「自 由 吟」              中田   尚

カーナビに秋と入れたら栗ごはん         浜 松

未来図を虹色に塗り走り切る

青春が部活部活で消えてゆく

女性から母になったら強いなあ

 

 

 

「雑  詠」               馬渕 よし子

邪魔な枝切れば醜い物が見え           浜 松

デジタルの画面へ染みが隠せない

真っ直ぐに世間を見つめ目が疲れ

欠点が魅力となったお付き合い

 

 

 

「自 由 吟」                大塚  徳子

富士山のような男に憧れる              仙 台

アケビつる世界に一つカゴを編む

朝日浴び体内時計リズミカル

品格は無いが紫好きで着る

 

「初  恋」                鈴木 千代見

アルバムに心奪った片えくぼ              浜 松

ラムネ玉コトリと落ちて胸おどる

駅の伝言板にときめいた日々

コスモスの花占いにかけた恋

 

 

「スポーツ」                     岡村  廣司

スタートは優勝する気身構える                焼 津

接待のゴルフは池を狙い打つ

揉めているゲートボールが面白い

負けチーム聞きたくもない校歌聞く

 

 

「変りばえ」                    増田  久子

カサブランカの自尊心嫌う百合               焼 津

うんちくが過ぎ横道に行く話題

バブル期を語る十万円金貨

リゾットに姿を変える残り飯

 

 

「真っ白に深紅に」           斉尾 くにこ

フラッシュバックして真夜中のカーニバル    鳥 取

ちょっと酔うたびに深紅のバラとなる

尖るだけ尖って野バラ泣き疲れ

リセットキー押してふたりは真っ白に

 

「出  す」             芹沢 穂々美

出せないよシワとシミある私の手              沼 津

離婚届すぐ出る判子持ち歩く

殻を出るヤドカリ次の好奇心

やり過ぎた肥料で育て愚痴が出る

 

 

「生きてゆく」            奥宮  恒代

ゴキブリと住みなれてきて築五年        森 町

幽霊におんぶしている高齢者

イケメンのスマイルに負け買う雑誌

めりはりのある一日のいい疲れ

 

 

「自 由 吟」             西垣  博司

分度器の傾斜角度に君が居る           静 岡

赤トンボ女の色で低くとぶ

まだ古希の感情線は眠らない

音声に案内されて逃げられる

 

 

「秋 の 山」             酒井  可福

団栗が痩せて転がる山の秋                北九州

秋を呼ぶツクツクボーシ息が切れ

汗拭い木陰にそっと腰下ろす

秋の山不景気風も心地よい

 

 

 

「別  れ」               井口   薫

彼岸花の原へあなたは消えたきり         袋 井

絵に描いた別れに遠い流れ星

「いい最期」重いテーマの本を買う

とりあえず写真一枚選っておく

 

 

「意  地」              薗田  獏沓

この旗は絶対染め変えなどしない        川根本町

押し通す男の意地の国訛り

一念を貫く先に光見え

ほとばしる汗が砲火の的になり

 

 

「片 想 い」                 瀧    進

イニシャルで君の名を書く恋日記              島 田

片想い心豊かになる序章

マドンナは高嶺の花のままが良い

思い出に花を添えてる片想い

 

 

「自 由 吟」              滝田  玲子

鏡台に無駄だと並ぶ美顔水                 浜 松

ストレスを溜めたペダルが空回り

何事もなかった様に今日も暮れ

満天の星と花火が競い合う

 

 

「  旅  」               石井   昇

悲しさを消す旅に出てなお哀し          蓮 田

悲しみを束ねた花に水をやる

来た道を束ねてみれば一握り

来ましたね一言だけで妻は頬笑み

 

 

「  昔  」               鈴木 恵美子

真夜中の警報に泣く幼き日            静 岡

農地開放今は昔の物語り

学ぶ事手伝う事は子等の義務

助け合う日々なつかしき戦中派

 

 

「  酒  」                安田  豊子

男と女酒が媒介する演歌               浜 松

酒に酔いナツメロに泣くひとりぼち

人生の節目彩る酒のいろ

遠い日のドラマ肴に泣き笑い

 

 

「雑  詠」             鈴木 まつ子

深入りのわずかなミスが命とり                島  田

つかの間の肌も艶めく恋談義

時という流れが解すいい薬

平成の姥捨山は彩られ

 

 

「スイーツ」              濱山  哲也

煎餅の耳はゴシップ逃さない           つがる

合コンで娘はパフェに早変わり

袋とじ目にもおやつを食べさせる

納めたい事あり箱の菓子を買う

 

 

「雑  詠」                真田  義子

遠い日のあなたの影を追っている            仙 台

君からのメールが来ない雨の午後

もう一度ガラスの靴で踊りたい

運命を変えてみたくて渡る橋

 

 

「  里  」                     藤田  武人

赤のれん企業戦士の隠れ里                 大 阪

初恋の糸を手繰った里帰り

里芋は母の秘伝のさじ加減

ふる里は大の字になる我が心

 

 

「父父父…」                    栃尾  奏子

こだわりを譲れずカーブ曲がれない            大 阪

ここはどこ寝過ごしました終電車

満面の笑顔で芋を掘る十指

ああ全て今日の為だったと思う

 

 

「やめようかな」            荒牧 やむ茶

家計簿の赤が禁煙迫る秋             小 山

退職金上積みすると肩たたき

倦怠期子供の穴が埋まらない

二日酔い禁酒の誓い夜忘れ

「自 由 吟」               提坂 まさえ

反抗期遠道示すうちのナビ            静 岡

まがり角覗いてばかり靴の底

曼珠沙華葉の一枚も持たず咲き

パンを焼く今日のこだわり使い切る

「さっぱり」               萩原 まさ子

答案がさっぱり書けず目が覚める         静 岡

さっぱりが嫌で自販におじぎする

駆け込みが終わりさっぱりタバコ店

神輿の手案山子が担ぐ過疎の村

「パ ワ ー」               石上  俊枝

仕上げにはサラサラ流すお茶漬けで        静 岡

待ちぼうけ都合次第で返事なく

トラになり大風呂敷で空財布

駆け引きが隣の国の腹よめず

 

 

「自 由 吟」               恩田 たかし

ラブソングリクエストしてプレゼント       静 岡

町内の国勢調査楽でない

草刈りをいきすぎちゃって木まで刈る

イベントに行きたい気持ちおしころす

「  涙  」               川村 美智代

鬱飛ばしパター担いでジジ帰る          静 岡

会釈して名前さっぱり出てこない

栗ごはんやっとさんまが百五円

さんま焼くすだち醤油がじゅっという

 

「自 由 吟」               松橋  帆波

彼岸花 肩のあたりを叩く風            東 京

なんてことないさ自分史にもヤラセ

僕の字を読める機械が欲しくなり

アイデアは出たがトイレにペンがない

 

 

「夏 の 恋」              森  だがやん

打ち上げたこの恋花火咲くだろか               島  田

夏の君心の衣そっと脱ぎ

夕立に誘う休憩散った恋

秋の声聞くまで待たずまた独り

 

 

「  窓  」              山本 野次馬

窓枠を外して探す新世界             函 南

幸せをほおばる窓にない出口

明日を待つ窓辺へふわり止まる夢

木漏れ日へあすの小窓を引き当てる

 

 

「秋が来た」               毛利  由美

お彼岸を忘れはしない彼岸花          つくば

手作り感満載のだんごを供え

突然の秋にいよいよ衣替え

対米も対中も菅さん次第

 

 

「老  々」              中矢  長仁

運もある良い出会いだな婆さんや         松 山

爺さんの「これ」で私は泣かされた

手を繋ぎ労わり合って旅をする

町内で評判となる仲の良さ

 

 

「雑  詠」               鹿野  太郎

弁当はもう歌わないリサイクル         仙 台

星屑がバーゲンセールから零れ

まだ消えぬ秋の鏡に映る海

もう二度とあのウエストは帰らない

 

 

「お 勘 定」                   畔柳  晴康

お愛想と勘定払う良い機嫌                浜 松

文句無しきっちり割勘会終る

割り切れぬ端は飲み助渋しぶと

盛りあがり予算何時しかどこへやら

 

 

「自 由 吟」                   内山  敏子

新薬と耐性菌の知恵くらべ             浜 松

物ねだる時だけ孫が寄って来る

リストラの身に寒々と秋の風

珍客とタイムスリップする夜更け

 

 

「  音  」                  川口   亘

琴の音に育てられたか気が和む          藤 枝

叩く音素早く逃げた蠅の勝ち

足音が有って雑音急に止む

バイク音気にした時も有った筈

 

 

「  母  」                         深澤 ひろむ

人と和す心教えた母の辞書             甲 府

ゆっくりと元気を刻む母の四季

良く笑う母で心が軽くなり

真っ直ぐに生きろと諭す母の背な

 

 

「あ  あ」               新貝 里々子

相対性理論ヨタヨタとゴタゴタ          袋 井

認知症というレッテル勲章に

ヤジロベーのかたち片方重すぎる

シルエット大分崩れて修正不能

 

 

「決  断」                     成島  静枝

結婚か親か悩んでいる蛹                   千 葉

親を看る道を選んだ蝶健気

遠距離の恋フィナーレにある別れ

ジ・エンドも愛ハンドルを切る男

 

 

「雑  詠」               飯塚 すみと

心根のやさしい人が座ってた           静 岡

小型でも今年は感謝扇風機

ときめきのリボンの人と体操会

口ごもり相手の出方間をはかる

 

 

「秋に酔う」              小林 ふく子

四季おりおり祭豊かな国がある             袋 井

赤トンボ胸の隙間を埋めて飛ぶ

秋の私語逃さぬように頭を振る

立ち枯れぬようにひたすら足を踏む

 

 

「枯すすき」               寺田  柳京

枯すすき森繁久弥の声である           静 岡

枯すすき森繁久弥の真似をする

枯すすき森繁久弥と同じ歳

枯すすき森繁久弥はもう居ない

 

 

「脳 梗 塞」                  寺脇  龍狂

大猛暑脳梗塞では句もできぬ                浜 松

禁酒五ヶ月おっかなビール

申請書大正五年も書き飽いた

ひとしきり愚痴って娘腰をあげ

 

 

「  秋  」              川口 のぶ子

懐かしの歌の祭典秋の宵               藤 枝

青春の歌声流れ夜は更ける

すすき野に虫が奏でる秋夜長

秋祭り醤油のたれが食さそう

 

 

「息  子」              尾崎  好子

今時の犬は家族と家の中              藤 枝

三匹のペット親より可愛がり

犬の糞はえが教えて呉れて取り

Tシャツの背中は犬の毛えだらけ

 

「花粉症・秋」                   林  二三子

金木犀花粉飛ばしてくしゃみ呼ぶ               富士宮

猛暑過ぎホッとする間もなく花粉

いい香りの中に魔物も秘めている

春待たず秋にまさかの花粉症

 

 

「嬉しい秋がくる」           小野  修市

秋の風さぼらず夏を終わらせて          静 岡

太陽が秋の季節を忘れてる

青空がうざいとおもう夏だった

秋雨に涼しさ感じああ嬉し

 

 

「西 の 風」                     永田  延男

隅と角指が届かぬもどかしさ                 静 岡

燃えきって闘いきっていざ健児

男坂遂に戻らず生かされず

背伸びして己を知った西の風

 

 

「自 由 吟」                    長澤 アキラ

本当の力は胸の中にある                   静 岡

人生の四季を詰め込むマッチ箱

良い夢を少しだけ見た質流れ

ギリギリを許して水が流れてる

 

「良 い 所」              石田  竹水

気持ち良い朝だ昨日の雲が無い          静 岡

衰えた目を庇ってる小さい口

出る杭にされて打たれた好奇心

切り売りをしない私を抱けますか

 

 

「幼なじみ」              中野 三根子

想い出は肩を組んでた男の子                 静 岡

アルバムに鼻たれ小僧並んでる

まだまだと思い出話 花が咲く

久しぶり幼なじみはまだ若い

 

 

「しあわせ」               佐野 由利子

しあわせはどこも言うことない体         静 岡

万一の地震に備え身の回り

美しく老いてく為の善を積む

朧月ふたたび逢えぬ人偲ぶ

 

 

「つれづれろ」                    谷口  さとみ

揚げるのか蒸すのか決めてから買って       伊 豆

コールドを押して後悔する晩夏

大根が嫌いと言えて楽になる

鉛筆で描いてちゃ出来ぬ決勝戦

 

 

 

「赤いろいろ」               川村  洋未

赤い靴ながめて履いて買わないで            静 岡

赤い服笑顔になって出かけよう

赤い爪毎日研いで光らせて

赤い花見張りのかわりさして置く

 

「  秋  」                森下 居久美

停留所バスを待つのか赤とんぼ           掛 川

食欲の秋に虫歯が痛くなる

君と手をつなぎたくなる茜雲

散歩道ふわっと金木犀の風

 

 

「自 由 吟」                    勝又  恭子

平坦な道を選べば向かい風                   三 島

嫌なこと決めるくじには当たりそう

雑談の中で拾った試金石

あきらめた頃にひょっこりいい結果

 

 

「夏終わる」               稲森 ユタカ

陽は沈む 秋の扉はまだ開かず           静 岡

オレンジの星が足元舞い散った

頭上には月 目に写るのはだんご

夏終わる僕の気持ちはアツイまま

 

 

「自 由 吟」               増田  信一

幸せの後ろで出番待つ不幸              焼 津

ここだけの話に周り耳が立つ

棘のある話を甘くオブラート

いい人と言われ続けて定年に

 

「自 由 吟」                真理  猫子

〆切がないとメロンが熟れていく            岡 崎

倒立が下手で会社を辞めました

えんぴつの倒れる方へ今日もゆく

快調に飛ばす雨上がりのすずめ

 

 

「秋のロマンチック」              松田  夕介

君と僕見えてる物は同じかな                牧の原

君のこと知るほどに吹く秋の風

好きなほど心は天の邪鬼になる

耐え忍ぶ果ての大きな勝ち戦

 

 

「理の乱れ」               池田  茂瑠

家族より低目に回る独楽でいい          静 岡

折り鶴の首が乱れた理へ曲る

カールした睫で恋を失った

スムーズに私の暮らし流れない

 

 

「き  よ」               山口  兄六

サウナ風呂水滴ポトリ過去になる         足 利

雲の無い空に浮かべたのはあなた

亀千代の甲羅も今日はやわらかい

何色の石けん君は買うだろう

 

 

 

「あらためまして」               高橋  繭子

占いも恨んじゃダメと言っている              大河原

田舎へとセイタカアワダチソウロード

カレンダーめくるチリンと鈴が鳴る

酷暑からあらためまして紅葉です

 

 

「困  る」               薮崎 千恵子

疲れるとすぐにヘルペス顔を出す         焼 津

電化増え困っていますガス屋さん

新型の家電に指図されている

今日は 相手の名前出てこない

 

 

「騒  ぐ」               多田  幹江

風騒ぐわが頭陀袋揺れやまず           静 岡

ナンバー3って騒がしい役ですね

猫だまし 猫にやったらかじられた

豊漁の兆しか漁り火が騒ぐ

 

 

「柿 の 種」               望月   弘

生ビール肴に柿の種を食う            静 岡

ブレーキが効かなくなった柿の種

尾頭の秋刀魚贅沢すぎないか

秋刀魚から庶民の食が外される

 

 

「グラズノフの秋」           加藤   鰹

秋雨に紛れて街を出る二人              静 岡

日本酒をスタンバイして待つサンマ

時差が出てきました秋のペアウォッチ

淋しい人ですねと変人に言われ

 

 

顧  問  吟

「生 き る」                  高瀬  輝男

居酒屋で小骨はさり気なく捨てる          焼 津

コスモスも正解求め揺れている

大都会の空気に心まで汚れ

アルバムにスミレタンポポ咲いている

 

 

「自 由 吟」               柳沢 平四朗

夕焼けに妥協だらけの影といる          静 岡

予想する分だけ釘を足して打つ

半分は私にそむく血が流れ

人の裏が読めた淋しい青い空