「白 い 風」 佐野 由利子
夢乗せて銀河鉄道発車する 静 岡
雲つかむ背丈青春真っ盛り
深爪の痛みを抱いて終電車
喪の部屋をスーッと通る白い風
「涙 の 味」 池田 茂瑠
傷心へカモメ眩しく白く舞う 静 岡
味見して下さい私の涙
あの日から俯く癖の鬼を飼う
効き目ない武器に変わってゆく涙
「自 由 吟」 滝田 玲子
三越の獅子がコートで冬支度 浜 松
NHK露骨な人事する総理
人間がこんな私にした地球
生き抜いた証にしみとしわの数
「ガンバルノダ」 新貝 里々子
年輪をエステで消して若作り 袋 井
赤を着て赤より赤く翔んでみる
余熱あるうちに跳びましょ春はそこ
鬼だって花束が欲しラブが欲し
「ユーモア川柳」 岡村 廣司
足音も凍りそうだな北国は 焼 津
断られた日からそいつを敵とする
正社員パートの前で怠けてる
立ち読みに椅子出す店は無いものか
「困ったことに」 増田 久子
普通ならいいがハイレベルが普通 焼 津
エコカーというがエコではない値段
一枚でなくグラムの値ですビーフ
ケータイで笑いながらのドライバー
「新 年」 山田 浩則
初夢はまた来年に期待する 島 田
小さいが中は大きな福袋
五円玉穴からのぞく初日の出
コンビニの新聞元日も軽い
「自 由 吟」 孝井 栞
絶妙な塩の散らせに出る旨味 富 山
ブーツには足の太さを閉じ込める
シェアハウス寂しがり屋のシクラメン
子に還る母の記憶に迷子札
「自 画 像」 真田 義子
もう一度巻き戻したい恋ひとつ 仙 台
自画像の鼻は大きく丸く描く
迷わずにいつも大きい方を取る
毎日を必死に生きて来た昭和
「結 果」 藤田 武人
恋愛の式と答は無限大 大 阪
過程より結果全てと拒まれる
黙々と歩み続けてきた結果
意地っ張り大風呂敷をたためない
「ボケたらあかん」 中矢 長仁
ボケてない眼鏡替えたら良く見える 松 山
顎を引き背筋伸ばして杖を突く
逃げていく笑いの門に病気など
旨い酒呑み足りぬからまだ往けぬ
「解けていくこころ」 外側 としみ
ふるさとの星の滴に洗われる 磐 田
無防備な私をさらすホットチョコ
摘みたてのいちご少女の顔になる
リラックスアロマで解けていくこころ
「頻 繁」 鈴木 まつ子
惚れている弱み今夜も逢いに行く 島 田
逢いたいは山々やはり足が向き
足しげく通う追い風向い風
再会へ手帳はみ出るスケジュール
「自 由 吟」 石田 竹水
仮説から仮説へ愛を組み立てる 静 岡
アリバイを消してゆったりふて寝する
ジャンケンで時々人生変えて行く
ロボットの仕草職人認め出す
「ちいさな幸」 鈴木 千代見
花ことば信じて夢の種を蒔く 浜 松
これっぽちの愛で足りますすみれ草
百歳の笑顔にちっぽけな悩み
春菊の咲けない花に無愛想
「如月の・・」 栃尾 奏子
如月の川で洗うは志 大 阪
白い息畑と会話してる背な
寒いので手をつないでも良いですか
春までは待てずさらいに行くこころ
「初春の夢」 奥宮 恒代
花畑夢にうたた寝冬の蝶 森 町
蛇行した過去がほほえみかけてくる
株上昇アベノミクスの落し穴
エイエイオー美酒に酔いたい五〇〇号
「願 望」 安田 豊子
リハビリへ諭す患者の二歩三歩 浜 松
折り返す路傍の花も香をこぼす
この先の景気ともあれ祝い酒
温かい家に絆の陽が当たる
「雑 詠」 馬渕 よし子
振り返り一本道のつまらなさ 浜 松
絵手紙が幸せ彩でやって来る
まだおいと呼ばれ従う腑甲斐無さ
血流が良くて悪知恵衰えず
「生 還」 井口 薫
サインして命執刀医に渡す 袋 井
オペ室へ 廊下は長いモノトーン
麻酔から醒めて眩しい執刀医
快復期包帯までも笑い出す
「盗まれた踏絵」 戸田 美佐緒
冷凍庫 未練をひとつ眠らせる さいたま
月光にうしろ姿を盗まれる
天秤が釣り合っている君と僕
踏絵ふむ足の汚れが気にかかる
「午 年」 成島 静枝
振り乱すたてがみまばらムース買う 千 葉
嘶いた割りには腰が上がらない
時計なぞ持たない春の岬馬
重き荷はもうない馬体ストレッチ
「自 由 吟」 竹内 みどり
つるしがき風に揺れてる冬支度 さいたま
上高地散歩している夢を見る
大空へ思い煩い飛んでいけ
増税でじっと手を見るお正月
「ド ラ マ」 毛利 由美
クオリティ高い笑わせるCM つくば
時代劇までいくと古さを感じない
俳優とかぶるドラマのキャラクター
原作はまだ続く半沢直樹
「人生はステーキ」 濱山 哲也
レアでいい血がしたたってこそ家族 つがる
ミディアムで友は長~いお付き合い
くれぐれも苦手な人はウェルダン
恋人はミディアムレアが丁度イイ
「 鍋 」 酒井 可福
白菜が主役の鍋を囲む家 北九州
おふくろの味に負けないおでん鍋
味見だけ肉も喰えない鍋奉行
七草が踊る土鍋の粥の味
「自 由 吟」 山本 野次馬
一年の抱負喉元すぎて春 函 南
ひと駅を過ぎて手ぶらな土産物
仕切り直しです幾度と白い息
改札でお屠蘇気分の丸洗い
「水平線と稜線と」 斉尾 くにこ
ジェラードにしたい隣のソクラテス 鳥 取
巻きもどすリール逃げ出す魚ごころ
笑いたい人笑いたいよう笑へ
目線には水平線と稜線と
「自 由 吟」 南 天子
孫がくる春迄待って今はむり 焼 津
老いること予定の中に入れ忘れ
一年に一度は旅行した昔
流されて生きていくよと決めた朝
「初 春」 内山 敏子
初春の鏡に傘寿の薄化粧 浜 松
血圧の減塩食を強いられる
好物が猫にも分かるゴミ袋
初春の空気が気持ち引き締める
「まだ寒い」 小林 ふく子
合掌の隙間へこぼれ落ちる福 袋 井
鉛筆を削らないまま歳重ね
まだ寒い片付けるのは少し先
大胆なポーズはコート脱いでから
「二 月」 岩永 圭二
お返しが怖くてチョコをもらえない 大 阪
年の数豆を食べると腹こわす
恵方巻かぶりついたら歯が欠けた
抱きしめて願い叶えるは北風だけ
「悲惨な年越し」 恩田 たかし
年末に疲れが貯まり嘔吐下痢 静 岡
年越しの蕎麦も食えずにうなされる
年越しに蕎麦の代わりにポカリ飲む
年はじめ治ったふりしおせち食う
「自 由 吟」 菅原 花子
年末はためこみすぎて大そうじ 盛 岡
気がつけば年越しそばを食べている
初詣で心あらたに頑張ろう
元気湧くお年賀状の添え書きに
「寒 い」 薗田 獏沓
稍々寒に僧は素足で足早やに 川根本町
北の窓塞ぎ一景失えうも
見た目程優しくはない富士の白
枯紅葉一葉遊べる谷の底
「新 春」 畔柳 晴康
恥と悔い突き落としてる除夜の鐘 浜 松
米寿の爺石段登る初詣で
老いたれど楽しく生きる歌留多とり
去年今年財布広げるお年玉
「正 月」 川口 のぶ子
お正月気持ち引き締め前向きに 藤 枝
年女気合を入れて頑張ろう
お年賀に曾孫集いて賑やかに
曾孫呼ぶじいじばあばについほろり
「問 題」 川口 亘
有るようで欠け始め知る無い時間 藤 枝
笑わせるつもりで虚仮て泣きを見る
駄目元を云うより先に労わられ
膝頭意志に叛いて休みとる
「雑 詠」 飯塚 澄人
胃の検査今朝のパン食バカに良い 静 岡
鎌倉の散歩の道は飽きないの
山奥の忘年会だ雪の歌
瑞の方何でも捨てる潔癖性
「ホッとする」 山本 ますゑ
迷路から抜け出たらしい脂汗 磐 田
主役にはなれぬ水仙いとおしい
踏まれても根を張る草にある誇り
言わないで丸く治めるいい笑顔
「年 賀」 鈴木 恵美子
墨をする日本の香り深く吸う 静 岡
今年こそ信じて走れば馬くいく
初春へ麗峰富士と屠蘇を酌み
百歳の笑顔晴れ晴れ天を向く
「二 月」 谷口 さとみ
鬼は外福と一緒に春がくる 伊 豆
福になるやもしれぬ鬼泊めておく
手づくりがのしかかってるチョコレート
占いもラインでピコッと安っぽい
「先を読む」 永田 のぶ男
猿よりも生れ貧しい檻の中 静 岡
椅子の足 三本足で用を足す
褌を固く結んで胃の検査
墓買わず決めて競馬に明け暮れる
「じじせん」 尾崎 好子
冬に咲く紫陽花ありへ今でっしょ 藤 枝
自閉症オキシトシンにある光
猪瀬さんしどろもどろで汗びっしょ
清廉潔白ああ五里霧中ごりむちゅう
「年 女」 多田 幹江
嘶くも早たそがれの年女 静 岡
もう少し余熱で泳ぐ年女
人参もアメも好きです年女
じゃじゃ馬の頃なつかしむ年女
「雑 詠」 川村 洋未
ダイエット通り過ぎればメタボ腹 静 岡
きっぱりと結論を出す母強し
リタイヤ後全ての基本あっさりと
腹の虫おさめるために金食わせ
「自 由 吟」 林 二三子
思う事上手くいかぬが振り向かず 富士宮
駆け抜ける夢遠慮なく追いかける
干支の馬駆け出しそうなカレンダー
それぞれに高さ目指して子が巣立つ
「チャレンジ」 中野 三根子
新しい年に始めることばかり 静 岡
初日の出わくわくさせることばかり
今年こそきっと実現させてやる
初詣でしっかり誓うダイエット
「雑 詠」 薮﨑 千恵子
躓いた石投げ捨てる冬の川 焼 津
正月の空気を吸いに街に出る
正月の残務整理が終らない
三が日過ぎて居場所が定位置に
「自 由 吟」 石上 俊枝
お年玉使う間もなく親の手に 静 岡
寒の味噌煮た豆湯気につまみ食い
義理チョコに見え張り男山積みと
見栄っ張り背筋を伸ばす寒い朝
「生 き る」 荒牧 やむ茶
また一年始まりました進歩なく 小 山
凹んでも泣いても腹の虫は鳴る
胸張って格好悪く生きている
生きるため愛想笑いを手に入れる
「自 由 吟」 真理 猫子
怪獣のあしあとがある窓ガラス 岡 崎
雷門ウルトラの母待っている
くつ下の穴はカイロを留めるため
氷点下一度屋外喫煙所
「誕 生 日」 森下 居久美
一月生まれだから水仙が好き 掛 川
一粒のゴディバで祝う誕生日
寿命まで元気でいたい誕生日
誕生日夫に貰う赤いバラ
「雑 詠」 長澤 アキラ
ゲレンデと約束のある雪が降る 静 岡
ヒーローの顔で出てくる映画館
入口と出口を結ぶ平泳ぎ
仏様神様電話を下さい
「二月十四日」 松田 夕介
チョコを買いたいけど二月十四日 静 岡
バレンタイン挙動不審な登下校
義理チョコをかじる涙の味がする
勝算は聞いてくれるなお月様
「おもてなし」 勝又 恭子
ようこそと青空を背に富士の山 三 島
お出迎え空気の色を塗り替える
来る人の色で待ちますカメレオン
もてなしの心もそっと倍返し
「偽 装」 増田 信一
偽装ならいつもしている妻の顔 焼 津
偽物が本物超える時もある
騙すなら騙し続けて欲しい夢
偽装にも松竹梅があるらしい
「平 和」 望月 弘
たてがみは育毛剤に護らせる 静 岡
落ち切っていないよボクの砂時計
単三の電池に詰めてある平和
地球から世界が消えてしまいそう
「愛したのが百年目」 加藤 鰹
気まぐれな彼女バーニャカウダー味が好き 静 岡
逢う度に傷つけあって舐め合って
追伸にもうこれきりと書きあぐね
君型に抜けた心に雪が舞う