢若返る         静 岡
鮎の口梅雨に水なく乾きぎみ
釣れなくて名人の真似しても駄目
竿さばき橋の上から指図され


  「雑  詠」            川村  洋未
今だから言えるだなんて罪だねえ        静 岡
目に見える効果でてこそ自慢でき
冷たさが時に適度な距離保ち
愛情で払ってためた領収書


「朝 の 雨」       多田  幹江
みんないい人カラス黒くて当り前   静 岡
無人売り百円玉が好きらしい
八起き目の出花を挫く朝の雨
人殺しの話に順れて肌寒い


  「日向ぼこ」        佐野 由利子
目立たない位置になくてはならぬ人 静 岡
幸せの真ん中にいて愚痴ばかり
山間を暫し走って露天風呂
日向ぼこ言いたい事を言い合って


「  秋  」         長澤 アキラ
あきらめた過去がくすぶる火消壷 静 岡
風の音静かに聞いた秋桜
遠い日の祭囃を抱いて老い
生き過ぎたボヤキながらも医者通い


   「こ こ ろ」            堀場  梨絵
一筆をふまえて生きる秋の陣          静 岡
この秘密吐けばどんなに楽だろう
相手しだいいい子になっていたんだね
なにもしないでいいよと子らに見離され


「指 定 席」       谷口  智美
見せ方は計算済みのVネック     伊 豆
謎ひとつおいてつき合う長い友
座布団に温もり残る無人駅
天国は完全予約指定席


  「十 二 月」         山口  兄六
白菜の芯役になるサバイバル   足 利
売れ残るケーキに鼻で笑われる
十二月また振り出しで会いましょう
夜祭りの終わりに髭を剃らぬまま


「崩 れ る」         池田  茂瑠
揺れ動く心へ支え頼りない   静 岡
愛の穴塞ぐ幾枚要る切手
この帯を解けば私が崩れ出す
尾てい骨熱気の渦に沈めよう


  「リ ン ゴ」            川路  泰山
リンゴ地に落ちてから引力産まれ        島 田
白雪姫もイブもアダムもリンゴから
地球を制覇したのはリンゴでした
ナイーブになろうとリンゴ剥いてます


「自 由 吟」              高瀬   輝男   
生きるためならば共食い許されよ        焼 津
ああ殺意腕に一匹蚊が止まる
悪用に利用度高い人の知恵
人肌の善意殺した介護法


「適材適所」                望月   弘
ちがってもいいとみすずを好きな星    静 岡
目をつむるまでは余生をつくらない
相槌を適材適所貼ってある
百薬でまだ煩悩が薄まらぬ


 「ブリキの鳥」           加藤   鰹
電飾の街 野良犬は眠れない       静 岡
マスメディア自殺ブームを煽りたて
渡り鳥北朝鮮のスパイかも
気ちがいの目線で対話する愚か


   顧  問  吟 
 「囲  む」        柳沢 平四朗
続編へ手垢のついた言葉達           静 岡
真実もあの目この目に囲まれる
紅葉がノックしている旅栞
遠慮なく石鹸が減る生きている




虎竹抄 | Link |
(2006/12/26(Mon) 08:26:41)

「小  生」            川口   亘
赤い灯が揺れて禁酒の字を忘れ        藤 枝
手を添えば怒るくせして介護待つ
外出にこころの鍵を掛け忘れ
悩んでもこの山越えて里を見る



 「自 由 吟」            酒井  可福
秋の風本の枕が欲しくなる         北九州
名月が何だ歪んでいる乱視
積ん読のページをめくる秋の風
世間では僕を異色と呼んでいる



「雑  詠」            成島  静枝
洋上の国境線をわらう虹        千 葉
まだ誰も虹の根元を見ていない
真っ直ぐな道だ隠れるとこが無い
ママチャリは必須アイテム特売日


「結  ぶ」            芹沢 穂々美
百足競争むすんだヒモが緩みだす      沼 津
結局は言い出しっぺに役がくる
堅結びしよう夫婦でいる限り
結び丈そっと渡した芝居小屋


「潔  し」            薗田  獏沓
竹を割った様な男で潔し          川根本町
冗談の隙間へポンと置くジョーク
未練など後に残さぬ潔さ
別れてもさ程気にして居ぬ女


「過  去」            朝比奈 零児
過去の灰汁洗い流した胃の切除        島 田
胃の切除過去を断ち斬る句読点
過去幾度妻を泣かせた酒の癖
過去のことさらりと捨てた虹の橋


「となりの核」           羽田  共生
大国を揺さぶっている核ひとつ         牧之原
となりの核はよく人喰う核だ
なりふりはかまわず核をあからさま
蛸がいるか火星にカメラ歩かせる


「は な し」           石田  竹水
枯らしたら二度と咲けない花言葉      静 岡
仕合せのランクはCで太らない
二人居て恋は一つの影に成る
呑み込めん話ミキサー噛み砕く


 「虎 竹 抄」            新貝 里々子
秋刀魚焼く昭和レトロの家に住み     袋 井
しっかりとソファーについた沈み癖
段差などなんのこれしきどっこいしょ
キイキイと椅子もわたしも吐く弱音


「人生の秋」           井口   薫
紅葉前線既に手の指足の指       袋 井
頑張れと娘が渡す脳ドリル
残照を集めて詩へ指を折る
現在地人の秋です下流です


  「雑  詠」            藪ア 千恵子
追伸の本音電話でやってくる         焼 津
白黒の写真に孫が出す奇声
理想論一人歩きをして困る
擂り鉢の底に取れない猜疑心


「ラブソング」        鈴木 まつ子
ラブソング秋の哀れさただ侘びし    島 田
酔いほろろしきりに疼く恋心
つかの間の逢瀬余韻がまだ続き
何となく逢いたい気持また募り


 「  花  」            大塚  徳子
賞味期限切れてどどっと疲れ出る 仙 台
ゲコゲコ下戸とカエルが囃す帰り道
花のうちに華華しく散るがいい
自画像に細くやさしい目を描く


「末  席」         堀場  大鯉
腹案を口に出せないこの辛さ  焼 津
インテリの恋に理屈が多すぎる
父親を黙って睨むおそろしさ
見ぬ振りの情けを粋と見てくれず


  「零点・満点」       柏屋 叶志秋
他チームのファンが好きな巨人軍    山 形
映画館主役になった顔で出る
○×で零点取るも難しい
満点の答えはなぜかつまらない


 「男 な ら」             岡村  廣司
蹴られたら蹴り返しなよ男なら        焼 津
智恵と汗出せぬ男に用はない
逆風に泣きごと言うな男なら
尾を振らぬ男が見せるど根性


 「雑  詠」            設楽 亜季浩
腰浮かせ名前が違う恥ずかしさ        静 岡
いい人にされて割り勘とも言えず
ロー人形サラサラですか血の流れ
街に出た息子気遣う黒電話


 「自 由 吟」             鈴木 恵美子
うんうんと調子良い子の乱気流        静 岡
迂回してコスモスと逢う道を選り
受皿に笑いの種を盛り付ける
浮き雲に亡夫を偲ぶ秋が来る


 「雑  詠」             笹  美弥子
強がりをいわなきゃしおる夏の花    仙 台
悔いひとつ残し絡まるつたかずら
残されたいのちを洗うふたり旅
たかだかのバラ一本に汚される


「雑  詠」            寺脇  龍狂
交番の花を枯らさぬ町に住み         浜 松
年金が素通りしてく政令市
一人っ子脱線させる親がいる
入選が減って量より質といい


 「秋 の 風」             中田   尚
反省をうながしている秋の風      浜 松
やきいもも大学いももうまい秋
ドラフトのクジで決まった運不運
満月も人間様に大笑い


「秋ですね」            辻    葉
時雨くる前に約束果たします       大 阪
秋バラにどんな台詞を囁こう
背伸びする団栗だから愛される
愛唱歌「野菊」に母の影をみる


  「何となく秋」           鹿野  太郎
ドラッグが効いているのか法の網        仙 台
鉛筆は張り詰めている再生紙
コーヒーも砂糖も妥協しない祖母
コスモスが揺れる寅さん旅仕度


「秋 の 恋」             真田  義子
大海を知らずに泳ぐ熱帯魚           仙 台
荒海の中でも母は船を漕ぐ
ひっそりと終わる二度目の秋の恋
思いやりの心が解かすわだかまり


  「歩 ・ U」               増田  信一
歩み寄るその下心顔に出る           焼 津
遺伝かなほっつき歩く癖抜けず
学び舎を一歩出てすぐ家の中
一歩だけ遅れたことが今千里


  「自 由 吟」            藤野  俊子
スプーンまげ其れより地震予知をして     掛 川
失敗も苦労も宝と悟る齢
アルバムに見る子と孫が同じ顔
背に重みまだ残る孫振り仰ぐ


  「もう秋だ」            加茂  和枝
雨の音ぐずぐず続く秋になる          岩 沼
こっちへおいで紅葉の空が待っている
秋の空実のなる仕事やりかける
秋だから冬に備える冬支度


  「  肩  」            馬渕 よし子
ふり向けば駄々をこねてる影法師       浜 松
ちょい悪が肩の力を抜いて生き
どっしりと肩に食い込む父母がいる
嫁がせて返品固くお断り


  「  歩  」             阿部 闘句郎
退職へ心の駅へ足が向き           神奈川
一歩目で異常接近した二人
ナンバーワンオンリーワンへ歩き出す
二歩目からクレーム付いた足の裏


「い の ち」              安田  豊子
スキンシップだけで素直な子が育つ       浜 松
神に背いて遺伝子触れる医の倫理
長生きに秘訣など無い笑い皺
人生の坂で時々聞く軍歌


「自 由 吟」              山田  ぎん
百日紅艶やかピンク夏惜しむ          静 岡
虫の声聞き風呂上り気持ち良い
大根を蒔いて青葉線を引く


「と ぼ け」             増田  久子
気付かれるまでは内緒にしとくボケ       焼 津
「わ」ナンバーと知っててほめるいい車
ヘルメット皺まで誇張してくれる
カラオケとダンスどちらも駄目で飲む


 「冒  険」            竹内  さき
冒険を織るあふれ出る縦糸に      浜 松
悲喜こもごも私の今日をペンが聞く
このいのちわかれもできずついてくる
天までとその実をはざす女神かな


 「鍋 料 理」            金田 政次郎
蕩けてる笑顔が囲む鍋料理          静 岡
燃えかすを酢味噌に和える冷やし鍋
しみじみとぽかぽかうどん親子鍋
コクの有るあなたを煮込むタフな鍋


  「走  る」            高橋  春江
見栄はった衣に走る静電気          袋 井
向う気の強い短足よく走る
まだ少し未練が残るライセンス
青い実は鋳型が嫌いほっといて


「犬  猫」            横山  昌利
迷惑な話叙勲の通知くる           相 馬
聡明なお方で犬に会釈する
犬猫を飼って平和に呆けている
萩の葉が揺れて一息つく日暮れ


 「 事 」            宮野 たきこ
些事ながらこの充実を生きる今      岩 手
次々の用事の波に夢忘れ
きみが言う大事なことは過去にあり
目の前の仕事に追われ歳をとる


「雑  詠」            ふくだ 万年
オーイ飯言うてみたいね妻の前      大 阪
朝だから妻の愚痴聞く耳を持つ
やり遂げた自負であの世に逝くつもり
遠慮なく欠伸が出来て家平和


  「  帯  」            升  ますや
帯高く締めてシナリオ書き替える        気仙沼
帯強く締めて待ってるYES、NO
言い訳が通って帯をゆるくする
子の夢に合わせ編んでる帯袋


「雑  詠」       西垣  博司
横文字のカルテで恐怖薄められ    静 岡
スピードはエンジンじゃない酒の指示
胃洗浄まだ残ってる腹の虫
秋空に案山子どうしのテレパシー


  「雑  詠」        竹内  登志
生かされて喜怒哀楽が身を責める 浜 松
星影の道でときめきかくせない
外遊び影と遊んだ日もはるか
知らぬ間に親をまねてる眼がこわい


「雑  詠」         森島  寿恵
言葉とは世にも不思議な綱渡り 浜 松
聞き流す事も大事と思い知る
親切もほどほどにする快復時
一言の善意が結ぶ仲直り


  「ダイエット」            内山  敏子
ダイエットに負けてLLサイズ着る       浜 松
ワンサイズ細めを着たいダイエット
ダイエット忘れて秋の食を悔い
秋の食三日坊主のダイエット


「雑  詠」             川口 のぶ子
ほうずきの朱あざやかに盆飾り         藤 枝
ひぐらしの遠くきこえて夏去りぬ
ミニ畑土をおこして秋植える
冷蔵庫賞味期限でストップか


  「  秋  」        滝田  玲子
松茸の味は忘れて焼くサンマ   浜 松
読書の秋積んどく本が崩れかけ
栗よりも旨いと叫ぶ十三里
大佛がうっとりと聞くコンサート


「川柳修行中」        中矢  長仁
川柳に嵌って今が真っ盛り   愛 媛
先輩に習い揉まれて穿ち追う
しり取りのホームを追って三十句
穴埋めに首突っ込んでもがいてる


  「雑  詠」             山田  光男
今日元気夕焼け雲よありがとう         静 岡
ありのまま生きればきっと明日が来る
迷信も神も信じて生きている
意地ばかり通せぬ道もある世間


「自 由 吟」       御田  俊坊
長生きし走り続けた笑い皺      高 畠
子が巣立ち走り続けた母の汗
頂点に登ると里が遠くなる
親想う職場を嫌と都行き


  「自 由 吟」        望月  満月
言い訳を数えて悔いのないお鼻  静 岡
小休止熱い卵の中にいる
君とまた熱い思いを描きつつ
蜂の子は私ですよと見せられて


「自 由 吟」         堀井  草園
こつこつと登って星へ一礼す  静 岡
惚れぐせを剥がす小指を噛みつかれ
肩で風切らぬと雑踏渡れない
ユーモアを掴めぬ箸を握ってる


   「貸し農園」            中安 びん郎
貸し農園 園主の役はもぐら捕り        静 岡
奥様が日焼け構わず農地借り
園主よりでかい貸し地の黒カボチャ
園主より外は綺麗な標準語


「秋を見に」       林  二三子
落ち葉踏むふわふわ足にやわらかい  芝 川
秋の森きのこが顔を出している
ローカルで風を感じる列車旅
棚田ある風景平和だと思う


  「鮎三昧・・・其の一」    永田 のぶ男
藁科に稚鮎が踊る初夏の風    静 岡
ふる里は銀鱗おどる鮎の瀬な
友釣りの竿のトンボや滝の音
竿先のかすかな動き胸騒ぐ


「無  用」         多田  幹江
肩書き不要検尿の紙コップ   静 岡
深追いしない国産と書いてある
詮索ヤボよ回転寿しのイクラです
宿酔の言い訳なんか聞いてない


  「無風の旗」            池田  茂瑠
固めてた城で愛語が届かない          静 岡
強く翔ぶピアスの穴を開けてから
スリムへの願望を抱く老いてなお
無風でもあなたへなびく旗を持つ


「 瞳 」       中野 三根子
うるんでる君の瞳が話しかけ     静 岡
赤ちゃんの瞳の中に君がいる
君を待つ瞳に涙ためながら
輝いた瞳に心いやされる


  「見回せば」        川村  洋未
敵の敵さらに手強い敵と知る   静 岡
恋人もレンタルします期限付
立ちあがるどっこいしょとは言わないぞ
後ろから財布のヒモを握る嫁


「頑  固」         佐野 由利子
頑固って煮ても焼いても食べりゃせぬ 静 岡
お互いに我を張り通し無言劇
「悪かった」たった一言なぜ言えぬ
怒鳴っても果ては惚れてる方が詫び


  「こ こ ろ」           堀場  梨絵
たが為に涙は頬を濡らすのか          静 岡
空想の視野であなたの妻になる
こころまで売らぬ熟女の負けいくさ
日傘くるくる亡母と歩いたこの道だ


「  月 」             谷口  智美
初めての嘘は月夜のことでした         伊 豆
明る過ぎ月あかりの中月探す
兎くらい信じ続けていたかった
マロングラッセ今年はムーンルッキング


  「 男 V 」        長澤 アキラ
万策が尽きて独りの茶漬け飯   静 岡
小心な男ででかいホラを吹く
失恋に慣れた男の発泡酒
逃げ切れる距離に靴ぬぐ卑怯者


「コント繰り」        川路  泰山
一日を北斎になる五湖巡り   島 田
食客となってお忍の姫と会う
湯治より先ずは地酒の匂い嗅ぐ
隠れめく湖畔の宿でコント繰り


  「雑  詠」             高瀬  輝男
天気図は読めても明日の運読めず        焼 津
春夏秋冬豆腐に厄日なんかない
酒杯手にすれば議論も華やかに
善人に変われる技で波立てず


「木曽の亜紀」              山口   兄六   
語り合い切れずに別離する夜長         足 利
妻でない誰かに捧ぐ月の笛
舞い落ちる葉っぱに紛れたいパンツ
純愛のバイブルにある憎悪劇


「善 と 悪」                望月   弘
新聞を見ないと今日がわからない     静 岡
四捨五入よりも僅差でバカになる
原っぱの放尿ウツが消えている
善と悪コレステロールお前もか


 「Fコード」            加藤   鰹
萩の花ぽろぽろ涅槃へと続く      静 岡
越えられぬものに女とFコード
さそり座でAB型でホットです
牡蠣酢って哀しい味がしませんか


   顧  問  吟 
 「わだかまり」       柳沢 平四朗
口癖の言葉言葉を探らせる           静 岡
怒る時怒るあざとい真っ正直
水臭い水を向けてる蟠り
八十路なおたかがされどの風景画




虎竹抄 | Link |
(2006/11/26(Sat) 07:26:41)

「夏季限定」            戸田 美佐緒
夏季限定冷たい月を抱いている      さいたま
仮縫いが終わったらしい少年期
心療内科ビー玉が割れている
やんわりと狼煙は上がる炊飯器



 「自 由 吟」            岡部  久美
砂糖菓子崩れてしまえ夏の恋      伊 豆
封印を解くには太陽まぶしすぎ
熱高しいまだこの町捨てるのは
風吹けば何時かは燃える種火持つ



「夏 休 み」            塚本  寄道
我が家では女王陛下のような母      長 泉(中一)
夏休み母指令官ボク歩兵
言わないでやってみたいよボク流で
長いはず短かかったよ夏休み


「お 役 所」            松橋  帆波
一番の番号札で待たされる         東 京
出張が机の上で済む噂
大概は謝って済むお役人
役所には実は立派な人もいる


「自 由 吟」            中田   尚
やさしくて小さくて痛い母の釘        浜 松
かごめかごめ明日はリストラかも知れぬ
皇室に無理矢理呼んだコウノトリ
再試合プロも手本になれば良い


「外 れ る」           井口   薫
何となく締まりませんねドテンカイ      袋 井
御勝手に冥王星の捨て台詞
これも武器遠視難聴物忘れ
ああショック スイッチ入れるのもヨイショ


「ここだけのつもり」        増田  久子
花の名は書いたがどんな花だっけ        焼 津
飼われたくなくてすぐ死ぬカブトムシ
君が代にさえもコブシの癖が出る
紅一点なんてその気になった古希


「自 己 愛」             新貝 里々子
ディナーショーファッションチェックして遊ぶ 袋 井
京懐石 池の鯉まで美しい
使い切った明るい赤を買い足そう
グルメ旅明日から粗食八分目


 「シ ャ ツ」            横山  昌利
横風を受けて男の貌になる          相 馬
太陽の誘いに泡を吐く金魚
陽の匂う布団に街の子を寝せる
父の日に少しやつれたシャツを着る


 「挫  折」            馬渕 よし子
清流で育ち都会ですぐ挫折         浜 松          
挫折する度に血管太くなる
挫折した涙の染みの偉人伝
井の中の蛙挫折を知らず生き


  「  岸  」              鈴木 恵美子
ひたむきな愛が岸辺の花となる       静 岡
向う岸逢ってはならぬ人がいる
橋のない川の向うにいるあなた
過去探る糸は岸辺をさまよえり


  「雑  詠」            山田 フサ子
鈍行でいきたい老の平和旅         袋 井
躊躇して逃した夢を追いかける
逆流の世代戸惑う川の石
直感を磨く何かに出会えそう


 「生きる疲れ」             堀場  大鯉
サルビアの赤 老らくへキツすぎる       焼 津
色あせた口説き文句にだるくなる
ニコニコと出る杭ならば叩かれず
げじげじも生きとし生きるものなのか


  「雑  詠」            西垣  博司
そっとしておこうゼンマイ延びてるが      静 岡
正直な人だ わかった嘘を云う
受話器置き余韻に猪口を一つ足す
特別な困り事なし花に水


 「自 由 吟」            ふくだ 万年
夢を捨て籤買う金でビール飲む        大 阪
山ふたつ乗せて嬉しい擬似の胸
昼飯は英世で釣りと決めている
玄関の靴に比例の笑い声


 「隙 間 風」             川口 のぶ子
揉め事をちょいと摘まんでポイと捨て     藤 枝
云い過ぎた後に切ない隙間風
行き詰る言葉の果てが遠く見え
草臥れの相槌が効く膝がしら


 「あつあつ」            阿部 闘句郎
太陽に乱反射する自殺熱           神奈川
あつあつの新婚さんがいてラッシュ
カミソリを遊び道具にして不倫
あつあつの二人に朝のバイキング


 「他  人」             笹  美弥子
小さなはなし他人おおきくしてくれる     仙 台
負け犬の疵に塩ふるのも他人
老いた身に他人の十指あたたかい
それからのことば捜した白い夜


 「将  来」             設楽 亜季浩
百年は安心ですと大臣が        静 岡
老人に大志抱けとムリ強いる
今日生れドデカイ荷物背負わされ
日々進化老いたロボットどこ行くの


「酒  よ」            柏屋 叶志秋
日本の酒には四季の色がある         山 形
ストレスを取るはずだった二日酔い
陰口を言えば空しい酒の酔い
美女の酌孫の酌では違う味


 「オーバーヒート」         宮野 たきこ
税税税 喘息列島死者多数        岩 手
そんなにも栄養とってどーするの
捨て場所に困るアンタの意地の花
とんちんかんそれも癒しという哀れ


「雑  詠」            岡村  廣司
丁重に詫びてはいるが眼が笑い      焼 津
過労死をする程真面目にもなれず
逗留が嫌いか諭吉一葉も
後悔を皆がしている大渋滞


  「自 由」            滝田  玲子
ブランドの海でカードが溺れそう        浜 松
昭和史の戦後を語り継いで生き
ロボットもリズムに乗って腰を振る
転げゆく毬がひとりで走り去る


「人間模様U」            山本 野次馬
欲望の影がやたらに前を行く          函 南
足し算も引き算もして輪が出来る
歯車がロボットだからホッとする
安売りの返事があとでボロを出す


 「くつろぎの森」             真田  義子
くつろぎの森から消えた青い鳥         仙 台
潮の香にふと目覚めたる旅の夜
椰子の実が流れ着いてる島の朝
平凡な暮らし夢見るレモンティー


  「冒  険」            竹内  さき
わたくしを保つため朱の汗を積む        浜 松
君しきりひっそりと添う秋暮色
心降る私の雨にうす化粧
他人には見えぬ内内舞い終えて


  「雑  詠」            寺脇  龍狂
夢ファンド嗚呼玉杯が玉砕し          浜 松
靖国が独立国を疑わせ
共通の貧血症に泣く親子
親も子も何か忘れたツケに泣き


  「自 由 吟」            竹内  登志
雑草という名で強く生きのびる        浜 松
雑魚という老に貴重な生き字引き
秘めごとの一つや二つ抱いて老い
病院行き人みな下りる無料バス


 「美しい国 日本」           大塚  徳子
温暖化ドウモイ酸が泳ぐ海           仙 台
寂しくて琴線高くかき鳴らす
空高くやがて羽ばたく鶴を折る
美しい国 日本を目指す秋


  「タイ料理」             成島  静枝
愛情はたっぷり惜しい料理ベタ         千 葉
黒胡椒渋いおとこのほくそ笑み
パクチーの個性はみ出すタイ料理
ココナッツミルクおんなは翔びたがる


「古  都」             金田 政次郎
薬師寺の塔西京の景に溶け           静 岡
東大寺日光菩薩闇に浮き
のどかです斑鳩の里の仁王像
古都を行く尊皇攘夷夢の街


「カルチャー」            薮ア 千恵子
カルチャーへ私は鳥になって行く        焼 津
カルチャーで右脳左脳が握手する
時々ねカルチャーショック受けてます
カルチャーに私の席が出来ました


 「秋  味」            酒井  可福
独り焼くサンマの煙が胸に沁み     北九州
松茸の薄さに惚れて妻となる
くりよ栗お前はウニを真似たのか
八年目渋さも甘い父の柿


 「雑  詠」            内山  敏子
いつまでも里の母親当てにする        浜 松
夫婦げんか子等を味方に妻の勝ち
松茸は横目にしめじ市場篭
預かった孫が発熱どうしよう


  「妻 思 う」            山田  光男
妻遺影あまりの笑顔胸つまり         静 岡
あの世でも夫婦でいようと手を合せ
ありし日の妻を思いし枕ぬれ
退院を信じて去った妻あわれ


「雑  詠」            森島  寿恵
捨てた石唯だまってるこれからも       浜 松
笑っても泣いても今日は一日と
年寄りは金持ちと言ういやがらせ
急き立てる蝉の合唄セクシーで


 「お 見 事」            薗田  獏沓
百人一首ならばと母も気合入れ     川根本町
アラー説く髭面流暢日本語
骨のある弟子を内心嬉しがり
少女とは思えぬ生きた書道展


「たかねしょう」          山田  ぎん
残暑道蝉の死骸が転がって        静 岡
朝顔が今が盛りと咲き競う
大輪のふよう綺麗に咲いている
川風が涼をくれてる娘の家


  「  男  」            芹沢 穂々美
物干しのつっかい棒に止まる君         沼 津
サングラス外した男見栄を張る
外された出世街道横切った
ネクタイを外す男のいかり肩



(他32人 投句は本誌を参照してください)
虎竹抄 | Link |
(2006/10/25(Tue) 22:23:41)

創作自薦句 虎竹抄 2006年8月


「コマひとつ」            高橋  春江
季節感造花の嘘にまどわされ         袋 井
均等法妻もまねたい午前様
針のない時計さがしに骨董屋
一途さへ歯どめの利かぬコマひとつ


 「覗 き 窓」             金田 政次郎
きんぴらとチーズのいくさ核が跳ね     静 岡
きつね色同盟という風呂加減
親切に覗いた人に注意され
握手する濡れ手はおよしショートする


「言 葉 尻」             松橋  帆波
タウリンで日付を超える夜を数え    東 京
僕が休もうが地球は止まらない
泣いて済む話羨ましくもあり
醒めてから悔いる盗んだ言葉尻


「第四十一回県大会ボツ句供養」   中田   尚
花嫁の角がだんだん横にのび        浜 松
ブレーキを持たずにのった口車
大ジョッキ明日の活力呼び覚ます
知恵比べサルと私とばあちゃんと


「暑気払い」            井口   薫
さあ魔女になりましょ友とお茶がわり      袋 井
喉仏どけどけビールなだれ込む
発泡酒プシュッと笑い溢れ出る
生き甲斐と書いてボトルをキープする


「三角の空」           柏屋 叶志秋
縁あって一尾のさんま妻と食う        山 形
三角の空を見上げるビルの谷
いつの日か我が名を刻む墓洗う
一人飲む酒のつまみは月がいい


「威 張 る」            鈴木 恵美子
威張らせておこうわたしの掌で         静 岡
イエス・ノーはっきり言えてボク園児
二代目は宙ぶらりんで威張り出す
強がりの背に詫び状が貼ってある


「自 由 吟」             辻    葉
ためらわず直訴なされと腹の虫      大 阪
いつからですかドンキホーテになったのは
罪名はよくご存知の喫煙者
下戸などとおっしゃいますな灘育ち


 「虎 竹 抄」            山本 トラ夫
都合よくボケられるよう準備する       長 泉
へろへろの老い猫と見る蝸虫
弱音さえ吐いたら楽になれるのに
冗談も通じないけど動じない


 「風 の 音」            真田  義子
見上げれば星がきれいな夜でした      仙 台
雨上がり心も軽い靴の音
声かけてくれたあの日の風が好き
ふるさとの何もかわらぬ風の音


  「ひ か り」              安田  豊子
背信の蛍さまよう深い闇           浜 松
再開へ楚そと揺らしてイヤリング
腹割って話せば光見えてくる
願い事思う間もない流れ星


  「遺  影」           横山  昌利
祭壇と五勺の酒を酌み交わす        相 馬
馴れ初めを伏せて遺影の瞳が笑う
食い合わせの悪い夫婦の後日談
雲行きが少しあやしい妻の位置


 「宮 仕 え」             岡村  廣司
遮断機をくぐっても行く宮仕え        焼 津
イエスマンだけ陽の当たるいい職場
辞令には逆らえません宮仕え
会社との絆給料だけのもの


  「いつものこと」          増田  久子
ジャイアンツ負けて解説まで憎い        焼 津
無人売りバイクで巡る朝七時
ボーナスが出たら息子ら寄り付かず
掃除よく行き届くのも2DK


 「自 由 吟」            寺脇  龍狂
ホタル見の留守はビールとW杯        浜 松
ロボットにまともな子供生ませたい
専用車退屈ですとギャルがいう
一億と書いた袋を持って逝き


 「  窓  」             鈴木  澄子
片田舎人待ち顔の窓がある          浜 松
とじられた窓へ好奇の目が集う
凍て付いた心の窓が開かない
フリーパス緑の風がよく通る


 「  目  」            堀場  大鯉
馬の目に替りクルマの目を抜かれ       焼 津
ああ日本折り目正しい人が減り
蛇の目傘させば昔の雨の音
旅人を変な目で見る里がふえ


 「雑  詠」             成島  静枝
三すくみジャンケンの手が決まらない      千 葉
ワンルーム夢も野望もある金魚
絵手紙のカボチャざっくり腹をみせ
だからなに内臓脂肪たんとある


 「酒いろいろ」            新貝 里々子
呑みやすい酒に油断をしてしまう    袋 井
ありがたく人間でいる酒一献
ルパン三世試飲の酒で赤くなる
花ある人としばし華やぐ食前酒


「  海  」            江川 ふみ子
荒波をぎしぎし漕いで迷いたつ        函 南
拉致の海母は涙で絶叫する
知らないで人のこころを踏んでいる
穏やかな海が散骨受け入れる


 「哀  れ」     馬渕 よし子
ケア・ハウス入れて済まなく手を合わせ 浜 松
改革が老人の首締めつける
流れ行く雲よ月日よ夢もまた
ボーナスはローンへ消えていく定め


「万 華 鏡」            石田  竹水
薄切りのレモン真実語り出す       静 岡
エラーして女神の美技に助けられ
悲しみの過去は見えない万華鏡
熊胆を噛んで悲しい日を笑う


  「雑  詠」            森島  寿恵
脱け殻に今日一日の喝を入れ          浜 松
あどけない孫の歌から夢いくつ
検査表持てば足元重くなり
思い出の愛の山河を渡る風


「雑  詠」             竹内  登志
万葉歌三十一文字に托す恋          浜 松
美しい未来信じて種を播く
声大に久しい友とする会話
梅雨半ば瑞穂の国の風青し


 「トコトン節」           大塚  徳子
とこねえがトコトン注ぐ発泡酒        仙 台
グミ成るあたり鳥の声さわがしい
テポドン発射蟻はせっせと穴を掘る
ゼンマイもたんと食べれば癌になる


 「生 き る」             田原  痩馬
傷のある人生だから愛おしい          熱 海
涙腺の蛇口緩めて楽になる
ストレスへスローライフと尻まくる
旅立ちへ清算してる認知症


「  雨  」             川口   亘
出を阻む雨がゴロ寝の性に合い       藤 枝
雨音に心地よいとも寝息たて
雨の間の日差しに傘を置き忘れ
濡れないと風勢いにならぬ春の雨


「希  望」            加茂  和枝
辛い日は私を待ってる人がいる       岩 沼
どんどんとお話しすれば気は晴れる
辛い時みんなで笑う約束を
希望とやみんなでつくる虹の色


 「雑  詠」              山本 野次馬
ポーカーフェイスイチローだから許される   函 南
紫陽花は真実だけを語りだす
メール打ち食事の中へまぎれ込む
下町の人情ハイテクを笑う


  「感  動」            鹿野  太郎
躓きを予測しているにぎり飯          仙 台
メッセージ深く刻んだリボンちゃん
借りた傘濡らさぬ様に差している
エレベーターガールはプロの中のプロ


「あいうえお折句附(の〜や)」    酒井  可福
のんびりと浜辺で蟹と暇つぶし         北九州
二日酔いへこまぬ僕に惚れている
間が抜けた見栄っ張りの子息子です
目印のモチベーションが闇に消え


「楽 し い」             薗田  獏沓 
マイビデオ主役の孫の泣き笑い        川根本町
三世代いつも誰かが食って居る
曾孫連れ愚痴を言いつつ目が笑い
マジシャンがネタを見せると笑いだす


 「  夜  」            増田  信一
朝来ない夜もあるのか今の世は     焼 津
夜明けまで働けどなお我下流
夜動き昼は寝ているわが息子
闇夜でも心に蛍持ちたいな


 「冒  険」            竹内  さき
省エネよふる里を恋う夕涼み         浜 松
しっとりと夢路に誘う恋ぼたる
こんな時占うカード裏表
打てば響く花に実になる美女の森


  「雑  詠」            内山  敏子
家事育児ママにあげたい二連休        浜 松
蟷螂のきょうだい生まれぞろぞろと
宅地なみ課税は知らぬ芋かぼちゃ
譲られてゆずって降りる満員車


「  知  」            鈴木 まつ子
電算機指一本が駆けめぐる          島 田
人づてに見知る聞き知る追い求め
浅学で知恵の泉もすぐ渇き
知の悟りだんだん歩幅狭くなる


 「自  由」            滝田  玲子
ストレスをビールの泡で吹きとばす   浜 松
省エネに風呂敷の知恵生かされる
ITの波に乗れない老いの指
リストラでブレーキ利かぬ火の車


「自 由 吟」            山田 フサ子
視野深く新緑心はればれと        袋 井
夜の雨一陣の風戸を叩く
我の強さ一皮ずつをはがす老い
愛と炎を煮つめて今朝も庫裏に立つ


  「もう一息」            設楽 亜季浩
次点でも自信になった百票差          静 岡
支持者から慰められる紙一重
胸の差でメダルを逃すゴールイン
発車ベル一歩およばず戸が閉まる


 「虎 竹 抄」             山田  ぎん
あじさいが雨がほしいと空にむけ       静 岡
あじさいの色が変るとふしぎがり
裏の花仏に上げて和む老い
裏で採るナス糠味噌で旨く食べ


 「夏みかん」            川口 のぶ子
夏みかん甘酸っぱさがたまらない       藤 枝
皆の顔片目つぶっておおすっぱ
運動会無心に走るカメラ追う
朝にみた職場の夢の懐かしく


 「嫁  ぐ」             西垣  博司
日焼顔父は無口で嫁に出す          静 岡
酌をする娘明日は嫁に行く
子供部屋灯り朝迄点いたまま
皺の手が白毛混じりの鬚を剃る


 「自 由 吟」              御田  俊坊
喝采を博す町長初登庁         高 畠
何事も夢中にさせて怖くない
三界と繋いで生きる皆味方
貪欲が過ぎる皆に嫌われる


「生  気」            柴田  亀重
傘寿坂二人三脚続く妻            沼 津
筒抜けの長屋暮らしもなつかしい
ありがたく生きて花咲く終の家
アジサイに元気をもらう梅雨晴れ間


 「世 渡 り」            堀井  草園
郷土愛どこを変えても負担増      静 岡
躓いて悟った石に褒められる
せっかちが自分の影を踏んでいる
だし抜けに落ちた仮面が笑ってる


「仏  心」            永田 のぶ男
善業を説いて坊主に虚実あり          静 岡
名僧も弔辞の数を少なくし
和尚さま味方の筈が敵となり
ご先祖は無口何でも知っている


「サッカー」            中安 びん郎
サッカーで愛国者だと気が付いた     静 岡
サッカーでまた新しい国を知る
ブラジルの世界制覇は早とちり
ヘディングは無手勝ち流と同じこと


「  没  」            芹沢 穂々美
全没を覚悟の句でも情は濃い         沼 津
没にした選者に礼を言う余裕
沈没船うわさも沈め泡になる
没だった句の調味料入れかえる


 「雑  詠」            林  二三子
時代の波に勝てず老舗の灯が消える      芝 川
知っている筈の母から記憶失せ
認知症ちゃんと受け止め介護する
梅漬けが済んでノルマが一つ消え


「愛 の 扉」           池田  茂瑠
濃く生きる年金だけの暮らしでも       静 岡
追想の舟あの人へ漕ぎ続け
開けてみて愛が始まる扉です
ロマンの手祈る形に変る日も


 「  夢  」            堀場  梨絵
会者定離人の情けよありがとう        静 岡
無人駅の投句箱には夢を投げ
トントントン余生の夢の十七字
われは旅人詩の宝庫に逢いたいね


「赤 い 風」            多田  幹江
主張するルージュ赤々と点して     静 岡
触れなば落ちる赤い実を抱いたまま
手鏡の外側あたり風ざわわ
とまり木の話も雨の愚痴ばかり


「まだら模様」           真理  猫子
留守電を消したくなくて鰯雲         岡 崎
揺れる日は洗濯物がよく乾く
恋愛とドリームジャンボ宝くじ
五センチのヒールで虹を渡りきる


「自 由 吟」            谷口  智美
片仮名で語りわかりにくい社会      伊 豆
入道に勇気を借りてプロポーズ
さみしいをバラバラにしてほしくなる
嘘をつくための唇赤く塗る


「  雅  」            川村  洋未
カーナビで恋の相手を探してる        静 岡
細胞はダイエットなどしたくない
身体に良い全て食べれば肥満体
別れた日キャベツをきざむただきざむ


「おとこU」           長澤 アキラ
良いことは数える程の細い月           静 岡
失意の日一点をみる明日を見る
夢を追うときには有った血の鼓動
酒とつく名前で飲まぬものは無い


「良い仲間」           佐野 由利子
折角の余生が狂う低金利             静 岡
本当の事が知りたいそんな夜
これ以上言うまい口にチャックする
適当な距離を保って良い仲間


「自 由 吟」                高瀬  輝男
底辺の声雑音にまた消され        焼 津
突風が運んでくれた天の声
合理的生き方サンソが足りません
用捨ない時間プライドは捨て去ろう


「古  傷」              川路  泰山
幼日の生傷は笑って晒す           島 田
火の酒で癒す男の向う傷
うたかたの様に古傷水に浮く
オークションへかけたい程に傷の山


「神保町ブルース」           山口  兄六
オチのある怪奇話は聞き飽きた      足 利
デジタルの時計妥協は許さない
遅刻してごめん差し入れ食べますか
ヒマワリが枯れて自由になれる夏


「時 事 吟」                望月   弘
W杯フラストレーションだけ残り     静 岡
補聴器が不足している北の国
一億は三途の川の渡船料
日の丸のシャッポを選び出す九月


 「夏彩熱風」            加藤   鰹
スターマイン夏限定の恋もよし      静 岡
シリアスな話は似合わないスイカ
パピコ分け合って土方の昼休み
解り合うならばすっぽんぽんがよい


   顧  問  吟 
 「ささくれ」       柳沢 平四朗
錬金術社会の埃吸い上げる           静 岡
人生の蛇行は駅を見失う
染めあげた色へ妥協は混らない
敗因をつまむ酒席がささくれる


虎竹抄 | Link |
(2006/08/06(Sat) 20:13:27)

創作自薦句 虎竹抄 2006年7月

「スイーツ」            谷口  智美
百パーセントじゃないからドーナツ愛される   伊 豆
イチゴショート個性出す技競ってる
ないようで強い意志もつプッディング
シフォンケーキ艶香漂わせる熟女


 「マニキュア」           高橋  繭子
爪立てている忘れたい過去なのに     大河原
再会の席で気付いた伸びた爪
人間の背中で爪を研いでます
マニキュアは花占いをするように


「花あかり」            真田  義子
荒波に今日も漂う一人旅        仙 台
ひらがなで話せば丸くなる言葉
手探りで明日を探す花灯り
迷い道ばかり歩いてしたたかに


「雑  詠」            寺田  柳京
日本語をおざなりにして英語塾       静 岡
子の恥を詫びてる眉がまっ白い
年寄りの食べ零すのを犬が待ち
その内にその内にとて日が暮れる


「弱  い」            笹  美弥子
弱音吐く度にあしたが遠くなる        仙 台
上をみてあるこう気弱落ちぬよに
花活けて弱音をひとつ遠ざける
太陽にあたればひらく花ばかり


「  雨  」           鈴木 恵美子
雨の午後逢いたいと書く久し振り       静 岡
雨だれが陽気に遊ぶトタン屋根
雨よ降れ愛の炎が消えるまで
思慕しきり雨は静かに降り続く


「雑  詠」            竹内  登志
サポーターひととき夫婦敵味方         浜 松
控え目な妻が握っている火種
初夏の風新茶一服生きのびる
健康の過信検査の黄信号


「虎 竹 抄」             山本 トラ夫
百円のことで頑固が揉めている      長 泉
高原に全裸のような青い空
お互いに自慢話で笑い出す
占いを信じる日々の多くなり


 「自 由 吟」            ふくだ 万年
新婦より地味な衣装で披露宴         大 阪
父と子の多数決より妻の意志
粋な父知らない女が通夜の席
口惜しいと思えば其処に知恵が湧く


 「指 切 り」            松橋  帆波
赤い糸レモンで出来ているんだな      東 京
何とまあ赤裸々なんだ足裏
自転車のサドルに生まれ変わりたい
指切りをしたのは懲りていないから


  「美しい花」              大塚  徳子
うんざりと内弁慶の敵が居る         仙 台
今鳴いたカラスも笑うトロロ汁
この世も捨てたものでない人間味
温度差があり美しい花が咲く


  「仕  種」            石田  竹水
策の無いアドリブだから受けがいい     静 岡
冷奴食べると雨季が去って行く
梅雨空へ心を晴らす髪カット
出目金の愛は尾っぽを振る仕種


 「正直なところ」            増田  久子
一円を拾い届けてみたくなる         焼 津
一つずつアルミ貨あげる六地蔵
千円の床屋諭吉でもらう釣り
リッター二円安いセルフで給油する


  「雑  詠」            滝田  玲子
ポケットの中で小銭が落ち着かぬ        浜 松
大正も遠く夢二も色褪せる
風呂桶に愚痴をきかせる仕舞い風呂
仏壇にお茶を忘れて咳きこまれ


 「父 の 日」            横山  昌利
酒の意を借りてクジラを飼い慣らす      相 馬
サルカニ合戦呆けた親父の瞳が光る
陽の匂う布団に街の子を寝かせ
父の日に少しやつれたシャツを着る


 「  時  」             芹沢 穂々美
猫ふんじゃった私時には煮えたぎる      沼 津
持て余す時間はあるが連れがない
時々はうわさ話につき合おう
ランチタイム誘う友減り大あくび


 「自 由 吟」            鈴木  澄子
気にさわる忠告まさにぶれてない       浜 松
こだわりが急に話の腰を折る
蝶蝶の舞いがまぶしい落ちこぼれ
消しゴムで消えたら天気晴れるのに


 「時 遊 人」             新貝 里々子
もたもたと一度で開かぬルームキー       袋 井
メルヘンの世界で押したヘーボタン
ホテルにもパリにも慣れて夢が醒め
修行僧飛行時間にじっと耐え


 「イタリアにて」           井口   薫
今ローマ道は確かに続きおり      袋 井
芸術だ見つめていいよダビデ像
ボンジョルノだけでイタリア無事十日
コロッセオ弥生時代と聞きショック


「自 由 吟」           あいざわひろみ
ひまわりはこっちを向いて微笑います     茅 野
あの猫に鈴をつけよと言うのです
つついたら大きな穴になりました
途中下車それも悪くはないでしょう


 「あいうえ折句附(す〜ね)」     酒井  可福
炊事から洗濯もするそれが僕      北九州
楽しくて近くの友とツイ一杯
テロの国友も正義も無くす民
睨んでる濡れた瞳の根が深い


「事なかれ」            岡村  廣司
事なかれ主義でいつでも後部席      焼 津
縺れ糸解く迄遠くで眺めてる
反論はせずに世の中丸く住み
事なかれ主義にも敵はきっと居る


  「隣  組」            成島  静枝
表札へ班長の札寄りかかる           千 葉
集金でちょっぴりのぞく舞台裏
庭の花回覧板が誉めて来る
奥さんの声が大きい隣組


「夕  隣」             鈴木 まつ子
水打って声をかけあう夕隣          島 田
ゆきずりの香水美人見返りて
六十路すぎ世間見なおすサングラス
平凡に生きて悔いなし花鋏


 「雑  詠」            馬渕 よし子
労りの言葉すんなり出ず悔いる        浜 松
マニュアルにとらわれ個性伸び悩み
老いの脳鍛えるドリル持て余し
ストレスが溜り心がついとがる


 「か  さ」             中田   尚
カラフルで使用期限が来てしまう        浜 松
かさの下小さな恋が出来消える
雨を待つ傘がコンビニてんこもり
あじさいに小さな傘を差してやる


「冒険の二」             竹内  さき
夕明かりほむらの恋か冒険か        浜 松
青春よ真っ赤な恋が駆けて行く
つまづいて研ぐ明日の米むずかしい
口紅もしぶく嵯峨野を手織りして


「年  金」            金田 政次郎
締めないで年金枠が壊れそう        静 岡
桁違い悔しいあなたは天下り
年金が語るむかしの山高帽
年金を恨めしそうにはぐれ鳥


 「新  緑」              加茂  和枝
のんびりと過ごした春に落雷が        岩 沼
だんだんとゴールラインが見え隠れ
たっぷりの時間は私の宝物
いつだって私のハートピンク色


  「  数  」            安田  豊子
落札へうなぎが昇る桁外れ           浜 松
ケチじゃない身に沁み込んだやりくりよ
少子化へ栓ない憂いどうしよう
若づくり裏で頑張る歳の数


「夢おわる!」           高橋  春江
老いては子に車の免許あきらめる       袋 井
ハンドルへ未練ぬぐえぬ虚脱感
遠ざかる愛車なみだに立ちつくす
ありがとうポンコツ同志夢おわる


「ゆっくり」             薗田  獏沓 
ご詠歌のテンポゆっくり時が過ぎ       川根本町
早起きはしたがのろのろ朝支度
時間かけトロッコ列車峡を行く
たまに出て大渋滞のド真ン中


 「雑  詠」            森島  寿恵
敬礼もして挨拶の蟻の列        浜 松
糸電話孫の弾んだ笑い声
さつき晴れ桔梗の花がパッと咲き
路地裏に見事に咲いた花菖蒲


 「好きなひらがな」         堀場  大鯉
ころんだネくよくよせずにサアお立ち     焼 津
LLのママへはMのパパやさし
がみがみと言う声萎えた父哀れ
くたくたになるまでバラの香が誘い


  「手  形」            山本 野次馬
引き出しにいつも置きたい空手形       函 南
約束手形割り引くたびに元の鞘
約束を紙切れだけが支配する
時効など無かった手形持って逝く


「  旅  」            内山  敏子
れんげ草減って淋しいはちの旅        浜 松
のんびりと鈍行で聞く国訛
五月晴れ空気が旅に誘い出す
ふれあった温みの残る旅日記


 「怒  怒」            鹿野  太郎
火の海に夕日静かに降りて行く        仙 台
たれ流し塗して黄砂攻めて来る
韓流に上手く乗ったな受信料
列島と言う偉大なる太っ腹


「湿  る」            設楽 亜季浩
タオル蒸し跳ね毛を直す三姉妹        静 岡
襞つきの顔にもパックまだ女
ユーモアに乾いた心湿りっ気
指なめるオバちゃん達のレジ袋


「投句〆切迫る」          西垣  博司
ひと口の酒で今夜は四つに組む        静 岡
五七五が自己主張して繋がらぬ
自分でも理解不能になっちゃった
五七五 下五がダダをこねている


「不  調」             川口   亘
願わくば廻れ右して俺一位          藤 枝
どう見ても負けは云わずにビリを褒め
ラストにはびっこを引けど拍手され
出す文に誤字の混じるを指摘され


 「  食  」            川口 のぶ子
食彩が花を添えてか春の宵          藤 枝
和に重き食に通ずる笑い声
気配りが和食と云う名味を変え
彩りに春を楽しむうすあかり


 「自 由 吟」             御田  俊坊
骨格も衰えはじめ椅子頼る          高 畠
カルシューム不足に魚骨がらみ
太り過ぎ重い体を持て余す
父の跡継いだ責任重さ知る


 「キリタンポ」             堀井  草園
勝つ方へ変わる風向き掴めない     静 岡
帳尻が合うと矛楯切り刻む
素焼きから幸せ伝う風の音
屋根遠くなるほど匂うキリタンポ


「農 繁 期」            中安 びん郎
すれ違い手挨拶する農繁期          静 岡
髭剃りが疎かになる農繁期
牛が居ず気楽になった農繁期
雨具着てむすびを食べる農繁期


 「徒 然 に」            永田 のぶ男
ひら仮名は言葉の肌に柔らかく     静 岡
カタカナが舶来産の真似っこき
漢字とは中国産の由来もの
太平の国語の乱れどこへいく


「雑  詠」            林  二三子
梅雨前の夏日に子らが川を埋め      芝 川
自家菜園五感を癒す土いじり
草むしり雨を理由に伸び放題
DIY愛着のある出来具合


  「幸 せ よ」            柴田  亀重
豊か見せ渡る世間の鬼増やす          沼 津
終良しと笑って逝った亡父だった
華やかな一刻の花雨が降る
テレビから真似たオシャレか無精髭


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
三畳に金の匂いと血の臭い          浜 松
少子化で徴兵論の影うすれ
少しずつ少しずつ良くなる楽天
高すぎることはない利息と理想


 「笑  う」            田原  痩馬
笑えないことが多過ぎ笑ってる        熱 海
腹抱え笑い転げて死ねたらなあ
絶対に笑っていたいご臨終
よく笑う妻も子供が出来るまで


「自 由 吟」           山田  ぎん
雨降りは洗濯物と同居して          静 岡
空の雲ふわりふわりと散歩する
おれおれと騙す世の中こわい老い
世の中は平和で生きて行きたいと


 「自 由 吟」            真理  猫子
純情を誓えば恋が発芽する          岡 崎
感情線アイロンかけてみるのだが
武勇伝だけは語れる認知症
解決は亀の前頭前野から


「本 当 ?」           川村  洋未
空想できらいなあいつ切腹に      静 岡
書いてみる自分に贈るほめ言葉
メール打ち着いたかどうか電話する
夢の中女スパイは私です


「自 由 吟」            長澤 アキラ
次の手を考え過ぎて間違える         静 岡
ライバルが各駅停車抜いていく
舌の根が乾かぬうちにほめまくる
ブレーキを踏んで本音の軋む音


「アドバイス」           佐野 由利子
舌先で転がしてみるアドバイス      静 岡
ゴロゴロとスーツケースが旅の友
悪い方悪い方へと逸れる口
口堅い男で本音聞き取れず


「未 練 花」            多田  幹江
いつかいつかを貯めている小抽出し      静 岡
哀しくて花はホロホロ散るのです
さりながら返信無用には迷う
廃校の庭にホタルは戻らない


「近  況」           堀場  梨絵
さて今日は何をやろうか一ページ         静 岡
ほんの少しの情けに泣ける老いの酒
梅雨入りへ私も少し湿りがち
紋付きを縫って駄賃は三万円


「湿った糸」           池田  茂瑠
道多くつけてく悔いのないように     静 岡
枠内に理性とどめて狂えない
溺愛の糸が湿って結べない
朗らかなえくぼ蒙古の斑も消え


「自 由 吟」              高瀬  輝男
科学的結論雑魚は迷うのみ          焼 津
その他大勢の意志に従う抽象画
人間の欠点敵の数知れぬ
亀の背に俺の行き先張っておく


「獺 祭 図」            川路  泰山
天真爛漫幼児に帰る独居房        島 田
六帖の器にはめる獺祭図
閑居して男やもめの米を研ぐ
豆腐噛む脳が荷崩れせぬ様に


「ほ た る」                山口  兄六
蛍池きっと寂しい者同士          足 利
雨蛙ケロリステレオタイプだな
辛い水妻帯者へと飛ぶ蛍
紫陽花が色変わりする巡り会う


「尊 厳 死」                 望月   弘
医療費に仕組まれている尊厳死      静 岡
マニュアルの通りに逝こう尊厳死
乾電池切れてロボット尊厳死
麻酔した時間享年から引かれ


 「全日本没句供養」          加藤   鰹
生と死を見つめた南十字星       静 岡
高原で少年になる風になる
食うために鬼と握手をしたあの日
堅苦しい挨拶抜きにして飲むべ


   顧  問  吟 
 「お 世 辞」       柳沢 平四朗
ぎこちない笑いも流行だよきっと        静 岡
安っぽいお世辞だったね其れっきり
尻馬に乗せた鏡も共犯者
満たされぬ卦は生涯のクエスチョン


虎竹抄 | Link |
(2006/07/06(Wed) 00:13:27)

「自 由 吟」            寺脇  龍狂
合併で市長ばかりが忙しい         浜 松
ひきだしに勲八等が息ひそめ
封筒の奥までのぞくラブレター
読んでますお知らせ欄と悩みごと


 「人生模様」            真田  義子
携帯がやっと通じたオリオン座      仙 台
現住所ここは泉が湧く所
母が織る人生模様美しい
紀元前を想像させる遺跡群


「自 由 句」            山本 トラ夫
本能を使い切らずに終わりそう     長 泉
かみさんに手刀切って貰う金
なすままに根性までがひねくれた
猫道にはずれて人に媚をうる


「儚  い」            新貝 里々子
跳ぶ足をうおの目などに召し取られ      袋 井
皮算用の癖が直らぬボールペン
一泊の旅のごときにはしゃぎすぎ
時刻表一本櫻標的に


「  夢  」            大塚  徳子
ミソスープ固定観念捨てました        仙 台
ミトコンドリアにかくれんぼするカルシューム
奥歯食いしばり皆勤賞がない
必要なものの一つに夢がある


学ぶ程海広くなり深くなる       山田 フサ子
振り向けば幾度峠を越したやら         袋 井
洗濯物がタンゴを踊る老多忙
渡る世の起伏にためている疼き
やさしさにふれたその日の軽い靴


「花 万 朶」             鈴木 まつ子
花万朶思いを寄せる人と酌む        島 田
ゆずりあう一歩へ日差しやわらかい
花冷えのフリーズドライ冬と春
いっき盛り今日を限りの花散らし


「春 の 山」            成島  静枝
老梅がイナバウアーで出迎える        千 葉
旧交の息があがったミニハイク
号令を掛ける幹事はまた私
梅まつり紅梅がついしゃしゃり出る


 「海 明 け」             横山  昌利
仕合わせのかたちに春の陽が昇る        相 馬
飽食の猿を笑ってなどおれぬ
海明けの港にボクの首が浮く
景気づけに呑んだ胃ぐすりマムシ酒


  「老いた筆」              柏屋 叶志秋
進めない道はなかった少年期        山 形
老いた筆書くは反省文ばかり
野の花も脇役よりは主役好き
川底に丸くなれない石がある


  「深 呼 吸」            加茂  和枝
精一杯自分の足でつかむ春          岩 沼
満開の梅花に想う生きていた
雑草も夢をつかんで花が咲く
春の陽につかんだ夢と深呼吸


「突然ですが・・・」         戸田 美佐緒
背徳のルージュ悪女の顔になる      さいたま
丸腰でくるから拒めない和解
蛇口からいつか溢れる無神論
突然ですが妻も女でござ候


  「真  水」            石田  竹水
人生のレシピ涙の隠し味            静 岡
生きる夢ドライフラワー真水飲む
佛だと言われた鬼が人に成る
楽しみの風に吹かれて舞う余生


 「春ですか」            鹿野  太郎
メーターも上がる減ら無い口のママ      仙 台
国会の秩序守っている睡魔
郊外で一際光るハートビル
華やかな記憶に小骨二つ三つ


 「春のかぜ」             高橋  春江
花ふぶき髪にひとひら持ち帰る        袋 井
春の風ヘソ出しルック待ちかねて
満開の花のおごりを散らす風
老いふたり妻の謀反が愛らしい


「雑  詠」            山本 野次馬
新風へ飛び出す君の竹トンボ         函 南
嘘のない父の手だから温かい
アイドルの掟真顔は明かせない
気迫だけみせて翼のひ弱さよ


 「風 光 る」             江川 ふみ子
子の家の合鍵を持つ春の虹          函 南
さくら散る中へ浄土を置いてみる
万歩計孫と歩めば風光る
耳をなくすと何と静かな海だろう


 「五  月」             金田 政次郎
木遣唄お江戸絵巻の先を行き      静 岡
初鰹男の贅の茶づけ飯
わさび沢冷たい水も鼻に抜け
魂を熱くさせてるサクランボ


「自 由 吟」            柳沢  猛郎
夕焼けへ今日の叙情を噛みしめる       袋 井
人生のパズルに公式などはない
倒産の死角にあった保証印
この年齢で未だ駄馬でいる靴を履く


 「創  作」            鈴木 恵美子
生き甲斐の趣味へ炎を絶やさない    静 岡
亀の歩みで趣味を繋げる川柳誌
逢った日のメモは花マル小さく書き
大器晩成母は気長に待っている


「雑  詠」            滝田  玲子
ブランドの傘でうかれる春の雨      浜 松
突風もめげずペダルの若い足
顔の傷まだ隠したい厚化粧
新緑に元気をもらいのばす背な


  「老らくの恋」           堀場  大鯉
老らくへプロムナードが硬すぎる        焼 津
たかが恋などと孤高の影が言う
休肝日だから逢引き味気ない
野仏に老いの道行きあやぶまれ


「少しケチな話」           増田  久子
ゴム長が川の深みを忘れがち         焼 津
句より字を見せたがってる草書体
バイエルの先へ行けない孫二人
客用の布団ばかりを干すテラス


「落下しきり」           井口   薫
ロボット語講座を探す介護法         袋 井
時差のある会話笑いでカバーする
テロップに遅れとらないよう歩く
落下しきりああ痩せていく花便り


 「自 由 吟」             御田  俊坊
青春の芽生えで恋の花開く           高 畠
春の風芽生える蕾動き出す
豪雪で垂木が折れた的外れ
酒の席本音を炙り出されそう


  「く る ま」              芹沢 穂々美
車座になって何何悪巧み          沼 津
狭い庭車庫にのっとりせがまれる
トスをしたボール受け止め火傷する
ピーカンの空へののじを書いている


  「あいうえお」           西垣  博司
安心の保険生活費の不安          静 岡
一つ服泣きと笑いをタイが分け
嘘本当使い分けてる一つ口
絵心もなく川柳も生齧り
尾の先を少し丸めてカウンター


「め が ね」              設楽 亜季浩
メガネかけ約款を読む虫めがね        静 岡
価値観に席が合わなくなった老いふたり
春ウララ眼鏡マスクは日本人
小姑のメガネに適う嫁を待つ


  「私と故郷」            竹内  さき
初恋を濃ゆくして会うたもと橋         浜 松
心降るともし灯深む挽歌集
てのひらのドラマと浸る私海
私にもある身の丈を漕ぐ故郷


 「雑  感」            川口   亘
生真面目が過ぎて叱言に聞こえてる       藤 枝
侘びしいかそれが本音か嘘を云い
神経は弥次郎兵衛にも似せて生き
なし崩しすぐに火のつく年金者


「時 事 吟」            田原  痩馬
変人のキップの切れる人いない      熱 海
剛腕に母屋差し出す民主党
実話から戻りつつある土地神話
イチローが本性むき出す愛国心


「人 間 性」            岡村  廣司
歯車になったら言えぬ主義主張     焼 津
人間の驕りが悲劇作り出す
追風に乗ると傲慢鼻につき
生き恥を曝す事などご免だね


  「雑  詠」            ふくだ 万年
愛なのか我慢で聞いた妻の愚痴         大 阪
邪念持ち刺された棘は我慢する
禁酒だがこれが最後と三杯目
浅知恵の塊り溶けずほろ苦い


 「明  日」            馬渕 よし子
過去を捨て輝く明日へする脱皮        浜 松
指きりの指が果せぬまた明日
明日へと無限の夢を追い求め
保証ない明日の命をいとおしむ


「叱  る」            薗田  獏沓
子を叱る親の声する生きた町         川根本町
なぜ叱る解説するから腹が立つ
一呼吸おいて破向う恐ろしさ
父親の小言は今も錆びてない


「  光  」            笹  美弥子
光ろうよ綺麗なたまご産むために       仙 台
脇役で光る貴方にいやされる
光ること知らずに楚楚と路地の花
富士山の切り札があり日本好き


「雑  詠」            鈴木  澄子
剪定の痛みを分かつ枝の張り         浜 松
健全な大樹の元で子は育つ
肩の荷をおろして気力迄うすれ
キヤチェンジ春は心もなめらかに


「自 由 吟」         中田   尚
数打てばマズイメールも二つ三つ       浜 松
審判も人間誤審だってある
他力から王・松坂が光りだす
平凡なシナリオならばいいのだが


「雑  詠」             竹内  登志
予報では晴れと言うのに膝は雨         浜 松
笑い袋全開にする嬉しい日
縁起よく春買う財布張り知らず
八十路坂卆寿をめどに励む趣味


 「雑  詠」            内山  敏子
渋ちんもこっそり買った宝くじ        浜 松
痴話喧嘩続きで茶漬食べている
食べ盛り電車待つ間のカップ麺
似た者と言われ夫婦のうまが合い


 「旅路にて」             栗原  波朗
 思いやり長続きする間柄           三 島
寒暖に腹が立つ程年令を取り
ぐうたらはいやだが身体動かない
凄い句か並び私の心萎え


 「風邪を引く」             川口 のぶ子
からっ風心の隙間入り込む       藤 枝
寝不足がとうとう風邪を引きおこし
うたた寝につい油断して風邪を引き
風邪に背を向けて突っきる貧乏神


桜花駿府公園人が集り         山田  ぎん
動物園桜満開人が寄り            静 岡
ピンク色土手の桜が見事咲き
桜咲く護国神社へ逢いに行く
裏の畑芹を摘んでる老い元気


「雑  詠」            森島  寿恵
啓蟄に虫も這い出る春を告げ        浜 松
姉の文字乱れて老いを知る哀し
据膳に嫁の優しさ彼岸入り
微笑んだ孫のピンクに染まる頬


  「背  な」            安田  豊子
寒暖の振り子が老いの背を叩く         浜 松
背伸びしてみても何にも変わらない
丸い背を奮い立たせるイナバウア
殻を脱ぐ程でなかった春の使者


「雑  詠」            藤野  俊子
スプーンは良いから地震予知をして       掛 川
大バーゲン終り家計簿見たくない
妻と娘に居間を取られてスナックへ
内緒だと皆にささやく情報屋


 「  春  」           中安 びん郎
春雷に吃りの兄がやかましい         静 岡
庭の芝無限に生える春の草
春疾風スカート族が立ち竦む
春の海釣り上げるのは河豚ばかり


「自 由 吟」            柴田  亀重
祝傘寿 老いに留守番役がある         沼 津
聞き上手囃囃す氷上舞いの美女
趣味に住む優雅な群れへ潜り込む
語らない亡父母流浪の波枕


 「雑  詠」            堀井  草園
試験管本当の嘘が逃げまくり         静 岡
長生きの親父うろちょろ褒めすぎる
回復期背中の垢が重すぎる
手の平で迷う日本語軽くなり
 

「霞  む」            中野 三根子
春がすみゆれる心も風と散る         静 岡
夢の中父のおもかげかすみ出す
春の雨パラソルの色かすんでる
ほほえみを残して彼は霧の中


 「好き嫌い」            佐野 由利子
好き嫌いはっきりしてる人だもん       静 岡
春なのにメールの返事まだ来ない
精一杯がんばっているカタツムリ
禁煙が口寂しくてガムを買う


「雑  詠」            林  二三子
思い出を溜めて押入れあふれそう       芝 川
電化製品我が家に多機能は不要
春の雨花の命が気にかかる
新芽ぷちぷち木々が賑わって来た


「立ちあがる」           川村  洋未
ストレスはまるめて固めほうり投げ    静 岡
マニキュアをぬってつぶした赤い恋
うちの子もそろそろなるか宇宙人
この迷路出口を先に確かめる


「世の歪み」            永田 のぶ男
人の口塞ぎとまらず水が漏れ         静 岡
マイク前米搗きバッタ今日もまた
ロボットに魂入れて泣き笑い
合併で公僕やたら忙しい


「綻  び」            長澤 アキラ     
ほころびがあって自由を謳歌する    静 岡
綻びを綴る深夜の赤ワイン
いいことがあったか椿ほころびる
文明の綻びがあるパンツ穴


「チョイワルオヤジ」        松橋  帆波
サングラスかけると腹が引き締まり      東 京
ロレックスぽいのをはめて飲むワイン
ナナハンも乗れると免許にはあるが
分割で買った喜平が似合わない


 「幼  虫」            真理  猫子
春夏秋冬浮気の虫は元気です         岡 崎
虫メガネでも見えないよ結婚線
泣き虫に見えてアリガト花粉症
ダンシングオールナイトな腹の虫
 

「は  な」            高橋  繭子
杉花粉 鼻で受粉をしてるって         大河原
さくら開花 私も開花宣言を
モクレン満開取り壊された家の庭
一本桜 自分のために咲いている


 「続・花言葉」           谷口  智美
本心は下心ですコチョウラン         伊 豆
疲れたと言えぬヒマワリ空元気
名刺だけばらまいている金木犀
待てますか私を試すアマリリス


「春が行く」             多田  幹江
春うららとまり木を乾す裏通り        静 岡
ざわざわと義母の木亡母の木も萌えて
風媒花見果てぬ夢に縛られる
こんな春あんな春過ぎ風薫る


  「女  神」           池田  茂瑠
待つ辛さ幾度鏡に聞かせたか      静 岡
この本が私にくれたものは悪
女神にも男を掴む爪がある
怨念の紐を這わせた深い闇


  「雑  詠」            高瀬  輝男
わたくしのドラマも謎を秘めてます      焼 津
不発弾ばかりでウツを抜け出せぬ
此処へ来て磁石狂っていたを知り
春なれや絆忘れて翔びたいな


  「  頭  」            川路  泰山
立法府頭の悪いのが揃う           島 田
足元を照らしそこねた東大出
社長族上手に頭下げてるね
教育は単調 社会複雑に


「もう中指は」             山口  兄六
次世代の恋にドタキャンされている      足 利
問診を受ける不純な亀の餌
谷間からこぽれる春に生を受け
お揃いで照れ隠せないサクランボ


「尊 厳 死」                望月   弘
のほほんと生きて尊厳死を主張      静 岡
ロボットに着せたい服を募集中
家計簿で足し算眠ってばかりいる
親指に腱鞘炎の刑を科す


 「もう親指は」           加藤   鰹
星が降る正しき戦などはない      静 岡
バカヤロー 夕陽も僕もよく言われ
寝違えてああ健康の有り難さ
友の死にもう親指は隠さない


   顧  問  吟 
 「蝶つがい」       柳沢 平四朗
才覚はゼロで愚直の字をなぞる        静 岡
薄い陽を大事に老いの馬の耳
片方を責め共犯の蝶つがい
籤運の悪さへ手帳白いまま

虎竹抄 | Link |
(2006/05/11(Wed) 20:06:28)

「雑  詠」            井口   薫
それ以上もう無理ですとコンパクト     袋 井
御職業つい推し測るロレックス
断末魔蛍光灯の命乞い
投句終了やっと刑期を終えました


 「人生いろいろ」          金田 政次郎
ちょっとだけピンボケだった低姿勢    静 岡
四季ごとの折り目でいつも風邪を引き
ふる里の愛が欲しくて汽車に乗る
好きだから吸取紙の染みになる


「霊 柩 車」             横山  昌利
火達磨になって男は栗拾う       相 馬
正夢を念じて寝込む木偶の坊
いよいよ来たかぴたりと止まる霊柩車
灰色の街で電車を待っている


「大  福」            石田  竹水
笑わせて怒って泣いて人の顔         静 岡
ダメージの繰り返しからいい着地
大福で酒 甘党に叱られる
改革のよだれ増税天こ盛り


「  夢  」            笹  美弥子
ドロップ飴優しい母よ夢の中          仙 台
ウトウトと目線の先の春を掘る
何度でもあたためなおす春の夢
夢の端摑まんとする心意気


「厳  寒」           新貝 里々子
お話にあれそれあれが増えて冬        袋 井
くずかごに放る句苦苦苦 苦苦苦
お餅がつかえたのかな脳停止
黒ビールが旨いと生意気な炬燵


「雑  詠」            福田 勝太郎
月末は肉が嫌いで豚が好き           大 阪
小遣いが菩薩に見える縄のれん
微笑んで尻で席とり会釈する
朝帰りウグイス張りで妻めざめ


「自 由 句」             山本 トラ夫
人生は難しいこと妻に説く        長 泉
本降りがご破算にした勝ちゲーム
マラソンの水は粗末にされている
隙のない心にも降るにわか雨


 「雑  詠」            内山  敏子
マスク美人其の内側を見たくなる       浜 松
無愛想が老舗の味で勝負する
タイトルを付けて進まぬ五七五
一病へ薬が無二の友となる


 「まともな人生」           増田  久子
混んでいるから入りたい喫茶店         焼 津
ティッシュだけもらって通る駅の地下
満ち潮の名残りのゴミが続く浜
ドッグフードだけで生きてる犬元気


  「包 装 紙」              中田    尚
リサイクル叫んでいるがよく包む      浜 松
半透明 生活臭は消えなくて
包装紙プライバシーがプッカプカ
包装紙店の宣伝だけにする


「雑  詠」            江川 ふみ子
ふるさとへつづく線路へ佇つ郷愁      函 南
反論をする気で少し飲んで行き
うなづきが賛成だとは限らない
落ち込んだ穴で忠告思い出し


 「  鏡  」              芹沢 穂々美
三面のどこに焦点合わそうか         沼 津
とても奇麗そんな鏡がほしいなあ
鏡台の紅が外出誘いだす
気紛れな鏡おんなを狂わせる


  「時  代」            高橋  春江
金よりもカードで重い財布だき         袋 井
花好きで動物ずきで日が昏れる
無洗米すこし時代に乗ってみる
町はずれモンロー調でウォーキング


 「老 い る」            柳澤  猛郎
反骨の日々懐かしみ丸く老い          袋 井
永遠の愛金婚へまだゆるぎない
生き恥をさらしたくない脛の傷
残り火へ自問自答を繰り返す


 「氷の上で」             尾形  奏子
夢ありき僕は幾度も立ち上がる        天王寺
どん底で摑んだ砂にあるヒント
美しきもの今日の努力を惜しまない
フィニッシュの向こうに目指すフロンティア


 「雑  詠」            竹内  さき
ほこほこと想い出あふる草餅に        浜 松
菜の花や揺れてゆれ恋生まれそう
白木蓮ひらり美し嘘を言う
風ぬくし母の過去形軽く着て


 「貧しい心」             岡村  廣司
平常心保つ修行がまだ足らぬ         焼 津
職去ってから魂はニュートラル
心にも皺がたっぷり増えたかも
栄養と教養慾しい心にも


ネクタイのまだ赤を選る九十坂     寺田  柳京
畑にも言い分がある二毛作       静 岡
この畑駄目なら外へ種を播く
老春の僅かな髪へ櫛を当て
戯れ言を並べ笑って生き延びる


「しあわせ」            羽田  共生
しあわせもリサイクルして下さいね      牧之原
名乗り出ぬしあわせ高額当たりくじ
発禁本残念読めぬ中国語
成金は昔ガチャマン今マウス


 「雑  詠」            田原  痩馬
糞ばばあ言って子供は親離れ      熱 海
部屋付きと聞いて時めく露天風呂
軋み出す錆びた夫婦の蝶番
白い肌嫁が嫉妬と自慢する


「  夜  」            山本 野次馬
独り寝の見上げる空は冬銀河       函 南
少子化に精子卵子が騒ぎ出す
握り締めた夢は今日を語らない
むっくりと起き出す徘徊の如く


  「春うらら」            大塚  徳子
耳痛いほどに静まる午前二時          仙 台
トンネルで春が足踏みしています
ランラララ空が明るい春が来る
ふきのとう捜して歩く春うらら


 「立  春」            竹内  登志
節分の豆ははちじゅう五の黄粉        浜 松
春立ちて鳥も媼も早春賦
春一番味噌汁に浮くふきのとう
恋芽生え貰ったチョコは倍甘い


 「雑  詠」            森島  寿恵
野も山も春の訪れ枇杷の花          浜 松
道草で拾った今日の良いおかず
風向きが変れば敵も付いてくる
鬼の豆拾った孫が真似をする


少子化の余暇に淋しい海がある    山田 フサ子
一円貨仲間はずれの音がする         袋 井
鉛筆を削って余暇を輝こう
好きなだけの詩の前後がつながらぬ
一條の光信じて生きてゆく


 「心 の 友」            堀場  大鯉
お前もか同期の風邪を笑いあう        焼 津
二心ない明解な友が好き
減らず口利くが約束破らない
バカだなと言われハハハの仲であり


「雑  詠」            成島  静枝
拍手の波動地球へ谺する           千 葉
詐欺除けに後姿も若造り
知恵絞る明日は我が身の事故事件
平凡な波幸せの音がする


「自 由 吟」            鈴木 まつ子
本性を見抜くただ酒もてなされ      島 田
豊かさへ大売出しが山と積み
寄せる愛心底惚れて打算抜き
花と蝶寄ると触るとひとしきり


「雑  詠」            馬渕 よし子
この辺でひと息入れよう青い空        浜 松
近づいた影が獲物を探してる
ときめいた頃の話へ孫笑う
時どきはうんと自分を褒めて生き


「ちょっぴり」           設楽 亜季浩
嫁ぐ日にちょっぴりセンチポチまでも   静 岡
指はじきちょっぴりと言う駄賃
お財布にちょっぴりと言う五十万
白い息ちょっぴり吐いてランドセル


「  寒  」            山本   治
手が痺れ吐き出す息に母の愛       函 南
雪山に手酌の酒で盛り上がる
霜柱立って冬そら背伸びする
誰の足こたつの中にある臭い


 「ひととき」            加茂  和枝
好不調弾まぬ毬にある不満       岩 沼
山茶花の赤に元気を試される
今はただ笑っていよう我慢です
萎れても私の顔は微笑こぼす


 「雑  詠」            滝田  玲子
お守りも時代にそって進化する        浜 松
飛梅が絵馬見下ろして口噤む
ママさがしてと迷子が握る手の温み
トレパンに重ね着ミニの女高生


 「戦 友 会」            寺脇  龍狂
粛々と絶滅を待つ戦友会           浜 松
頑固屋も賀状どころか練兵休
五ケ條の質素がつなぐ大和魂
寒々とタンスに眠る勲八等


「万  能」            薗田  獏沓
細工物切り出し一丁あればよし       川根本町
ピン一本持てば大てい錠は開く
お料理にエアロビ縫い物才女です
見て聞いて直ぐにこなせる凄い腕


 「自 由 吟」            御田  俊坊
人生のゲーム苦戦で呼ぶ笑い         高 畠
上向きの景気に乗って上がる株
こつこつと稼いで伸ばし栄え行く
辛抱を堪え栄えた父の汗


「大  寒」            中安 びん郎
大寒に海水浴も気は確か           静 岡
大寒中雪下ろしせず富士仰ぐ
大寒の布団脱けるにドッコイショ
大寒中節句荒らしが野良に出る


「自 由 吟」         林  二三子
豪雪の画面こたつにもぐり込む        芝 川
雪の中取られぬままの柿目立ち
雪降らぬこの地やっぱりありがたい
蝋梅をつつく小鳥に春をみる


「笑  顔」            谷口  智美
その笑顔あるから明日も頑張れる       伊 豆
とりあえず笑顔でいよう福が来る
君のシワ笑い皺だね素敵だよ
おはようと鏡の私にも笑顔


「家  族」            堀井  草園
あの頃を「シャン」と話せば薄笑い      静 岡
家族の輪乱さず窓を開けておく
子の勇気任せて明日の青い空
大正の傘は骨太捨てないで


 「雑  詠」            柴田  亀重
サザンカも若者も咲く寒の花         沼 津
危篤から一年越えて子の疲労
人・車 鬼が隠れる通学路
ケイタイに死語とされるか恋の文


 「  夢  」             真田  義子
大空へ翼をつけた子らの夢          仙 台
ポチがいてみんなの声が丸くなる
幾十年音は変わらぬオルゴール
幾年も何も変わらぬ月と星


「暮  し」            堀場  梨絵
孫の笑顔と張り合っていて今日が終え     静 岡
てのひらにわたしを乗せるやわらの手
こうの鳥舞いおりた娘の新居
もう少し火種が欲しい我が余生


 「  雑  」            川村  洋未
キヨスクで土地のみやげをみつくろう     静 岡
あめとムチ間をぬって泣き落とし
この頃の天は二物をあたえます
いいかげん発音かえて意味二つ


 「  夢  」            中野 三根子
初夢の続きみたくて昼寝する         静 岡
ヨン様に出逢ってしまう夢の中
夢の中父の小言がなつかしい
若い彼ハワイでビキニみんな夢


 「春を待つ」            佐野 由利子
後退りなんかするまい正義感         静 岡
春を待つブランコ高くたかく漕ぐ
欲張って大事な物が零れ落ち
大丈夫何とかなるさ青い空


「自 由 吟」             藤野  俊子
薄給の娘のブランドに母どっきり      掛 川
今日も又凍る心で見るニュース
春を呼ぶ野焼きに景気目を覚ませ
外泊が増えて優しくなったパパ


「屁の河童」         永田 のぶ男
屁でもない大義に生きる男だて        静 岡
この位屁とも思わぬ臑の傷
屁の様な話に惑うおおおとこ
屁の河童俺は天下の素浪人


「不  倫」 真理  猫子
寒梅の二輪春には堕ちる恋        岡 崎
梅の香に持っていかれた決め台詞
梅干を口に含んで消す不倫
涙でも塩気を足して梅茶漬け


「ファンタの冬@」         山口  兄六
鍋奉行冬将軍に勝てそうだ          足 利
降る雪の全てが白と信じたい
冬篭りずっと携帯いじる君
除雪車のように勝手な人でした


「藁に縋る」             池田  茂瑠
羽根のある妻を繋いだ杭朽ちる        静 岡
難題を解いて結んだ固い愛
一冊の本一本の藁になる
この愛に力の限り賭けてみる


「  爪  」                 多田  幹江
喜んでお分けしますわ爪の垢       静 岡
よくご覧小指の爪のいぢらしさ
爪をかむポーズあの娘も春めいて
赤鬼の爪がきれいで恐くなる


 「春  彩」           川路  泰山
健脚と言う程でなし膝栗毛       静 岡
彩色の増すも褪せるも風次第
シャンシャンの声につられて達磨買う
立つ春へ古い男を刷り直す


  「お と こ」            長澤 アキラ
真っ当に生きて身軽な空財布         静 岡
敵の敵それでもたまに敵になる
荒野にも誰か歩いた跡がある
襟立てて気前良すぎたなと思う


  「雑  詠」       高瀬  輝男
生きている証し罵声も叱声も          焼 津
わたくしの返事ピシャっドアを閉め
素晴しかった今日よサヨウナラ雨戸閉め
笑えるっていいな人生坂道で


「リセット」                望月   弘
いい知らせ風力計が撒いている      静 岡
極楽の前売券を入手する
お守りは天気予報を入れておく
青春のリセットボタン作動せず


 「マスカレード」         加藤   鰹
回り椅子から6Gのプレッシャー    静 岡
恋人も妻も両A面だから
軽はずみなジョークがK点を越える
春風がG線上に乗って来た

 
  顧  問  吟 
 「シ ニ ア」       柳沢 平四朗
寒卵をすすり無冠の懐手           静 岡
笑っても笑顔にならぬ虫がいる
鉄分を妥協で埋める好々爺
拝金に媚びたシニアの面よごし

虎竹抄 | Link |
(2006/03/10(Thu) 20:28:20)

「雑  詠」            福田 勝太郎
美人です煮ても食えない金魚です      大 阪
替えません下取無理な嫁だから
お転婆が貴婦人になるクラス会
離婚する為に結婚したのかな


 「朝  茶」            大塚  徳子
我家にも少しはほしいお餅代       仙 台
会いに行く手足が退化する前に
雪国のくらしに解けるチャンチャンコ
三里戻って飲まねばならぬ朝のお茶


「五 十 年」             井口   薫
お歳はと聞いてしまったクラス会    袋 井
指紋合致ぱっと昔の顔になる
クラス会みんな小鳥になっちゃった
ハイビジョン仕様で今年行くつもり


「自 由 句」            山本 トラ夫
一億も居るので知恵は浮かぶはず       長 泉
寒そうな富士でわたしもなお寒い
コンビニが無いと私は萎えちまう
わたくしは美味しい客の一人です


「雑  詠」            田原  痩馬
なんぼやと聞かれ値札のない体         熱 海
赤い糸つもりにさせて赤い舌
減るもんじゃないけどあんただけはイヤ
義務感に妻の言葉は早くして


「歯の奥に」           羽田  共生
歯の奥にアメリカ肉がはさまった       牧之原
被爆地へ大統領は行かんぞな
頼まぬに国の借金背負わされ
ひとりぐらし他人のことと思ってた


「不 透 明」            寺脇  龍狂
学校も塾も危険と不登校            浜 松
仕事イヤ親の脛嘗めニート族
子は要らぬ亭主も邪魔と物を書き
明日のこと分らぬ老いが国を病み


「あの人へ・・・・・」        尾形  奏子
卒業は間近最後の一ページ        天王寺
好きですと言えず好きでしたとつづる
おもいでは美しきもの目を閉じる
桜舞う中に愛した人がいる


 「晴天なり」            真田  義子
本日も晴天なりと母の声           仙 台
青空にどんどん伸びる夢の蔓
わたくしの力の秘密それは愛
ああ地球これからどんな彩になる


 「笑  う」             新貝 里々子
笑いたくて今夜は寄席の客となる        袋 井
笑うにもどこかしんどいへそまがり
大笑いしたあとしみじみと帰る
くたびれた笑い袋はくずかごへ


  「春を待つ」              辻    葉
春の戸をソッと開けると銀世界       大 阪
待つということばを知らぬ流れ星
カンガルーの袋の中で眠りたい
如月の夕日に明日を祈ろうか


「雑  詠」            江川 ふみ子
気負わずに生きてひとりの雑煮椀      函 南
ため息へ曇りガラスとなる鏡
道草もいいな世間が見えてくる
子離れや子の足音が遠くなる


 「生 き る」              高橋  春江
不器用なわたしが生きる躁と鬱        袋 井
すげ替える首が欲しくてデパ地下へ
名水の底で時代は病みはじめ
好感度ナンバーワンの友を持ち


  「活字好き」            成島  静枝
愛読書眼の方が先音を上げる          千 葉
新聞の活字大中までは読み
マーカーを持ってハウツー斜め読み
流行物パラパラめくり見る本屋


 「ひとりごと」           増田  久子
身勝手に伸びてほどよくなる雑木        焼 津
得をした気分予報と違う晴れ
二十年経ったワープロ捨てられず
百均のアラームちゃんと朝を告げ


 「ピエロの涙」            柏屋 叶志秋
ピエロでも泣きたいときは泣けばいい     山 形
短命なシャボンは夢が多過ぎる
雑草は花瓶の幸を望まない
進歩する科学も欲に追い付けず


 「深くなったか?」         堀場  大鯉
隠れ蓑など面倒だ風まかせ          焼 津
風通し良すぎて寒くなった仲
泣き所知りすぎおんな遠ざかる
女運いい判断は誰がする


 「雑  詠」             馬渕 よし子
強がりを言って余生へ立ち向かう       浜 松
一年がスピード違反して暮れる
寒風に干されひと味増すわたし
一輪の梅へ期待の春の彩


 「笑  う」             笹   美弥子
哀しみを笑いで包む保身術       仙 台
大声で笑い治まる腹の虫
おわらいの種も入れてる福袋
オクターブ上げて笑ったサクラ咲き


糸車母から子へとよく回る       山田 フサ子
初春に心の窓をよく磨く           袋 井
幸せの糸をたぐった母の指
一條の光信じて生きてゆく
愛し合う同志いたわりひたすらに


 「  色  」            山本 野次馬
白と黒デジタル色の中にいる      函 南
今日の顔ルージュは赤と決めている
完結はピンクの色で送り出す
眼を閉じて右脳が描く十二色


「雑  詠」            滝田  玲子
平安のシュートが決まる蹴鞠会      浜 松
ロボットも節ぶし痛むこの寒さ
二枚目が自慢の地蔵欠けた鼻
ドカ雪が高齢世帯のしかかる


  「眠  る」            薗田  獏沓
三才が飯をくわえて眠りだす         川根本町
説教がやっと終わった眠かった
眠たくて当選番号聞き漏らす
里帰り真綿の様に眠りこけ


「雑  詠」            芹沢 穂々美
蒲鉾の板までブランド志向です        沼 津
大鍋で昆布巻を煮る年の暮れ
老夫婦イヴの残りのチキン食べ
取られずに鈴なりの柿年を越す


 「  冬  」            鹿野  太郎
イヴの夜砂消しゴムが暖める         仙 台
スキウタという新しい猫だまし
つい羽目を外したまんま年を越す
カマクラで餅の代わりにゴマを焚く


 「女  鬼」            金田 政次郎
幸福の豆撒き鬼と手を組んで         静 岡
女ではトップ蔭から鬼は外
雄叫びをあげる娘は鬼を打つ
痣だらけ今宵は此れでと逃げる鬼


 「自 由 吟」            鈴木 まつ子
すんなりとハチの一刺し容赦せず       島 田
雲つかむ話ばかりでバカな見栄
過信したばかり思わぬ落し穴
届かない高根の花がこぢんまり


「  道  」            岡村  廣司
生き残る為だ泥道厭わない          焼 津
転んだら起きればいいさ僕の道
修羅の道だけど避けない意地がある
迷路から抜け出す道がきっとある


「雑  詠」            安田  豊子
愚かさをしみじみと知る左ネジ      浜 松
耳鳴りが増長させる肩の凝り
捨て切れぬこだわり鍋にごたまぜる
古い絵にたっぷり漬かる夢の中


「まだ若い」            川口   亘
明るさで年令少しさばを読み         藤 枝
日に数度来ない文待つPST番
ざわざわと空耳を聴く夢うつつ
シルバーの席を目が追う杖と友


「雑  詠」            川口 のぶ子
冬枯れの道われに似て淋しかり      藤 枝
姫りんご十粒残し冬の朝
回転の遅い頭のネジを締め
靴の中悲鳴をあげる指の先


「雑  詠」            西垣  博司
とんがった靴先で書く楷書文字      静 岡
欠伸する所在の無さを懺悔する
矢印の先が縒れてる道しるべ
整えた衣裳に明日を近寄せる


 「こよみの春」           中田   尚
こよみ春まだまだコート離せない    浜 松
立春はこよみ通帳大あらし
立春にシモヤケの数増えはじめ
草も木も体操はじめ春を待つ


 「初  春」            内山  敏子
終章の夢を書きたす八十路の絵        浜 松
元朝も昨日と同じ髭を剃る
戌年の幕開け告げる初太鼓
ひらがなが踊って孫の初便り


 「  命  」            森島  寿恵
焼芋をわれ先に取る小さな手         浜 松
まだ老けぬ八十路の命つきるまで
何事も返事一つで輪がなごみ
一生を土と生き抜く老い二人


「自 由 吟」            竹内  登志
半世紀新春の遊びを巻き戻す       浜 松
適齢期よろしくと言う親ごごろ
交友をつなぐ敷紙の犬が吠え
初春の静かな刻へ無の祈り


 「自 由 吟」            御田  俊坊
酒煙草今更止めず威張ってる         高 畠
小児マヒ福祉のお陰今も生き
古希の坂越えて生かされ続く幸
気さくなナースの言葉に癒される


「コーヒーとわたし」        竹内  さき
コーヒーにわたしの冬を別れして       浜 松
コーヒーの湯気に誘われ新世界
コーヒーの良さんと無になるわたし
夕暮れてコーヒー深むシャイな年


「寝 正 月」         中安 びん郎
朔日は野良へ行かずに寝正月         静 岡
美味しくて餅を食べ過ぎ寝正月
老妻もお節料理で寝正月
達筆の年賀状読み寝正月


「冬  眠」            柴田  亀重
闘魂へ陽の加護欲しい寒の冷え        沼 津
眩暈する脳へ気合を入れる声
初春の鍋浮き世の波へ弾む酒
寒風へさらして花の命張る


「お 正 月」               谷口  智美
餅よりもでかいダイダイ横に置く     伊 豆
不景気で休み増えても寝正月
嫌なこと忘れたふりで松飾り
昆布より喜んぶのはピザ、カレー


「つっかい棒」           堀場  梨絵
風と共に私のゆく末を見たい         静 岡
一日病み豪華版でくる夕餉
A面もB面もない皺の顔
駒下駄がもうすり切れた働く手


 「豪  雪」            林  二三子
車窓から見る豪雪に大歓声          芝 川
雪国の冬お隣が遠くなる
雪解けるまではバレずに済みそうだ
見てるだけなら素晴らしい雪景色


「火  種」            堀井  草園
手の平で踊った火種すぐ消える        静 岡
念押して痛い出臍がまだ痛い
心念の修羅場で拾った白い杖
賛成の片棒芯を抜いて置く


 「雑  詠」            多田  幹江
背伸びせず気を抜くこともなくオカラ     静 岡
歩いて歩いて涙のないあした
風強しノーと言えない人ばかり
固定電話はずむ話に遠くいる


 「雪 の 道」            佐野 由利子
目標はたくさん有るが黄昏期         静 岡
日が過ぎて書きにくくなるお礼状
くねくねと曲がりくねった女坂
尻餅をパチり撮られた雪の道


 「雪  女」 真理  猫子
本性は雪の深みに埋めておく      岡 崎
大根のしっぽのような足でいい
泡銭夢の中でも紙吹雪
雪女の臍は零度で茶を沸かす


「ファンタの歌@」         山口  兄六
バイキングまた胃袋に裏切られ        足 利
シケモクで税の部分を吸っている
年収が足りず悪女に出会えない
受信中天使か鬼かメルマガか


目玉焼きこんな愛でもいいですか     池田  茂瑠
嘘に手を加えて夜の町に向く       静 岡
手の海の干潟に水を与えねば
独りでは淋しい線の中にいる
どう繋ぐ脆い縁の紙こより


 「自 由 吟」 高瀬  輝男
仕合せの風景偽卵抱いたまま      焼 津
雪虫の乱舞よボクは居酒屋へ
振り返るから弱点を掴まれる
鈍感でまた情報に追い越され


 「風 の 邑」           川路  泰山
一桁の昭和が枯れてゆく荒野         島 田
山里にダムが歯を剥くピアニシモ
落人よ鄙びたあたり語り部と
風縒れてひなびた邑を吹き尽す


「春の訪れ」             望月  鐘雄
ふっ切れて嫌な酸素が旨くなる        静 岡
座禅組む今日の命を塗りながら
良いことはドッと来るよりパラパラと
五分だけ待って下さい風が来る


「乾燥注意報」               望月   弘
軽快に生きて若さをほめられる      静 岡
人情の機微に乾燥注意報
内心が薄着になると風邪をひく
風向きでボケのスイッチONにする


 「カルシファー」         加藤   鰹
蒼い火が揺れるみだらな夜になる    静 岡
秩父路へ今年も酒を手に提げて
こんな筈じゃなかった鉛色の空
雪しんしん今夜は抱き合って寝よう

 
  顧  問  吟 
 「拾 い 物」       柳沢 平四朗
追憶が正座をさせる流れ星           静 岡
想定外の顔へシナリオ無垢にする
初詣で喜寿の傘寿も拾い物
頬杖の窓へ微光が覗きこむ

虎竹抄 | Link |
(2006/02/05(Sat) 20:05:28)

体調が戻る途端に欲までも     澄 子
オレオレに弁護士役もついてくる  獏 沓
年齢は不詳のままで愛おわる    春 江
言い訳をあとに残して縄のれん   勝太郎
愚痴一つ気軽に今日をととのえる  虎竹堂
屑かごへ申年さらば恥さらば    よし子
昭和史の祭りを仕舞う火葬の火   昌 利
傷一つ時効を過ぎてから痛む    輝 男
湯豆腐をつつくさみしいもの同志   鰹
おごる日も病む日もバイブルは無口 奏 子
心まで痩せてしまったダイエット  獏 沓
春が来る度に膨らむ泣き黒子    我 流
妻の描く絵にへそくりを隠してる  亀 重
寝正月けんか相手をさがしてる   三根子
空っぽの脳を輪切りにして笑う   昌 利
胃袋の中で暴れている俺だ     泰 山
口紅を少し落して偽証する     獏 沓
運命線ゆっくり変わる風の音    義 子
この春のピンポイントに君を置く   鰹
休肝日今更無駄と思うけど     廣 司
この服を着たらあなたに逢えそうで 英 子
紅椿ストンと落ちていさぎよし   梨 絵
税務署のパイプの椅子の春寒し   幹 江
痛い程わかる黙っているつらさ   澄 子
お母ちゃん時にオニユリたまにバラ 一 道
負け犬の二人が光るクラス会    久 子
私と同じ愛撫をするテレビ     トラ夫
投げたいと思う小石が手に溜る   ふみ子
愚痴も無く本音も無くて逝った母  勝太郎
風に逆らう私のような花びら     葉
一瞬の迷い相手に悟られる     由利子
久し振りまだ罪積んでおりますか  茂 瑠
ぼろっと鱗おちて明日へ星が降る  泰 山
古時計人を信じる音ばかり     鐘 雄
立派だねだからあなたは損ばかり  柳 京
海鳴りをBGMに一人酒      叶志秋
とっつきの悪い人ですまん丸い   大 鯉
ぼけたくはなくて鉛筆とがらせる  ふみ子
釜ゆでにされてつぶれてあんこです 洋 未
傘くるり幸と不幸が入れ替わる   繭 子
遮断機の前で借金申し込む     トラ夫
許可証はないが長生きするつもり  廣 司
窮すればやはり踏み絵を踏むだろう 晃 授
君に会う一番ましな匿名で     兄 六
美人ですが明日の計算できません  鐘 雄
かあさんの風向き変わるお静かに  敏 子
勘違いだらけの夏が暮れてゆく   智 美
それぞれの小指の痛み風化する   痩 馬
切り替えが下手で脱線ばかりする  アキラ
ロボットに腕の呼吸を盗まれる   平四朗
この先は闇とわかっている船出   奏 子
思案するたびに二本になる道よ   ふみ子
今どきのなどと若者斬りたがる   よし子
松茸は嫌いよたぶん毒キノコ    久 子
棒読みの眼は民衆を見ていない   柳 京
ほどほどの趣味に追われてまだ呆けず登 志
生渇きだからタオルが絞れない    弘
海老天がからりと揚がる雨上がる  徳 子
マスクして恋もあなたも遠去ける  里々子
待つ事に慣れてしまった冬木立   由利子
あの人が行く二次会はパスします  洋 未
ゆっくりと解凍しますおらが春    弘
ふるさとの小川で拾う忘れ物    昌 利
人を差す指は合掌から外す     ふみ子
本当に奥さんですかとも聞けず   廣 司
日本晴 切符二枚を手の中に      薫
ゆうやけこやけいつか翼になる両手 美弥子
わたくしのパソコン認知症らしい   薫
控え目にしたら病気と間違われ   廣 司
憂き事の多さ水道全開に      政次郎


虎竹抄 | Link |
(2005/12/05(Sun) 20:06:41)

「冬きたる」            高橋  繭子
木枯らしは北から寒い心から        大河原
白い息ため息ついているのです
ポケットのぬくもり感謝したい恋
エイヤ〜ッと寒太郎へと立ち向かう


 「自 由 吟」            井口   薫
コスモスの海で鮮度を取り戻す      袋 井
焼きたてのサンマ話はあとまわし
そっくりで良かったボクとお父ちゃん
スーパーをしばし楽しむ回遊魚


「  嘘  」             戸田 美佐緒
本当のことは言わない占い師      さいたま 
種明かし無しです嘘は崩さない
どの嘘を置いて行こうか三幕目
嘘をつくときだけ話す丁寧語


「雑  詠」             田原  痩馬
裏方ではまはげになる若女将          熱 海
公園でドラマがあったコンドーム
凶暴を押えて今日も家事をする
温度差があるから仲のいい夫婦


 「自 由 吟」             寺脇  龍狂
郵政法花見気分で本会議         浜 松
議員暦前科が一つ加えられ
秋雨へ甲羅も干せぬ池の亀
守っても守らなくても事故に遭い


「自 由 句」            山本  トラ夫
密会の扉の前にある聖書            長 泉
セクハラで遊び上手が減ってきた
結婚も離婚も同じテレビ局
ロボットのスイッチはまだこちら側


「てのひら」            横山   昌利
魂をゆさぶる恋をまだ知らぬ          相 馬
すれすれの策で脱輪回避する
ひとり居の秋はわびしい風ばかり
てのひらを見せて和解の席に着く


「あの日をさがして」        新貝 里々子
あの日をさがす風の匂いと陽の匂い    袋 井
権之助坂恋のかけらも落ちていず
雅叙園のトイレおのぼりさんになる
化粧直し無駄な抵抗だと悟る


 「失  笑」             増田  久子
重ね着をすればそのままウォームビズ  焼 津
百均の店にも日本製がある
バーゲンを積んで自転車川に落ち
共学のビリは大抵男の子


 「自 由 吟」            中田   尚
甘栗に夢中になって乗り過ごす       浜 松
温暖化地球も熊も不機嫌で
美奈子死す白血球に問いかえす
絵ハガキが消えてメールが忙しい


 「  傷  」             鈴木  澄子
ふと触れた傷があれこれしゃべりだす      浜 松
大小の傷にあおられ人間味
お互いの傷が互いを思いやる
胸の奥痛み続ける傷一つ


「祖母の誕生日に」         塚本 小弟子
ばあちゃんの作る料理は世界一     (小6) 長 泉
これからは無理をしないでマイペース
おばあちゃん得意の趣味を楽しんで
いつの日かひ孫の子守してほしい


 「若づくり」             真理  猫子
年齢は干支でごまかすキャミソール    岡 崎
Gパンは破って脚を詰め込むの
付け爪にお値打ち品の星みっつ
ピチピチのシャツがストレス抱え込む


 「母 の 声」            真田  義子
一番の味方は母の笑顔です          仙 台
故郷はいつでも母の声がする
鉛筆がすらすら走る午前二時
あの日からずっと走っている私


 「彼女の場合@」           山口  兄六
おばさんでごめんね女性専用車        足 利
全部欲しいけど友達でもいいよ
切なさの形に沈みゆくベッド
さあ行こう信号は青目は真っ赤


「雑  詠」            江川 ふみ子
たとえばの話に伏せてある本音         函 南
老ひとりことりともなく秋夜長
いくたびも転んで己れ見え始め
助走路の距離もう少しほしい坂


 「霜  柱」            柏屋 叶志秋
紙の花きっと疲れているはずだ        山 形
裏方に徹して拍手など知らず
直線が曲がって見える千鳥足
文無しの財布の中に霜柱


 「秋 の 月」            内山  敏子
秋の月誰かに電話したくなる         浜 松
中秋の月から童話降りて来る
中秋の月と一緒にわらべ歌
里の駅満員にする秋祭り


 「雑  詠」            福田 勝太郎
左遷され復帰の夢で飲む地酒         大 阪
秘め事を作り亭主が若返る
変わりたい五キロ落せば医者いらず
死んだ後骨が綺麗と褒められる


「仕掛けに乗る余裕」         鎌田  一尾
切札を持って仕掛けに乗ってやる    山 元
磨かれて石各々に出す光
重宝なカードが首を取りに来る
頷いただけさ納得していない


 「九十二歳が翔ぶ」        金田 政次郎
一会の深さに思慕のある別れ        静 岡
拭き掃除きれいな心で明日へ向く
来る初春へ九十二歳夢があり
あすの線見事に初春へ翔んでやろ


 「眼  鏡」            成島  静枝
諳じた話さえぎる眼鏡拭き          千 葉
おこぼれの優勝セール行くメガネ
いい話眼鏡の蔓でリフレイン
バラ色の眼鏡に愚痴が似合わない


 「雑  詠」            竹内  さき
変えたくて今日の釣り銭募金箱        浜 松
人生を恋して綴るドラマかな
ふり向いて微笑の紅よ夏の日よ
妥協して白紙に戻る小さいペン


「言 の 葉」            加茂  和枝
届かない言葉の裏の夕間暮れ        岩 沼
ぽつぽつの言葉の先の思いやり
なんだろう言葉の渦に落ちていく
秋だったたっぷり言葉おいていく


まだ満ちる五感しっかり息を吸う     山田 フサ子
生かされて空の青さに酔っている    袋 井
平凡の幸せ愛の湯がたぎる
もう少し二人でともに頑張ろう
こだわりを捨てて無心の絵にとける


 「  酒  」            山本 野次馬
コップ酒おでんと涙切なさよ        函 南
寂しさをひとつ隠して屋台酒
チャンチキおけさ唄って虚勢張ってみる
生き抜けば楽しい酒も数知れず


 「リンゴ園」            川口 のぶ子
リンゴ園暫しの老いを忘れさせ        藤 枝
青空に赤いリンゴを置いて見る
色どりを添えたリンゴが卓飾る
泣く児でもカメラ見せればポーズとる

「器  量」            安田  豊子
マッサージしても器量は変わらない    浜 松
職場の花あれよあれよと器量負け
浮世絵は厚い化粧で造られる
妖艶にコロリ男が読めてくる

 「雑  魚」          岡村  廣司
自尊心まだ微か有り定年後           焼 津
老いたから細工をしない顔で居る
騒ぐ血が有る内ぼけは来やしない
雑魚だって見栄も張ります夢もある


 「未  来」            馬渕 よし子
父母を看て我が身重ねている未来       浜 松
九条が子等の未来を握ってる
バラ色の未来信じている愚か
宇宙への旅立ち星になる未来


 「点  火」            高橋  春江
パーツだけ換えても若さ戻らない       袋 井
病あと人間を求めてちと疲れ
厨房へ自由になった男達
未だ燃える火種点火をしてみたい


「雑  詠」            竹内  登志
誘われた招待券に愛芽生え        浜 松
カード手に暗号忘れうろたえる
敬老会十人十色の今日の幸
祖母の数珠朝の日課にある平和


 「翔  ぶ」             笹  美弥子
肩の力抜いて気負わぬ鳥になる     仙 台
もたついたこころひとつに躓く日
老父母も子孫もおもう秋夜中
明日光ることばを溜めて小休止


 「雑  詠」            滝田  玲子
少子化であしたが怖い都市砂漠        浜 松
本堂の敷居が高く立ちくらみ
石蹴って今日の運勢ためしてる
マンションでロボット犬が後ずさり


 「事  件」            薗田  獏沓
神聖とされる学校荒れている         川根本町
スクープのペンが事件を誇張する
犯人の様に呼び出す目撃者
人の世の事件で学ぶ強さ得る

「雑  詠」            設楽 亜季浩
やり直す気持ちがあれば大丈夫      静 岡
途中から病気自慢のクラス会
ケータイが鳴らし続ける黒電話
趣味生かしホームを見舞う腹話術


 「生きがい」           鈴木 まつ子
ゆったりとライフスタイル自分なり      島 田
真心にひかれ一肌脱ぐつもり
培った昔の勘を呼び戻す
生きていること最高に愉しませ


 「無  題」            鹿野  太郎
草笛が羽化を促す赤トンボ          仙 台
運動神経が茶道部に入る
冬が来る前に胃袋扱き使う
凍て付いた北の悲しい風物詩


 「  道  」            山田  光男
不運では済まぬ歩道の事故悲劇        静 岡
介護して散歩の道は焦らずに
筋道を通す頑固は親ゆずり
道を説く人と思えぬ欲の顔


「こ の 頃」            川口   亘
つい気合い若気になれず老に馴れ     藤 枝
回転が速すぎるのか足おくれ
昨日見た年寄役を試しみる
歳という重荷を軽くする化粧


 「写  生」            大塚  徳子
のっぺらぼう貧相な山描くなかれ    仙 台
写生するならば腰据え四方山
描いても描いても山また山の山の中
カルチャーショック迫り来るよう山を描く


 「雑  詠」            森島  寿恵
熱気球色取り取りで競い合い         浜 松
張り子の犬千両箱を負う縁起
十三夜世の中乱れ月も泣く
豊作で小鳥喜び落穂食べ


 「寒くなったネ」          堀場  大鯉
詩も忘れバカになってる日向ぼこ       焼 津
少しずつ数が減ってく賀状書く
古株の理屈も多くなって冬
玉子酒のんでも皺は減ってこず


「呼  吸」            升  ますや
吐く息が揃いのれんを子に譲る      気仙沼
小刻みに吸ったり吐いたり受験票
涙腺に盗まれている息づかい
いい夢にタクト振られて寝る呼吸


 「自 由 吟」            御田  俊坊
児も家事も母を頼りに共稼ぎ      高 畠
ヘルパーを頼り任せて世話を受け
無邪気で慌て躓き怪我をする
無邪気で明るく親を助ける子


 「自 由 吟」            山田  ぎん
とうがんが畑に幾つもころがって       静 岡
彼岸花お墓参りを知らせてる
秋知らす彼岸花咲き白も咲き
スズメ集団稲穂を食べて脅し無く


「勇 み 足」            堀井  草園
気の合える町を根城の灯へいそぐ       静 岡
崖っぷち五指で救った名キャッチャー
盗まれた話に刺が味方する
馬鹿受けの隅で逆立ちして受ける

「雑  詠」            西垣  博司
百円で消費は美徳リバイバル         静 岡
親よりもお金手厚くもてなされ
ここだけの話背中の孫も聞き
リフォームで出費生活ガタが来た


「自 由 吟」               柳澤  猛郎
もつれ糸解く母さんの深い胸       袋 井
リタイヤの椅子には名刺などはない
エアロビへ賭けた女の持つ色香
失敗を明日へのバネにする奮起


 「緩  む」 芹沢 穂々美
つんと出た胸の高さの若いころ     沼 津
コンパスで描いた円が緩みだす
タテのものヨコにもしない男伊達
一本のネジが緩んで内緒ごと


 「雑  詠」            川村  洋未
赤ちゃんも涙と笑顔使いわけ         静 岡
がんばりも息を抜かなきゃただの意地
今時の子供とんがる靴をはく
正札のゼロに思わず指を折る


「自 由 吟」            安本  晃授
君が代は日本の国歌で有難い         静 岡
ああそうだ渡る世間は鬼と住む
文化の日流石美人の勢揃い
ねぎらいの言葉ふくらむ凡夫婦


「参   拝」               中安 びん郎
参拝を非難する国褒める国        静 岡
参拝に紋付き着たり服着たり
参拝は適切な時適当に
参拝は私心の発意他意は無し


 「卒  寿」 林  二三子
病癒えいつもの席に母がいる      芝 川
卒寿まだ生きるつもりの策を練る
ワタクシの行く末母を見て悟る
元気かの電話に卒寿今日も無事


 「皮 談 義」            永田 のぶ男
踠いても死んでも皮は残せない        静 岡
病院へ入ると悪くなるムード
名宛なき手紙を持った面皰猿
蛇の皮財布の中で働かず


「自 由 吟」         谷口  智美
タネ無しじゃやっぱ淋しいサクランボ     伊 豆
もう一度ストレートな恋してみたい
「捨て方」の本が書棚にあふれ出る
泣きそうで煙の下へすすすすす


「ピ エ ロ」            中野 三根子
おどけても涙のあともピエロです       静 岡
富士山ものぞいています大道芸
青空とピエロの顔にいやされる
赤い鼻つけてピエロになってみる


「思うまま」           堀場  梨絵
セリフもう忘れて匂う沈丁花       静 岡
行き詰まるときは神さま仏さま
ブランコが風に押されている孤独
自分史にけし粒ほどのメロドラマ


橋いつも越せばこの罪消えるのか    池田  茂瑠
束ね髪キャベツで包む愛がある      静 岡
逢える日の胸底罪の泡が立つ
無理をして出向いた赤い靴の哀
煮詰めたい愛へ足りない身の火種


「美 術 館」             佐野 由利子
回れ右しても抜け道見付からず        静 岡
油切れしないよう行く美術館
首縦に振ってしまってからの鬱
おだやかな笑顔にまたも騙される


「駄目な男と恐いばあさん」       多田  幹江
駄目な男がブルガリア食べている     静 岡
安安と踏み台になるパイプ椅子
触れずおくキレると恐いアスベスト
迷惑な私はきっとアスベスト


 「獺  祭」         川路  泰山
獺祭と決めて六畳の主さ        島 田
時間は霧となって遠のいてゆく
暫くを昔に帰る麦ご飯
さよならがしにくくなった小糠雨


 「自 由 吟」            高瀬  輝男
あまりにも空が静かでファイト消え     焼 津
進化した猿の哲学論に凝り
トイレ出ると勢力圏が変わってた
策一つ極彩色の皿に盛る


「春から秋へ」               望月  鐘雄
夫婦とはこんなものです味噌ワサビ    静 岡
シンプルな女に惚れているわたし
真っ直ぐに生きて拳に光る汗
切り株の芯父がいて母がいて


 「日々好日」         望月   弘
いろいろな大義を聞いてよく眠る    静 岡
米を研ぐことが辞書から落ちている
老衰にほっとしている訃報欄
マニュアルの通りに老いてすみません


 「冬の日の幻想U」         加藤   鰹
冬の僕たちとLEDの青          静 岡
雪が降る 音という音消し去って
バッテリー切れですケイタイも僕も
冬銀河 愛のセリフが見つからぬ


   顧  問  吟 
熟年の暮色へ黒いわだかまり      柳沢 平四朗
年波へ憑かれた自負が浚われる         静 岡
アスベスト闇の悪魔の白い牙
団塊が踊り場で待つニート族
秋そぞろ歳はもしもを抱いて生き

虎竹抄 | Link |
(2005/12/05(Sun) 19:45:38)

「夜の虹&月」           金田 政次郎
夜の虹月に仄かな輪をかける       静 岡
外光に円形ドームある祈り
強烈な月の打球が目に痛い
幸福を月が注いだいい眠り



 「座 右 銘」            岡村  廣司
法話聴く度に変わった座右銘      焼 津
この皺の中へ隠そう忍の文字
絞ったらまだ少し出る正義感
敵だって頑張ったんだ讃えよう



 「雑  詠」            馬渕 よし子
険悪な空気追い出す換気扇       浜 松
勿体をつけて噂へ価値をつけ
種蒔いて実った頃に邪魔にされ
建前と本音掴めぬヤジロベー



「秋 の 月」             真田  義子
虫の音にいやされている秋の月         仙 台
花一輪人恋しくて秋の月
旅に来てまた懐かしむ秋の月
もう一度心を許す秋の月


 「自 由 句」             山本 トラ夫
退院後好きなものから食べる癖     長 泉
一人泣きはやばや終わる肝試し
振袖は嫌だと言うが嬉しそう
今生の別れを告げに着るスーツ


「雑  詠」            江川 ふみ子
思案するたびに二本になる道よ         函 南
飛び出してみようか心晴れるかも
健康法どれもためして病んでいる
行き止まり戻れぬ足を考える


 「雑  詠」             鈴木  澄子
手がかりを求めてのびる豆のつる    浜 松
リサイクル出来たらいいと願う骨
オブラート承知している嘘を呑む
住所変更気分もチラと改まる


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
災害が苦手らしいなブッシュさん     浜 松
投票日お選挙という氏育ち
いま頃になって汗かくジャイアンツ
誘われて義理で並んだ地球博


 「遠 い 夏」             鹿野  太郎
おんぶして腰が抜けそう台所      仙 台
チューニングまごつく思春期の鼓膜
西瓜切る祖母に合わせる蝉しぐれ
ウォッチング僕らは竜田揚げに見え


 「舶 来 品」           薗田  獏沓
夏草に何種か混る外来種           中川根
外出はシャネル パジャマはバレンチノ
隣の娘迎えベンツの側で撮り
韓国の海苔で巻く寿司シャリが見え


 「飲  む」            西垣  博司
四季と喜怒哀楽酒がついてくる        静 岡
大吟醸よりも財布がパック酒
憂さ一つ舌で溶かして胃に流し
酔うほどに本音を出して後で悔い


「夏 の 夜」            成島  静枝 
イジメかも知れない真夜中の吐気     千 葉
溜め込んだ毒気を散らす水枕
地球博行かずに終る月見草
月見草ちょっとクールな人が好き


 「  秋  」             山本 野次馬
秋の海思い出だけが転げ落ち      函 南
ダイエット終わりを告げる秋の風
秋の空大きく開く深呼吸
秋型に胃袋変える微調整


 「  秋 」            中田   尚
サンマ焼く煙にこめる恨み節         浜 松
秋風がさむい小泉も清原も
秋の空台風君に蹴とばされ
ヒゲのびて食欲も出て秋が来た


 「  秋 」             内山  敏子
胸のうちすっきり洗う秋祭り         浜 松
秋風へ心の窓を広く開け
垣根から声かけられて秋の風
ETが降りて来そうな月明り


「邪  心」            尾形  奏子
禁断の果実私もイヴになる        天王寺
この先は闇とわかっている船出
凛としてすじの通った刺がある
振り向けば愛されてこそ女


 「ボ ニ ー」             山口  兄六
君の名も今では海の彼方だね      足 利
猿二匹もうすぐ愛がやってくる
目指すのは甘いお菓子の待つゴール
生と死の境界線でかくれんぼ


 「夢のあと」            井口   薫
夏おわる蝉はお腹を空に向け         袋 井
揺れてます今朝みた夢がリアル過ぎ
掴み損ねたゆめの尻尾が手に残る
押入れで邪魔にされてる旅カバン


 「自 由 吟」            鈴木  智美
言い訳はどんどん作る不精者         伊 豆
胸を張るためだ暑いが化粧する
少しだけ尾ひれをつけて盛り上げる
黄金虫蔵など建てず金貯める

「蝉 時 雨」            鎌田  一尾
味噌汁の香り平和な朝を呼ぶ       山 元
しがらみと義理には勝てぬ熨斗袋
縺れては解ける夫婦の綾の糸
ケロイドが疼くあの日の蝉時雨


 「残  暑」            横山  昌利  
音だけで夢が膨らむ花火好き        相 馬
どんぶりを叩き思想のない残暑
生きること死ぬことガンを告知する
素っ気ない妻の返事に身構える


 「自 由 句」            竹内  さき
橋渡るわたしの心風にのせ          浜 松
秋茄子と命の話したりして
埋もれ木の森わたくしを脱ぎ捨てて
泉の森コインドラマの中で遇う


 「  雲  」            升  ますや
雨雲に包まれ妥協案消える          気仙沼
薄雲になって結論見えてくる
話し合いまとまりそうな雲の色
秋空の四隅へ響く応援歌

年寄りの暑い寒いと閉じこもり     寺田  柳京
髭剃って外を歩いて来なさいよ      静 岡
慾で抱く石の重さにさいなまれ
桜散り只の雑木になりました
老いらくの魚籠を持たない魚釣り


 「雑  詠」         滝田  玲子
運動会ビリでゴールに湧く拍手     浜 松
国技館モンゴル熱がでかい顔
ライバルの風で止まったかざぐるま
さわやかな風がむかえる無人駅


 「シナリオ」            高橋  春江
窓際で正論はけど届かない           袋 井
二番手につけて勝算腹の中
フリーター意味の割にはゴロがいい
シナリオも少し狂ったメス騒ぎ


 「雑  詠」            竹内  登志
茶摘み歌消え開発の多数決          浜 松
人並に肩書貰う診断書
失意の日酒で逃げてる仮の刻
若人の夢一杯の好奇心

「胸  中」            安田  豊子
過去の絵が戻る町なら歩きたい      浜 松
他人ごとの様に時効の話する
里の駅会える筈ない人想う
ありがとうその一言に癒される


 「ちょっとしたこと」      増田  久子
ヘアカラーからすの濡れ羽色はイヤ   焼 津
プレハブに欠ける木の香と畳の香
退庁は五時きっかりという冥利
頼まれて犬と散歩の道で蛇


 「こぼれる」            大塚  徳子
鈴虫の本音が響くラブコール         仙 台
白紙撤回余白に涙のあとがある
放漫な乳房こぼれる風呂上がり
嬉しくて涙をこぼす笑みこぼす


 「新 し い」            設楽 亜季浩
新しい恋でコロッと古い傷          静 岡
新しい風を待ってる総選挙
ITの先生になる新社員
新札が勿体なくて使えない

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(2005/10/16(Sun) 14:45:23)

「春・このごろ」           横田 輪加造
江戸猿若に十八代目の風         東 京
九代目のパレードを追う組織票
披露目が祝儀が四連チャンで来る
訃報欄まさか文枝が文朝が


 「タイミング」           山口  智史
この喧嘩負けてやるから飯おごれ    足 利
咳払いごめんなさいのタイミング
捨て台詞吐いて自分に負けている
美人だねと言っておけ喜ぶから


 「人魚姫伝」          尾形  奏子
何もかも捨てて選んだのはあなた       天王寺
その昔人魚だったほこり胸に
あなたへの愛を抱いたまま泡に
巻き貝にきいた人魚姫の話


「春うらら」             真田  義子
春うらら何を食べても太りそう         仙 台
たんぽぽの風と一緒に旅に出る
止まり木で嘘と知りつつ夢を見る
小春日の風はまあるくなって吹く


 「  色  」             山本 トラ夫
思い出の隙間もなくて君の色      長 泉
生き死にをひと色に込め白蓮華
モノクロの野心をいまだ持っている
くちびるの赤あかあかと理屈言う


輪加さまが独身だったおどろいた    寺脇  龍狂
立札へゴミと一緒に心捨て           浜 北
マンモスも見たいが並ぶのもつらい
唄は愛ファンをだました森夫婦
太りたい人だっている消化器科


 「ちょっと・・・ヤバイ」      西垣  博司
俺以外みな花粉症睨まれる       静 岡
検査結果医師の眉間にシワがある
すきっ腹にゃあのバリウムもチョイいける
あのギャグを歯の治療中思い出す


歳月がチラリと過ぎた戸の隙間     寺田  柳京
節穴の眼が芸術を嘲笑い         静 岡
淋しくて赤電話からかけてます
蓮咲いて泥のおかげを忘れない
炎天下じっと我慢の影法師


これ以上近づかないで ですます語    笹  美弥子
まあいいか寛容範囲広くとる      仙 台
いつか帰る大地に素足あたたかい
情報過多渦巻く風に惑わされ
ひっそりと咲いておりますこぼれ種


 「手 酌 酒」           横山  昌利
ストレスを平気で飲んでいる胃酸       相 馬
葉桜がとっても似合うひとといる
携帯オフ雨のリズムの手酌酒
スパイスのきついおんなを抱いている


 「  運  」            馬渕 よし子
切り札を出さず負かした今日の運       浜 松
躓いた石がわたしの運を変え
遮断機が下りて手前の運逃がし
神様の下さる運も不公平


「切 れ る」            岡村  廣司
切れた子の餌食にされている教師     焼 津
切れ易い子供を接ぐには心
椅子蹴って立ったは俺は一人だけ
切れ味が鈍ったとみて去る味方


 「自 由 吟」             辻    葉
私なら光源氏を神にする        大 阪
風に逆らう私のような花びら
大枠で囲まれたくはないのです
困ったな極楽トンボついて来る


 「よくある話」           増田  久子
窓際は見た目には陽の当る席          焼 津
飾る黄が増えて金運ない家系
ヘボ将棋から売り切れる無人売り
魅力ある字が達筆と限らない


 「九条が危うい」           鎌田  一尾
生きていて悲喜こもごもに描くドラマ     山 元
抵抗の両手も川は塞がれず
黄昏れて急加速度のつく入り陽
九条を狙う輩が多過ぎる


「じゃんけん」           新貝 里々子
最初はグー心の内を見透かされ      袋 井
最初はグー チョキチョキわたし刻まれる
最初はグー ライバルからの石つぶて
最初はグー パーッと派手に散りましょう


 「楽 し い」             鹿野  太郎
楽天の黒星幾つ並ぶかな        仙 台
定年へ未使用の色取って置く
義経の伝説せせらぎが語る
モーニングサービスぐらい出す葉っぱ


 「雑  詠」            田原  痩馬
人つくる安全神話人やぶる          熱 海
本当はストレスたまる聞き上手
反日を打ち出の小槌にする外交
生命より大切ですかダイエット


 「ひたひたと」           井口   薫
近ごろはポカンと怖い穴が開く        袋 井
掛け声でようやく動き出すからだ
ハイチーズ スモーク掛けて下さいね
独立の部屋で揺れてるお婆さん


「雑  詠」            江川 ふみ子
罪といてひたすら母は経をよむ      函 南
喜寿もまだ女の風を染めたがり
リュウマチに負けぬ指から鈴が鳴る
ふんぎりがつかず跳べない水たまり


 「自 由 吟」            鈴木 まつ子
シナリオが耳慣れてくる嘘に飽き      島 田
見過ごしてしまった夢が芽吹き出す
告白は今だ言葉が噛み合わず
年とればそれなりの良さ人の良さ


 「  靴  」            加茂  和枝
長かった冬を忘れて春の靴          岩 沼
雑音を拾った靴が疲労ぎみ
今日も靴同じ所で躓いて
もう少し時間がかかる転び癖


 「雨 の 日」            服部  松子
かなしみの涙 川風拭いてゆく         焼 津
ひょっとことおかめ苦労の皺隠す
我がままな私黙認する夫
癒されてまだまだ生きる生命線


「昇る日沈む日」          柏屋 叶志秋
二日酔いまだ醒めぬのに日は昇る     山 形
日は要らぬ砂漠の地にも日は昇る
言い訳は明日にしよう夕日落つ
あと幾度眺めるだろう夕日落つ


 「風のいたずら」      高橋  春江
掴めそうな風にするりと逃げられる   袋 井
白紙委任わたしの心明かせない
風なぐに残り火かすか燃え始め
立ち読みがたのしかったネ セーラー服


 「自 由 吟」            堀内 しのぶ
新緑に洗い直しているいのち          焼 津
新緑へ弾みのついた万歩計
花も鼓動も生きよと祈る百度石
咲きほこる花の心が妬ましく


 「メディア」            金田 政次郎
垂れ流すメディアの声が麻痺にする      静 岡
さまざまな声振り回す提供者
生の声ドラマは夜のニュースショー
報道はぎっしり詰めた民の声


「心 の 内」            鈴木  澄子
不完全燃焼たまる皮下脂肪        浜 北
予測する余命へ夢が堰を切る
度の過ぎた自負へ足元さらわれる
何気ない仕種に姑が生きている


 「さ く ら」          川口 のぶ子
夜桜をおぼろ月夜と重ねみる      藤 枝
夜ざくらに儚く恋の夢散りぬ
お花見の宴の酒に酔いしれる
霧雨にほろほろ泣くか桜花


 「五 線 紙」            芹沢 穂々美
おたまじゃくしどこの五線でキーを打つ    沼 津
五線紙に書いてみたいな恋の唄
流行を着たくて着れぬ裏事情
心地良い風に誘われ髪染める


 「重  湯」            長谷川 寅吉
亡き戦友はコッチへ来いと手で招く      焼 津
この重湯一さじくれたや亡き戦友に
重湯とはこんなに不味いと今は知る
この重湯命の糧と目をつむり


「トンチンカン」          大塚  徳子
トマトの名付け親よ出てこいもも太郎   仙 台
残念無念 線路の上に桜散る
薄っぺらな同情よりも金をくれ
頭の中でトンチンカンの音がする


 「芽 吹 き」             成島  静枝
お腹の子暴れていると娘の電話     千 葉
十キロも太った母の回顧録
母子手帳悲喜こもごもがある栞
晴れやかな芽吹きテンション上げていく


 「笑  い」            薗田  獏沓
仔猫じゃれガードマンまで笑ってる      中川根
よく笑う女子高生が乗り合せ
少しでもモナリザに似てうす笑い
タイミング少し外れて父のギャグ


 「戦 中 派」            堀場  大鯉
味のある字だと癖字を褒めてくれ       焼 津
義理堅く濡れ手にゴミも付けてくる
親友の悪口聞くと腹が立ち
生き延びる術は長けてる戦中派


「思いつくままに」         中田   尚
命浮く 後の車両に乗っていた      浜 北
ヒーローになった古田の野球愛
楽天の勝ちがこんなに盛り上がる
キッコロも森も愛する地球博


 「人生いろいろ」          山本 野次馬
一人旅チョット寂しいはぐれ雲        函 南
帰宅から三言で済ます戦中派
リストラの再就職は犬の番
今日の虹何か好い事ある予感


 「雑  詠」            滝田  玲子
血糖値飽食のつけ背負わされ         浜 松
ノー天気忘れ上手でまるく生き
明日はあすあしたの風に賭けてみる
高松塚カビで泣かされ竜白虎


 「前 向 き」            設楽 亜季浩
還暦が交り求めカルチャーへ         静 岡
横向くなしっかり前を見て歩け
躓きを酔ったふたりのバカ笑い
どうせなら未来と言わず明後日


「雑  詠」            竹内  登志
冷静になれば何でもない冗句       浜 北
仰ぎ見る千変万化 雲の旅
好き同志世界は一つ血が混り
青春の希望はかないセピア色


 「自 由 吟」            柳澤  猛郎
終章へ咲かせる花を模索する      袋 井
妻の絵にとけて平和な通過駅
知恵熱も下がり浮かばぬ脳といる
藁一本掴んで春の海といる


 「雑  詠」            市川  正子
ペイオフなどどこ吹く風の火の車       天 竜
青春期戦中戦後後遺症
髪染めて暫く歳を忘れよう
少々の事では負けぬ古狐


 「おかげさま」           森島  寿恵
おかげさま我が家は平和日々感謝       浜 北
葱坊主捩じり鉢巻子沢山
老木に見事に生きた桐の花
色付いた枇杷にひよ鳥寄って来る


誘われて普通の顔で助手席へ      福田 勝太郎
万札にお礼を述べてレジの前       大 阪
みやげものヴィトンの袋に詰め替える
慣れた道今日の晩飯親の家
溺愛の息子に告げる母の檄


 「介護の灯」            内山  敏子
寝たきりへ優しく妻の処方箋      浜 松
病む人へ笑顔たやさぬ介護の手
孫程のナースの笑みに癒される
深夜の灯ともしてナースステーション


 「情  報」            山田  光男
杖たよる妻に聞かせるいい話         静 岡
知っていて知らぬふりして耳を貸し
金貸して知恵貸し後でデモ受ける
スイッチオン世界のニュース流れくる


「行  動」            安田  豊子
無鉄砲に走った転んだ若かった        浜 北
この星に生まれ輪廻の齢重ね
生き下手がひたすら歩くゼブラゾーン
エンディングノート惚けないうちに書くつもり


サクランボ赤く実を付け網を掛け    山田  ぎん
柿の葉が五月の空に清々しい         静 岡
連休に曾孫が元気で顔を見せ
苺狩り車二台で甥の家
裏の畑ジャガイモ胡瓜茄子も植え


「自  分」              川口   亘
幾度なく歩いた事のいばら道       藤 枝
わが道と自負するに足る生きた道
元気だけ取り柄で過ぎた思いのみ
宇宙から見れば毛筋の吾が歩み


 「自 由 吟」 御田  俊坊
決意して納得ずくで会得する      高 畠
会心の作と思って投句する
いろいろな情報あって迷わされ
笑いにも泣くもいろいろ面白い


 「  鏡 」            望月  満月
手鏡の中でも孫の欲しい風          静 岡
満ち足りぬ私の世界へ舟を漕ぐ
夢の中生きてる夢を持っている
忘れてる今日も笑顔が映ってる


  「無 駄 口」           堀井  草園
せっかちが自分の影に付き纏う        静 岡
ナツメロを聴いて昨日が遠くなり
顔のない街の校舎は汗臭い
無駄口が嫌いで好きで靴磨く


「  杖  」            中安 びん郎
田の草を嘸取ったろう杖を突く      静 岡
杖を突く乃木将軍もかくやかと
杖探す杖が無ければ歩けない
杖突くと同情の目に圍まれる


 「雑  詠」            林  二三子
職退いてゆったり稼ぐ自家菜園     芝 川
高望みしても叶わぬDNA
老いた母昔の記憶だけは冴え
母の日に老母からもらうありがとう


 「虫けらどん」           永田  延男
手がとどく背中が痒い金の虫         静 岡
腹の虫思いもよらず腰にくる
リストラ後夢の中まで仕事虫
好きで飲む毒か薬か線がない


「香  る」            中野 三根子
五月晴れ街は新茶で香り出す         静 岡
風香る山はみどりの衣きて
吊り橋にゆれる私とこいのぼり
藤棚の下でほのかに競い合う


「第一のコース」           谷口  智美
弁当にのりでゴメンのラブマーク     伊 豆
奥二重入れたシャドーがアイライン
あじ干物 皮も食べたねプロポーズ
第一のコース何歳でものれる


 「運  命」         堀場  梨絵
生甲斐の趣味端くれの一歩づつ     静 岡
もう一人のわたしどこかに居るかしら
運命に逆らっているこの不況
ぬるま湯のくらしにビックリ箱を置く


 「雑  詠」            佐野 由利子
壮快さ子を二人乗せペダル漕ぐ        静 岡
目に泪ためて女の大笑い
一瞬の迷い相手に悟られる
蟻の列邪魔してみたい焼けっぱら


「敵 味 方」            長澤 アキラ
尾を捨てるふんぎりつかず猿のまま      静 岡
悩みなどスッカラカンの顔をして
肝機能この世の憂さを競い合い
続柄に「人間」と書く敵味方


猫背です胸の秘密が重すぎて       池田  茂瑠
相槌の底に隠した刺動く         静 岡
止り木が私の羽根に足りません
久し振りまだ罪積んでおりますか
原点は悪を重ねた路地だった


 「B G M」        多田  幹江
戦闘服がいっぱい上りのぞみ号     静 岡
罪はない北のアサリも汐を吹く
棒切れに火を点けたのはあなたでしょ
ふる里のBGMは波の音


「夢うたげ」       川路  泰山
若みどり旅を続ける影法師        島 田
草いきれ昔むかしへ蛍とぶ
おろかさも悲しみもなし天の川
ぽろっと鱗おちてて明日へ星が降る


「風 の 花」        望月  鐘雄
人を信じてボランティアから帰る    静 岡
恋と愛まだまだわたしクラシック
お静かに今しあわせの風が来る
古時計人を信じる音ばかり


「逆上がり」       望月   弘
ロボットに二足歩行で負けている     静 岡
逆上がりすればと思う砂時計
団塊の不法投棄は禁止する
黒猫がいて妾宅を噂され


「ブルーカラー」        加藤   鰹
ニックネームはジョニー信用できないな 静 岡
ろくでなし達の酒場でダバダバダ
三日月がポキン てめえもグルだとは
仁丹の匂いとゲンコツの記憶

     顧  問  吟 

静かさがこんなに邪魔なわだかまり   柳沢 平四朗
下敷は過去に無職の春談義          静 岡
生かされて生きてまさかの馬齢積む
ロボットが世界に魅せるお家芸
風雲児の描く覇権のあぶり出し


虎竹抄 | Link |
(2005/06/10(Thu) 19:29:57)


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