「ホイサッサ」 谷口 さとみ
物陰のゴミは隠しておきましょう 伊 豆
不味いって言われなければ良しとする
手料理と言って干物を焼いて出す
リセットがだんだん上手くなり熟女
「光 合 成」 高橋 繭子
曇天続き会議は振り出しに戻る 大河原
晴れていてもカバンの底に陽は差さず
走り梅雨よけいなことを口走る
満月の光も浴びて若葉たち
「風 車」 森下 居久美
悟るには修業が足りぬ万華鏡 掛 川
観覧車僕は今頃どの辺り
自己主張ばかりでくるカタカナ語
東南東気になっている風車
「約 束」 毛利 由美
政権をとりお荷物のマニフェスト つくば
人生はわからない 誓いの言葉
指切りは絶対だった幼き日
ドタキャンの理由はダブルブッキング
「洗 い 髪」 戸田 美佐緒
昼下がり少し斜めに貼る切手 さいたま
プライドが崩れる予感 白を着る
燃えやすきものだと思う洗い髪
いつだって椅子の下には落し穴
「我が輩は自由業である」 栃尾 奏子
穏やかな日々に謀反を企てる 大 阪
とりあえず三枚削るスクラッチ
はかどらぬペンに珈琲よく進む
手がかりは零だぞ五感研ぎ澄ませ
「雲 の 上」 斉尾 くにこ
醒めたころ夢の残骸流れつく 鳥 取
落ちた罠もっとたわめる日のために
ハートガブッ ハンバーガーをかじるごと
雲の上シートベルトを締めなおす
「携帯電話」 荒牧 恵三
携帯に命令される蟻の群れ 小 山
恋終わり携帯メールゴミ箱へ
お父さんワンセグ持って引篭もり
着歴に昔の名前胸躍る
「春のかたち」 提坂 まさえ
ゴールポスト拡げに行くよアフリカへ 静 岡
思案中宇宙へ建てるマイホーム
こいのぼり肺活量を自慢する
池の水春のかたちに満ちている
「言 う」 藤田 武人
いくつまでやろか女性が言える歳 大 阪
オイだけで新聞お茶が出る不思議
考えに考え好きという答
子の横の親に言いたいノーモラル
「 花 」 芹沢 穂々美
花たちの自尊心なら聞き飽きた 沼 津
鉢の花過保護にされて嘘をつく
品格を問うなと言った仏の座
次から次媚売っている白い蝶
「 花 」 安田 豊子
春うらら花のトンネル抜けるまで 浜 松
花吹雪しばし見とれる白昼夢
花冷えの夜は電話で孤を埋める
流されて絆裂かれる花筏
「愚 痴」 新貝 里々子
正直な写真だ老いが隠せない 袋 井
ライバルもしているらしいスクワット
思い込みまたやらかしたアメリカン
花時計待たせた頃が華だった
「喉 仏」 松橋 帆波
隠し事しているらしい喉仏 東 京
痴話喧嘩 お好み焼きが冷めている
意地悪をしたのは君が好きだから
あの夜のことは墓まで持っていく
「雑 詠」 西垣 博司
病院に行こう食欲ありすぎる 静 岡
さがし物につき合わされる独り言
老いらくに有るかもしれぬ片思い
振り向けば絶頂でしたあの辺り
「雑 詠」 井口 薫
パスポート膝病んでいるうちに切れ 袋 井
路線検索湯煙ばかり辿ってる
隠れ家をグーグルアース容赦ない
袋とじされていたから買ったのに
「ラブチャンス」 鈴木 まつ子
束の間の花 咲くさだめ散るさだめ 島 田
甘い水ホーホーホタル逢いに来い
触れ合えば激しく揺れるイヤリング
たっぷりと甘えてみたいラブチャンス
「チャンス」 萩原 まさ子
最少の生きるチャンスはすくい取り 静 岡
のほほんが過ぎてチャンスを取れぬまま
ミスマッチと決めて勝手に去るチャンス
お彼岸に空にならない片茶碗
「自 由 吟」 川村 美智代
迷っているうちにチャンスは逃げていく 静 岡
両の手の器で受けるなみだ雨
他人には優しくできるオトウサン
重箱の隅に残っている私
「 友 」 酒井 可福
楢山の道半ばにも友がいる 北九州
ヤーオーと友はその場で酒を酌む
旧友と遇うのも友の別れの日
友独り額縁中宴に居る
「おいしいね」 鈴木 千代見
おいしいね今日はパパいる夕ごはん 浜 松
おいしいねあなたが側にいてくれる
旬の味竹の子ごはん三杯目
アーンしてママも一緒に口を開け
「反 対」 岡村 廣司
反対と手を挙げるのに要る勇気 焼 津
君が代を反対しても起立する
反対をしても案など持たぬ人
空港の反対派乗る国内線
「初 夏」 小林 ふく子
土砂降りに打たれた杭が光り出す 袋 井
虹を掴んだ女が川をとび越える
あじさいと内緒話のこぬか雨
一粒が爆ぜる力を待って初夏
「時代遅れ」 山本 野次馬
スクラップにするおもちゃの騎兵隊 函 南
マリオネットそろそろお役ゴメンです
時代屋が住みつく俺のおもちゃ箱
ゼンマイが軋む油切れの日本
「自 由 吟」 石上 俊枝
留守番にヘソクリ寝顔ほくそ笑む 静 岡
渋滞のベンツ横目にチャリンコで
床の間でじっと客待つ九谷焼
鑑定家夢にアッサリ安値つけ
「心機一転」 瀧 進
敗因を認めチャンスが見えてくる 島 田
逆風にファイトがパワー点火する
逆転の発想ピンチつきを呼び
無位無冠余生気楽な阿波おどり
「不平もこの程度」 増田 久子
次の日も降ると困った雨になる 焼 津
ジャイアンツ負けてテレビに八つ当たり
あと五十若かったらねとはホント
築三十五年も固定資産税
「自 由 吟」 鹿野 太郎
明細書見て政務費をふと思う 仙 台
盲判押した紛れもない私
何かある実家の部屋の夢ばかり
お静かに綺麗なまるを描いている
「武 士」 濱山 哲也
武士だから携えていますエコバック つがる
豊臣派もちろんニッカウィスキー
時を待つサムライじっと傘を貼る
足軽なので元気を売りに生きている
「俳句をする友人」 中矢 長仁
趣味三昧出世は遠にあきらめて 松 山
大賞で句碑が建ったと大威張り
僕の句にイチャモン付ける憎いやつ
出しゃばって要らぬお世話で嫌われる
「新 緑」 真田 義子
新緑に朝日が当たる散歩道 仙 台
新緑に誘われ旅に出る私
ゆっくりと風に吹かれていく人生
今日という日を惜しみつつ明日へ行く
「一冊の本」 大塚 徳子
一食は霞を食べるダイエット 仙 台
「はんかくさい」ほしいが金もツテもない
沈丁花咲いて通りに風薫る
一冊の本が血となり肉となる
「クロゼット」 成島 静枝
酸欠のデッドストッククロゼット 千 葉
着られるが着ない洋服思い切る
スッキリ感味わい癖になる整理
空間へ楽しさを増すショッピング
「染 め る」 薗田 獏沓
何色に染まる覚悟の国訛り 川根本町
白無垢もあなた好みの色になり
頬染めてあなたの返事待ちかねる
菜の花に染まり息づく休耕田
「お 茶」 内山 敏子
花冷えにさめたお茶を飲まされる 浜 松
新茶飲む湯気のむこうに初夏の風
同じお茶母と嫁とで味変わる
誘われて新茶試飲の列の中
「近 況」 川口 亘
万足に書いて書けない字に笑い 藤 枝
冗談の中から落ちた駒拾う
力んでもいつもと違う手に迷う
見られてる気がしていつか見栄を張り
「 豆 」 川口 のぶ子
気にかけて見れば絵になるミニ畑 藤 枝
エンドウの白い花から見るちから
ひっそりと咲いても豆になる自信
思い出が花咲く迄の通り路
「雑 詠」 滝田 玲子
芽吹く春花粉も連れてマスク美女 浜 松
おはようと元気に弾むランドセル
満開の桜に無残春あらし
少しずつ涙腺ゆるむ老いの愚痴
「後期高齢」 畔柳 晴康
歳よりも気持ちで活きる高齢者 浜 松
手は出さぬ口だけ出てる爺と婆
苦も楽も経験してるお年寄り
毎日を早寝早起きしてる爺
「雑 詠」 鈴木 恵美子
古民家に近き我が家に独り住む 静 岡
リハビリに熱海の夜はふけていく
早朝の肩にほろほろ桜散る
一服の清涼剤はボクの笑み
「自 由 吟」 近藤 伊佐久
欲の無い人にころがる三億円 静 岡
試歩の杖やがて舞う日を汗にこめ
我がままを許されガンかなと思い
赤い花好きで閻魔に嫌われる
「自 由 吟」 飯塚 すみと
ときめきが若いクスリと医者の弁 静 岡
好きな声ケータイラジオ美人出る
薮医でも錠剤だけは貰いゆく
女子校が今や男の硬式部
「黄緑映える」 松田 雄介
高らかに春を報せるファンファーレ 牧ノ原
我先に目覚めた日から背比べ
柔らかい緑に隠れた逞しさ
いつか見たい朝焼けみたいな顔の君
「自 由 吟」 恩田 たかし
平日に娘と散歩するゆとり 静 岡
まったりと駄洒落聞きつつカフェをする
日差しあるじゅうたん上に大の文字
昼寝する娘と一緒にリの文字
「春なのに」 小野 修市
春なのに芽が出る頃に踏まれてく 静 岡
青春の盛りニキビが目立ってる
芽が出ない春は異常気象か
恋しても寒空おおく花咲かぬ
「桜 雨」 稲森 ユタカ
桜濡れピンクの光乱反射 静 岡
陽の下に降り出してきた桜雨
花香り春の息吹が響きだす
照れ隠し桜舞う中顔隠す
「知らん顔」 永田 のぶ男
九条を振り向かないと鬼が出る 静 岡
神様が振り向く虫のいい願い
戒名が振り向き財布覗き込む
粗探し振り向かされて知らん顔
「 猫 」 増田 信一
衣食住足りて鼠を取らぬ猫 焼 津
招き猫顔は向いても目を逸らす
マイペース崩さぬ猫羨ましい
猫の目のように変わっていく会社
「雑 詠」 林 二三子
酒飲みのくどい話にらちが無い 芝 川
欠点を認め背伸びはもうしない
暮らしの知恵母が残したトラの巻
日曜の夜は大河で締めくくる
「沽 券」 薮﨑 千恵子
どうでもいいと思うスターの離婚劇 焼 津
リヤカーがブレイクしだすエコ社会
任せろと父の沽券が胸を張る
取り持たれ時間忘れてつい長居
「生 き る」 中野 三根子
生きるため今日もせっせと爪みがく 静 岡
平凡な日にもそれぞれ波があり
葉ざくらに生きる力をもらってる
落ち込んで父の形見の筆並べ
「タンポポと綿毛」 尾崎 好子
畦道へすみれタンポポ蓮華草 藤 枝
タンポポに元気もらってウォーキング
大粒の雪かと思う日の乱舞
春風にのった綿毛の旅烏
「ご 近 所」 多田 幹江
ご近所に必ずいます暇な人 静 岡
輪を仕切る元イケメンのヤジロベエ
解けて流れて白い藻屑になりました
絵ロウソク花紅のまま尽きる
「聞こえる」 石田 竹水
身を寄せる場所は此処だと言う仏間 静 岡
取り分けた残りが母の皿に有る
酷使した耳へ補聴器プレゼント
おおかたの事は聞こえる地獄耳
「京浜川柳大会ボツ句」 中田 尚
出逢い系やがて家系図まで燃やす 浜 松
バーチャルで悪知恵ばかり鍛えられ
古着着た若い力が六本木
カラフルなパジャマで病気蹴っとばす
「さよならキャピー」 山口 兄六
握り拳を甲羅に見立てそっと撫で 足 利
思い出は宝 万年でも生きる
隠れんぼ最初に噛んだのはどっち
ヨセミテへ帰れ お散歩だねの声
「珈琲タイム」 真理 猫子
煮詰まったコーヒー 干乾びた私 岡 崎
豆粒のひとつひとつに顔がある
ダイエットティーに口説かれている砂糖
詮索はしないコーヒーミルの音
「つぶやき」 勝又 恭子
嘘つきな笑顔に心乱される 三 島
手放すと決めたとたんに惜しくなる
曇りのち晴れと信じて待つ明日
ムーンライトパワー奇跡は起きるはず
「本当の事」 川村 洋未
どの顔でついた嘘だか忘れたよ 静 岡
かなえたら見返りあるか神が聞き
良く煮えた芋が本音を誘い出す
金は無い愛はあるよと言った人
「愛のリボン」 池田 茂瑠
届いたが南瓜小型な馬車だった 静 岡
結びます愛の形のリボンです
時々は揺れて女を磨きます
狂えない私に多い紐の数
「 風 」 長澤 アキラ
忘れたい記憶の底の不発弾 静 岡
真言は心の壁で受け止める
楽しくも有ったが空しくもあった
畳み方下手な男にある焦り
「B級脚本家」 今井 卓まる
デタラメな錬金術で解けた恋 浜 松
不自然な自然で出来たビオトープ
暴投を続ける恋の変化球
天秤は非情傾くどちらかに
「悪 者」 佐野 由利子
悪者になって波風押し沈め 静 岡
敵の罠まんまと嵌まる七並べ
意に添わぬ出来事ばかりくもり空
ウンウンと頷いている投書欄
「無 題」 高瀬 輝男
味噌汁を引きずって行く寒い道 焼 津
コミカルなストーリーなかった僕の戯画
サインコサイン生きてく道を複雑に
人生劇せめてフィナーレ飾りたい
「えんぴつ」 望月 弘
HB小学生に舐められる 静 岡
マルクスを赤えんぴつは知っていた
冗談を四角四面に書くH
鉛筆の饒舌剣になってくる
「夜の緞帳」 加藤 鰹
メンソール揉み消す夜の銀狐 静 岡
マティーニのグラスの底にある殺意
ドアロックすると緞帳下りてくる
冬越えて謙虚になったシクラメン
顧 問 吟
「別 口」 柳沢 平四朗
父の日の一本道は頂けぬ 静 岡
パソコンへ問う正解は別にある
他人の子を褒める不肖の請求書
情報に凹み神佛見失う